雑木林が丸ごと幼稚園に!? 自然派ママ注目の「森のようちえん ふたばっこ」

2016.10.24

実は子育て中のママも多い「な! ナガオカ」のスタッフ。子供の教育は、日々頭を悩ませる身近な問題でもあります。そんなとき、「とってもユニークな幼稚園がある」という噂が。さっそく、取材に向かってみました。

長岡駅から東へ5キロ、曲がりくねった山道を登って行き、ようやくひらけた場所に見えたのは、大きな森。園舎らしき建物はなく、あるのは小さなログハウスだけです。首をひねりながら奥に進むと、子どもたちの楽しそうな笑い声。ニワトリやネコの鳴き声も聞こえ、にぎやかな光景が目の前に現れます。そう、こちらが「すべて自然の中にある」ユニークな幼稚園「森のようちえん ふたばっこ」(以下、ふたばっこ)なのです。

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赤城コマランドの敷地内にあります。手作りの木製看板がお出迎え。

「森のようちえん」というコンセプトは、1950年代のデンマークで始まりました。自然の中で過ごす教育方針は北欧やヨーロッパを中心に広がり、日本でも10年ほど前から認知されるようになりました。現在、新潟県内には森のようちえんが4ヵ所(上越、長岡、新潟市秋葉区、三条)あり、ふたばっこは今年で9年目を迎えます。園児は24名で保育スタッフは一日に3名体制。3~5才児の子どもたちが、この森で毎日元気に遊んでいます。

 

雨の日も雪の日も、自然の中で過ごす

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「雨の日って楽しいよ。水たまりに飛び込んだり、ザーザーと響く雨の音を聞いたり、屋根から落ちてくる雨だれを背中にあてれば滝修行だってできるんだ!」

 「森のようちえん」と一般的な幼稚園との大きな違いは、「一日中、自然の中で過ごす」ということ。雨の日も雪の日も、かなりの悪天候でなければ基本は外での遊びをしています。天気が悪くても子どもたちは傘ももたずに、雨の日ならではの遊びができると嬉しそう。濡れて風邪をひくのではと、大人は心配してしまいがちですが、本来子どもたちは水が大好き!ここでは、子どもたちの自然な遊びの欲求を、保育スタッフが見守ることで叶えているのです。

もちろん、夏の暑い時期には熱中症に気を付けながら過ごしたり、寒いときにはお散歩のあとにログハウス内で過ごしたりと、子どもたちの体調管理には最大限に気を配っています。

 

園児たちの一日の過ごし方

園児たちは一日をどのように過ごしているのでしょうか?ちょっと覗いてみましょう。

朝9時半頃に子どもたちが登園してきました。「おはようございます!」と元気なあいさつが響きます。

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ピーラーと格闘中。真剣なまなざしです。

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火起こしも慣れたもの! 園児と保育スタッフたち全員分のみそ汁を毎日作ります。

一日のはじまりは、みそ汁作りから。園児たちは毎日、みそ汁に入れる具材を持ってきます。ニンジン、キャベツ、油揚げ、乾燥ワカメなど何でもOK。持ってきた具材は、自分で包丁を使って小さく切り刻みます。

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大人の足で歩いても最長1時間はかかるほど広い森。近くには川や畑もあります。

みそ汁作りがひと段落した10時半、朝の会がはじまります。そして、みんなで森の中のお散歩へレッツゴー!季節によって変わる植物や虫たちの観察は、毎日発見の連続です。この日はたくさんの栗をひろいました。

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巨大なトランポリンでジャンプ!遊びながら身体のバランス感覚を養います。遊具は地元の方の協力で作られたものがほとんど。

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まるで忍者のようなガケ遊び。土の感触は日によって違うから、足の踏ん張り方を変える必要があるようです。

森には、子どもたちの好奇心をくすぐる遊び場がいっぱい。秘密基地、ブランコ、ターザンロープ、ツリーハウスなど、身体を思いっきり使って遊ぶことができます。野外で遊ぶことは一歩間違えると危険が伴う“小さな冒険”です。そのため、保育スタッフがしっかりと見守っています。

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「はい、どうぞ」「ありがとう」。誰に言われるでもなく、子どもたちはお礼のあいさつをきちんとします。

お腹が空いてきた12時、いよいよお昼ごはんの時間です。朝に作った具材たっぷりのみそ汁と、家からもってきたお弁当をみんなで一緒に「いただきまーす!」。配膳するのは子どもたちの担当。そして、食べ終わった茶碗の片付けも、子どもたち自身で行います。

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トントントン、なにができるかな?上手に金づちを使って、木材をかたちにしていきます。

午後のお楽しみは「大工仕事」です。金づちと釘を使って、本格的に木材を組み立てます。何を作るかは子どもたち次第。朝の会のときに座るイス、飼育しているニワトリのおうち、どんぐり転がしゲームなど、アイディアが光ります。大人と同じ道具を使ってものづくりをすることは、大きな達成感につながりそうです。

