「生産者の顔が見えることが大事」Uターン夫婦がマーケット運営の秘訣に至るまで

2016.10.27

長岡市小国地域は、周辺を山に囲まれた地形で、まちの中央を信濃川水系の渋海川が流れる、緑と水の豊かな地域です。米づくりをはじめとする農業が盛んで、紙すきでも知られています。

そんな小国で開催されている「オ―!グリーンマーケット」を知っていますか?

2015年から、長岡市おぐに森林公園で開催しているこのイベントは、小国和紙でディスプレイされた会場に、農産物や手づくり雑貨、工芸品が並ぶマーケット。地元野菜を使用した飲食ブース、親子で楽しめるワークショップなど、地元や周辺地域から20店もの出展者が集い、個性のある幅広いブースが軒を連ねます。

訪れる人の中には常連さんも多く、手作り感のあるアットホームなマーケットとして評判です。

「イベント名の『オ―!グリーンマーケット』は、『おぐりん』という小国のご当地キャラと、自然の豊かな地域性を合せたダジャレが由来なんです」

そう、楽しそうに教えてくれたのは、このイベントを主催する中條さん夫婦。パワフルに活動をされている旦那さんの薫さんと奥さんの初映さんに、「オ―!グリーンマーケット」を始めることになった経緯について話を聞きました。

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二人の出会いは京都

二人が長岡に帰ってきたのは、2008年のこと。

進学や就職に伴い、京都で生活していた時に二人は出会います。忙しく生活に追われる日々の中で、お互いに長岡出身だったこともあり、帰って農業をすることを決め、Uターン。

タイミング良く、薫さんが地元である小国地域の「農事組合法人よこさわ」に就職することが決まり、めでたく就農。そして翌年に初映さんと結婚し、新たな生活をスタートさせました。

 

米づくりへのこだわり

念願叶っての米づくり生活も8年目となり「今年の米はかなりいい線行っていた」と手ごたえを感じている薫さん。所属する法人で、4年前から「原点回帰米」という農薬・化学肥料・動物性肥料不使用のお米を生産しています。このお米は、薫さんの無農薬で米づくりをしたいという強い想いが実現したものです。

「入社当時から農業法人よこさわは、減農薬栽培に取り組んでいて、農薬使用回数と化学肥料使用量を地域慣行栽培基準の5割以下にした新潟県認証特別栽培米を生産していました。それでも素人の自分からすると農薬や化学肥料の量の多さに驚きました。なのでまずは田んぼの一部を使い個人的に農薬・化学肥料不使用の無農薬の米づくりを始めたんです」(薫さん)

とはいえ、法人として取り組むとなると減農薬と無農薬では栽培方法も異なり、70代の大先輩が半数を占める職場では、考え方も様々で意見のぶつかり合いもあったそう。無農薬だと虫がついて病気にも掛かりやすくリスクが高いと心配する声も上がったといいます。

当時の自分を「反抗期だった」と笑う薫さんに対して、「自分の信念を通したいタイプなんですよ」と初映さん。

「でも、つくった米が売れたのには正直安心しました。なんとか結果になったことで、周りの反応も変わってきました」(初映さん)

差し替え:農業法人よこさわ2016秋集合

「無農薬にこだわって人間関係がギスギスした会社でつくる米よりも、仲良くみんなと協力して作った方が間違いなく美味しい」という薫さん。職場内で理解が得られてきたことが薫さんの米づくりの手ごたえにもつながっています。

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奥さんの初映さんも一緒に働いています。担当は農作業以外のほとんど全部。中でも販売には力を入れていて、HPの情報発信、商品パッケージのデザインなど、京都でのデザイナー経験を活かしています。

 

突き進んでやってみないとわからない! マーケットへのこだわり

無農薬での米づくりを進める薫さんは、一方で「オー!グリーンマーケット」の前身となる「オーガニックマーケット」というイベントを企画。地元の農家さんに向け、農薬や化学肥料に頼らない作物づくりに触れてもらうことを目的に、2014年の7月から5カ月間、毎月開催していました。

