頼みの綱は宇宙人!? 前代未聞の町おこしイベント「オグニーリターンズ」レポート
「長岡市に宇宙人あらわる」「夏になると、市内のとある公園に“やつら”は出没するらしい」「こわいけど優しい」「子どもたちに大人気」……このような気になる噂が昨年からインターネット上などで散見されてきた。
「な!ナガオカ」編集部では、事前にTwitterなどによる独自調査を実施(前回記事:やたら露出度の高い謎の宇宙人“オグニー”。ものは試しにTwitterで取材してみた)。その結果、どうやら「オグニー」と呼ばれる宇宙人たちが長岡市小国町をなぜか気に入り、夏の一定期間、同町にある「おぐに森林公園」に住み着いているということが判明した。
さらに、2016年8月27日に、同公園で「オグニーリターンズ」なるイベントが開催されるという情報をキャッチ。昨年2015年にも、おぐに森林公園にて「未知との接触」という肝試しイベントを開催し、どうやらこれが好評を博した模様だ。とくに、地元の子どもたちが大喜びだったという。
オグニーみずから積極的な告知活動を行っている彼らの公式Twitterアカウントによれば、2回目の開催となる今回のイベントのコンセプトは「光とともにやってきた」であり、「オグニーたちを調査しよう!」をテーマとして掲げているという。
「謎の宇宙生命体」でありながら、「自分たちを調査しよう!」とはまた挑戦的である。
一体どういうつもりなのだろうか……。前回行ったTwitter上のインタビューでは「地球人と友好関係を結びたい」と言っていたが、その真意は果たして……?
今回の記事は、「オグニーリターンズ」のイベントレポートである。
※Twitterによるオグニー調査の模様はこちらの記事([get_siteUrl]/nagaoka/1546)からお読みいただけます。
雨上がりの公園。
強制労働(?)させられる人間たち
会場となる「長岡市おぐに森林公園」は、関越自動車道小千谷I.Cから車で約25分のところに位置する自然豊かな公園。約83haの園内には、森林浴のできる、涼しくて心地よいブナ森のほか、キャンプサイトやバーベキュー場、日帰り入浴施設や宿泊施設を完備。老若男女問わず楽しめるスポットがいくつもある。
実に牧歌的な雰囲気の公園だが「オグニーリターンズ」は、その一角を使って(乗っ取って?)開催されているようだ。
「オグニーリターンズ」の開始時刻は18:00。到着したのは開場のすこし前。日が沈む直前で、まだまだ空は明るかったのだが、続々と車が駐車場へ到着。開始時刻になると、ほぼ満車状態になっていた。
イベント当日は、あいにくの天気。時おり雨が降るコンディションながらも、しっかりと雨対策をしたお客さんたちが続々と坂を登り、会場を目指す。
まずは会場入り口に設置されたテントにて、入場手続きを行う。入場料は無料。受付にいるのは人間の姿をした宇宙人? いや、もしかすると宇宙人により強制労働をさせられている人間か……? と思いきや、スタッフは長岡造形大学の学生さんたちだという。気持ちの良い挨拶とともにイベント案内を手渡してくれた。
続々とお客さんが到着し、列をなして手続きを行っていく。子ども連れが圧倒的に多く、何組かの家族のグループで来場していた方も。かなりの賑わいで、まるでお祭りにきているかのようである。
長岡市から来ているという家族連れのお客さんに聞くと「去年の肝試しに連れてきたら大喜びだったので、今年も子どもたちを連れてきました」とのこと。
写真右手には会場が広がっているのだが、子どもたちはすでに「何か」を発見した模様で、「うわー!あれ見て!」などと大はしゃぎして森の中へ走り抜けて行った。
配布された案内を見ると、「光るオグニーを調査せよ」の文字が確認できる。どうやら今回は5色に光るオグニーたちが来ている模様である。
ちなみに、スタッフさんに「オグニー本人(?)にインタビューして周ってもよいか」と聞くと、快諾してくれた。発見したら、突撃インタビューをしてみようと心に決め、会場内へ。
さっそく、発見!
突撃インタビューを試みる
勇んで会場に足を踏み入れたところ、なんとオグニーの方から一眼レフカメラと照明器具を持って急速接近してくるではないか……! 拍子抜けするほど早い接触である。さっそくインタビューを開始!