楽しかった一日もあっという間。14時半になると、ママやパパがお迎えにきます。まだ遊びたいと帰りたがらない子もいるほどで、子どもたちは森で過ごす時間を夢中で楽しんでいるようです。

 

一般参加もOKの「ねっこぼっこ組」「森ようび」

ふたばっこの園児じゃないけど、森遊びがしたい!そんな子どもたちのために用意されているのが、「ねっこぼっこ組」と「森ようび」です。

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森のようちえんが初めての子でも大丈夫。自然の中にいると子どもたちがのびのび過ごしているのがわかります。

「ねっこぼっこ組」は森のようちえんの子どもたちと一緒に一日を過ごす、親子参加の特別なクラスです。(月2~3回。参加費一組700円。※前日までに要予約)0歳児から参加でき、森の遊びをたっぷりと楽しめます。この時季は、落ち葉たき、焼いもづくり、干し柿づくり、ドングリひろいなど、秋を存分に感じる遊びができます。

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この日は直火で焼くねじりパン作り。親も子どもも一緒に、みんなで作って食べて楽しみました。

「森ようび」は休日開催クラスです。赤ちゃん、小中学生、パパママ、おじいちゃんおばあちゃん、森で過ごしてみたい人なら誰でも参加できます(月1~2回。参加費一人500円、1才未満無料。※3日前までに要予約)。園児たちと同じように、森で火を起こしてみそ汁を作り、遊んだあとにみんなでごはんを食べます。

休日は時々イベントも開催しています。石窯でピザや天然酵母パンを焼いたり、蜜蝋ローソク作りをしたり、冬にはお餅つきも。詳細はホームページを確認してくださいね。

 

自分で考え、決めて、行動する。だから自立心が育つ

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神奈川県での幼稚園教諭時代、シュタイナー教育と出会い「自然のもの、本物を大切にしたい」という信念をもつようになった、だっこちゃん先生。3児の母でもあります。

この「森のようちえん ふたばっこ」を作ったのは、一人の女性。いつも穏やかでやさしい口調、子どもたちや保育スタッフ全員に信頼されているこの女性こそが、代表の古川貞子さんです。みんなからは親しみを込めて「だっこちゃん」と呼ばれています。

「わたし、園児たちを子ども扱いしたことがないんです。みんな一人前の子たちとして接しています。だから、やりたいことがあったら何でもチャレンジさせるんです」と、だっこちゃん先生。その言葉通り、ここでは「子どもには無理かも…」と思われているようなことでも、なんでも挑戦する姿があります。

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山で収穫した山菜を天ぷらに。子どもたち自身が調理する「森のレストラン」では季節の恵みをいただきます。

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森のお店やさん。手作りの梅干や布巾、山で見つけたムカゴなどいろんなものを売っています。ごっこ遊びから発展した、本物のお店です。

季節の手しごと梅干づくり、植物の色を抽出する草木染め、きのこや山菜の収穫など、まるで大人がすることと変わりありません。ですが、これらは子どもたちにとってあくまでも「遊び」の一つ。それが、「大人と同じようにできた!」という達成感につながっています。

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室内での活動も。2016年12月には冬の拠点となる新園舎が完成予定。「静」の遊びの幅がさらに広がりそうです。

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書初めに挑戦。筆と墨を使うのは初めてだったけど、いい書ができました。

外での「動」の活動だけでなく、手仕事で美しい感性を育む「静」の活動も取り入れています。ミツロウ粘土遊び、羊毛遊び、陶芸、パステル画といった、集中力を必要とする遊びにも子どもたちは真剣そのもの。

「こういった遊びは保育スタッフから提案することもありますが、基本的には子どもたちの『やってみたい』の声からはじまります。私たちはあくまでもサポート役で、環境をととのえてあげることに徹するんです。自分たちで考え、決めて、行動する。この過程こそが、子どもたちの自信となり、しなやかでたくましい心を育てると信じています」

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親も子どもも全員集合!「お弁当作りにお迎え、泥だらけの服の洗濯は大変ですが、子どもたちが全力で遊びイキイキとしている姿には代えがたいものです」と、ふたばっこに子どもを通わせるあるママが話してくれました。

自然のなかで過ごす教育というと、自由奔放に育ちすぎて、小学校に上がったときに集中して授業が聞けなくなるのでは……と、心配する方もいるかもしれません。しかし、実際はまったくの逆。自分で考えて行動する「自立心」をここで育んだ子どもたちは、周りの状況をよく見て、友だちにも優しくできる子に育っているようです。

もしかすると「遊ぶ」と「学ぶ」は限りなく近いものなのかもしれません。ふたばっこで日々行われる「本物の遊び」は学びとなり、子どもたち自身の糧となっています。

 

森のようちえんふたばっこ
[住所]新潟県長岡市栖吉町字岩野
[電話]080-5651-1049(代表:古川携帯)※保育中(9:30~14:30)の時間外でのお問い合わせをお願いいたします。
[HP]http://morinoyouchien.wixsite.com/morinoyouchien

 

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