【天然記念メシ】客に完食させないと豪語する濱之家の激辛ラーメン「メキシコ」

2016.9.15

「長岡でしか食べられない」「ほかの人が思いつかないであろう組み合わせ」「その店がなくなったらもう二度と食べられない」――。

長岡に存在する、そんなグルメをご紹介する連載企画「天然記念メシ」。
今回ご紹介するのは、長岡市内に2店舗を展開するラーメン店「濱之家」だ。

オーナーが横浜市の老舗ラーメン店「六角家」で修行した経験を持つ、いわゆる「横浜家系(いえけい)ラーメン」の流れをくむ店である濱之家。家系ラーメンといえば、昆布などの特製ダシが効いた、濃厚なとんこつ醤油ラーメンで有名だが、濱之家にも、「玄人向け」を掲げる看板メニューが存在する。
それが「メキシコ」だ。

およそラーメン店のメニューであるとは想像しにくい名前だが、店主のこだわりが詰まった、まさに「この店がなくなったら二度と食べられない」メニューらしい。

いったいどのようなラーメンなのだろうか。

 

すっきりとした店内で
明らかな異彩を放つ「メキシコ」

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暖簾をくぐるとまず目に入るのは、明るくおしゃれな雰囲気のカウンター席。スタッフの皆さんが元気な声で出迎えてくれる。

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「濱之家」は食券を購入し、注文するシステム。入口脇にある券売機にて購入する。

「ラーメン」、「ラーメン大盛り」など、メニューはいたって普通の表記である。しかし、下の方を見てみると……。

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あった! 「ラーメン からネギ 大盛り」などが並ぶ中、いきなり「メキシコ」。この名前が目に飛び込んでくるのは実にシュールだ。

食券を買って席に着くと同時に注文をする。「メキシコください!」

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席に着き「メキシコ」を待つ間、ふと上を見上げると、このような案内文が目に入ってきた。

 

6がつ1ち発売

健康のためかファッションか
気づけば世間は薄味傾向
けれどガツンと腹に響く刺激味が恋しいのも事実。
咆哮の後の爽快さと達成感は、辛もんの醍醐味だ。
世に蔓延するぼんやり志向に
濱之家が投石!!

その名は メキシコ

 

熱い言葉がこれでもかと散りばめられている。よく見てみると、右端には一際気になる青い文字が。

「注意 身体補償は致しません」

どれほど激辛なラーメンなのだろうか。期待と同時に不安が募る。

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濱之家 古正寺店店長・小林兼貴(かずき)さん。

この過激な案内文を書いているのは、店長の小林さん。濱之家古正寺店の店舗運営を取り仕切るとともに、新メニューの開発も積極的に行っており、「メキシコ」を生み出したのも小林さんだ。ここからは実際に「メキシコ」をいただきつつ、その魅力に迫ってみたい。

 

いざ、「メキシコ」に挑戦!!

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「メキシコ」¥900(税込・食券購入制)※つけ麺もあります。

「お待たせしました! メキシコです!」

小林店長の爽やかな声とともに運ばれてきた「メキシコ」。運ばれてきた時点で、明らかに赤いスープの色に自然と注目してしまう。

小林店長が「ご無理なさらないように」というコメントとともに、テーブルの水を補充してくれた。

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まずはラーメンの要とも言えるスープからご紹介しよう。ベースとなるのは、ダシの効いた醤油系のスープ。濱之家が長年培ってきたラーメンのスープをアレンジしたものだ。

そこにメキシコ原産のハバネロをはじめとする数種類のスパイスを加え、辛みを出している。そう、「メキシコ」の名の由来はここから来ているのだ。

「ストレートに『激辛ハバネロラーメン』などと名付けてしまうと、インパクトに欠けるかなと思って。それで思い切って『メキシコ』という名前にしました」と、ネーミングの由来を語る小林さん。

スープの表面には、赤色の油が層を成してスープ全体をまるでコーティングするかのように覆っており、赤い光を放っている。

 

