な!ナガオカ

国内生産の4割!田園にそびえる巨大ガスプラントの実力と「萌えどころ」完全解剖

暮らす越路長岡
暮らす越路長岡
2018年 10月 11日 | な!ナガオカ スタッフ

新潟県長岡市の越路地域は、里山に囲まれ田畑が広がり、ホタルや紅葉の美しさでも知られる自然豊かな地だ。だが、その一方で、ここを訪れた人は意外な景色にも⽬を奪われることになる。水田地帯の中に現れる重厚な建造物――。国内最大級の天然ガス生産処理施設、国際石油開発帝石「越路原プラント」である。とりわけ夜間、照明に照らされた様子は印象的で、その姿に人工美や機能美、SF映画やアニメに出てくる近未来風景を重ねて見る人もいるだろう。

この施設が越路にあるのは、地下に「南長岡ガス田」と呼ばれる豊富な天然ガスの地層があるからだ。越路に埋蔵されたお宝ともいえる天然ガスはどのように生産、利用されているのか。越路に「越路原プラント」と「親沢プラント」の⼆つのプラントを持ち、天然ガスを生産している国際石油開発帝石の東日本鉱業所、長岡鉱場を訪ねた。

水田に囲まれた越路原プラント。

 

国内生産量のなんと4割!
長岡は「ガス王国」だった

天然ガスとは、地下から発生する炭化水素を主成分とした可燃性のガスのこと。新潟県は天然資源に恵まれた⼟地で、国産天然ガスの約8割が新潟産。なかでも南長岡ガス田の産出量は現在、日本最大で、なんと国内生産量の約4割を誇る。そもそも日本はガス、石油などの資源が少ない。日本国内の消費量に対して、日本は石油の99%以上、天然ガスの約97%を輸入に頼っているのが実情だ。全体から見れば数%かもしれない国産ガスだが、輸送コストやCO²排出量を削減できるなど、国内で天然ガスが産出されることには大きなメリットがある。

国内最大規模の南長岡ガス田とはどのようなガス田なのか、今回、お話しを聞かせてくださったのは、ここを管理する国際石油開発帝石株式会社・長岡鉱場の長谷川美里さん。学校や⼀般団体の見学者を案内することも多いという長谷川さんに、わかりやすくガス田の仕組みを説明してもらった。

国際石油開発帝石株式会社の長岡鉱場総務グループの長谷川美里さん。現場見学時には必ずヘルメットと眼鏡(オーバーグラス)を着用すること、また場内は火気厳禁で、携帯電話の持ち込みも禁⽌であることが最初に伝えられる。ここは、安全管理を徹底しなければならない場所なのだ。

毎日260万世帯分をまかなえる量が
ここで生産されている

まず、気になるのはその規模。日本で使われる天然ガスの97%は国外産。その中での国内生産量が日本最大と聞いても、いったい生産量はどれくらいなのか。多いのか少ないのか、よく見当がつかない。

「南長岡ガス田では年間15億㎥、⼀日に最大520万㎥の天然ガスを産出しています。ご家庭に毎月、ガスの使用量が届いていると思うので、そちらを見ていただくのもわかりやすいのですが、⼀般的に各家庭で使う量の平均は、⼀日1~2 ㎥と⾔われています。ですから、単純計算では毎日260万世帯分のガスをまかなえる量を生産しているということですね」( 長谷川さん)

260万世帯分のガス! 予想をこえる規模に驚いた。長岡市が約10万世帯、新潟県全体でも約90万世帯なので、それを軽く超える世帯のガスがまかなえる量ということだ。

「国際石油開発帝石 越路原プラント」は新潟県の「次世代エネルギーパーク」構成施設としても紹介されており、学校や⼀般の団体見学も受け入れている。そうした見学者向けのDVDや資料を見せていただきながら、詳しくレクチャーいただいた。

 

数億年前の海底火山爆発で
火山岩の隙間にガスが堆積

「ガス田」というが、ガスはどのような状態で地下にあるのか。その質問に長谷川さんが見せてくれたのがこの石だ。

「こちらが『グリーンタフ』と呼ばれる火山岩です。よく見ると小さな亀裂や細かいすきまがあり、ここにガスが堆積されています」(長谷川さん)

