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創業70年、絶品コロッケが人気の「せきよう肉店」が貫く「まちの個人店」の美学

買う長岡食べる
買う長岡食べる
2019年 2月 27日 | な!ナガオカ スタッフ

外はサクサク、中はホカホカ。

日本の食卓に馴染みの深いお惣菜「コロッケ」。もともとヨーロッパから伝わり、今ではカレー、トンカツとともに「三大洋食」のひとつとして数えられるほど、ポピュラーな食べ物となっている。

茹でたジャガイモをすりつぶし、小麦粉で包み、油で揚げる…。いたってシンプルな料理でありながら、家庭によっては微妙に異なる食材を使用していたりと、意外と奥の深い料理でもある。

家庭料理の定番であるとともに「肉屋さんで買う惣菜といえばコロッケ」という方は多いのではないだろうか。

長岡市日赤町「せきよう肉店」。創業は1953(昭和28)年。

新潟県長岡市日赤地区にある「せきよう肉店」は、市内でも屈指の長い歴史をもつ精肉店。

同店のコロッケは「せきようのコロッケ」として、市民から長年にわたり愛されてきた人気メニューである。

長岡駅前で聞いてみると、なんと10人中9人の方から「知っている」との答えが返ってきた。

ある女性は、「話していたら、あのコロッケが食べたくなってきました。今日行っちゃおうかな」と語り、お店へと向かっていった。

これほどに長岡の人々を惹きつけてやまない「せきようのコロッケ」とは、果たしてどんなお味なのだろうか。

 

なんと創業70年!
当時から守り続ける変わらぬ味

「いらっしゃい!」

元気な声で出迎えてくれたのは、店主の関博海さんだ。

関博海さん

不動の一番人気・コロッケは、カレーやかぼちゃが入ったものなど種類も豊富

「先代にあたる私の父親がこの地で店を始めてもう70年になります。製法や原料、調味料は、開店時とまったく変わらないです。70年前とまったく一緒。『いつか飽きられるだろう』ってずっと言っているんですけど(笑)ありがたいことに、お客さんからは変わらずご支持いただいています」

来店客は、地元の子育て世代の主婦を中心に、ほとんどが女性。中には、遠方から訪れる客もいるという。つい最近には、東京から長岡へと向かう上越新幹線の車内から注文の電話が入ったこともあったのだとか。

「高校まで長岡で過ごした方で、今は東京の会社にお勤めの方なのですが『長岡に帰ることになって、真っ先にせきようさんが思い浮かんだ。どうしても食べたくなったので、これから行きます』って。そういう風に言ってくれるのは、単純に嬉しいですよね」

 

おいしさの秘訣はやっぱり油!

オーダーに応じて、店内で揚げる

遠方からも足を運ぶファンがいる理由は何なのだろうか。

「ウチは、開店以来ずっとラードを使っています。意外に思われるかもしれないけれど、私より年配の方たちから特にご好評をいただいています」

ラード(豚脂)は、日本でも古くから普及している食用油脂だ。
融点が低くて人の体温に近いため舌触りがよく、揚げ物に最適とされる。一般家庭でコロッケを作る際は植物性油で揚げられることが多いが、ラードを手に入れやすい精肉店のコロッケはラードで揚げられることが多く、それが味を左右するともいわれる。コロッケ愛好家の中には、ラードの種類にこだわる人もいるほどだ。

「ジャガイモはずっと長岡産のものを使うなど、食材は一切変わりませんが、使う油に関しては、試行錯誤をしてきたんです。たとえば、近頃は健康志向で、脂っこいものが敬遠されるようになってきましたよね。『ラード』なんて聞くと、とくに若い方の中には嫌がる人もいると思います。それに合わせて、ウチも使う油を変えてみたりしました。しかし、どうもしっくりこなくてね」と関さん。

お客さんに直接聞いてみたこともありましたが、ほとんどの方から「ラードで揚げた方が美味しい」との答えが返ってきたそうです。

「私もそう思います(笑)。コクがあって美味しいですからね。とにかく、お客さんが求めるものを出し続けたいという気持ちが常にありますね」

ちょうどコロッケを買いに来ていた60代の女性のお客さんに話を伺うと「まさしく、昔ながらのコロッケって言うのかな。食べた瞬間に、なんとも言えない懐かしさを感じるんです。小さい頃から食べてきたあの味だ!って。変わらない味で出してくれるのは、ありがたいことです」

 

よりどりみどりの惣菜メニューは
顧客のニーズに応えてきた証

県内外の牛肉、豚肉、鶏肉を取り揃える

あくまでもお客さんの求めに応じて、お店を運営していく。この姿勢を貫いてきたことも、せきようが支持される理由だ。

お店の陳列ケース内にはあらゆる食肉が網羅されているが、同じくらい目を引くのが、ずらりと並んだ惣菜の種類の豊富さ。開店当初から揃っていたのではなく、お客さんの要望を聞くうちに、徐々に充実していったのだという。

