大躍進するBリーグ・アルビBBの秘密とは? 熱烈ブースターたちに聞いてみた!
2019/7/22
試合当日。ホームであるアオーレ長岡は、試合数時間前にも関わらず、多くの人で賑わっていた。1階部分にあるオープンフロア「ナカドマ」に入ると、お祭りのような雰囲気が漂っている。
オーロラビジョンには、チームのこれまでの戦いぶり、選手のインタビューなどが映し出されている。後半戦を首位で折り返し、接戦を繰り広げる2位川崎を迎える一戦とあって、ピリッとした緊迫感もうかがえる。
アオーレ長岡は、JRの長岡駅から直結。そのため、長岡駅方面から、続々とアルビ、そして対戦チームのブースターが集結してくる。
試合開始1時間前。アリーナに入ると、試合前練習に臨む両チームの選手の姿があった。客席は、すでにオレンジ色のシャツを着たブースターで埋まりつつある。
今回、お話を伺ったのは、長岡市在住のブースター、五十嵐彩映さんだ。自身も競技経験者の五十嵐さんは、中学校時代からバスケットボールに親しんできた。東京の大学に進学後、そのまま都内の企業に就職。長岡にUターンし、長岡市役所に勤務する。2016年に長岡市がホームタウンとなって以来、足繁く観戦に訪れている、熱心なブースターのひとりだ。長岡への本拠地移転前から応援を続けているが、アルビBBが長岡にホームタウンを移したことで、より身近な存在になったという。
この日は、一緒に観戦をする友人たちと現地で合流。途端に、堰を切ったようにバスケ・トークが展開される。10年来の友人のような雰囲気が漂う仲の良さだが、実は知り合って2年ほどだという。
「アオーレ長岡でのホーム開幕戦に足を運びました。そのときは全然、今のメンバーで応援しに来たというわけではなく、最初はひとりで観に来ていました。バスケの観戦を通じて新しく友人ができるなんて、思ってもみなかったことです」と話す五十嵐さん。
「長岡出身と言っても、ずっと東京で暮らしていたこともあり、帰郷してからは心細いところがありました。新しい環境で新しいコミュニティを築いていくのって、けっこう大変なことだと思います。でも、大好きなバスケを通じて、それが自然にできました。共通の話題があって、つながるコミュニティができたということも良かったと思いますね」
選手との近さもアルビの魅力!
アルビBBの魅力として、五十嵐さんは「距離の近さ」を挙げる。
「まずは選手・チームとの距離感ですね。アルビは練習の一般公開を行なっています。今はどのチームでも当たり前に行われるようになったのですが、他チームに先駆けて、早い段階でやってくれていたんじゃないかなと思います。また、練習が終わったらブースターと選手とが普通に話ができたり、サインがもらえたりといったことが、自然にできたんです。触れ合う時間が多いと感じますね」
「練習で疲れているはずなのに、ブースター対応をしてくれるのは、とても嬉しい。チームの方針ということ以上に、選手自身も意識して自主的にやってくれているんじゃないかと思いますね」と、その取り組みを評価する。
スター選手・五十嵐圭の加入
会場内には「KEI」のユニフォームをまとったファンが多かった。「KEI」とは、2016年に加入した五十嵐圭選手のこと。日本プロバスケ界でも屈指の人気を誇る五十嵐選手の加入は、チームにとっても、ブースターにとっても大きな出来事だった。
「圭さんをまさか長岡で、まさかこの距離感で観られるとは、まったく思っていませんでした」と、五十嵐さんはその感動を語る。
「新潟を自分のキャリアの集大成と考え、この地でユニフォームを脱ぐ覚悟で今日ここに立たせていただいています」と入団会見で語った五十嵐選手。
その思いは、ブースターにもしっかりと届いている。
フードブースに並んでいたあるブースターの男性は、「圭さんのプレーには、鬼気迫るものがある。それを毎試合続けるのだから、言葉が出ないです。勇気をもらっている分、毎試合声を枯らして応援しているし、必ず圭さんのフードを食べています(笑)」
圧倒的な一体感を生み出す、
ブースター自らの努力
試合では、一体感のある応援が開始直後から続いていた。一際目を引くのは、オレンジ色に染め上げられたスタンドだ。
「ここ2シーズンは、目に見えて盛り上がりが高まっていると感じる」と五十嵐さんは話す。3シーズンが経過し、オレンジ色のシャツを着ている人が明らかに増えたという。「本拠地移転以来の“初期ファン”の存在が大きいのではないでしょうか」
