な!ナガオカ

狙うは学生ロボコンの頂点。長岡技科大の挑戦を追った

学ぶ長岡
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2017年 7月 17日 | な!ナガオカ スタッフ

「ロボコン」と呼ばれる、日本全国の技術者の卵たちがロボット競技の日本一をかけて戦う大会がある。その中でも、1991年にスタートした「NHK学生ロボコン大会」は、厳しい審査を突破し た学校のみが出場を許される、学生日本一を決める戦い。12年連続14回の出場歴を誇る長岡技術科学大学ロボコンチームは、ロボコン強豪校のひとつだ。

今年も7月17日(月・祝)にNHK学生ロボコン2017 ~ABUアジア・太平洋ロボコン代表選考会~が放送されたばかり。ご覧になった方もいたのではないだろうか。毎年、数々のドラマが生まれるNHK学生ロボコン。熱い戦いが繰り広げられるのは、テレビに写るシーンだけではない。

「な!ナガオカ」では、長岡の誇りを胸に熱い戦いを繰り広げた彼らの軌跡を追った。

 

ずばり、技科大の作戦は?

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2017年5月某日、午後7時。新潟県長岡市。

市街地から少し離れた緑豊かな丘陵にある長岡技術科学大学、通称「技科大(ぎかだい)」。構内の一角にある多目的施設「セコムホール」に学生たちが続々と集まっていく。建物の中では、十数名ほどの学生が黙々と、ときに声を上げながら、動き回っている。

中心にあるのは、金属製の枠で囲われた機械。時々けたたましい音をたて、機械の土台部分に取り付けられた電子基盤は激しく点滅している。

彼らは、2017年6月に東京で開催される「NHK学生ロボコン2017」に出場するため結成された長岡技術科学大学ロボコンプロジェクト(ロボプロ)のメンバーである。

ロボコンは毎年、出題テーマが異なるのだが、今年のテーマ名は「The Landing Disk(ザ・ランディング・ディスク)」。日本の伝統遊戯「投扇興」をモチーフとしており、開いた扇を台の上に乗せるがごとく、「いかに多くのディスクをターゲットに乗せられるか」を競うのだ。

ロボットがディスクを投げ、ターゲットである7つの台の上にあるボールを落とし、台の上にディスクを置くことで得点となる。決定的に試合を左右する特殊ルールもある。7つの台すべてに自チームのディスクを乗せると、「APPARE(天晴れ)!」となる。その瞬間、台に乗せたディスクの枚数に関わらず、勝利が決まる。

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ドイツ製のフライングディスク「Volley®︎(※「R」マーク)Soft Saucer」。ディスク以外にも台座、レーンなど、すべての素材が指定される。

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台上のボールを落とし、ディスクを乗せる(Landing)ことで得点。

7つの台に効率よく枚数を乗せる戦略をとるのか。それとも「APPARE!」をねらうのか。戦略は大きく2つに分かれるが、長岡技科大はズバリ、後者の戦略をとる。

「短時間でAPPARE!を狙いにいきます」

そう話すのは、ロボコンプロジェクトリーダーの大塚建斗さんだ。プロジェクトを統括する総合リーダーとしてチームのマネジメントからメディア対応にいたるまですべてを担当する。

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「ロボプロ」プロジェクトリーダーの大塚建斗さん。

 

ロボット誕生の舞台裏に潜入!

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「どうぞどうぞ!すべて見ていってください」そう言って大塚さんが案内してくれたのは、ロボットが産声をあげた場所「機械・建設棟203号室」だ。

部屋にはボール盤、CNCフライスといった工業製品を製作する際に実際に使われる産業機械がいたるところに置かれている。なかには非常に高価な機械も置かれており、ロボコンプロジェクトに対する大学の期待の大きさが伺える。

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「これは……すごいですよ」と見せてくれた製作機械。1台数百万円もするのだとか!

