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【教えて!ご主人】39年間、夫婦で歩むちゃんぽん店「長崎亭」

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教えて!ご主人長岡食べる
教えて!ご主人長岡食べる
2016年 11月 20日 | な!ナガオカ スタッフ

長岡の繁華街、殿町。ここに、創業から39年間愛され続ける長崎ちゃんぽんの店がある。オープンは20時30分。開店までまだ少し時間があるが、半分開いたシャッターをくぐり「もうやってる?」と尋ねるお客さんが後を絶たない。子連れの家族、若い女性、仕事帰りのサラリーマン、年配夫婦など客層は幅広く、人気店の噂を聞きつけて訪れる県外客も多い。深夜2時まで営業しているため、飲んだ後の締めラーメンならぬ「締めちゃんぽん」が味わえる店としても重宝されている。

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店の名は、「長崎亭」。新潟にいながらにして本場・長崎のちゃんぽんを味わえる店は珍しい。

12時から20時にかけてご主人の泰治さんが仕込みをし、20時30分から奥様の政子さんが調理を担当する。つまり、夫婦が入れ違いで仕事をしていることになる。

「夫婦ふたりの時間がとれなくて、寂しくはないのですか?」という問いに、

「半世紀近く一緒にいるわけだからね。今さら夫婦で過ごす時間なんていらないよね……」

と、お二人そろってアッサリとした返答。そこには阿吽の呼吸とも呼べるような、穏やかな空気がごく自然に流れている。きっとこの境地にたどり着くまでには、さぞかし山あり谷ありの人生だったに違いない。そんな39年間の歩みを、お二人に伺った。

 

長崎で食べたギョーザが
二人の運命を変えた

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泰治さん(65歳)は、当時は長岡の隣町だった与板生まれ。高校を卒業してまもなく上京し、毛糸会社で配達の仕事を始めた。しかし、仕事へのやりがいが見出せず、居酒屋の手伝いや日雇い労働をするようになる。虚しく日々が過ぎる中、たまたま長崎から東京へ遊びに来ていた現在の妻・政子さんと出会った。すぐに意気投合し、連絡を取り合う仲に。遠距離恋愛が始まったのだ。しばらくすると、泰治さんは故郷へ帰ることを決め、同時に政子さんも長崎から新潟へ越してきた。そして泰治さん22歳のとき、二人は結婚することとなった。

心機一転、泰治さんは婦人服店の営業として働きだした。懸命に仕事をしながらも「何かが違う」と違和感を覚え、やがて市内の飲食店へ転職。性分に合っていたのか「食べ物屋は儲かる!」と確信を得たそう。そんな折、政子さんの地元である長崎へ遊びに行く機会があり、ここで運命の出会いをすることとなる。

「長崎の超有名店『宝雲亭』の一口ギョーザを食べたんだ。あまりの美味さに驚いたね」

薄めの小ぶりな皮に、タマネギ主体の餡がたっぷり詰め込まれたギョーザ。今までに食べたことのない味に、感動がとまらなかった。そしてなんとも奇遇なことに、「宝雲亭」は政子さんの知り合いの店で、人手が足りない状況だったのだ。泰治さんは「将来、長岡にギョーザの店を開こう」と心に決め、この店で修業に専念することとなった。

 

修業を終えて、いよいよ開業!
ほぼすべてが順調だった

「宝雲亭」での修業は順調に進んだ。人当たりのよい泰治さんは先輩スタッフ全員にかわいがられ、店の仕事もどんどん任される充実した日々……。そんなあるとき、店長の弟が病気で倒れたことをきっかけに、平日営業のほとんどを任されるというチャンスが巡ってきた。

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「この人は器用な人でね、全然苦労しなかったの。ソツなくこなしていた。それで自信がついたのかな。半年くらい店を任されたあとに、長岡に戻って店を開こうと決めたんだよね」と、政子さんは当時を振り返る。

約4年間の修業を終えて地元・長岡へ。二人はすぐに開店準備へと動き出す。メニューは一口ギョーザのほか、長崎ちゃんぽん、味噌ちゃんぽん、皿うどんもメニューに加えることにした。しかし、ここで一つ問題が……。スープの仕込みには8時間以上を要するが、店を開ける時間も確保しなくてはならない。二人一緒に仕事をするには、あまりにも労働時間が長すぎる。そこで、「仕込み」「調理・提供」の役割分担をすることに。これまで夫のサポートに専念してきた政子さんが厨房に入ることとなり、必死になって作り方をマスターした。