取材中、アルビのユニフォームやシャツを数枚抱えたブースターを目にした。彼らは、まだユニフォームを持っていない新規ブースターに「着てみませんか」と声をかけている。一人でも多くのブースターにオレンジ色をまとってもらいたいと、自主的に行なっている活動だという。
「普通だったら、自分が着るユニフォームやTシャツだけを持ってくるじゃないですか。もちろん、シャツを何枚も持ってくると荷物になるし、大変だと思います。そういう人たちは『スタンドをオレンジ色に染め上げたい』ということを真剣に考えてくれているんだと思いますね」
試合開始前、シャツを貸し出していた「当初はまったくバスケを知らなかった」という30代の男性ファンに話を伺うことができた。
「バスケのルールって、わかりにくいことも多い。ファール判定は正直、難しいし、今でもわからないことがあります(笑)。でも、一度覚えてしまえば、こんなに面白いスポーツはないだろうなって。同じように楽しむ人を増やしたいな、と。それだけなんです」
2時間の一喜一憂
試合中、経験者と思われるブースターが、周囲の人に「あのプレイは…」と説明をするシーンが何度も見られた。
「バスケは、サッカーと同じく、展開が圧倒的に速いスポーツ。周りの人と喋っている暇が無い(笑)。でも、合間を縫って周りのブースター仲間と結束を高めていく感じは、サッカーとも通じるものがあります。サッカーのファンも、楽しめるんじゃないかな」とは、50代の男性ファン。サッカーのアルビレックス新潟のサポーターでもある。「とくに今シーズンは、選手が本当に頑張っている。鬼気迫るものがありますよね。だから我々も、一丸となって戦いたいです」
五十嵐さんも、意見を同じくする。
「2時間ずっと一喜一憂をし続けるスポーツって、なかなか無いと思うんですよね。単純に試合を追いかけるだけでも、じゅうぶん楽しめると思います」
新規ファンを「置いて行かない」工夫は、会場運営サイドにも。試合中はMCが入るが、ファールがあった際にはその理由などを説明する。ハーフタイムには、チアリーダーによる応援レクチャーなども行われるなど、繰り返し試合に足を運ぶうちに、自然とルールを覚えていくことができるのだ。
相手チームにも優しい、駅直結のアリーナ
アクセス面での近さも、アルビの特徴。一般にスポーツアリーナというものはやや郊外に位置しているため電車を乗り継いだり車に乗る必要があったりと不便な思いをすることが多いが、アオーレ長岡はJR長岡駅と直結しているため、電車を降りて徒歩数分で現場に到着する。雨の日でも濡れることなくアリーナまでたどり着けるという利便性は、実は大きな魅力だ。
「歩いてすぐの場所にある。これって、実はすごいことなんだなって。私は関東を中心にアウェイ戦によく行きますが、長岡は抜群にアクセスが良いと思いますね」
とくに川崎ブレイブサンダース戦では、多くの川崎ブースターがゴール裏の一角を占めていた。
「新潟っていうと、遠いイメージがあるかもしれないですが、意外と来やすい!ということを、他チームのブースターさんにこそ伝えたいですね。もっともっと多くのブースターさんに足を運んでもらいたいです」
長岡からブースト(後押し)し続ける
本記事で何度も使用した「ブースター」という言葉。
スポーツニュースなどで目にする機会が増えたものの、まだまだ聞きなれないという方は多いのではないだろうか。「ブースター」とは本来、例えばスペースシャトルを打ち上げるためのロケットのように、「後押し(ブースト)する人」の意味を持つ言葉だ。
長岡の地には、文字通り、選手やチームを後押しする熱いブースターたちの姿があった。驚いたのは、自主的に考えて「もっとチームを良くしよう」と自主的に動いているブースターの姿が大勢見られたことだ。
支えるだけでなく、自ら主体的に動き、後押しをする。その姿勢が、アルビBBのの大躍進を支えている。男子バスケットボール日本代表が東京五輪出場権を獲得するなどバスケットボール界全体で盛り上がりをみせるなか、ブースターたちの心を掴んだアルビを中心に、長岡でのバスケ熱もより一層加速していくはずだ。
Text and Photos: Junpei Takeya
●Information
[新潟アルビレックスBB公式サイト]https://www.albirex.com/
[新潟アルビレックス公式ツイッター]https://twitter.com/naxbb_rb