な!ナガオカ

山古志「牛の角突き」名物男が教えてくれた”MC勢子”誕生の経緯と観戦のツボ

TP006694
体験する山古志
体験する山古志
2016年 9月 5日 | な!ナガオカ スタッフ

新潟の山あいの地域(現長岡市山古志、小千谷市東山)で、一説には1000年も前から脈々と受け継がれてきた「牛の角突き」。いわゆる「闘牛」だが、他地域のそれとはちょっと違う。牛と牛が闘っているさなか、「勢子(せこ)」と呼ばれる男たちが素手で牛に取り付いて引き離し、勝負を「引き分け」に収めるのが最大の特徴なのだ。

5月~11月に行われる国指定重要無形民俗文化財「越後山古志の闘牛大会」は、この伝統のローカル闘牛「牛の角突き」の面白さを、身近に体感できる絶好のチャンス。とはいえ「勝ち負けを付けない闘い」は分かりにくい? なので、大会を主催する山古志闘牛会(松井富栄会長)を訪ね、観覧ポイントを聞いてみることにした。

勢子の松田淳さん。「引き分け」の要となる重要な「綱掛け」役を務めながら、場内アナウンスも担当する“勢子MC”。取組前のアトラクションで角突き牛を飾る「面綱(おもづな)」について説明する様子。

教えてくれたのは、山古志闘牛会の勢子・松田淳さん。43歳。
越後山古志の闘牛大会で、牛とともに場内に入って勢子をやりながら、司会・呼出・実況・解説の場内アナウンスも担当している。約2時間、動き続けて話しっぱなし。この松田さんのミラクルな技を目の当たりにした本編集部スタッフ(牛の角突き初体験)は、「何者ですか!あの人は!!」と大興奮。ボクシングに例えたら、セコンドとレフリーと実況と解説とアナウンスを、1人で何試合も、ぶっ続けでやっているようなものだものね。

まずは、松田さんの“勢子MC”誕生のいきさつから紹介しよう。

 

中学1年で勢子デビュー

松田さんは山古志生まれ、山古志育ち。「物心つく頃には、じいちゃんに手を引かれ角突きを見に行っていた」という生粋のヤマの男だ。家は、当時の主会場の一つだった虫亀闘牛場のすぐ近く。保育園のころから角突きのたびに見物に通い、中学1年で念願の勢子デビューを果たす。「若い牛と一緒。勢子も先輩に混じって場数を踏んで、やりながら経験を積んで覚えていくんです」

高校を卒業して勤め始めた頃には、勢子の中でも重要な役どころ「綱掛け」を担うようになっていた。角突きの取組時には場内に20~30人の勢子が入るが、綱掛けを担うのはこのうち数人ほど。闘っているさなかの牛の後方に回り込み、息を合わせて2頭の牛の後脚に同時に綱を掛ける。ほかの勢子は瞬時に二手に分かれてその綱を引き、また別の勢子は牛の急所である鼻をつかんで引き分ける。牛に負けない、勢子同士の連携がそこにある。

TP006702

TP006705

 

「牛が今考えていることを伝えたい」

勢子の松田さんが場内アナウンスも担当するようになったのは、23~24歳の頃。それまでは熟練の年長者が場外の定位置で取組を解説していたが、高齢を理由に引退することになり引き継いだ。この時、松田さんは既に勢子歴10余年。もちろん綱掛け役も続けたい。ということで、「勢子の綱掛け+場内アナウンス」という今までにないスタイルが誕生した。

「今、牛が何を考え、どう動いているか。そこを一番分かってもらいたいし、観ているお客さまに伝えたい。そして主役である牛たちは、すごいことをやっているということを分かってもらいたい」と松田さんは話す。だから、場内で勢子をやりながら、観客に向けて細やかにアナウンスする。

それぞれの牛の出自や性格、闘い方、技の攻防、牛と勢子のせめぎ合い。新たな牛を迎えた牛持ち(牛のオーナー)のこと。若い牛が場所に慣れ、一戦ごとに経験を積み、心身ともに「大人になってゆく」様子……。この30年、勢子として牛と関わってきた松田さんには、観客に語りたいことがたくさんある。

闘いを終え、場外へ引き上げる牛を送る口上は決まっている。
――さぁ、双方の綱が伸びます。皆さま今いちど大きな拍手をお願いいたします。――
闘いぶりをたたえる観客の拍手は、牛と牛持ちと勢子にとって、「何よりの幸せ」なのだ。

「みんな仕事(本業)をしながら牛を飼い、勢子をやっている。それはいい角突きが観たいから。そして、自分の牛が強い牛に育ってもらいたいから。だから頑張っているし、自分たちの生活にも張り合いが生まれる」と語る松田さん。一体となって熱い闘いを楽しんだ観客の「また来ますね」のひと言が、一番うれしいという。「やっぱり牛の角突きが好きだから。何がどう面白いってなかなか言葉で説明し尽くせないのだけれど。牛の角突きは本能で面白いってことでしょうか」と最高の笑顔で話してくれた。

文平と松田さん

8月15日のお盆場所では、松田さんの持ち牛「文平」が出場。闘い終えた文平に何やら優しく話しかけていた。

 

松田さん直伝・観覧のツボ3つ

■その1 勝ち負けじゃない。引き分けの醍醐味
――その昔、牛の角突きは「男を磨く場」だった。巨体を激しくぶつけ合う牛と牛の真剣勝負。それを素手で引き分けに収める勢子たちの頼もしく勇ましい姿に、女は惚れたのだとか。勢子同士の素晴らしい連携の技にも注目を。

■その2 牛と勢子と観客と。一体でうねる興奮
――勢子たちが牛に勢を掛ける「よしたぁーっ」の声。牛もこれに応えて懸命に力を出しきる。観客のどよめきや拍手で闘いはさらに白熱。終盤になるほどベテラン牛が登場し、見応えのある熱闘が繰り広げられる。一体になって盛り上がろう。

■その3 「ウチのコ」の成長。見守る幸せ
――角突き牛は3歳でデビューし、10年以上現役で活躍する。山古志闘牛会所属の牛は約60頭。お気に入りの1頭が、強く頼もしく成長してゆくさまを、追って応援するのも楽しい。普段はとても穏やかな牛の様子も場外で見てみて。

TP006701

TP006670

TP006612

 

牛とともにある生活の中で神事として始まり、やがて人々の娯楽として根付いたという「牛の角突き」。松田さんが「本能で面白い」と言うように、観て、感じて、どうしようもなくハマっちゃう人は少なくない、らしい。近年は山古志地域外に在住ながら、勢子や牛持ちになって角突きに関わる人もいる。松田さんの解説で牛の角突きが楽しめる、越後山古志闘牛大会の次回開催は9月18日(日)。まずは、生で楽しんでみてはいかが。

 

国指定重要無形民俗文化財「越後山古志の闘牛大会」

 

[開催期間]5月~11月
[今後の開催]2016年9月18日(日)・9月19日(祝)・10月9日(日)・10月23日(日)・11月3日(祝)
[時間]各日とも10:00~開場、13:00~取組開始(取組数により変更あり)
[会場]山古志闘牛場(新潟県長岡市山古志南平地内)
[入場料]2,000円(高校生以上) ※入場券は開催当日に会場で販売/全国のコンビニでも購入可
[問い合わせ]山古志闘牛会 TEL:0258-59-3933http://tsunotsuki.main.jp/

このエントリーをはてなブックマークに追加
ページトップへ