直径10mのアイデア。

「てくてく」の公園内、いたるところにある小さな丸いスペース。円形造園ユニット「えんえん」は、市民のみなさんの声から生まれました。「みなさん想いが強いからでしょう。設計当初はいろいろな対立意見が出て、はたと困りました」。山下教授が覚えているだけでも、水場が欲しいという意見や、木がたくさん欲しいという意見、逆に水場をつくること、木を多く植えることによるデメリットを指摘する意見など。「しばらく、頭を抱えました。でも考えに考えて、気づきました。森はつくれないけれど、直径10mの円の中にはジャングルをつくれる。どれか一つではなく、いただいたご要望をすべて小さな円い庭にして、実現すればいいのではないか」と。こうして、公園内に点在する「えんえん」が生まれました。砂場もあれば、水場もある。花畑もあれば、野菜畑もある。敷地内のそこかしこに、円い庭のアイデアが活かされています。「円は縁でもあるのです。ここから人々のご縁も生まれています」。

子どもがケガをしないようやわらかな材質でつくられた「えんえん」。

子どもがケガをしないようやわらかな材質でつくられた「えんえん」。

直径10mの円形は、砂遊びをするには十分な広さ。

直径10mの円形は、砂遊びをするには十分な広さ。

土管の中は、子どもたちの秘密基地になっている。

土管の中は、子どもたちの秘密基地になっている。

 

若いお父さん、お母さんが、保育士から子育てのアドバイスを受けることもできる。

若いお父さん、お母さんが、保育士から子育てのアドバイスを受けることもできる。

 

成長する空間。

「子育て世代はもちろんですが、いろんな世代の方を対象にした講座や会議も行われています。スターバックスがコーヒーの講座をしに来てくれたこともあります」。今や「てくてく」は、子どもだけでなく、大人も楽しめる場所になっています。「ここで友だちになったんです、という声を聞いたり、ここで知り合った仲間同士で立ち上げたサークルがあったりと、人と人とのつながりが生まれる場所にもなっています」と西山さん。事実、「てくてく」は長岡市内の子育て支援団体の会合場所としても使われ、子育て支援団体をつなぐハブにもなっています。「子どもたちに喜んでもらいたい、という一心でつくった場所に、いろんな世代の人が集まって、新しい出会いが生まれるなんて、思ってもいませんでした」と話してくれた山下教授。建築家の手を離れたあと、施設を育てるのは、地域の人の力。長岡の元気な子どもたちとともに、「てくてく」もまた、日々成長を続けています。

 

子育ての駅「てくてく」に携わるおふたりの志

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場づくりは、元気づくり。

隣のおじいちゃん元気がないから、声をかけてみよう、何かつくってあげよう。そんなつながりのある場所っていいですね。みんなが触れ合える、知り合える、そんな場をこれからもつくっていきたいです。長岡市全体が、「てくてく」のようにつながりを生む街になることが私の夢です。

(長岡造形大学教授 山下秀之)

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つなぐ。

ここに来て遊んでいる子どもたちが、いつか結婚して親になったとき、その子どもを連れてきてくれたらいいなと思っています。人と人をつないでいくことはもちろん、世代と世代をつないでいく。「てくてく」がそんな場所になれたら、すごく嬉しいですね。

(子育ての駅千秋「てくてく」園長 西山知美)

※この記事は2015年7月に作成いたしました

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