「油っぽくない、あぶらげ」 そこに隠された秘密とは…

2016/7/20
佐野豆腐店 佐野佐敏さん 綾子さん 亮介さん

名物を生んだ、熟練の手仕事。

長岡市栃尾旭町。雁木通りを歩くと「名物あぶらげ」の看板が目に飛び込んできます。青いのれんが目印の佐野豆腐店を営むのは、佐野佐敏さん(64歳)とそのご家族。お店の売りは、もちろん、あぶらげ。 ふっくらとした皮のやわらかさと、さっくりとした油ぽっくない仕上がり。そこには店主、佐敏さんのこだわりがありました。昔ながらの製法、昔ながらの器具を使い、ほとんどが手作業。特に力を入れているのは、にがりの打ち方です。にがりを加えて撹拌することで、豆乳は次第に固まり、豆腐に近づいていきます。その工程を機械化せず、桶にそって手を櫂のようにゆっくりとまわし入れ、微妙なさじ加減で力を加えていく。「どの角度で櫂を入れるか、どの時点で手を止めるか。何度も何度もやってみて、やっと自分なりにコツをつかみました」。あぶらげをつくり続けて40年。佐敏さんが自ら編み出した熟練の技です。

佐野豆腐店の営業開始は朝6時。4時半には店に入り、仕込みがスタートする。

佐野豆腐店の営業開始は朝6時。4時半には店に入り、仕込みがスタートする。

店先にいくつも並ぶのは、おからの入ったケース。すべてお持ち帰り自由。

店先にいくつも並ぶのは、おからの入ったケース。すべてお持ち帰り自由。

串一本に何枚も刺して一気に油を切るのが栃尾のスタイル。まんべんなくきつね色に仕上げていく。

串一本に何枚も刺して一気に油を切るのが栃尾のスタイル。まんべんなくきつね色に仕上げていく。

忘れられない味を求めて。

佐野豆腐店は、佐敏さんの代で二代目。高校卒業後、会社員をしていた佐敏さんが店を継ぐと決めたのは、24歳の頃でした。「親父の背中を見て、少しでも楽させてあげたいと思ったんです。親父から継げと言われたことは一度もなかった。むしろ反対されていました。同じ苦労はさせたくないと思ったんでしょうね」それからは、長い修行の日々。手取り足取り教えられることもなければ、「よくできた」と褒められることもない。先代の身振り手振りを、見よう見まねで覚えていきました。店を継いだ今も「これでもういい、もうできたっていう終わりはないんです」そう語る佐敏さんには、忘れられない味があります。「会社勤めをしていたころ、職場が近所だったので昼は家で食べてたんです。皿に一枚、あぶらげをのせて、さっと醤油をかけて。あれは本当においしかった」記憶に残る、先代のあぶらげの味。その味を求めて、佐敏さんはお店に立ち続けています。

浸水時間をたっぷりとることで、大豆は倍の大きさに膨らみ、つややかな状態に。

浸水時間をたっぷりとることで、大豆は倍の大きさに膨らみ、つややかな状態に。

慣れた手つきで豆腐を切る三代目。「小さい頃から見ていたせいか、初めから上手」と二代目も太鼓判。

慣れた手つきで豆腐を切る三代目。「小さい頃から見ていたせいか、初めから上手」と二代目も太鼓判。

120度ほどの油で揚げて、水分をしっかり飛ばす。その水蒸気であぶらげがふくらむ。

120度ほどの油で揚げて、水分をしっかり飛ばす。その水蒸気であぶらげがふくらむ。

揚がったあぶらげの奥にあるのは扇風機。風で熱を冷まし、型くずれを防ぐ工夫。

揚がったあぶらげの奥にあるのは扇風機。風で熱を冷まし、型くずれを防ぐ工夫。

 

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