イワナに自然薯、アケビにキノコ! 秘境めし屋ドライブイン刈谷田で大自然を食らう

2016.10.25

長岡駅から車で50分、あるいはバスで60分。

あぶらげで有名な栃尾方面に向かう途中に、「ドライブイン刈谷田」はある。

位置するのは、公式サイトに「途中人家が無くなり不安になると思いますが」と書いてあるほどの山奥。まさに、秘境の地といえる。

山の幸、川の幸が、名物とのことで、公式サイト1つ見ても、店主の自然への愛が溢れ出ている。きっとここには、都会ではもちろん、長岡市中心部でも食べられないほどの新鮮な料理が待ち受けているに違いない。そんな淡い期待を胸に、サイト上の限られた情報を頼りにして、取材に行ってきた。

 

行くまでも、まるでアドベンチャー!?

「不安になるほど」とは、一体どのぐらいの秘境なのだろう。冒険心をくすぐられつつも、山奥で遭難してしまったらどうしようと抱いていた懸念は、すぐに裏切られてしまった。なぜなら「道の駅ルート290とちお」を過ぎたあたりから、のぼりや看板が頻繁に見られるようになったからだ。

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道中あちこちに見られる、のぼり。

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とちおの道の駅にある看板。味のある、手書きの文字が「ドライブイン刈谷田」に対する期待をかきたてる。

結局「道の駅ルート290 とちお」から8分。たしかに、山奥をぐるぐる回っていったものの、サインのおかげで問題なくたどりつくことができた。意外に身近な、秘境である。

 

36年間、採れたて一筋

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お店の目の前に広がる雨上がりの風景。山奥なので、天気の影響を受けやすい。

店に着くと、迎えてくれたのは、店主の星野智行さん。この店の2代目だ。

今年で36年目を迎える「ドライブイン刈谷田」は、智行さんの父・星野幸男さんがつくったもの。今は、幸男さんのご両親と奥さん、次男である智行さんが切り盛りしている。

自然薯を見せてくれる、店主の星野智行さん。

自然薯を見せてくれる、店主の星野智行さん。

採れたてのマイタケ。

採れたてのマイタケ。

店に入るやいなや、さまざまな採れたての山の幸を片手に智行さんは、お店のこだわりを教えてくれた。

「徹底しているのは、毎日店のオープン前に、山や川に行き、新鮮なものを採ってきて、調理すること。自分たちの手で採ってきたものを届けたい。味の違いは言うまでもありません!」

智行さんの言葉に、父・幸男さんも続ける。

「季節季節の味を楽しんで欲しい。とれたてのものを、春1番に出したいという想いで、店を始めました。出したいのは、特別なもんというよりは郷土料理」

確かに、ここで出されるメニューの大半はシンプルなものばかり。調理方法に凝った料理というよりも、素材そのものが持つうまみをストレートに伝えるものが多い印象だ。

 

キノコのありかは、トップシークレット

彼らの食材に対するこだわりは並大抵ではない。

普段はオープン前にだいたい1時間ほどかけて山を散策しつつ食材をハントするが、休みの日はより時間をかけ、より遠くへ分け入っていく。1年に1度行くマイタケ採りに至っては、片道3時間もの時間をかけるという。

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キノコへの想いを熱く語る智行さん。

「最近は、山で会う人も減りましたね~。昔は自分の家用に、山菜を採っている地元の人もたくさんいたけれど。今、ここらへんで山菜やキノコを採っている人はほとんどいないはず」(智行さん)

となれば私たち取材班が食材を採りに山へ入っても、地元の人たちに迷惑はかけないはず。そこで智行さんの食材ハントに連れて行ってもらえないか頼んでみた。

「キノコ採りは、自分で探して覚えるもの。とっておきの採取スポットは誰にも教えず墓まで持っていく人もいますよ。特に、マイタケの場所は絶対に教えない人が多いですね。亡くなる前に、こっそり教えることもあるけれど。すごく信頼している人にね」

キノコ採りを、完全になめていた私たち。あえなく同行はやんわり断られてしまった。大変申し訳ありませんでした……。

とはいえ、智行さんたちが採ってきた食材を味わうことはできる。ここからは「ドライブイン刈谷田」イチオシの秘境めしを紹介しよう。

 

オススメ秘境めし①今年初モノ!キノコ汁

「これは、今年初ものだからねぇ。いっつもこの時期になると、キノコ汁ねぇかってやってくるお客さんもいるけれど、採れ高にもよるからねぇ」

そう話すのは、きのこ汁を持ってきてくださった、幸男さん。

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2016年秋初のきのこ汁。

このきのこ汁には採れたての生きのこが、なんと5、6種類も入っているという。他にもお豆腐や里芋、車麩、長ねぎなど具がたっぷり。きのこ1つ1つの種類によって、ここまで歯ごたえや香り、味が違うことをはじめて体感した。それらの違いを楽しむことに夢中で、思わず取材が止まってしまったほどだった。

