雑木林が丸ごと幼稚園に!? 自然派ママ注目の「森のようちえん ふたばっこ」
実は子育て中のママも多い「な! ナガオカ」のスタッフ。子供の教育は、日々頭を悩ませる身近な問題でもあります。そんなとき、「とってもユニークな幼稚園がある」という噂が。さっそく、取材に向かってみました。
長岡駅から東へ5キロ、曲がりくねった山道を登って行き、ようやくひらけた場所に見えたのは、大きな森。園舎らしき建物はなく、あるのは小さなログハウスだけです。首をひねりながら奥に進むと、子どもたちの楽しそうな笑い声。ニワトリやネコの鳴き声も聞こえ、にぎやかな光景が目の前に現れます。そう、こちらが「すべて自然の中にある」ユニークな幼稚園「森のようちえん ふたばっこ」(以下、ふたばっこ)なのです。
「森のようちえん」というコンセプトは、1950年代のデンマークで始まりました。自然の中で過ごす教育方針は北欧やヨーロッパを中心に広がり、日本でも10年ほど前から認知されるようになりました。現在、新潟県内には森のようちえんが4ヵ所(上越、長岡、新潟市秋葉区、三条)あり、ふたばっこは今年で9年目を迎えます。園児は24名で保育スタッフは一日に3名体制。3~5才児の子どもたちが、この森で毎日元気に遊んでいます。
雨の日も雪の日も、自然の中で過ごす
「森のようちえん」と一般的な幼稚園との大きな違いは、「一日中、自然の中で過ごす」ということ。雨の日も雪の日も、かなりの悪天候でなければ基本は外での遊びをしています。天気が悪くても子どもたちは傘ももたずに、雨の日ならではの遊びができると嬉しそう。濡れて風邪をひくのではと、大人は心配してしまいがちですが、本来子どもたちは水が大好き!ここでは、子どもたちの自然な遊びの欲求を、保育スタッフが見守ることで叶えているのです。
もちろん、夏の暑い時期には熱中症に気を付けながら過ごしたり、寒いときにはお散歩のあとにログハウス内で過ごしたりと、子どもたちの体調管理には最大限に気を配っています。
園児たちの一日の過ごし方
園児たちは一日をどのように過ごしているのでしょうか?ちょっと覗いてみましょう。
朝9時半頃に子どもたちが登園してきました。「おはようございます!」と元気なあいさつが響きます。
一日のはじまりは、みそ汁作りから。園児たちは毎日、みそ汁に入れる具材を持ってきます。ニンジン、キャベツ、油揚げ、乾燥ワカメなど何でもOK。持ってきた具材は、自分で包丁を使って小さく切り刻みます。
みそ汁作りがひと段落した10時半、朝の会がはじまります。そして、みんなで森の中のお散歩へレッツゴー!季節によって変わる植物や虫たちの観察は、毎日発見の連続です。この日はたくさんの栗をひろいました。
森には、子どもたちの好奇心をくすぐる遊び場がいっぱい。秘密基地、ブランコ、ターザンロープ、ツリーハウスなど、身体を思いっきり使って遊ぶことができます。野外で遊ぶことは一歩間違えると危険が伴う“小さな冒険”です。そのため、保育スタッフがしっかりと見守っています。
お腹が空いてきた12時、いよいよお昼ごはんの時間です。朝に作った具材たっぷりのみそ汁と、家からもってきたお弁当をみんなで一緒に「いただきまーす!」。配膳するのは子どもたちの担当。そして、食べ終わった茶碗の片付けも、子どもたち自身で行います。
午後のお楽しみは「大工仕事」です。金づちと釘を使って、本格的に木材を組み立てます。何を作るかは子どもたち次第。朝の会のときに座るイス、飼育しているニワトリのおうち、どんぐり転がしゲームなど、アイディアが光ります。大人と同じ道具を使ってものづくりをすることは、大きな達成感につながりそうです。
楽しかった一日もあっという間。14時半になると、ママやパパがお迎えにきます。まだ遊びたいと帰りたがらない子もいるほどで、子どもたちは森で過ごす時間を夢中で楽しんでいるようです。
一般参加もOKの「ねっこぼっこ組」「森ようび」
ふたばっこの園児じゃないけど、森遊びがしたい!そんな子どもたちのために用意されているのが、「ねっこぼっこ組」と「森ようび」です。
「ねっこぼっこ組」は森のようちえんの子どもたちと一緒に一日を過ごす、親子参加の特別なクラスです。(月2~3回。参加費一組700円。※前日までに要予約)0歳児から参加でき、森の遊びをたっぷりと楽しめます。この時季は、落ち葉たき、焼いもづくり、干し柿づくり、ドングリひろいなど、秋を存分に感じる遊びができます。
「森ようび」は休日開催クラスです。赤ちゃん、小中学生、パパママ、おじいちゃんおばあちゃん、森で過ごしてみたい人なら誰でも参加できます(月1~2回。参加費一人500円、1才未満無料。※3日前までに要予約)。園児たちと同じように、森で火を起こしてみそ汁を作り、遊んだあとにみんなでごはんを食べます。
休日は時々イベントも開催しています。石窯でピザや天然酵母パンを焼いたり、蜜蝋ローソク作りをしたり、冬にはお餅つきも。詳細はホームページを確認してくださいね。
自分で考え、決めて、行動する。だから自立心が育つ
この「森のようちえん ふたばっこ」を作ったのは、一人の女性。いつも穏やかでやさしい口調、子どもたちや保育スタッフ全員に信頼されているこの女性こそが、代表の古川貞子さんです。みんなからは親しみを込めて「だっこちゃん」と呼ばれています。
「わたし、園児たちを子ども扱いしたことがないんです。みんな一人前の子たちとして接しています。だから、やりたいことがあったら何でもチャレンジさせるんです」と、だっこちゃん先生。その言葉通り、ここでは「子どもには無理かも…」と思われているようなことでも、なんでも挑戦する姿があります。
季節の手しごと梅干づくり、植物の色を抽出する草木染め、きのこや山菜の収穫など、まるで大人がすることと変わりありません。ですが、これらは子どもたちにとってあくまでも「遊び」の一つ。それが、「大人と同じようにできた!」という達成感につながっています。
外での「動」の活動だけでなく、手仕事で美しい感性を育む「静」の活動も取り入れています。ミツロウ粘土遊び、羊毛遊び、陶芸、パステル画といった、集中力を必要とする遊びにも子どもたちは真剣そのもの。
「こういった遊びは保育スタッフから提案することもありますが、基本的には子どもたちの『やってみたい』の声からはじまります。私たちはあくまでもサポート役で、環境をととのえてあげることに徹するんです。自分たちで考え、決めて、行動する。この過程こそが、子どもたちの自信となり、しなやかでたくましい心を育てると信じています」
自然のなかで過ごす教育というと、自由奔放に育ちすぎて、小学校に上がったときに集中して授業が聞けなくなるのでは……と、心配する方もいるかもしれません。しかし、実際はまったくの逆。自分で考えて行動する「自立心」をここで育んだ子どもたちは、周りの状況をよく見て、友だちにも優しくできる子に育っているようです。
もしかすると「遊ぶ」と「学ぶ」は限りなく近いものなのかもしれません。ふたばっこで日々行われる「本物の遊び」は学びとなり、子どもたち自身の糧となっています。
森のようちえんふたばっこ
[住所]新潟県長岡市栖吉町字岩野
[電話]080-5651-1049(代表:古川携帯)※保育中(9:30~14:30)の時間外でのお問い合わせをお願いいたします。
[HP]http://morinoyouchien.wixsite.com/morinoyouchien