キリッと冷やせばピリッと爽快! 山古志の唐辛子「神楽南蛮」がサイダーに
山古志らしいおみやげってなんだ
まずは「小太郎サイダー」を企画・開発した仕掛け人、田中康雄さんに会いに「やまこし復興交流館 おらたる」に向かいました。
2004年10月23日に発生した中越地震で道路が寸断されて孤立し、全村避難を強いられた旧山古志村。その震災の記録と復興の歩みを写真、映像、証言などで紹介し、イベントを開催して住民の交流を図る「おらたる」は、山古志コミュニティの新たな拠点です。
山古志で生まれ育った田中さんは、「おらたる」を運営するNPO法人中越防災フロンティア理事で事務局長。なぜ唐辛子でサイダーを作ろうと思ったのでしょう。
「サイダーの前にも、メモ帳やクリアファイル、山古志産の米粉を使ったクッキーなど、おみやげの企画・開発をしてきました。おらたるを訪れた人が記念に買いたくなる、山古志らしいおみやげがあったらいいなと。NPO法人ではリスクを負えないので、中越地震10周年を機に株式会社F-Branchを立ち上げて取り組んできました。
いろいろ考える中、新しいおみやげとして、山古志名物の神楽南蛮をもっと活用できないかなと。神楽南蛮味噌とか炒め物とか、大人向けのものは前からありましたが、子供から大人まで広く楽しめるものがほしいと思ったんです。構想は2年くらい前からあって、どんなものがいいのか考えていく中で、わりと最初のほうの段階でサイダーというアイデアが出てきて。どこに頼めばいいのかわからず、いろいろ調べました」
“爽やかな辛み”をサイダーに
地ビールならぬ「地サイダー」(「ご当地サイダー」とも呼ばれる)は、全国各地でそれぞれの地域性を活かし、趣向を凝らして作られ、人気商品となっているものも。田中さんは、さっそく地サイダーのリサーチに取り掛かりました。
「神楽南蛮の“爽やかな辛み”はサイダーにぴったりじゃないか!これはイケる!と思って(笑)。たくさんの人にアイデアをもらいながら考えていきました」
神楽南蛮のサイダーと聞いて、瓶の中に唐辛子がごろっと1本入ったメキシコのチリビールを連想しましたが、「小太郎サイダー」の辛さはどの程度なのやら。味をどのように決めていったのかという疑問に、田中さんは笑顔で続けます。
「そうなんですよね。どの程度まで辛くするかということがポイントで、試作品を何種類か作ってもらいました。機械ではなく、工場の担当者の手作りで。原料としては、生の神楽南蛮ではなく、乾燥させて粉末にしたものを使っています。
サンプルではけっこう辛みの強いものも作ってみたのですが、これでは子供が飲めないよね……ということで、第一弾としては辛さ控えめになりました。私を含めてちょっと物足りないという意見もあり、次の展開としては、さらに辛いバージョンを作ってみたいと思っているところです」
「最初からGREENとREDの2種類を考えていましたが、テストではGREENが好評。REDはやめてGREENに絞ろうかと思ったこともありましたが、おみやげとしてはやっぱり2本セットのほうがいいなと思い直し、元のアイデアに戻って。10人ほどのメンバーで試飲をして味を決めましたが、辛みだけでなく、炭酸がもっと強いほうがいいという声もありましたし、いろいろな意見が飛び交いました」
ご当地キャラ「小太郎」をフィーチャー
ところで、なぜ「神楽南蛮サイダー」ではなく「小太郎サイダー」なのでしょう。小太郎とはいったい……?
