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リピーター続々!大人気トレイルランイベントを支える「みんなが主役」の哲学

スポーツ小国長岡
スポーツ小国長岡
2018年 7月 14日 | な!ナガオカ スタッフ

「この地元のあたたかさにまた触れたくて、帰ってきた」

そう語ってくれたのは、前回も出場したという神奈川県からの参加者だ。

6月16・17日(土・日)に新潟県長岡市小国町で第3回目となるトレイルランニングイベント、ECHIGO COUNTRY TRAIL(エチゴカントリートレイル)が開催された。今年は53km、15km、2.5kmの3部門に、過去最多となる約900人のランナーが出走。今や、県外はもとや海外からもランナーが集う人気ぶりだ。今回は大会を支える地元のボランティア団体「チームおぐに」会長の中澤祥行さんと、同団体の北原俊紀さんに大会に込められた思いを取材。「な!ナガオカ」ライターによる実走レポも合わせて大会の魅力をお届けする。

 

そもそもトレイルランニングとは?

トレイルランニング(通称:トレラン)とは、未舗装の山野を走るアウトドアスポーツ。国内外を通して多くのトレランレースが開催され、160kmなどの長距離レースもある。アップダウンの激しい山中を走るため、記録を狙うことよりも完走に重きを置くランナーが多い。装備も通常のランニングとは違う。4リットルほどの軽量バックパックを背負い、靴底に滑り止めの効いた専用のトレランシューズなどを履くランナーが多いのが特徴だ。

53kmの部は早朝6時スタートで、制限時間は10時間。

森林公園を立て直すために

そもそも、レースが始まったきっかけは、地元の人々の「廃れてしまったおぐに森林公園をなんとか立て直したい」という思いからだという。

おぐに森林公園はかつて、多くの家族連れがキャンプやレクリエーションに訪れる一大観光スポットだった。しかし、施設の老朽化や同じような大規模森林公園が他にもできたことから年々来場者は激減。「このままではいけない」との声が上がり、地元住民と行政が結束して2015年からトレラン大会を作り上げてきた。

小国和紙で有名な小国地域。大会当日は和紙を使って森林公園を彩った。

「想定外」も大歓迎

この大会の一つの特徴として、“おもてなし”に力を入れているということがある。地元の山菜やそば、しょうゆおこわにデザートまで、住民手作りのごちそうが並ぶ前夜祭は申し込めば誰でも参加可能だし、イベントの最後は小国音頭で踊って〆と、単なるスポーツの大会を超え、もはや地域の祭に参加しているような気分になれることも人気の一因なのだ。

大会で主に“おもてなし”部分の陣頭指揮をとってきたのは、小国の地域住民からなる有志のボランティア団体「チームおぐに」会長の中澤祥行さん。中澤さんは定年退職後「小国のために」という思いから大会の運営に携わっている。その仕事は多岐に渡り、各集落にレースの告知や地元のご馳走が並ぶ前夜祭の準備、また今年から新しく大会会場にあるスクリーンで各地点のレース模様をライブ中継で見ることができる“パブリックビューイング”案も取り入れた。

大会当日は自身も沿道に出向いてランナーを応援した中澤さん。

「今回のパブリックビューイングは、地元の若者のアイデアです。“こんなことをやりたい”って相談に来てくれた。ふるさとに何かしたい、小国のために何かできることはないか、そう思う人は実はたくさんいるんです。でもだからと言って何をしたら良いのかわからない。そういう意味では大会が始まったことで地域の人がそこに入りやすくなったかもしれません。自分にできることを誰かが応援してくれたら嬉しいじゃないですか。だから“自分にはこれができる”と言われたら、それをそのままお任せする。いろんな人の声を聞いて支援するのが私の役割なんです。そういった地域の雰囲気があれば、世代交代もうまくいく。そんな風に想定していなかったところから声が上がってきたのはありがたいことです」(中澤さん)

前夜祭を楽しむ参加者たち。竹筒に入った地酒も振る舞われた。

 