会場は「オー!グリーンマーケット」と同じく、長岡市おぐに森林公園。オーガニックな品物に特化した出展者を募り、開催したマーケットでした。

しかし、この5カ月間にはかなりの苦労があった様子。

「周辺地域から来てくれる人もいましたが、結局は地元の人にあまり響きませんでした。地域内に丹精込めて作られた野菜や商品があるのに、オーガニック(※)と限定してしまったことで、おいしいだけでは勧めることができなくなってしまったんです」(薫さん)

※オーガニック……このマーケットでは、農産物において、農薬・化学肥料を使わず、有機肥料を使用した栽培方法をとっているものをいいます。
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2014年に開催していたオーガニックマーケットの様子。

この経験から、オーガニックであることよりも、生産者と消費者が接する機会をつくり出すことを大事にしようと「オー!グリーンマーケット」として去年から再スタートを切りました。

「作った人の顔が見える野菜っておいしいんです。そういうおいしさを大事にしていきたい。このことに気が付くには、突き進んでみないとわからなかった。5カ月、勉強になったなぁ」(薫さん)

「よく毎月やってたよね。正直大変で、もうあの頃に戻りたくない(笑)」(初映さん)

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「無農薬だから安心ということもあるけど、生産者がわかるのも安心。作った人が、自信を持ってうまいんだって言ってるものは食べてても気持ちがいいよね。食べ物のおいしさは気持ちとイメージだと思うんです」(薫さん)

実感のこもった言葉からは、野菜作りに真心を込めて取り組む地域の人たちの姿が窺えます。

差し替え:森の八百屋さん

地域の生産者の顔が見えるような「森の八百屋さん」。2015年からリニューアルして始まった「オー!グリーンマーケット」の一コマ。

追加:オー!グリーンマーケット1

おぐに森林公園という場所柄、子ども連れで訪れる人も多い。

 

あくまでもマイペースに、そして自分たちに正直に

中條さん夫婦がほぼ二人で運営している「オー!グリーンマーケット」。

初映さんは出店者との調整やチラシ制作などの事務系とデザイン係、薫さんは、発案係と仕事を周りに振る係なのだそう。

「今回の10月の規模は少し大きいので、アーティストのセッティングやチラシ配り、会場設営などを友人に頼んで手伝ってもらいます。そうやって自分たちのできる範囲でできることをやるのが丁度いいですね。『オー!グリーンマーケット』含め、米づくりの仕事以外は全部趣味なんです。だからマイペースにやっています。でも今後はもっと仕事したい。米づくりに集中してみたいですね」(薫さん)

「気分屋だから、また春になったら違うこと言ってるかもね(笑)。わたしは2月に出産を控えているんですが、落ち着いたらデザインの仕事をもっとやっていきたいです」(初映さん)

「最終的にはそこに雇われたいな(笑)」(薫さん)

お互いに言いたいことを言い合いながら、こだわるところは最後までこだわりきる。時たまケンカも起こるけれど、ユーモアは忘れない二人。抜群のコンビネーションで魅せるこれからの活動も楽しみです。

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中條夫婦がもみがらで作る、もみがらクッションのPIPPIちゃん。「もっと売れるようにしたいよね」(初映さん)、「もみがらを取るために米をつくるみたいな。そのくらいになったらいいね」(薫さん)と二人。名付け親は長女の葉奈ちゃん。

 

年内最後の「オー!グリーンマーケット」開催迫る!

2016年最後の「オー!グリーンマーケット」は10月30日(日)開催。今回は、スペシャルバージョンとして、なんと「オー!グリーンフェスティバル」と銘打っての森の音楽フェスです。

野菜と小国和紙や手作りの品が並ぶブースに加え、日本各地からアーティストがやってきます。そして更には、小国の友好都市である東京都は武蔵野市から吉祥寺のハモニカ横丁朝市からも出店者が来てくれるとのこと。楽しみが盛りだくさんの「オー!グリーンフェスティバル」です。中條さん夫婦に会うことを目的に行ってみるのもいいですね。

 

オー!グリーンフェスティバル
[開催日] 2016年10月30日(日)
[時間] 10:00~18:00
[場所] 長岡市おぐに森林公園 長岡市小国町上岩田208
[入場料] 無料
[Facebook]https://www.facebook.com/oh.greenmarket/?fref=ts

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