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こうした産業機械を使い、ひとつひとつの部品を自分たちの手で1から製作していくのだ。

「4年生たちはロボコン直後、インターンシップに参加するため、技術継承が難しい。一方で高専ロボコンで活躍した人が3年次に編入してくる強みもあります」と技科大ならではの事情を語ってくれた大塚さん。先輩後輩合わせて13名のメンバーがそろって準備できる期間は1年間と短い。その限られた時間で、設計から製作、調整につぐ調整……と、力を合わせ、大会に向け準備していく。

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CAD(コンピュータ設計ソフト)によってつくられた図面。

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美しさすら感じる、無駄のないフォルムだ。

 

本選のフィールドで戦う3人のキーマン

今大会で技科大チームは「機械班」「設計班」「プログラム班」の3つの班を置き、各部門が協力してひとつのロボットを作り上げる形をとっている。実際に本選のフィールドでロボットの操縦を担当する各班のチームリーダーにお話を伺った。

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機械班班長の小栗光平さん。普通科高校の出身で1年次からロボプロに参加。「イチからいろいろ覚えてきた」と言う。実戦でのリーダーの役割も担う。

「こんなにデカくてスピードが出せるロボットを持ち込むっていうのは、たぶんウチだけなんじゃないでしょうか」。自信たっぷりにそう話してくれたのは、機械班班長の小栗光平さん。「ウチの大学は他と比べると機械系がすごく強い。電気制御にあまり負担をかけずに機械の方でやっちゃおう、と機能を追求した結果、大型のロボットになったんです」。

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設計班班長・八友大知さん。表情からは、やることはすべてやったという自信が垣間見える。「あとはもう、調整をがんばるだけですね」と話してくれた。

設計班班長の八友大知さんは機械部品の設計を担当した。機能重視の大型ロボットだけに、大会ルールの重量制限をオーバーしないように苦労したと言う。また「実際に使用するディスクには直径に細かなバラつきがあるんです。いわゆる飛びモノ系で正確な値が定まらないのは致命的」と苦笑する。「いかに中央値に近づけて、それに合うようマシンの調整を追い込んでいくのか。その勝負になると思います」

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電気班班長・稲岡夢人さん。稲岡さんは3年次からの編入生。兵庫県の明石高専からの編入組だ。高専時代にもロボコンに打ち込んだ経験を持つ。

最後は、電気班班長・稲岡夢人さん。「僕らが担当するのは、動いて当たり前と思われる部分なんです」。プログラムと電気系統は、人間に例えるなら脳と神経にあたる部分だ。しかし技科大のロボットは7機の射出機構を積んでいるため、電気回路やプログラムは複雑になる。操縦も担当する稲岡さん。「がんばるポイントがあるとしたら……当日確実に動かすこと、でしょうか。それに向け調整をがんばります」

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コントローラー。7つのボタンがそれぞれターゲットの台に対応している。

淡々と、しかし熱を込めて語ってくれた3人のリーダーたち。

自分たちの持てる技術の粋を結集し、限界まで追い込みをかけ、本選へ乗り込む。

 

いよいよ迎える本大会

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東京都大田区・大田区総合体育館。

2017年6月11日。いよいよ大会当日。舞台となる東京都・大田区総合体育館には、朝早くから観戦を希望する観客が列をつくっている。

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選手宣誓で大会スタート。

大会は、総当たり戦の予選リーグを経て、上位1チームが決勝トーナメントに進出する方式。長岡技科大はG組。東京農工大学(東京)、立命館大学(京都)と戦う。

 

予選リーグ1回戦、対東京農工大学戦

1回戦開始。長岡技科大は予選リーグ第7試合から登場する。

布陣は青が長岡技科大、赤が東京農工大。技科大の巨大なロボットがうなり声を上げ、スローイングエリアを素早く滑走する。これには観客席から一際大きな歓声が上がる。

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装填エリアで素早くディスクを装填。

中央の射出地点に着いた小栗さん、八友さん、稲岡さんの3人。7つの射出機構でそれぞれ狙いを定め、APPARE!を狙いにいく。

対する東京農工大学は、非常にユニークな戦術をとる。圧縮して球状にしたディスクを弾丸のように発射し、まずはボールを一気に落とす。その後、たたみかけるように重ね投げで豪快にディスクを発射するというスタイルだ。

これが見事にハマる。

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一気に3つのディスクを乗せるなど、力技で得点を重ねる東京農工大。

ボールが落とされたスポットを正確に狙っていく技科大だったが、東京農工大の重ね投げが次々に決まっていく。

丁寧にひとつひとつ狙っていく技科大と、まるでバズーカ砲のように豪快にディスクを投げ飛ばす東京農工大。落とされたスポットを懸命に奪い返そうと激しい攻防が続く。

技科大は5点スポットへ狙いを定めるが、力及ばず。最終的に東京農工大がAPPARE!を達成し、勝負あり。1回戦のスコアは東京農工大APPARE!(29点):長岡技科大5点となった。