ランナーにも地元民にも愛される
“みんなが主役”の大会を

「それに加えて、行政だけでなく市民も一緒にやって行こうという動きになってきたんです。過疎化の問題もあるし、高齢化でどこも人材不足なんだけれど、かと言ってこれ以上人任せではいけない。自分にできることを持ち寄ろうって」(中澤さん)

コースに点在しているエイドステーションと呼ばれる給水所にも地元のアイデアが満載。湧き水のある時水エイドでは流しそうめんがランナーを迎える。

こうしたイベントの成否を握るのは、どれだけ多くの人が関わり、継続性を持てるか。その点で、たくさんの市民が「自分ごと」として捉えてくれたことは、とても大きい。その前向きな雰囲気が、イベントの人気にもつながっているのだ。3年連続出場などリピーターの姿が多かったのも、その結実と言える。

「“また小国に来てもらいたい” 、その思いでやっています。やっぱり根底には「小国が好きだ」という思いがありますから。だからリピーターが多いのは大変嬉しいことですし、来てくれた参加者には“よく来たね”というおもてなしの心で迎えたい。でもランナーだけではなく、目指すところは地域に愛される大会です。それが大会の定着にも繋がると信じています」(中澤さん)

笑顔で声援に応えるランナーたち。

「小国の小学生は全員2.5kmの部を走ったり、中学生にはボランティアをお願いしたり、いろんな形で地域のみんなが参加するようにしています。今年は新たに地域内13箇所の飲食店から1品ずつお食事を前夜祭に出していただいたり、年々協力してくれる方も増えてきた。集落の方々と話していても「今まで見たことのないようなカラフルなウエアを着たランナーの姿を見るようになって嬉しい」とか「山に入っていく人がまた増えてきた」という話を聞くんです。やっぱり“みんなが主役”なんです。みんなの笑顔を見ると本当に嬉しい。ランナーも地域住民もボランティアも、そこに関わる人全員が楽しめるお祭り。そんな大会をこれからも作り上げていきたいです」(中澤さん)

2.5kmスタート!元気に駆け出す子どもたち。写真提供:長岡市小国支所

ボランティア参加の中学生は「海外の人たちが小国に来てくれて嬉しい」と、この日のために英語と中国語、韓国語の使えそうなフレーズを覚えてきたという。

 

大会開催前からコースマップが頭の中にあった

今回同じくチームおぐにに所属し、大会のコースを考えたコースディレクターの北原俊紀さんにもお話を伺った。生まれも育ちも小国の北原さんは、自身もトレイルランナー。その経験を生かして普段は会社員として働きながらも、忙しい合間を縫って大会を支えてきた。「以前はランニングが嫌いだった」という北原さんがトレランに出会ったのは2011年。

自身も普段は時間があれば山を走るという北原さん。

「登山というと荷物をたくさん持って2~3日かけて行くという固定概念があったんですが、走ればそれを1日でできてしまう。これは面白いと思ってトレランを始めたんです」(北原さん)

以降、県内外の山に加えて地元小国の様々なトレイルを巡り、現コースにある城山にも頻繁に登った。

「改めて地図をよく見てみると、登山道が他の集落へと繋がっていて、これを全部繋いでぐるっと回ったら面白いんじゃないかと。それから構想が進んで、大会開催の話がある前からこのコースが頭の中にあったんです」(北原さん)

コース上の気持ちの良い下り坂。

一斗缶に鍋の蓋による応援。
心を動かしたのはふるさとの底力

そうして開催された2015年の第1回プレ大会。初トレラン大会ということで短めの10kmコースを設定した。

しかし大会前日の前夜祭で、大会プロデューサーの松永紘明氏が「来年は50kmコースを新設します」と発言。翌年度の予定が未定の中での発言で、正直焦ったという北原さんだったが、レース当日、その不安は払拭された。

「沿道に出てまず目に飛び込んできたのは、一斗缶やら鍋の蓋を使って音を出し、全力で応援する大勢の住民たちでした。やってくださいと言ったわけでもないし、全くの予想外。その姿に心を打たれました。その時“この地元住民のパワーがあれば、来年の50kmコースもいける”と思えたんです」(北原さん)

