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驚きの“動く整体サロン”を経営!常識にとらわれず柔軟に生きる、ある夫婦の挑戦

なんだ、コレは!長岡
なんだ、コレは!長岡
2020年 2月 5日 | な!ナガオカ スタッフ

欧米で人気急上昇中の「タイニーハウス」。直訳すると“小さな家”を意味する、その名の通りミニマルな造りの住居だ。多くはタイヤを装備しており、コンパクトなサイズ感だからこそ機動性は抜群。“シンプルで豊かな暮らし”を目指す人々の新しい住まいの選択肢として注目を集めている。

まだ日本ではめずらしいタイニーハウスだが、これを整体サロンとしてオープンしたのが五十嵐貴博さん、利恵子さん夫婦だ。時代の一歩先を行く、小さな“動く整体サロン”。そこは夫婦が目指す“自由でフレキシブルな生き方”の拠点であり、二人の夢が詰まった場所だった。

 

天然木素材のコンパクトな箱…?
一風変わった建物を訪問

取材をするために訪れたのは、新潟県長岡市中心部の古正寺エリアにある三角屋根が特徴的な建物。左手にはパティスリー、右手には自家製ハムやソーセージが人気のレストランが併設されている。その中央の開けた空間にある小さな建物が、五十嵐さん夫婦が運営するコリ改善整体専門サロン「Pocket Cabin(以下、ポケットキャビン)」だ。

看板が目印。建物の裏手は飲食スペースとなっている。

ミニマルな箱型の建物には、車でけん引して移動できるようにタイヤが付いている。その外観は、一見すると整体サロンとは到底思えない。

広さは約13㎡。大分県の「タイニーハウスジャパン」による施工。

だが、室内へ入ってみると、想像以上に広々とした空間が!大分県産の杉をふんだんに使用したオーガニック建築で、木の香りが心地良い。床は“天然の暖房材”ともいわれる桐材で、やわらかく温かみが伝わってくる。

施術でも使用するハンモックがリラックス空間を演出。

キッチンも備え付けられ、お茶を湧かしたり簡単な料理をしたりすることも可能。いくつもある小さな窓は網戸付きで、施術中はプライベート空間を守るためにカーテンで覆われているが、開放すると明るい光が差し込んでくる。

薪を入れて暖をとれる白い暖炉。なんと本格的なピザも焼ける。

室内のいたるところにセンスの良い雑貨が並ぶ。

けん引することで店舗ごとどこでも出張OK。プライベートの家族旅行では徳島まで行ってしまったそう。(画像提供:ポケットキャビン)

そしてなんといっても、この整体サロンの最大の特徴といえば「動く」ことだ。車でけん引すれば、海でも山でも好きな場所へ移動することができる。普通「出張サロン」といえば、整体師がその地に赴くものだが、ポケットキャビンの場合は、サロンのリラクゼーション空間まるごとの出張が可能。全国でもめずらしい“移動型整体サロン”として注目が集まっている。

 

多店舗経営から心機一転、
“動く整体サロン”をオープン

そんなユニークな整体サロンを経営する五十嵐さん夫婦。紆余曲折を経ながら、自分たちが求める生き方を模索した結果が、“動く整体サロン”だったという。二人がどんな経緯で現在の形に至ったのか、お話を伺った。

「僕は高校卒業後から、夢を見つけたくてアルバイトを転々としていたんです。何か手に職をつけなければとの思いから、23歳の頃に取得したのが整体師の資格。4年間働いた後に独立開業して、3店舗にまで増やしました」(貴博さん)

そんな中、知人の紹介で出会ったのが現在の妻である利恵子さんだ。付き合った当初は幼稚園教諭として働いていた彼女だが、貴博さんの勧めもあって整体師へ転向。持ち前の探求心から知識をどんどん吸収すると共に腕を上げた。「すっかりこの仕事にハマってしまったんですよね」と、利恵子さんは当時を振り返る。

順調にキャリアアップしているように見えた二人だが、貴博さんの胸中は複雑だった。事業拡大によるマンネリ化は否めなかったし、将来的にスタッフの人材確保ができるか心配もあった。マネージメントに専念するよりも、初心に戻って再度チャレンジしてみたい……そんな思いが膨れ上がり、とうとう店を手放す決意をしたという。