ひと口目からいきなり襲ってくる!
痛いまでの辛さ

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麺は、一般的な麺と比べると少し黄色みがかかっている。
卵を練り込んだ「卵麺」と呼ばれる特製の麺で、濱之家のメニューの多くで使われているものだ。マイルドな口当たりが口にやさしく、スープによく絡まる。

まず、ひと口目を口に運んだその直後に、まるで口の中の神経をダイレクトに刺激されたかのようなヒリヒリ感が襲ってくる。「辛い」というよりも「痛い」という感覚が妥当かもしれない。

しかし、そうは言いつつも下味の濃厚醤油スープもしっかり効いていて、どんどん食べ進めたくもなる。

 

逃げ場のない辛さとのまさに「戦い」

普通ラーメンというと、ズズッと一気に食べてしまうもの。しかし「メキシコ」ではそれができない。一気に食べると、むせてしまうのだ。あまりの辛さに何度も箸を止め、水で口の中を潤す。

食べ進めて数分、ようやく半分ほどを食べたところで、口の中の辛さが限界に達する。ペースが上がらない……。

これはたまらないということで、辛さが和らぐ食べ方、あるいは攻略法がないかを小林店長に聞いてみると「ないですね。気合いで食べてください(笑)」のひと言。

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具材にもラー油、香辛料などが加えてあり、逃げ場がどこにもない。

辛さを和らげようとネギやほうれん草を食べてみるが、余計に辛くなってむせてしまった。よく見てみると、ネギにはラー油がかけられ、他の具材にも香辛料がまぶしてある。極めつけは、メンマ。なんと、下ごしらえの段階で香辛料と和え、辛味を浸透させているのだという。

「お客さんに『完食させない』くらいの意気込みで作っています」と小林店長は話す。細部までこだわり、徹底的に辛さを追求しているのだ。

 

完食者はなんと数名!

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麺と具材を食べきったところで、ギブアップ。どうしてもスープが残ってしまうが、麺無しで後からスープだけ飲もうとしても非常に難しい。完食できる人など、本当にいるのだろうかと思ってしまう。

 

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悲鳴をあげる挑戦者を不敵な笑みで見守る小林店長。

小林店長に完食率を伺ったところ「スープまで完食した方となると、これまでに数人しかいなかったと思います。男性よりも女性が多いですね」とのこと。

さらに「学生さんなどの若い方がよく来て注文してくれます。食べる前は『余裕でしょ』なんて言っているのが、食べ終える頃になると無言に……なんてことが頻繁にあります(笑)。お客さんのそういう反応を見るのも楽しみですね」と続ける。

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店内各所に掲げられた熱すぎる案内文も必見。

カウンター席を見上げると、このような案内文が見える。小林店長をはじめとする研究員たちが「身を“粉”にして行った」実験結果が書かれていた。「即死」「凶暴」「生還」といった、およそ食べ物の紹介とは思えない不穏な単語が壮絶な商品開発を物語る。

小林店長をはじめとするスタッフの、まったく妥協しない辛さの追求により誕生した「メキシコ」。
辛いものには自信があるという方は、ぜひ一度、濱之家古正寺店に足を運び、激辛ハバネロ麺「メキシコ」に挑戦してみていただきたい。

 

辛いのは苦手だけど、
挑戦したい!という方は「ライト」を

ちなみに「メキシコ」には、「ライト」も存在する。こちらはその名のとおりハバネロ等の香辛料をおさえた食べやすいライト版。くせになる醤油スープの味はそのままに、辛いものが苦手な方でも十分に完食できるレベルとなっている。

 

「天然記念メシ」評価

味のインパクト ★★★★☆
ネーミングセンス ★★★★☆
店主の挑戦度 ★★★★★
長岡らしさ ★★☆☆☆

 

Text and Photos: Junpei Takeya

 

濱之家 古正寺店
[住所] 新潟県長岡市古正寺町30-10
[営業時間] 11:00~15:00、16:30~21:00
[定休日]月曜日
[電話番号] 0258-27-2573
[駐車場]あり(8台)
[備考]「メキシコ」「メキシコLight」は期間限定メニューとなります。期間についてはお店までお問い合わせください。また、「メキシコ」「メキシコLight」は古正寺店のみの提供となります。

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