「あとちょっとだよ〜!」手作りの横断幕でランナーを応援する住民たち。

プレ大会終了後、50km新設に向け早速次年度の準備が始まった。集落の総代らが草刈りを一緒に行ってくれたり、多くのボランティアが参加したりと、多方面からの協力に助けられてきたという。

「以前は“小国って何があるんだろう?”って、小国の良さがよくわからなかったんです。他の地域のようにこれと言った名所もありませんから。でもこの大会のおかげでおぐに森林公園も整備され、公園の美しさや緑に囲まれた環境の喜びを、私たち地域住民が再認識する機会になったんです。小国って良いところだったんだって。そんな風にランナーもそこに住む人も一緒に楽しめて、小国の良さも同時に知ることができる。そんな大会を目指していきたいです」(北原さん)

山の中でもコース誘導のボランティアや応援の姿がある。

歩かせてくれない!? “おおきな声援”
実際に15kmコースを走ってみた!

このイベントの良さを伝えるには、実際に走るのが一番。というわけで今回、筆者も15kmの部に参加させてもらった。

午前11時10分、和やかな雰囲気の中おぐに森林公園をスタート!

序盤から小刻みなアップダウンが続き、汗が吹き出る吹き出る…。息を切らしながら黙々と走っていると、「初めてのレースですか?」と女性ランナーに声をかけられ、その後も「景色が綺麗ですね~」「ここに毛虫いるので踏まないように!」とランナー同士コミュニケーションがあって楽しい。

美しい風景に思わず笑顔がこぼれるランナー。

コースは「旅するトレイルランニング」と謳っているだけあり、山を走りながら各集落を巡ってゆく。沿道には噂通りの大声援。手作りの横断幕や楽器を持って応援してくれる人も。疲れて歩こうとすると、「踏ん張れ〜!」と激励され、いい意味で歩く隙を与えてもらえない!

とにかく元気な地元住民たち。ヘロヘロに疲れたけれど、おかげで終始笑顔で走りきることができた。

「ん?今、名前を呼ばれた?」
大会ゼッケンにも工夫が

「しずか~頑張れぇ~!」「しずか~笑顔がいいぞ~!」
沿道から声援が飛んでくる。あれれ、どうして私の名前を知ってるの?

実はこのレース、ゼッケンにも一工夫。前面に大きくひらがなで名前が印字されており、それを見た人が名前で応援してくれるのだ。これも、参加者に喜んでもらいたいという気持ちから生まれたアイデアだ。

都道府県名(海外からの参加者は国名)の記載もあり、“よく来たねぇ”という会話に繋がっていく。

人、そして自然との繋がり

その後も、地元の声援やあたたかさに数回涙腺が緩んでしまった。ハイタッチをしたり、塩の利いたキュウリをもらったり、一人で走っているのに、一人じゃないと思えて勇気が湧いた。雲ひとつない青空と、豊かに生い茂る緑。普段の生活では味わうことのできない爽快感に圧倒された15kmだった。

「ランナーが勇気をくれる。毎年この大会を心待ちにしている」という地元民も。

今回取材して思ったのは、今大会がトレイルランニングという枠にとどまらず、地域活性、人の繋がり、自然との共存を再認識させてくれるイベントだったということ。普段の生活の中で他人同士が励ましあったり、ハイタッチしたりという機会はなかなかない。そういった人のあたたかさを感じられる喜びが、「また帰ってきたい」と参加者に思わせる秘密なのかもしれない。今後、この大会がどんな広がりを見せてくれるかが楽しみだ。

 

Text & Photos : Shizuka Yoshimura

 

旅するトレイルランニング ECHIGO COUNTRY TRAIL
[会場]スタート/フィニッシュ おぐに森林公園  前夜祭:小国会館
[期日]平成30年6月16、17日(土・日)※終了しました
[アクセス]長岡市内から車で1時間弱。大会当日は長岡発小千谷経由のシャトルバス有り
[問い合わせ]0259-74-3515(トレイルランナーズ事務局)
[E-mail]front@s-nets.org
[参加方法]参加申し込みはランネット、もしくはパンフレット付帯の専用振込用紙から
[HP]http://www.echigocountrytrail.com/
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