「山古志の伝統行事『牛の角突き』の牛をモチーフにしたご当地キャラです。今回は小太郎のPRにもなればと思い、『小太郎サイダー』にしたんです」と田中さん。
小太郎のFacebook
https://www.facebook.com/kotarou.yamakoshi/
小太郎のTwitter
https://twitter.com/yamakoshikotaro
「小太郎サイダー」は目を引くパッケージも魅力的。デザインを手がけた、長岡市内にある株式会社NEOSのアートディレクター、山本拓志さんにもお話を聞いてみました。
「デザインに取り掛かったのは昨年末くらい。小太郎と神楽南蛮というテーマでしたが、小太郎が可愛らしすぎて、最初はラベルには入れないほうがいいかと思っていました。デザイナーとしては、ちょっと子供っぽいかなと(笑)。いろいろなバリエーションを考えてみたんですよ」と山本さん。
「私もテストの段階で試飲したのですが、けっこう辛いバージョンのときもあって。いまはGREENとREDと表示していますが、最初はHOTとSUPER HOTでした。ラベルは最終的に、小太郎の頭が神楽南蛮になっていて。辛くて汗をかいているという(笑)。そんな絵になりました。
うちの社内で完成品の試飲をしたのですが、そんなに辛くなくて意外と飲みやすくなっていました。社内ではREDが好評でしたよ」
田中さん率いる山古志チームはGREEN推しで、山本さん率いるデザイナーチームはRED推し!? どっちがおいしいの〜?? ということで、私も試飲してみました。
まずGREENから。グラスに注いで口を近づけると、フレッシュな神楽南蛮を刻んだときの青々した香りがふわ〜っと漂ってきます。味はすっきり爽やか。キレがあります。
次はRED。鼻をくすぐるツンとした香りがあり、完熟ならではのコクのある味わい。ゴクリと飲み込むと喉の奥がほんわか温かくなるような感じもします。唐辛子効果でしょうか? 確かにどちらも辛みは抑えめ。子供もおいしく飲めますよ。
GREENとRED、風味も香りもそれぞれ個性的なので、ぜひ飲み比べをしてみてください。キリッと冷やしてそのまま、また好きなお酒と割ってカクテルにして飲むのもオススメです。
現在買える場所は、山古志のおらたると「牛の角突き」会場の山古志闘牛場売店、長岡駅ビルCoCoLo長岡1階のくぼたや。1本320円、そしてGREENとREDそれぞれ3本入った、6本セットのギフトボックスが2170円。8月の「長岡まつり大花火大会」では、花火会場の売店でも販売予定です。
ベストシーズンを迎えた山古志へ、ぜひ!
「小太郎サイダー」仕掛け人の田中さんは語ります。
「このサイダーが少しずつ知られるようになって、買える場所が増えていくのはとてもうれしいことです。一方で、やはり山古志に来てもらいたいという願いがあります。『牛の角突き』も開催されていますし、いい季節ですから、ぜひ遊びに来てほしいですね」
→山古志「牛の角突き」名物男が教えてくれた”MC勢子”誕生の経緯と観戦のツボ
おらたるから車で5分の農家レストラン「山古志ごっつぉ多菜田(たなだ)」では、神楽南蛮のカレーや完熟の赤い実で作った神楽南蛮アイスも食べられます。神楽南蛮のシーズンだけでない通年のメニューですが、日により提供できないこともあるそうなので、問い合わせてからお出かけください(多菜田 Tel.0258-41-1144)。
そして、冬は雪の少ないエリアに引っ越していたアルパカが山古志アルパカ牧場に戻ってきました。夏のアルパカは、もふもふではない! 羊のように刈り込まれた姿は、なにやら別の動物のようにも見えて愛くるしいんです。
→カギは伝統産業の応用!山村の牧場が挑戦する「持続可能なアルパカビジネス」
長岡まつりは8/1(火)から3(木)まで。大花火大会は8/2(水)・3(木)開催です。長岡が一年でいちばん熱くなるこの季節、山古志にも足を延ばし、風景と空気を満喫して「小太郎サイダー」をおみやげに持ち帰ってみては?
Text & Photos: Akiko Matsumaru
やまこし復興交流館 おらたる
[住所]長岡市山古志竹沢甲2835(長岡市山古志支所となり)
[電話]0258-41-1203
[開館時間]9:00~17:00
[定休日]火曜 ※「小太郎サイダー」が買えるスペースは無休
[HP]http://c-marugoto.jp/yamakoshi/