長岡にある子育て施設の牛乳パック工作がすごい!作り方を習ってきたレポ
「子育ての駅」という施設を知っているだろうか? 新潟県長岡市にある子育て支援施設で、市内に13カ所にあり、ゆとりのあるスペースに、おもちゃや絵本がいっぱい。保育士や子育てコンシェルジュ(※)も常駐し、子どもたちが思い切り遊べて、しかも無料とあって、親子連れでいつもにぎわっている。
そのひとつ、長岡の中心地、大手通り沿いにある「ちびっこ広場」はちょっと個性的な施設だ。居住施設や企業の入るビルの2階にあり、外見に特徴はない。しかし、一歩中に入ると……牛乳やジュースの紙パックを用いた大型の手作り遊具がずらり! 子どもが出入りできる家、実際に乗れる大きさの自動車、テーブルなどなど。牛乳パックでここまで大きなおもちゃが作れることにまず驚きだが、さらには、やんちゃ盛りの子どもたちが少々乱暴に扱おうと、ドタドタとびはねようとびくともしない。並大抵ではない丈夫さだ。
手洗い場の踏み台や、小さな椅子まで牛乳パック製。このくらいのサイズなら、家でも作れるかも? ちびっこ広場で、牛乳パック工作のヒミツを探ってみた。
※子育てコンシェルジュ……子育てに関する相談や情報提供を行う人
牛乳パック工作のキモは詰め物。中身はまさかの……
牛乳パック工作の基本を教えてくださったのは、ちびっこ広場に勤めて8年目になる西尚美先生。早速ですが先生、この丈夫な牛乳パックの中には一体何が入っているんでしょう?
「牛乳パックが入っているんですよ」
え……、牛乳パックの中に牛乳パック?
「そう、たたんだ牛乳パックを、踏み台なら6本分入れますね」
そんなにたくさん!?
「高さのあるものを作るときは、上が重くなりすぎないように、4本分に減らすなど、調整するんですよ。実際にやってみましょうか」
牛乳パック工作の基本
用意するもの〈パーツ1本分〉
・牛乳パック(口を開き、よく洗って乾かしたもの) 7本(※)
・幅広の透明テープ
・はさみ
(※踏み台なら7本、椅子は6本、乗ったり座ったりしないパーツなら5本が目安)
作り方
これで出来上がり。つぶすのに多少、力がいるが作業は簡単だ。
実は、取材前にインターネットで調べながら、牛乳パックで「踏み台」を作るのにチャレンジしてみた。多くのサイトでは新聞紙を詰めると書かれていた。しかし新聞紙は詰め具合が難しく、なにやらボコボコしたパーツになってしまった。さらに重いという難点も。中に牛乳パックを入れれば、適度な軽さになり、表面もなめらか、そして丈夫。秘密はこれだったのか……と納得。
玄関の小さな椅子ひとつに約500本の牛乳パック
作り方がわかって、あらためて、「家」や「車」を見ると、実は見た目の5~7倍の牛乳パックが使われているということに驚かされる。例えば、ちびっこ広場の玄関には、靴を脱ぎ履きするための小さな椅子が置かれているのたが、ここに使われているパックをざっと数えてみると、80本強。中身を5本分とすると480~500本使われていることになる。「自動車などはたぶん5000本くらい使っていると思いますよ」と西先生。大変な本数と手間暇をかけて、ここのおもちゃは作られているのだ。
設計図はなし。現場で相談しながら形を決める
手作り遊具は、職員全員が空き時間を利用して少しずつ作っている。驚くことに、大型遊具を組み立てる際、完成予想図の絵は書くものの、詳細な設計図などはないそうだ。基本的に現場で相談しながら形作っていく。だからオリジナリティが高いし、同じものは二度と作れない。もともと、牛乳パック工作を始めた初期のころに作った「家」は耐久性を考えた設計図が作られたそう。以後、現在使われている2代目の「家」をはじめ、高さのある大型遊具を作るときは、初代の「家」のつくりを手本に、安全性、耐久性を保つためのノウハウを駆使して組み立てているそうだ。
バックヤードにはこれまでに作った牛乳パックの大型パーツがたくさん眠っている。これらを定期的に組み換えることで、広場は「おばけ屋敷」、「迷路」、「サッカーごっこ場」、「ゲーム広場」などに変わる。軽さと丈夫さを兼ね備えた牛乳パックパーツだからこその「変身する遊び場」。子どもたちは来るたびに新鮮な気持ちで遊ぶことができるのだ。
子どもたちに手作りの遊び場を
「ちびっこ広場のコンセプトは『手作りの遊び場』なんです」と語ってくれたのは園長の関本恵子先生。「手作りおもちゃのほとんどが、おうちにもあるもので作れると思う。『今度作ってみたいね』という会話も聞かれます。ここをきっかけに、親子の触れ合いを広げていってもらえるといいですね」
実はちびっこひろばには、牛乳パック工作と並ぶ、もうひとつの「名物」がある。それが、2~3カ月おきに変わる食べ物屋さんコーナーだ。お寿司屋さん、ドーナッツ屋さん、アイスクリーム屋さん、流しそうめん屋さん、お祭りの屋台、おでん屋さん……。どの子も店員になりきり、父母をお客さんに見立てて、大張り切り。「なににしますか?」「では、たこやきとわたあめをください」「しょうしょうおまちください」。色画用紙で作られた食べ物を手に、「すごいね、本物みたい」なんて声も聞かれる。手作りの「ごっこ遊び」が、まさに親子の会話、触れ合いを引き出している様子があちこちで見られる。
ちょうど、新しいコーナーに模様替えするタイミングで、作業を見学させてもらった。屋台の台は、後ろに大人も通れる隙間があるか考えながら配置。また食べ物は、子どもの目の高さで遊びやすいかどうか、チェックしながら並べていく。なによりも安全に配慮しながら作っているのが印象的だった。
パパとママのサポートも
ちびっこ広場は、パパママのサポートにも力を入れている。予約制で一時保育を受け付けているので、買い物などの所用や短時間の就労の際に利用できるほか、子育ての講座や相談会、妊婦さん・ママ・パパそれぞれの「おしゃべり会」も定期的に開催されている。上階の「まちなか絵本館」は、実は子ども向け絵本だけでなく、パパ・ママのための育児書や、料理・手芸・家事関連の本なども大変充実している。親にとっても息抜きになる場所なのだ。
身近な素材が遊びになるおもしろさを教えてくれるちびっこ広場。親子で訪れて存分に遊ぶもよし、真似をして家にあるもので手作りおもちゃを作ってみるもよし。工作に使う牛乳パックは常時集めている。家で飲んだ牛乳やジュースのパックが、ここで新しいおもちゃとして生まれ変わるかも。持参すれば、そんな会話を子どもと楽しむこともできそうだ。
子育ての駅 ちびっこ広場/まちなか絵本館
[住所]〒940-0062 新潟県長岡市大手通2丁目5番地
[電話]0258-39-2775
[開館時間]午前9時から午後6時まで
[休館日]年末年始(12/30~1/1)
[入館料]無料
[駐車場]市営駐車場または市提携駐車場をご利用の方は、駐車料金が1時間無料となります。駐車券を必ずお持ちください。
[ホームページ]http://www.city.nagaoka.niigata.jp/kosodate/cate99/tibiko_hiroba/