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40歳を故郷で共に祝おう!「大成人式」を通して見つめる、地方都市の現在と未来

つながる長岡
つながる長岡
2018年 5月 29日 | な!ナガオカ スタッフ

30歳や40歳など、積極的に人生の節目を祝おうという動きが全国各地で高まっている。新潟県長岡市でも、2017年6月18日、40歳を迎えた約700人が「シティホールプラザ アオーレ長岡」に集った。同市出身の人はもちろん、そうでない人もウェルカムの「大成人式」だ。

単なる同窓会にとどまらない集いを企画した背景には、切実で真摯な思いがあるという。大森政尚さん、西澤敬介さん、清水専央さん。昨年の第1回開催に向けて奔走し、今年は1学年下の実行メンバーのサポートにまわる3人にその舞台裏と、今年も6月9日に予定されている大成人式と街の未来について伺った。

 

地方都市の課題をふまえて
人が交流するシステムをつくりたい

成人式からさらに20年。「不惑の年」を迎えてもまだ逡巡するが、なにかを始めるのに早すぎることもなく、遅すぎることもない。そんな40歳のタイミングで集まろうというアイデアは、どのように生まれたのだろう。

発案者は、実行委員会の会長を務めた大森さんだ。本業は創業100年以上の木工会社の代表だが、これまでにも長岡市の地域おこしプロジェクトなどに数多く関わってきた。

「もともと長岡に『七五三の会』という、70歳、50歳、30歳の節目を祝おうという会があります。その会議に僕が顔を出したのが37歳くらいだったと思いますが、『40歳もやってくださいよ』と言ったら、『おめえら、やれよ。うちの倅も入れてくれ』と(笑)。そう言ったのが、長岡でイベント会社Deux-PLANを経営する二ツ家洋司さん。後に『大成人式』実行委員会のメンバーになる二ツ家和樹さんのおやじさんでした。

とりあえずFacebookに『40歳の式典がしたい』って書いたら、友人で市議会議員の桑原望さんが『それ、俺もやりたいと思ってた!』って。じゃあ、ふたりで話そうということになったんです」(大森さん)

長岡の仕掛人といえばこの人、大森政尚さん。Facebookですぐレスをくれた友人の桑原さんと「(長岡名物の)洋風カツ丼を食べながら話したのが始まりです」

40歳の式典について語り合った大森さんと桑原さん。企画の背景には、この街の少子化や人口減少といった喫緊の課題も念頭にあったという。

「長岡市生まれの僕らの代が4000人、20才下の代は2000人、人口も子供の数も確実に減っている。しかし、物が動けば人が動く、人が動けば物が動くというもので、毎年こういった式典や集まりがあれば、いろいろな物や人が動くだろうと。人が交流するシステムをつくりたかったんです」(大森さん)

そして、大森さんは同い年の仲間たちに声をかけ、自ら動き始めた。

「脂が乗って、力もついて、わからなかったこともわかってくる40歳から60歳は“爆発する時間”です。そのタイミングで再び手を取り合って、見知らぬ同士も知り合って。仕事でもなんでも、つながっていけたらいいじゃん!って。僕はワーワー発信する役ですが(笑)、それを整理して形にしてくれる友人たちが周りにいました」(大森さん)

「大成人式」というインパクトのある名称を生み出したのも、そんな仲間のひとりだった。

「『真成人式』とか『ダブル成人式』とか、いろいろ考えていたとき、近藤陽一郎というアイデアマンのシンガーソングライターが『60歳を還暦、120歳を大還暦っていうから、40歳は大成人式でどうだろう』と。『おもしろい!それだ!』と決まりました」(大森さん)

 

50人規模か、1000人規模か——
掴みあぐねていたスケール感

発起人の大森さんに巻き込まれ、実行委員になった1人がフレンチレストランのオーナーシェフである西澤さんだ。彼を含めて10人弱でスタートした実行委員会だったが、途中で辞めてしまった人もいたという。

「1000人規模のものを目指していましたが、50人くらいでいいんじゃない?という意見の相違があったからです。でも、どうせやるなら、多くの人に集まってほしいと僕らは思っていたんです」(西澤さん)

創業140年の割烹「魚仁」の6代目で、フランス料理の「Restaurant uoni」を切り盛りする西澤敬介さん。長岡ガストロノミー(美食学)研究会のメンバーでもある。

 

各地域の参加者を集めるために
町のリーダーを探せ!

