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営業マンが手作りする“ある意味、幻の酒”。お福酒造のヨーグルトリキュール

長岡
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2020年 4月 23日 | な!ナガオカ スタッフ

国内有数の酒どころ、新潟県長岡市。そこに位置する16酒蔵のうちのひとつに、お福酒造という蔵があります。風情ある大きな茅葺屋根の建物が特徴的なこちらの酒蔵は、なんと乳酸を使って酒を発酵させる「速醸もと(そくじょうもと)」という醸造手法発祥の蔵。創業者の岸五郎が、速醸もとの開発者でもあったのです。

「飲むほどに、お客様にも、蔵人にも福が招かれるように」と名付けられた代表商品『お福正宗』など旨口の酒をそろえる一方で、ここ数年で酒が得意でない人にも人気なのが『越後の雪どけ とろ甘ヨーグルトリキュール』です。

日本酒をベースに『良寛牛乳』の新鮮な低脂肪ヨーグルトをたっぷり使用している。720ml1,500円(税込)

ほど良い甘さで飲みやすいと好評のこのリキュール、実は作っているのは杜氏ではなく、酒蔵の営業担当である坂詰陽一さん。いったいなぜこんなことを? 人気商品の製造を一人で担う坂詰さんにお話を伺いました。

乳酸を使った新たな試みとして

始まったリキュール作り

もともとは現専務の岸信彦さんと坂詰さんの前任の営業担当者が開発していたヨーグルトリキュール。酒蔵がリキュールの製造免許を取ったことをきっかけに、速醸もと発祥の酒蔵として「乳酸を使った別の商品を作れないか」ということで商品開発がはじまりました。

お福酒造の創業者で速醸もとの産みの親である岸五郎氏。酒母製造に乳酸を加えることを応用した速醸もとは、醸造界の大発明といわれている。

明治27年、岸五郎氏が発刊した酒造りについての専門書「醸海拾玉(じょうかいしゅうぎょく)」。杜氏の勘のみが頼りだった酒造りを化学的見地から説き、酒造りの教本とされる。

「地元の人になじみのある素材を使いたい」という思いから、白羽の矢が立ったのが新潟県の人なら馴染み深いはず、出雲崎町の『良寛牛乳』。コク深い味わいの牛乳は長岡の小学校給食にも使われており、その特徴がヨーグルトにも生かされていることからこちらの製品を使用しているのだそうです。

素材はスムーズに決まったものの、最も苦労したのが材料の配分。酒の量が多すぎると、味が強くなり飲みやすさが減ってしまうため、辛すぎず甘すぎずの絶妙な配合にたどり着くまでに時間がかかったそうです。

また日持ちさせるためには熱処理が必要ですが、通常の酒と同じように瓶に入れた状態で火入れするとダマになってしまうので、通常の日本酒よりも“混ぜ続けて加熱する”というひと手間がかかってしまいます。ステンレス製の大きなバケツ型容器でヨーグルトのみを湯煎し、均一の温度にするため2時間ほどかき混ぜ続けなければなりません。多いときは複数の容器を混ぜることもあります。

通常の日本酒は殺菌する際、写真のように瓶に入った状態で加熱されるが、ヨーグルトリキュールでは瓶詰め前に加熱しなければならない。

“タメ”と呼ばれるヨーグルトを湯煎するバケツ型容器。1回で約20ℓ、約70本分のヨーグルトをかき混ぜる。

ここで登場するのが、前述の営業担当、坂詰さん。

「この作業、やります!って言ったらずっとやるハメになってしまって……周りにうまく乗せられて、いまも私がやってます」と坂詰さんは笑います。

といっても、もちろんただかき混ぜていればいいという訳ではありません。気温によって味が変わるヨーグルト酒は、一定の味を保つために味が分かる人の細かな調整と混ぜ続ける根気が必要で、今やお福酒造で坂詰さんにしか作れない商品なのです。

「賞味期限3か月しかないので、イベントなどの販売機会に合わせてその都度手作りしています。1回に作れる量は1回100~200本。体力が続く限り頑張ります!」

つまり、坂詰さんが何かの都合で動けなかったら、その時は作られないわけですね……。これはこれで“幻の酒”感があっていいのかもしれません。思わぬきっかけで自ら酒を造ることになった坂詰さんですが、リキュールのまったりとしたやさしい甘さは、根気のいる作業を進んで引き受けるその朗らかな人柄を表しているかのようです。

 

コラボで海外進出も!

ヨーグルトリキュールのこれから

そんなヨーグルトリキュールは、昨年ついに海外進出を果たしました。

2019年2月、新潟県への観光客が多い台湾で長岡の日本酒を広めるため、現地のクリエイターと協力したイベント「Nagaoka Sake Discovery in 台湾」が開催され、お福酒造のブースでは他の商品と共にヨーグルトリキュールも試飲でふるまわれました。

辛口の日本酒に慣れていない台湾の人々からも「飲みやすい」と好評で、さらに注目されたのが、企画の一環である台湾の有名デザイナーとヨーグルトリキュールのコラボレーションラベル。

こちらのラベルデザインを担当したデザイナー誠志(マコト)さんからは、次のようなコメントがありました。

「長岡に来て、実際に酒蔵を訪問した体験をデザインに取り入れたいと思いました。雪が降っていたり、スキーをしたことなど、自分の体験をデザインに取り入れています。

ヨーグルトのお酒は白い沈殿物によって2層(グラデーション)になっていて、初めて見た時には『これは何だ?」と思いましたが、それが逆におもしろく他にはないものだと思えてきて、これを生かすデザインとしてラベルを透明にしました。沈殿物が瓶を揺らすとゆらゆら揺らぎ、その揺らぎが雪のイメージやスキーをするイメージに重なる。自分が体験した長岡の風景をこのデザインで届けたいです。』

関連記事:長岡の酒が台湾上陸。現地の反応は?「Nagaoka Sake Discovery in 台湾」より引用

海外進出も果たし、次なる一手は?と坂詰さんに問うと、

「第2弾、第3弾として、地元のフルーツを使っていちご味やブルーベリー味にも挑戦したいんですけどね。なかなか手が回らず……。今は地元でフルーツピューレを作ってくれる会社を募集中です!」とこれからの構想を教えてくれました。

ちなみに坂詰さんのおすすめの飲み方は、ヨーグルトリキュールの梅酒割り。

「梅の酸味とヨーグルトの酸味が良く合うので、カクテルのように飲みやすくデザート感覚で楽しめますよ」とのこと。またリキュールを凍らせてシャーベット状にしたものに、上から梅酒をかけてもおいしいそうです。これから暖かくなってくる季節にピッタリですね。

今後の展開にも期待したいヨーグルトリキュール。基本的にはイベント向けの製造ですが、お福酒造のショップやJR長岡駅ビルの「ぽんしゅ館」などでも販売しています。甘いものが好きな方や、日本酒もいいけど一風変わったカクテルも好きという方への長岡土産としていかがですか?

Text: Akane Imoto

 

●Information
お福酒造
[住所]長岡市横枕町606
[電話]0258-22-0066
[URL]https://www.ofuku-shuzo.jp/
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