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そして1977年、泰治さん25歳のときに「長崎亭」オープン。

客足は順調だった。ネットがなかった当時はクチコミが力を発揮し、「長崎亭」に惚れ込んだサラリーマンたちが、次々と得意客に店を紹介してくれたという。にぎやかな殿町の土地柄も手伝って、地元に根付くお店へと成長を遂げていった。

「とにかく、ていねいに料理を作って、お客さんに喜んでもらえるように心がけたの。ありがたいことに、お客さんが店を応援してくれて……本当に感謝してます」と、政子さん。多忙ながらも充実した日々で、毎日がめまぐるしく過ぎていったという。

しかし、すべてが順風満帆だったという訳ではなかったようだ。

「ひとつ、思い出したくもない失敗があってね。駅前に2号店を出したんだけど、こちらは散々だった。おかげで、その借金を返すまでに15年もかかっちゃったよ 」

と苦い顔で語る泰治さん。

「やっぱり、夫婦で営む店で人を雇っちゃいけない。のんびりやればいいだけさ」

 

素材のうまみをぎゅっと凝縮。
こだわりの長崎ちゃんぽん

さっそく「長崎ちゃんぽん」と「ギョーザ」をオーダーした。

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ふだんは政子さんが調理担当だが、この日は特別に泰治さんが腕をふるってくれた。中華鍋でたっぷりの野菜や魚介類を炒める。

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同時進行で茹でられるちゃんぽん麺。

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ちゃんぽん麺と特製スープを合わせ、さらに炒めた具材を豪快にのせたら完成!

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長崎ちゃんぽん850円。

豚肉、アサリ、イカ、キャベツ、ニンジン、きくらげなど、10種類の具材がなんとも豪華!

8時間以上煮込むというトンコツスープは、豚骨、鶏ガラをていねいに下ごしらえすることで臭みをまったく感じさせない。さらに、殻つきアサリの旨みや、炒め野菜の甘みが混然一体となり、マイルドながらコク深い味わいに仕上がっている。

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長崎から取り寄せたというちゃんぽん麺は、太めでツルツルとした食感。煮込んでも伸びにくく、冷めにくい。

肉、魚介、野菜の旨みが凝縮されたスープに麺をまとわせ、熱々を頬張るのはまさに至福のとき。おまけに多品目の具材が使われているため、これ一品で栄養を十分に摂れるのも嬉しい。あまりの美味しさに箸が進みすぎ、最後にはスープまで完全に飲み干してしまった。

「うちのスープは完全無添加だよ。だから、最後まで飽きないでしょ?」と泰治さん。

確かに、化学調味料特有の舌に残る感覚がこのスープにはない。とことん素材からでる旨みで勝負し、ごまかしは一切なし。ご主人のていねいな仕事が光る一杯なのだ。

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ギョーザ450円。柚子胡椒をといたタレでいただく。

二人の運命を変えた「宝雲亭」直伝の一口ギョーザも、もちろん絶品。手作りの皮にたっぷりの具材が包まれ、頬張ると口の中で玉ねぎと豚肉のうまみがジュワッと溢れだす。カリッと焼かれた皮の食感も心地よく、一人で何皿でも食べられてしまいそう。

そのほかにも、長崎から仕入れた揚げ麺を使った「皿うどん」や、大粒で食べごたえのある「アサリの白ワイン蒸し」など、昔から変わらないほっとする味が常連客の心をつかんでいる。

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カウンター席がメイン。テーブル席もあり。

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創業当時から使い続け、今でも現役のプッシュ電話。

開業から早くも39年が経つ。傍から見れば、山あり谷ありな人生のように見えるが、二人にとっては順調な日々の連続で、あまり苦労を感じてこなかったようだ。日々を丹精に精進してきた結果、いつか、苦労をそうと感じない強さと絆が夫婦のあいだに生まれたのではないか。「美味しいものを提供したい」というシンプルでまっすぐな想いは、訪れる人たちのお腹だけでなく心までも満たしてきた。「長崎亭」にはまた帰って来たくなるような不思議な魅力が宿っている。

「いま孫が4人いて、そのうちの一人が料理好きなんだよ。いつかここで一緒にギョーザやちゃんぽんを作ってみたいね」と話すお二人。

新たな夢のため、夫婦はこれからも変わらず二人三脚で店を開き続ける。

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長崎亭
[住所]新潟県長岡市殿町3-4-10
[電話]0258-32-2331
[営業時間]20:30~翌2:00
[定休日]日曜・祝日
[駐車場]なし
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