結局、1000人規模を目指すことになった「大成人式」。しかし、その達成のためには、乗り越えなければならない壁がいくつもあった。

そのひとつがエリアの問題だ。長岡市は平成17年と18年の市町村合併で現在は11のエリアから成る。実行委員たちは、合併前の各市町村で成人式を行っていた世代だ。合併地域の人たちに「大成人式」に参加してもらうにはどうしたらいいかと悩んだ。

「若い世代には垣根はありませんが、僕らの世代にはまだあるので、合併地域からも来てもらうには、それぞれの町のリーダーを探すしかない。それで『中学校』がキーワードになりました。中学校ごとに幹事を立てようと。友達のツテを頼りに『誰か栃尾で強いやついない?』と聞いてみたり、たまたま知り合った人が同い年とわかって『どこ中学なの?』って聞いてみたり。あとは西澤くんの人脈で声をかけまくってもらいました」(大森さん)

「市の中心部にある中学校出身者に実行委員が偏ってしまうと、中心部だけで満足していると思われてしまう。内輪で盛り上がってる印象を持たれないように、実行委員の出身エリアを分散させようと。その辺には気を遣いましたね」(西澤さん)

西澤さんから声がかかって実行委員会に加わったのが、バレエ・ダンス教室の代表をつとめる清水さん。

「『(母校の)新潟大学付属中の幹事をお願い』って言われて、なんだかよくわからず巻き込まれた(笑)。長く没交渉の同級生もいましたが、いまはSNSなど探す手段もあり、友達の友達でつながって名簿が埋まりました。成人式はそれぞれの市町村でやったわけですが、現在の長岡全体で大成人式をやれたのはよかったですね」(清水さん)

西澤さんとは長岡高校の同級生の清水さん。長岡市内外でバレエとダンスの教室を展開する「JFB+Hかむろ真鶴」の代表で建築士としての顔も持つ。

長岡市内31の中学校から幹事を選出し、実行委員会を結成。長岡の縁を紡ぎ、絆を強固にし、次世代へつなげていくために、自らアクションを起こして新しい未来を創出する「地方創生」的な試みとなった。

「大成人式に出席したのは約700人でしたが、式の前日に開催した同窓会の出席者も含めた交流人口としては、目標の1000人を超えました。前日の同窓会で飲みすぎて、当日来れなかった人もいましたね(笑)」(大森さん)

大成人式を企画運営しながら親しくなっていった3人。笑いの絶えない座談会となった。

 

参加した700人、それぞれの思い

そして、いよいよ迎えた、第1回の大成人式。「わー、久しぶり!」という声があちこちで飛び交い、旧友との再会で高揚した空気が会場にあふれたという。

中学校ごとに設けられた受付。合併地域の幹事たちも大活躍。

大成人式は厳かな式典と賑やかな祝賀会の2部構成。式典では大森会長や磯田達伸市長が挨拶し、長岡市の未来に向けた希望を語った。祝賀会では中学校の幹事たちがステージ上に並んで光の環をつなぎ、地域の連携をアピールするという演出も。そして、長岡市の「日本酒で乾杯を推進する条例」への賛同を呼びかけ、大成人式オリジナルのお猪口で乾杯。長岡花火『フェニックス』の映像上映もあり、この街らしさが詰まった心温まる2時間となった。

大成人式は長岡市共催。磯田達伸市長もお祝いに駆けつけてくれた。

長岡市民だけでなく、全国各地からやってきた参加者たち。

長岡のすべての地域を光の輪でつなぐ演出に強い絆を実感して、みんなで「乾杯!」

式典の後はカジュアルな祝賀会。飲みながら食べながら昔話や近況を語り合い、新たな出会いも生まれた。

実行委員会の集合写真。つくりあげる過程を大いに楽しんだ委員同士も親密になり、強固な連携が出来上がった。

参加者の反応はどうだったのだろう。

「みんな喜んでいました。長岡花火の映像を見て涙している人もいたし。実行委員の二ツ家さんによる演出がとてもよかった」(清水さん)

「二ツ家さんは本当にがんばってくれました。本人は『採算度外視だよ』ってぼやきつつ笑ってたけど、そもそも大成人式は彼のおやじさんが『やれ』って言って始まったんだから(笑)。中越地震で人が流出してしまった地域もありましたが、合併地域からもたくさん来てくれて。『実家はこっちじゃないけど、来てみてよかったです』とコメントしてくれた人もいたし、長岡技術科学大学の外国人留学生もいた。長岡出身でなくても、この街に縁のある該当学年の人なら誰でも参加できますから」(大森さん)

「長岡まつり大花火大会」の打上げアナウンスの放送進行も担う、イベント会社Deux-PLANの二ツ家さん。現在は二代目の彼が代表を務める。

「終わって“大成人式ロス”になった人も。『またやりたい!』ってLINEがどんどん入ってきました。同い年というだけの共有と共感、たったそれだけなんだよね。大成人式を機に、バツイチ同士で再婚した人もいたんですよ」(西澤さん)