「今でこそサラダだとか、いろいろな惣菜を置いていますが、中にはまったく(置くことを)考えていなかったメニューもありますよ」

常連客の要望を取り入れるうちに、メニューが次々に増加

せきよう肉店があるのは、「日赤町」。その町名の由来と言われているのが、昭和初期に当地にあった長岡赤十字病院(通称:日赤病院)の存在だ。職員数1,000人以上を抱える巨大病院で、1997年に移転するまで、この日赤町にあった。コンビニエンスストアなどなかった時代に、彼らの胃袋を満たすべく、惣菜を大量かつ豊富に用意したという背景もあったのだ。

「日赤病院のお客さんを中心に、どんどん要望をいただいたんです。『あれ作ってくれ!』って。それにできるだけ応え続けていたら、これだけ増えちゃったんです」

豊富な惣菜メニューの展開は、長い歴史を積み重ねてきた証でもある。

 

対面販売だからこその細やかさが
「まちの個人店」の大事な財産

取材中もひっきりなしにお客さんが訪れる。客足が途切れることがほとんどない。そんな中、驚いたことに「どうも!待ってたよ!500グラムでいいんだよね?」「あ!◯◯さん、どうも!コロッケは揚げちゃっていいんだよね?」といった調子でお客さん一人ひとりの顔を認識し、適切な応対をしている。

お客さんがオーダーした順番、肉の部位・分量、コロッケを揚げる、揚げないの判断。それらを絶妙なチームワークで鮮やかに捌いていく様子は、見ていて爽快さすら覚えた。

隣接する十日町市の「つまりポーク」など、ブランド肉もラインナップ

また、印象的だったのが、会話の中で調理方法やオススメの味付けをさりげなく教えていたこと。

「今晩、こんな料理を作ろうと思っているのだけれど、オススメのお肉はない?」といった質問にも、関さんは「今日は良いロースが入っているから、◯◯にしてみたら?」などと、即座に解答していた。

せきよう肉店は「おいしいコロッケのお店」であるとともに、高い評価を誇る精肉店である。

取り扱っているのは、地元長岡をはじめ、新潟県内産を中心に、信頼できる取引先から仕入れる、厳選された肉ばかりだ。妥協のない高品質な食肉もまた、高い支持を集めている。

それだけに肉の食べ方をも熟知しており、お客さんから質問が出れば、会話の中から探り出し、自然な形で提案する。言わば「食肉のコンシェルジュ」のようなアドバイスも行なっている。

牛肉や豚肉のほかに、マトン、ラムや、鴨肉などのジビエ系食肉も用意している。気になってはいるが、食べ方がわからない人も多そうなこうした肉のみならず、一般的な肉の食べ方の相談にも乗ってくれるのだ。

鴨肉ロースト(100グラム)おすすめの焼肉ソースをつけてくれた

鴨肉のつくね

せっかくなので、筆者も相談をしてみることにした。

友人からジビエ肉をいただくことがあったので「おいしい食べ方を教えてもらいたい」と告げると、隠れた人気商品という鴨肉をすすめてもらった。

「この食べ方は本当においしいですよ」とニッコリ笑顔で話す関さんのすすめに従い、ロースト肉とつくねを購入。

絶妙な焼き加減で仕上げられたローストは、旨みが凝縮された絶品。通常の鶏肉よりは硬くなりやすいので、火を入れる塩梅が非常に重要なのだという。惣菜で購入して大正解だった。

「鴨肉のつくね」は、クセが強いのではないか?と先入観があったが、まったく心配なし。鶏肉のつくねよりも上品な味わいに感じられた。

関さんは、オーダーや肉のこと、調理法だけでなく、お客さんとの会話に世間話を数多く差し込んでいた。些細なことからでもお客さんの生活スタイルや家族のことを想像することで、よりよい商品提供ができるのだ。

「お客様となるべくコミュニケーションをとること。それこそ我々がずっとやってきた、一番の良いところですから。私の親の代の頃なんて、もっとすごかったですよ。『奥でお茶飲んでいきな』なんていって、お客さんに上がってもらっていましたから。今はさすがに無理ですけど(笑)、お互いのプライベートには差し障りのない程度に、できる限りのコミュニケーションをとっていきたい。それが我々にできることだと思っています」

お店が売るのは、単に商品のみにあらず。スーパーやコンビニに押されることなく頑張っていける「まちの個人店」は、より細やかなコミュニケーションによって成立するのだということを、せきよう肉店に改めて教えられた。

 

Text&Photos:Junpei Takeya

 

●Information
せきよう肉店
[住所]新潟県長岡市日赤町1-2-11
[電話]0258-32-1687
[営業時間]7:00~19:00
[定休日]日・祝日、第3月曜
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