これが「グリーンタフ」。ガスが溜まっていると聞いてなんとなくもろい石を想像していたのだが、まったく逆。非常にかたい。

天然ガス採掘にまつわる様々な資料とともに石がいくつか置かれている。

「数億年前、このあたりがまだ海だった頃、海底火山が爆発し、溶岩が海水によって急激に冷され、固まって火山岩になりました。このとき、地下4000-5000mの深さにできた火山岩の地層が、南長岡ガス田のガス層です。この火山岩は色が緑がかってみえることからグリーンタフと呼ばれています」(長谷川さん)

数億年前の海底火山の爆発……。気が遠くなるようなはるか昔の出来事が、今につながっているのだ。

「グリーンタフに天然ガスが閉じ込められているのは、世界的にも珍しいことなんです。南長岡のグリーンタフの上には気体を通さない硬い岩盤(キャップロック)があり、そのために、行き場を失った天然ガスが非常に高い圧力で圧縮されたため、ガス層が形成されたといいます」(長谷川さん)

ガス田の中には水の中にガスが溶けているケースもあるが、こうしたガス田では水を汲んでガスを取り出すため、地盤沈下が起こりやすい。しかし、南長岡では硬くてしっかりとした地盤があり、ガスが岩石中に堆積されているため、地下から資源を掘りだしても地盤沈下は起きないという。この地層はあとで思いがけない見事な使い方をされるのだが、その紹介はまた後程。

 

30を超える試掘を経て
天然ガスが見つかるまで

井戸を掘るための大きなやぐら。写真:国際石油開発帝石ホームページより

地下4000~5000mもの深さにある南長岡の天然ガス層。その規模は、長さ6㎞、幅3㎞、厚さ1㎞と想像されている。この資源はいったいどのようにして見つかったのだろう。

「もともと新潟県には、ガス田や油田が多くあります。有望なガス田を探して日本国内の各所で地質調査を行ったのですが、1976年、この地域で地質調査が行われてガスがありそうなことがわかり、井戸を掘ってみることになりました。1979年、長岡市関原地区に有望な井戸が見つかり、それが足掛かりになり、30を超える試掘を経て、南長岡は大規模で有望なガス田であることがわかりました」( 長谷川さん)

資料が展示されている部屋には、かつての井戸の写真も並んでいた。ガス田から発生する浮遊ガスを焼却するガスフレアと呼ばれる炎はガス田の象徴でもあったが、現在は処理方法が変わり、今ではこうした炎は見られない。ちなみに、国際石油開発帝石は、長岡まつり大花火大会の花火スポンサーを長年続けるなど、地域貢献に力を入れている。

“ 井戸は100本掘って1本当たればいい” という世界で、調査開始3年目で有望な井戸が出たのは大きいことだった。また、1970年前後には掘削技術が急速に進化し、これまで1000~1500mまでしか掘り進められなかったのが、4000~5000mの深さの掘削が可能になったことも大きく影響した。技術革新なくして、ここまで地下深くの資源は見つけられなかっただろう。

見学の子どもたちに大人気という南長岡ガス田の模型。地層の断面図、井戸の深さがよくイメージできる。また、井戸の数、パイプラインの様子などもわかりやすい。

井戸を掘る機械の先端部の部品。井戸を掘るには、まずやぐらをたて、パイプの先端に「ビット」と呼ばれる写真のような部品を付け、掘り進める。地上から直径1mほどの穴を掘り進め、だんだんとパイプの径を細くするため、地下5000mでは穴の直径はわずか20cmになるという。

 

噴出してくるガスを調整する
「クリスマスツリー」とは?