「僕たちの中学は前日と当日に2回も同窓会をやったんです。前日には先生を招いた同窓会をやって、当日は大成人式に行ってからまた宴会をやって。祭りですね(笑)。県外からもたくさん来ました」(清水さん)

東京を拠点に活動しながら、大成人式後に長岡で起業した人も。清水専央さんの中学時代の同級生、プログラマーの清水亮さんである。

図書館は多様性を育む場所〜天才プログラマー・清水亮さんインタビュー〜

「彼は長岡で起業する意味をずっと考えていたそうですが、大成人式が背中を押したとしたら嬉しいですね。起業もIターン・Uターンも大歓迎。40歳という絶妙のタイミングで横と縦のネットワークが構築されるのは街にとってもいいことだし、再会や新しい出会いで日常を揺るがす経験が楽しいと思えるのは40歳ならでは。他県から来た人も、みんな自分のルーツを確認して帰路についたと思います」(清水さん)

「西澤くんは料理人だからパーティーの飲食関係はおまかせだし、議員もいる、イベント制作会社もいる、印刷物を作れる人もいる。いいメンバーだったね」と振り返る大森さん。

 

そしてバトンは「今年の40歳」
——昭和52年度生まれへ

昭和51年度の大成人式を無事に終え、次の代にバトンは手渡された。今年は、どのように準備を進めているのだろうか。

「僕らは2年くらいかけてノウハウを得たので、経験を伝え、主役の代をサポートしていくために、実行委員会の中からメンバーを募ってサポーターズクラブを立ち上げました。大成人式で横のつながりもできて、経験者がサポートすれば縦のつながりも生まれ、長岡市の活性化につながる人脈のベースができるかなという期待もあります」(清水さん)

「1年単位だと準備の時間が足りません。当該学年の下の代も2、3年のスパンで絡んでいけば、次はいよいよ自分たちだなぁという感覚が生まれると思います。今年は時間も予算も不足していますが、来年度以降の継続を視野に入れて考えないと」(西澤さん)

八重桜の「八重山古志」を大成人式の記念樹として長岡市に寄贈し、昨年10月、悠久山公園に植樹した。

今年の実行委員会。主役の昭和52年代をサポーターズクラブがバックアップ。

昨年の幹事から声がかかり、バトンを受け取って実行委員会の会長に就任した大谷内広樹さんにも話を聞いた。地元を離れて北海道や東京などで働き、長岡に戻ったという大谷内さんにとって、この街はどう映っているのだろう。

「私が卒業した中学はあまり同窓会をやっていなくて、大成人式で集まるとなると、20歳以来。20年ぶりになりますね。あちこちで暮らしましたが、長岡はいつか帰りたい場所でした。小さな街だけど、コンパクトにいろいろなものが詰まっていて、交通の便もよく、食べ物もおいしいし、雪も降るけど気候もいい。五感を駆使できる環境は子育てにもいいです」(大谷内さん)

今年の会長は大谷内広樹さん。地元の住宅メーカーで管理職を務める。

「40歳といえば会社でも中堅どころで、いろいろな経験と意見をもって、これからなにかを変えようと思ったとき、人のつながりが力になり、追い風になると思います。大成人式がいい機会になるでしょう」(大谷内さん)

「今年の大成人式もぜひたくさんの人に参加してほしいですね」と大谷内さん。

近くの新潟県十日町市でも、この5月に「2度目の成人式」が行われた。全国各地で広がりを見せる40歳の集い。人生80年時代の折り返し地点に、これまで来た道を振り返り、この先の時間をさらに実り多いものにするために、勇気を出して飛び込んでみるのもいいだろう。故郷はいつも温かく迎えてくれるし、人のつながりからきっと新しいなにかが生まれるに違いない。

 

Text: Akiko Matsumaru
Photos: Hirokuni Iketo
(大成人式当日と植樹式等の写真は実行委員会からお借りしました)

 

大成人式
[日時]2018年6月9日(土)13:00受付開始、14:00開式(16:00終了予定)
[会場]シティホールプラザ アオーレ長岡 アリーナ
[参加費]4000円
[対象]昭和52(1977)年4月2日~昭和53(1978)年4月1日生まれの人
※長岡に縁のある人は誰でも参加できます
[主催]大成人式実行委員会、大成人式サポーターズクラブ
[共催]長岡市、ながおか・若者・しごと機構
[チケット]チケットぴあで販売中
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=1815046
[URL]http://nagaoka40th.wixsite.com/20170618/

 

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