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越後丘陵公園に咲く2400株のばら。“育てる人”が語る、生きることの哲学とは・後編

子育て暮らす遊ぶ長岡
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2018年 10月 20日 | な!ナガオカ スタッフ

新潟県長岡市にある国営越後丘陵公園で、およそ2400株ものばらを美しく咲かせているガーデナーの石原久美子さん。【前編】では「香りのばら園」の見どころやその歴史を詳しく教えていただきました。【後編】では、雪国ならではのガーデナーの仕事内容、そして3児の母でもある石原さんがチーフガーデナーになるまでの歩みをお聞きします。ばら栽培の極意から、子育てとの意外な共通点まで、「育てる人」ならではの金言がたくさん飛び出しました。ガーデニング好きにも、好きなことを仕事にしたいと考えている人にも、子育て中のパパママにも、ぜひ読んで欲しい後編です。

(撮影は6月上旬「香りのばらまつり」のときのものです)

 

一年の始まりは雪掘りから。
ガーデナーの仕事とは?

700種以上を擁する広大なばら園を管理するというのは、どれほど大変なお仕事なのでしょうか。石原さんのお仕事について詳しくお聞きするために案内いただいたのは、ばら園の一画にあるかわいらしい建物。ボランティアスタッフたちと使う「作業小屋」だそうです。

丘陵公園屈指の写真映えエリアでもある作業小屋。外国の庭の写真集に出てきそうな雰囲気。

丘陵公園のガーデナーの一年のスタートは「雪掘りからです」と笑う石原さん。いきなりの力仕事です。まだ雪が残っている2~3月につるばらの株元の雪を掘り、つるを誘引して扇の形を作ります。雪囲いを業者さんに外してもらったあとは剪定。3~4月は草花エリアの植え込み、草取り、切り戻し……と、ガーデンの手入れで過ぎていきます。

「5月末には春のばらまつりですから、その準備で雪解けからは休みなしですね。ばらまつりが始まると、あいまに草花の植え込みをしつつ、毎日花がら摘み。花が一番きれいに見えるように、見ごろをすぎた花をこまめに摘んでいきます」

ばらまつり開催中は、一日中花がら摘み。開いて「しべ」が出てきた花は、散る前に摘み取る。「枯れていくのもばらの一生なんですけれど、写真を撮るのが好きな方もいるので。このこまめな手入れが、きれいに見せる秘訣です」

ばらまつりが終わると、つるばらの弱剪定。7~8月は秋のばらまつりに向け、そのタイミングで一斉に花を咲かせるための剪定計画をたてます。

「早咲き、中咲き、遅咲きと、剪定してから咲くまでの期間はばらによってさまざま。それをうまく10月の一カ月間にまとめて咲かせたいので、株に合わせて剪定時期を変えています。8月後半から剪定は始まりますが、暑い時期なので、朝5時からスタートです」

「剪定は気候にも合わせないといけません。だから今年は暑いぞ、というときには、遅めに切らないと早く咲いてしまうんです」この夏は猛暑だったため、剪定時期の見極めも大変だったはず。

秋のばらまつりが終わると、ばらを休ませるための剪定をし、さらに11月から冬囲いに向けて剪定します。時にはみぞれの中で作業する年もあるとか。そして12月中旬、冬囲いが終わるとガーデンの仕事は次の雪解け直前まで一段落となります。

年に2回のばらまつりは、気候のよい、さわやかな季節に開催されますが、その前後、暑さ寒さの厳しい日にもこまめな手入れがされているからこそ、ばらは美しく咲くのですね。「春はばらが咲かせる、秋は人が咲かせるって言うんですよ。春は何もしなくても咲くんですが、秋は人が手をいれてきれいな花を咲かせるんです」と石原さん。秋のばらはとりわけ、心して見たいと思います。

ボランティアスタッフに登録しているのは現在60名ほど。中心になるメンバーも25名ほどおり、石原さんはその方たちと日々ばらの世話をしている。

 

北海道の大自然に憧れた少女時代

石原さんは東京生まれで、現在48歳。27歳から22歳まで三人の息子をもつお母さんでもあります。そんな石原さんが長岡でガーデナーとなったのはどういういきさつなのでしょう。

「東京の高校生だったころ、北海道が大好きで、特に牛を育てる酪農の仕事にずっと憧れていました。それで卒業後は北海道に行こうと決心して、実際に移り住み、牧場や飲食店で働きながら、夢だった北海道生活を満喫していました。そうしたなかで出会った獣医さんと結婚したんです」