地下で圧縮されていたガスや水分などの気体や液体は井戸によって通り道ができると、自らの力で地上に向かって噴出してくる。だから、井戸の出口にあたる部分には、液体や気体の出入りをコントロールする弁が欠かせない。いわば、巨大な蛇口にあたる設備だ。この設備は「クリスマスツリー」と呼ばれる。生産するための弁を組み合わせた形がクリスマスツリーに似ていることから名付けられたというから、おもしろい。

 

参考・井戸の仕上げ坑内図。地上にあるのが「クリスマスツリー」。画像出典:国際石油開発帝石ホームページより

クリスマスツリーのバルブを解放すると圧力から解放されたガスが噴出し、パイプ(フローライン)を通ってプラントに入っていく。この時点ではガスに含まれる不純物がまだ多い。そのため、セパレーターという装置で、油と水分を分離させ、続いて、炭酸ガスを除去し、さらに水分などの不純物を除去して、熱量を調整したのちに精製されたガスとなるのだ。

プラント周辺に点在するこの建物の中にあるのが、井戸とクリスマスツリー。ここから、地下から出てきたガスや油、水などの混合物がパイプを通して送られる。

天然ガスは、地下に埋め込まれたパイプラインによって送り出される。その行き先は、新潟、長野、富山、群馬、栃木、埼玉、東京、山梨、静岡までの広範囲にわたり、パイプラインの全長は約1500㎞にも及ぶ。その供給先は各地の都市ガス会社や企業の工場だ。

国際石油開発帝石は1960年代からパイプライン網の整備に取り組んできた。写真は実際に使われていたパイプを輪切りにしたもの。金属が腐らないように弱い電流を流す「電気防食」を施しているため、30年近く使ったものでも、金属がほとんど腐食せず安全性の高い状態を保っている。

 

ガスだけじゃなく油と電気も生産!

「実はここ、越路原プラントは、ガスだけではなく油も生産し、また、ガスを利用して電気も作っているんですよ」( 長谷川さん)

油と電気? どちらも生活に欠かせない重要なエネルギー資源ではないか。

「噴出してきたガスを含む混合物からセパレーターで油と水を分離するのですが、この油がコンデンセートというもので、ガソリンや石油製品の原料として使える油なんです。このプラントで精製し、タンクローリーで上越にあるオイルターミナルに運んでいるんですよ」(長谷川さん)

精製されたコンデンセート。透明で見た目はサラダ油のような感じ。

原油やガスというと、海外からくるものだとばかり思っていたが、こんな身近に、欠かせないエネルギー源があるとは驚くばかり。

「越路原プラントには、発電所もあるんです。ガスタービン発電機とスチーム発電機のふたつで発電していて、ガスタービン発電機は、越路原プラントで生産される天然ガスで発電させます。そのときに出る熱で高圧の蒸気を作り、スチームタービン発電機が発電する仕組みになっているんです。このふたつの発電機で合計5万8000kWの発電が行えます。電気はプラント内で使うほか、特定の工場などに売電しています」

ひとつのエネルギーでふたつの発電機を回す。その発電燃料は自社のガスで賄う。また、地下から産出したガスで油もとる。貴重な資源を無駄なく、効率的に使う工夫に唸らされた。また、自社に発電機を備えることによって、どんなときにもエネルギーの供給を止めないための対策にもなる。ガスは社会のインフラとして重要なものだ。安定供給を使命とする企業としての責任感を形にした仕組みといえよう。

越路原プラントに隣接するガスタービンコンバインドサイクル火力発電所。2007年より小売電気事業者向け電力卸供給事業を行う。写真: 国際石油開発帝石ホームページより

 

枯渇したガス田も貯蔵庫として活用!

資源を無駄なく使うための様々な設備がある国際石油開発帝石には、ほかにも日本初の取り組みがあるので紹介したい。

「最初に南長岡ガス田の糸口となった長岡市関原のガス田は、1968年に枯渇しました。その後は日本初の“天然ガスの地下貯蔵庫”として活用しています」( 長谷川さん)

枯渇したガス田が地下貯蔵庫に? いったいどういう仕組みなのだろう。

「枯渇したガス田にはガスを採取した後の“隙間”があるので、ここに、ガスを送り込みます。先ほど言ったように、南長岡ガス田の上にはキャップロックと呼ばれる非常に硬い岩盤があるため、ガスが逃げず、貯蔵ができるのです。関原地下貯蔵フィールドでは、夏、需要が少ないときに生産して余った天然ガスを貯蔵しておき、ガス需要が高まる冬に再度取り出して使えるようにしています。また災害時の緊急用としても使えるようにストックしているのです」

