「シェア飯長岡」が挑む新しいコミュニティ作り

2016.8.31

誰かと住まいを共有するシェアハウスをはじめ、カーシェアリングやシェアオフィス、ワークシェアリングなど、世の中で拡がりを見せるシェア文化。「共有する・分かち合う」を意味する「シェア」はすっかり馴染み深い言葉になりました。長岡市には、そんなシェア文化を取り入れたイベントがあります。それが、参加費無料なのに、お腹いっぱいの料理と飲み物を楽しめる「シェア飯長岡」。毎月13日の夜に20・30代を中心とした若者が集まるコミュニティの取り組みを紹介します。

看板

 

シェア飯ってどんなイベント?

シェア飯長岡(以下、シェア飯)は、参加者が手作り、または買った「一品」を持ち寄ってみんなでご飯を食べるイベント。会場はJR長岡駅から徒歩約8分にある「プリン長岡」。自慢の料理をふるまってもよし! おすすめのお惣菜を買ってきてもよし! 明るい家族団らんのように、みんなで食べ物を持ち寄って、それぞれ飲みたいものを飲んで、肩肘張らずに楽しく交流しようという取り組みです。

2016年3月のスタート以来、参加者は次第に増え、毎回30名以上の若者が集まるようになりました。テーブルを彩るのは、肉に魚に野菜、デザートまで参加者の持ち寄ったたくさんの料理や食材。それだけでなく、飲食店や農家、企業から“スポンサー”として料理やドリンクが提供されているのもシェア飯の特徴です。

ところで、この会はどういうきっかけで始まったのでしょうか?

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お金をかけなくても楽しいことはできる

大島健さん

シェア飯の発起人・大島健さん。会社役員をしつつも数多くの地域活動・市民活動に参加している。

「お金をかけなくても、楽しいことができれば地域は盛り上がるはず」と語るのは、シェア飯長岡の仕掛け人の大島健さん。長岡には若者が誰でも気軽に参加でき、定期的に集まれる場が必要だと感じていたそうです。そんな時に、「シェア飯」という持ち寄りご飯のイベントが他の地域で人気を集めているということを耳にして、長岡での開催を決めました。

「若者向けのイベントや交流会はいろんなところで開催されているのですが、単発だったり、参加費がかかるものが多い印象でした。“やり続けること”を考えると、主催者も参加者も負担がなるべく少ないほうが良い。シェア飯はそれを両立できると思いました」と大島さん。

イベントの様子 (3)

最初は、「あまり人が集まらなくても、数人で食卓を囲んで食事するだけでも楽しいだろう」と思ってスタートしたそうですが、SNSを通じて人が人を呼び、あっという間に人気のイベントになりました。

「ワイワイ和やかな雰囲気で、なんだか親戚の集まりみたいですね」(大島さん)

 

「自分でやってみる」を促す場所

大島さんによれば、シェア飯の一つのテーマは「会社や学校以外のコミュニティを作ること」。いったい、どんな人が来ているのでしょうか?

最初に中心にいたのは、有志の若者たちが長岡の魅力づくりのため議論を進める場として活動する「ながおか若者会議」で知り合ったメンバー。

若者会議メンバー

若者会議で知り合った社会人と女子大生。

若者会議メンバー (2)

まずは自分たちの知り合いに声をかけて人を集めた。

「“会議”というと参加のハードルが高いという若者も多いですよね。ですが、シェア飯は肩肘張らずにゆるく参加できる場なので、いろんな人に声をかけやすかったんです」(大島さん)

イベントの様子 (2)

現在では、大学生から会社員、自営業の方、青年農家などいろんな若者が集まっています。中には、「お兄さんお姉さんが面倒見てくれるから」と、お子さん連れでくる方も。

「一品持ち寄りなので、自分の無理のない範囲で食べ物を持ってきてくれます。以前イベントをした時に大学生から“参加費500円でも高いと思う人もいる”と指摘されたことがありますが、シェア飯ならお菓子一袋でもペットボトル一本でも参加できるので、大学生にも気軽に参加して欲しいです」と大島さん。それぞれが気楽に参加できる、このシェア形式が多様な人が集まる理由の一つになっているようです。

また、参加者がSNSでイベントの様子を発信(シェア)していくことで評判となり、回を追うごとに訪れる人が増えています。SNSでここにいない人にもこの場の楽しさを「シェア」することで、知らず知らずのうちにコミュニティづくりの一端を担っているというわけですね。

シェア飯に来たら自分にそっくりな人に会った

シェア飯に来たら「自分にそっくりな女子に出会った!」意気投合する2人。その様子をお互いにSNSに投稿。

 

加藤卓将さん

結婚を機にUターンした30代男性。SNSで情報が回ってきて「長岡で知り合いをつくりたい」と、参加を決めた。

 

シェア飯には自己紹介タイムや、主催者が人を繋いだりおもてなしをしたりといったサービスはありません。その狙いを大島さんは「参加者みんなでコミュニティを作り上げていきたいと思っています。なので自分で動いたり、勇気を持って話しかけてみたり、誰かがしてくれるのを待つのではなく“自分でやってみる”を大切にしたいんです」と話してくれました。

イベントの様子

会場の準備・片付けも参加者が皆でやります。「店員とお客」、「売り手と買い手」のように主催者と参加者を明確に分けず、“コミュニティの一員”としての役割が求められることも、若い人たちが新鮮で心地いいと感じるポイントなのかもしれません。

 

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