憧れの地・北海道に飛び込み、人生の伴侶を得た石原さん。3人の男の子の母となり、家の小さな庭で羊を飼ったり、ハーブなどの植物を育てたりと、北海道の地に根を下ろす生活をしていました。「でも、ばらがどうしても育てられなかったんですよ。私には、ばらは育てられない、難しい、とあきらめていたんです」

結婚して7年目、石原さん一家に思いがけない出来事が起きます。

「夫が大病にかかりまして、療養のために故郷に帰ることになりました。その夫の故郷というのが長岡だったんです。こちらに引っ越して3カ月で夫は亡くなりました。そのとき長男は小学校にあがったばかりでしたし、三男はまだ2歳になる前。大きな引っ越しをしたばかりでしたし、いずれは北海道に帰るとしても、子どもたちがある程度大きくなるまで、もう少し長岡にいようと思ったんです」

それが1998年のことでした。そして2001年の冬、丘陵公園がばら園を作るためのボランティアを募集していることを石原さんは知ります。思い出すのは、北海道にいたころ、ばらが育てられなかったこと。教えてもらえるならラッキーと思った石原さんは第一回のボランティアスタッフとなりました。

「もともと植物を育てるのは嫌いじゃないし、北海道での酪農経験もありましたから、外仕事も、長岡の雪や寒さも、苦にならなかったんです。一日ばら園にいて、ばらを育てられるのがすごく楽しくて、ハマっちゃったんですよね」

5年半のボランティアを経て、2007年には石原さんは請われてばら園の職員になります。「ボランティア時代、ほかの仕事に就いてみたら、ばら園に行く時間が少なくなって寂しくて寂しくて……。それくらいなら正式にスタッフになろうと思ったんです」と当時を語ります。さらに2年後にはチーフを引き継ぎ、それから10年の月日がたちました。好きなことを仕事にした母の姿に、息子さんたちも影響を受けているようです。「息子も好きなことを仕事にしたい、と言ってるんですよね」と苦笑しながら浮かべる表情は、魅力的なお母さんの顔でした。

 

「育てる人」が大事にしていること

石原さんに、ばら育てで大切にしていることを聞いてみました。

「ただ育てるだけでなく、健康な体を作ってあげたいんです。病気になることもあるし、風で折れることもある。でも元気で大きな株にしておけば、一本や二本折れても気にならない。元気なばらを育てていると、花もしっかりしているし、雨風にあたっても花が傷みにくいし、葉っぱがしっかりしていると病気にもかかりにくいんです」

そのポリシーは、まるで子育ての金言のようにも聞こえます。

「人に通じるところがありますね、ばらは。花をたくさん咲かせたあとというのは、体力を使って弱ったときと同じですから、人だったらまず寝ますよね。それと同じで、ばらも休ませてあげることが一番大事。具体的には、そのあと出てくるつぼみを全部取ってあげればいいんです。どんなにつぼみがついていようと、もったいない、と思わない、逆にそのままじゃかわいそう、と私は思うんです。また、本当に体が弱っているときって、『食べろ』と言われても食べられないですよね。ばらも同じで、疲れているときに肥料はやっちゃいけないんです。ばらの体全体をいつもトータルで考えています。そう考えると、けっこう、子どもを育てているのに近いかな……。子育てがすごく影響しているもしれませんね」

周りの人に「石原さんは育てる人だね」と言われることがある、とご本人がおっしゃるように、石原さんのばら育てには、深い愛情がありました。

ばらまつりの時期、石原さんやスタッフ、ボランティアの皆さんが丹精こめたばら園に、ぜひ訪れてみてください。そして風が香るばら園で深呼吸をし、本物の香りを感じてみてください。香りの記憶が、ばらの季節のたびに、あなたを幸せにしてくれるかもしれません。

 

Text: Chiharu Kawauchi
Photos: Hirokuni Iketo

 

国営越後丘陵公園
[所在地] 新潟県長岡市宮本東方町字三ツ又1950番1(越後公園管理センター)
※公園入口が「ウェルカムゲート」と「里山口」の2つあります。「香りのばら園」へは、「ウェルカムゲート」からお越しください。カーナビではアクアーレ長岡(電話:0258-47-5656)で検索することをおすすめします。
[入園料]大人450円、中学生以下無料、65歳以上210円
[駐車料]普通車310円、大型1030円、二輪車100円
[開園時間] 4・9・10月9:30-17:00/5~8月9:30-18:00/11~3月9:30-16:30
[HP] http://echigo-park.jp/
[イベント]  毎年、春(5月下旬〜6月中旬頃)に『香りのばらまつり』が、秋(10月頃)に『香りのばらまつり・秋』が開催されます。バラのほか、雪割草、チューリップ、コスモスなど四季折々の花のイベントもあります。
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