 

意地と意地のぶつかり合い。立命館大学戦

東京農工大は続く立命館大も破り、予選リーグで連勝。早くも決勝トーナメント進出が決まる。この時点で技科大の進出の道は断たれてしまった。

技科大VS立命館大戦、スタート。今回もスローイングエリア中央から7つのスポットを同時に狙う技科大。基本戦略は変わらないが、5点スポットをより確実に狙いにいく。

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着実に得点を重ねていく技科大チーム。

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めまぐるしく動く試合の流れに合わせ、狙いを変更していく。操縦する稲岡さん、リーダーの小栗さんの表情は真剣そのもの。

射出機構のトラブル(?)で出遅れる形となった立命館大。その隙を逃すまいと技科大が順調に得点を重ねる。

その後、立命館大が必死の追い上げをみせるも、結果は8対3で長岡技科大の勝利。

NHK学生ロボコン2017の対戦動画クリップはこちら

※長岡技術科学大学の東京農工大学戦、立命館大学戦をはじめ、出場各校の対戦が見られます。

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勝利はしたものの、メンバーに笑顔はなかった。

 

優勝は東京工業大学

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ふたつの「鎌鼬(かまいたち)」から狙いを定めて精確に投げ込む東京工業大学。

その後も各出場校の激しい戦いが続く。1点を争う一進一退の攻防、ひたすらAPPARE!を妨害する戦術のぶつかり合いなど、熱い場面がいくつも生まれた。

決勝は、初の決勝進出を果たした東京工業大学と前回王者の東京大学の対戦に。

飛び抜けた奇抜さや派手さはないものの、冷静かつ確実に、淡々と得点を重ねる試合で勝ち進んできた東京工業大学が初の優勝を決め、NHK学生ロボコン2017は幕を閉じた。

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まるで人間の手のようにスナップを効かせ、ディスクを投げる新潟大学チームのロボット。

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PCを使いディスクを一枚一枚選んでいく東京大学チーム。

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シート状の部品にディスクを挟み、一気に得点をねらう戦略をとった東京工科大学。優勝校・東京工業大を唯一撃破した。

惜しくも優勝を逃したものの、各出場校のアイデア、奇抜な戦術には惜しみない拍手と声援が送られていた。「最強の戦い方」がなく、相性やその時々の戦術で勝敗が変わってくる。まるでスポーツのような戦いが繰り広げられた大会だった。

 

新たな戦いはすでに始まっている

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終了後、体育館前に集合する技科大メンバーたち。敗退決定直後は、目に悔し涙を浮かべ、しばらく立ち上がれないメンバーの姿もあったが、晴れやかな顔をしている。

体育館内の空調による風の影響が大きかったとの声も聞かれたが、と質問すると、

「関係ないです。それすらも考慮に入れないと。そんなことが影響しているようでは、そもそも工業製品としては失格なわけですから」と異口同音に答えるメンバーたち。「ロボコンに出るのは、通過点にすぎない」と話すメンバーも。

その姿からは、勝負に負けたことと同じかそれ以上に、もっと正確に機械を動かせたのではという、技術者としての純粋な悔しさが大きいように思われた。

「来年は技科大の誇りをみせます」と語っていた3年生もいた。技科大の誇り。ロボコン強豪校として先輩から受け継がれる誇りを胸に、悔しさをバネに、はやくも来年を見据える。新しい戦いはすでに始まっているのだ。

 

ロボコンの原点「遊び」

「ディスクをなるべく遠くまで飛ばすロボット」この機械が果たして何の役に立つのだろう?と思う方もいるだろう。

今大会のテーマは、日本の伝統的な遊びから着想を得ている。公式サイトには「遊び心あるデザイン・戦略を歓迎」とある。「遊び」はロボコンの原点でもある。

プロジェクトリーダーの大塚さんは「遊び心……を入れたいとは思いつつ、遊んでいたら勝てませんから」と語っていた。「でも、機械のつくりだったり、どこかしらに遊び心を感じてもらえればなとは思っています」

観客席では長岡技科大の試合中、他校から「音、やばい!」「速っ!」「フレーム、めっちゃ綺麗じゃん」といった声が上がっていた。いずれも、メンバーが「見て欲しい」と語っていた部分だ。

技術者としての限界の追求。それは観ている人たちに、たしかに伝わっていたのではないだろうか。

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Text and Photos: Junpei Takeya

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