「店を人に譲るって聞いたとき、何度も反対しましたよ!でも、二人で話し合いを重ねる中で、主人に任せてみようかなと思うようになったんです」(利恵子さん)

こうして新たな出発を決意した二人。せっかくチャレンジするのだから、「これまでにない独自の整体サロン」を作りたいという思いは共通していた。目指すは、固定された店舗からの脱却。お客さんを待つだけではなく、自らお客さんのもとへ行けないだろうか――例えば「キッチンカーのようにフレキシブルに移動できたら面白いかもしれない」とアイディアが浮かんだ。

そこで目を付けたのは、箱型のタイニーハウス。「キャンピングトレーラー」とも呼ばれるその建物はコンパクトで自由度が高く、車でけん引することで移動もできる。お客さんに最高のリラクゼーションを提供したいとこだわり、内装にはオーガニック素材をふんだんに使用することで、木の香りに包まれた唯一無二の空間を作り上げた。

この起業の準備中に利恵子さんは出産し、初めての子育てと両立しながら、二人は目まぐるしい日々を過ごしたそう。そして2019年1月、全国でもめずらしい移動型整体サロン「ポケットキャビン」が誕生した。

“動く整体サロン”は数多くのメディアに注目され、テレビ出演や書籍掲載でたちまちその存在が知れ渡った。それでも、常連客の多い店舗を手放したゼロからのスタートは、それなりに苦労したという。

「道端でチラシを手配りしたり、SNSで地道に発信したりと、できる限りの努力をしていましたからね。初めのうちは整体サロン以外にも、フード販売やレンタルスペース貸出もしていたんですよ(現在は休業中)」(利恵子さん)

シティホールプラザ「アオーレ長岡」で行われたフードイベントではキッチンカーとして出店。

ふんわりしたパンに、おかずやスイーツのフィリングを挟んだオリジナルコッペパンを販売した。

利用者の自宅敷地内やお気に入りの場所(海や山)など、どこへでも出張可能!

新潟市の万代島で開催された「FuKuSHi Fes Niigata2019」に整体サロンとして出店。

整体サロンは常設店舗での施術がメインだが、出張依頼も度々舞い込んでいる。また、リラクゼーションを大切な人への「体験ギフト」として活用するのもオススメとのこと。プレゼントに使える招待チケットの販売もしており、ポケットキャビンは多様な形で利用されている。

「最近は、企業の福利厚生としての出張リラクゼーションにも力を入れています。つい先日は三条市の包丁工房へ伺い、職人さんたちを施術させていただいたんですよ。起業してまだ1年ですが多くの出会いがあり、軌道にのってきたかなと手応えを感じています」(貴博さん)

 

根本から不調を改善する
“さするだけ整体”が評判

「木の香りが心地良くて癒される」「気持ち良い空間で帰りたくなくなる」と今や予約のとれない人気店に成長したポケットキャビンだが、その魅力は建物だけにとどまらない。肝心要である施術が「とにかくすごい」と評判なのだ。

「眠ってしまいそうなほど気持ち良い」と好評の施術(画像提供:ポケットキャビン)。

「ポケットキャビンが行うのは“さするだけ整体”。体を押さない、もまない、鳴らさない、さする程度のごく軽い力で施術するという、従来とは真逆の考え方です。この施術に切り替えたのはつい半年ほど前なのですが、お客様が劇的に変化する様子を見て、私自身も感激しています」(利恵子さん)

実は、従来の押したりもんだりする施術方法は、背中や腰の痛みを改善するのは難しく、効果は持続しにくいのだとか。あくまでリラクゼーションとして気持ち良さを楽しむには十分だが、根本的に不調を改善したいと通うお客さんが増えたことで、利恵子さんは新たな“さするだけ整体”の技術を学び「コリの原因改善コース」を新設した。

施術のビフォア&アフター。腰や足の痛みがとれ、視界までクリアになったと喜びの感想が届いた。

たった10分間さするだけの施術で、柔軟さが確実にアップ!