天然の地下の層にガスが再び貯められる、というのは驚きだ。いわば天然のガスタンク。欧米では600カ所以上で使われている、安定したガスの貯蔵技術なのだという。

 

綺麗なだけじゃない!
夜間照明は安全への意識から

冒頭で、越路原プラントの夜景としての魅力についてご紹介した。実は、越路では、6月のホタル観賞の時期に合わせ、年に一度「光の祭典」という越路の風景、とりわけ夜景を楽しむツアーイベントが行われており、越路原プラントは例年、そのツアーの立ち寄り所の一つとなっている。自然の光と闇の濃淡の美しさ、照明に照らされた人工物の存在感、加えて越路の風土、歴史を知ることができるイベントは、毎年、受付終了日を待たず満員となるほど、人気が高い。

2018年「光の祭典」での越路原の絶景 写真:越路なび(光の祭典事務局)

2018年「光の祭典」での不動沢橋 写真:越路なび(光の祭典事務局)

2012年「光の祭典」での国際石油開発帝石 越路原プラントの写真 写真:越路なび(光の祭典事務局)

南長岡ガス田で働く従業員数は100名超。越路原プラントは三交替制で、24時間365日稼働している。夜間についているライトは、夜間の見守りなど保安上必要なものだ。そうした安全や実用のための照明に特別な思いを感じるのは、造形的な魅力だけでなく、日本の生活や経済の拠点を支える人々の仕事への誇りを、重ねて見てしまうからかもしれない。

鉱場内の安全への思いは強い。現場にはどこの場所にも必ず掲示されているボードがある。

「今日も笑顔で家に帰るために」と記された安全7 原則。

「油やガスを扱うのですから、引火したら大変です。例えばガス検知器を常に携帯してもらう、作業内容によっては、防災シートを必ず貼るなど、安全を最優先させます」( 長谷川さん)

こうした地道な安全への指導と対策が、あの夜景の裏にはあるのだ。

安全のための7原則。

鉱場内ではガス検知器を携帯。

 

限りある資源。未来への展望を聞く

最後に、一番気になっていたことを聞いてみた。この南長岡ガス田は、あと何年くらいもつのだろうか。

「供給戦略上、明確にはお答えできないが、限りある資源ですから大事に使わないといけないですね。生活に必要なエネルギーの安定提供を継続するため、海外からL N G ( 液化天然ガス)を輸入して南長岡のガスと混ぜ合わせて使うようにしているんです」( 長谷川さん)

「限りある資源を大切に」とはよく聞くコピーだが、あらためて知ると、今稼働しているガス田があることのなんと貴重なことか。今回の長谷川さんの話のなかには「有効に、効率よく使うために」という言葉がよく聞かれたが、現場で働く人たちにとって、貴重な資源を無駄なく、環境を考えながら使うことは重要な命題なのだ。

取材の終わりに、プラント内を車中から見学させてもらった。越路のあちこちの井戸、そこからつながるパイプがこのプラントに集まって、ガス、油が精製され、また電気が作られていき、ここからさらに無数のパイプを通して各家庭や工場にガスが送られていき、日々の食事作り、温かい風呂、冬場の暖房の燃料として、私たちの生活につながっていくのだ。

私たちが使っているエネルギーはどこからくるのか。身近なガス田の仕組みや歴史を知って、生活に不可欠なエネルギーについて考えるきっかけにしてみてほしい。

写真提供・国際石油開発帝石 (メイン写真の提供も国際石油開発帝石)

 

Text & Photos : Chiharu Kawauchi

国際石油開発帝石 国内E&P事業本部 東日本鉱業所 長岡鉱場
[所在地]新潟県長岡市来迎寺字原2943
[問い合わせ]0258-41-3583
[HP] https://www.inpex.co.jp/index.html

 

光の祭典写真協力:株式会社コバックス 越路なび(光の祭典事務局)
このエントリーをはてなブックマークに追加
ページトップへ