 

オススメ秘境めし② 焼きたて川魚

次にいただいたのは、オススメの川魚。

名物である川魚は、近くの川で捕ったものを、お店の前のいけすに放しておき、オーダーが入ってからすくいあげる。そのため、鮮度は抜群。

これを、一気に串刺しにし、焼き上げるのだから、おいしくないはずがない。焼き上げるときは、短時間で火を入れることで、身がふっくらするそうだ。

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目の前のいけすから、魚をすくいあげる智行さん。

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アユ。

イワナ。

イワナ。

ニジマス。

ニジマス。

ヤマメ。

ヤマメ。

川魚4種類の食べ比べは、なんとも贅沢だった。取材班は、イワナが1番のお気に入り。ほくほくした身から、魚本来のうまみと甘みがあふれ出ていた。

ところで、隣の席のお客さんたちが3人揃って「いつもの!」と注文していたのは、ニジマス定食。

「ここでニジマス定食を食べたあとに、カラオケに行くのが、わたしたちの遊びなの!(笑)」

そう無邪気におっしゃるおばあさまたちの笑顔で、さらにお魚がふっくら、甘く、感じられた。

 

オススメ秘境めし③ こだわりの山菜そば

続いていただいたのは、山菜そば。人気メニューの1つだ。きのこ同様、山菜にもこだわりが詰まっている。

「今、なかなか国産の山菜はないでしょう。自分たちで採ってきて、調理しているからこそ、おいしく食べてもらえるんですよね。保存方法も、それぞれの山菜によって違うから、塩漬けにしたりダシを使ったり、1つ1つに合ったものにしています。他では食べられないだろうねぇ」(智行さん)

山菜そば。

山菜そば。

コゴメ、フキ、ゼンマイ、山筍。これまたたっぷり盛り付けられている。

きのこ1つ1つ保存方法や味付けを変えているからこそ、それぞれの味を楽しめるのだそうだ。山菜とおそばの出汁もよく絡み、口の中でじゅわっと広がる。秋の味覚をふんだんに盛り込んだ、これまた食べだしたら止まらない逸品である。

 

オススメ秘境めし④ 採れたて自然薯のとろろ定食

看板メニューが多いからこそ、人によって「いつもの」メニューが違うようで、自然薯のとろろ定食も人気が高い。

自然薯とろろ定食。

自然薯とろろ定食。

味も、とろみもとにかく濃厚。かといって、粘り気が強すぎるわけではなく、さらさら食べられてしまう。地元栃尾のコシヒカリとの相性も抜群で癖になるメニューである。同じ自然薯を使ったとろろそばもあるので、ぜひ次回はそちらを試してみたい。

 

オススメ秘境めし(番外編):真のもぎたてフルーツ

あれこれ食べて幸福な満腹感に浸っていたところ、最後にフレッシュフルーツをいただいた。こちら、メニューには載っておらず、興味がある人だけに出してくれるという、出会えたらラッキーな特別メニューだ。

冷蔵庫の上に載っていた果物を発見。手前にあるのがマタタビ、右がキウイ科のサルナシ。

冷蔵庫の上に載っていた果物を発見。手前にあるのがマタタビ、右がキウイ科のサルナシ。

あけびを割って見せてくださる、智行さん。

アケビを割って見せてくださる、智行さん。

ジュースをとるために採取した山ぶどうを今回は特別にそのままいただいた。

ジュースをとるために採取したヤマブドウを今回は特別にそのままいただいた。

「やっぱり、秋は果物が多いですからね~」と智行さん。どれもなかなか都会では見かけることのない果物で、取材班にとっても初めての味ばかりだった。

それも山に自生しているものを見つけたもぎたてだから、なおのこと貴重だ。

取材の間中、お客さんが後を絶えなかった「ドライブイン刈谷田」。

たどり着くまでの臨場感やお店のみなさんのあたたかい雰囲気、自然に囲まれた環境に豊富なメニュー、素材への半端でないこだわりなど、多くの人を惹きつける理由は枚挙にいとまがない。しかし、なんといっても一番の魅力は、季節ごとに異なった楽しみ方ができることだろう。

次回来た際には、イワナ・カジカ・アユなど、まるまる焼いた川魚にお酒を注いだ骨酒を飲んでみたい。夏の夜に飛び交うホタルを眺め、カジカガエルの声を聞きながら、ゆったりした時間を過ごすのもいいかもしれない(幸男さんオススメの過ごし方!)。

「ドライブイン刈谷田」を堪能しつくすまでには、まだまだ時間が掛かりそうだ。

 

ドライブイン 刈谷田
[住所] 新潟県長岡市栃堀6969 刈谷田ダム下の店
[電話] 0258-52-5395
[営業時間] 11:00~17:30 (要確認)
[定休日]  火曜日(要確認)

 

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