「姿勢が良くなり、体が軽くなった」「整骨院に行っても改善しなかった痛みが嘘のようにとれた」などネット上のクチコミでは感動の声があふれている。即効性があるうえに施術時間は短縮化し、さらに施術する利恵子さん自身も負担が少ないと、良いこと尽くしなのだとか。

まるで“魔法の手”のように体の悩みを解決する利恵子さん。ますます整体のおもしろさにハマり、「この技術をたくさんの人たちに伝えていきたい」と声を弾ませる。

 

趣味を極めて生まれた
貴博さんの意外な仕事とは?

一方、整体師歴19年のキャリアを誇る貴博さんだが、なんと現在は全くの異業種である「モルタル造形」をメインの仕事としているのだという。

燕市吉田にあるガレージモデルハウスでモルタル造形を施工中。テーマは「男の秘密基地」。

こちらがその仕事現場。モルタル造形とは、モルタルと呼ばれる砂とセメントと水を使った建築材料を使用し、自然石やレンガ、大理石などをリアルに表現する造形法のこと。テーマパークなどの非現実的な造形物の演出に欠かせない工法だ。

しかし、確かな整体師の腕がありながら、なぜ別の仕事をしているのだろうか?

「実はモルタル造形は数年前に独学でチャレンジしたんです。『ディズニーランドの世界観ってどんな風に造られているのだろう』という素朴な疑問から、ネット検索して、材料を揃えてやってみたら意外とうまくできちゃった(笑)。初めは趣味レベルでしたが、だんだん本格的になっていって、今は縁あって内外装の仕事を受注するまでになっています」(貴博さん)

貴博さんの活動はそれだけにとどまらない。燕市の国上山に子供と大人の秘密基地「FREE ART FIERD」をオープンし、県内初のアースバッグハウス(土を主体とした素材で作る、曲線による建造物)を制作。セルフビルドという試みでワクワクを共有したいという想いは伝播し、共に作り上げる仲間が続々と集まっている。

FREE ART FIELD。アースバッグハウスや廃材だけで作った小屋など、仲間と共に作り上げたセルフビルドの建物が並ぶ。

メンバーは県内外50名程。子供も大人も関係なく、豊かな体験を共有できる場となっている。

現在、ポケットキャビンで施術を行っているのは利恵子さんが中心だが、貴博さんも整体師を完全に辞めたわけではない。忙しい時にはサポートするなど、柔軟に整体業を行っている。

「好奇心のままに動いて“好き”を極めていくと、仕事という形になっていくものなんですよね。過去のキャリアに縛られる必要は全くないと思います。それは生き方も同じこと。趣味が高じて仕事になるように、『働くこと、遊ぶこと、暮らすこと』がシームレスにつながる――それを僕らは『フォルダ分けしないライフスタイル』と称して実験している最中なんです」(貴博さん)

 

時代の変化にフレキシブルに
夫婦が目指す“これからの生き方”

貴博さんの型破りな生き方は、妻である利恵子さんの人生を大きく変化させた。保育士から一変、自ら舵取りする整体師へ。元は安定志向もあっただろうが、キラキラと瞳を輝かせて仕事に臨む姿からは、変化を楽しんでいるように感じられる。

目指す夫婦のあり方について尋ねると、「お互いを否定せず、意見を言い合える関係でいたい」とのこと。自由な生き方や考え方を尊重し、苦しい時には支えあうパートナーシップが確かにそこにはあるようだ。

「時代が移り変わるスピードに合わせて、自分たちの暮らし方や働き方もシフトしていく必要があると思います。人生を謳歌しながら、柔軟に日々を積み重ねていきたいです」と貴博さん。今年3歳になるという娘さんも、きっと両親の背中を見て“人生をトコトン楽しむ”術を学んでいくに違いない。

今後、ポケットキャビンはどのような変化を遂げていくのだろうか。遊び心と柔軟性にあふれた五十嵐さん夫妻が作り上げた店舗だからこそ、新しいことにチャレンジし続けられるだろう。自由な発想をもつ彼らの活動に、今後も注目だ。

 

Text and Photos: 渡辺まりこ

 

●Information
コリ改善整体専門サロン Pocket Cabin(ポケットキャビン)
[所在地]新潟県長岡市古正寺2-50
[TEL]080-7759-0893
[HP]https://pocket-cabin.com/
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