編集部:「オグニーさん、ちょっとお話を聞かせてください」
オグニー:「ニッ」
編集部:「いいカメラですねえ。あなたたちはもしかして撮影班?」
オグニー:「ニーニーニー!」
え、何を言っているのか分からない……。返って来る言葉はすべて「ニー」のみ。仕方なく、彼らに随行していた地球人スタッフに話を聞いたところ、衝撃の事実が明らかになる。
「宇宙人なので、さすがに直接日本語までは話せないんですよね」
いや、しかし、である。Twitter上では日本語で発信しているし、取材にも日本語で対応してくれていたはずなのだが……。
それを問いただしてみると、「電子機器やコミュニケーションツール上では、自動翻訳されるのです」と地球人スタッフ。どうやら各所に配置された地球人協力者が、オグニーたちの意思を翻訳(?)してくれているようだ。納得がいくような、いかないような……。
さて、気を取り直して地球人協力者に話を聞くと、どうやら撮影器具を持ったオグニーたちは撮影班で、地球での大切な思い出を写真に収めて回っているとのことである。なぜか地球製の機材で……。
一緒に実験! 青オグニー
まずは青色のオグニーのもとへ。まだ日が完全には落ちていないにもかかわらず、すでに人だかりができていた。スクリーンが設置されており、青色に光るオグニーがスクリーンの中で何やら怪しげに動いている。どこか別の場所で様々な実験を行っている様子を投影しているようだ。子どもたちは興味津々にそれを見つめている。
しばらくすると、辺りが暗くなってきた。スクリーン内で実験をするオグニーの姿も徐々に鮮明になっていく。すると、何かを思い立ったのか、すっと席を立ち、部屋を出て行くではないか……。
しばらくすると、「うわわ!? うわー!」という子どもの悲鳴が。
何事かと思っていると……お気づきだろうか。写真左には、なんと先ほどの青オグニーが! まるでスクリーンからそのまま出てきたかのようである。すると、青オグニー、人だかりの中にいる男の子に話しかけ、誘拐!
先ほどまで実験していた部屋がスクリーンにふたたび映し出されると、そこには先ほど誘拐(?)された男の子の姿が目隠しをされて登場。青オグニーと一緒に実験を再開!
その様子をみて「ぼくも行きたい!」と子どもたちが続き、順々に誘拐(?)されていった。そして、様々な実験を一緒にこなしていく……。
一体、何が目的なのだろうか。引き続き調査を続けることにする。
女の子(?)桃色オグニー
続いては、「桃オグニー」のもとへ。桃色のライトが点灯し、スピーカーからは女性アーティストのアップテンポかつ明るい曲が流れる、なんだか音楽フェスティバルの会場のような一角が。子どもたちがシャボン玉を飛ばし、走り回っている。
子どもたちの中心には、桃色の体に光をまとった「桃オグニー」の姿があった。桃オグニーは、髪型(?)や動きから女の子オグニーと思われる。子どもたちと仲良くシャボン玉を一緒に作っており、なんとも平和な光景である。
可愛らしい動きで歩きまわっていたかと思えば、大型扇風機で一気にシャボン玉を吹き飛ばし、会場内に充満させたりと、いきなり過激な行動も。予想外のアクションを取ってくれる桃オグニー。
暗闇の中、桃色の光を反射するシャボン玉が舞う幻想的な光景に見とれているうちに気がついた。そうか! これがTwitterインタビューでオグニーが語っていた『光る玉』の正体か!
なんだかほっこりするスペースであった。
光の中でオグニーと記念撮影!
緑オグニー
続いては「緑オグニー」へ。会場の最も奥にあるスペースである。緑色に光る四角形の物体の周りにお客さんが吸い寄せられるように集まっていく。
四角い物体の中には、緑色に光るオグニーの姿が。地球人スタッフによると、この中に入って緑オグニーと一緒に記念撮影ができるのだとか。
はじめは怖がっていた子どもたちも、入ってしまえば仲良く写真に収まっていた。ここでもオグニーは子どもたちに対してフレンドリーに接しており、怖さをまったく感じない……。
一緒に写真を撮り、手形をもらおう!
ファンキーな黄オグニー
こちらは「黄オグニー」。なかなか風格のある体格をした2人のコンビだ。写真のポーズをビシッと決め、お客さんと一緒に写真を取ったり、道行く我々地球人にちょっかいを出したり。オグニーの中でもとくにファンキーかつフレンドリーな姿を見せてくれていたが、意に反して子どもたちに怖がられる率が高いようだった。少しばかり気の毒でもある。
黄オグニーからは、「手形」をもらうことができた。彼らの母星である「オプス星」の特別な手形なんだそう。友好の証として、形になるものをもらえるのは嬉しいかぎりなのだが、用途を聞くと「ニー!」の一点張りである。地球人スタッフも席を外しており、手形の正式な用途は聞き出すことができなかった……。
光輝くディスコで宇宙人と一緒にダンス!
5色のオグニーの最後にご紹介するのは、赤オグニー。案内には「オグニーとたのしくダンスしよう」とある。リーダー格の赤オグニーを中心とするオグニーダンスチームが、公園内にある野外ステージでダンス! 誰もが知っている有名ディスコ曲を中心に、キレのある動きで観客を沸かせていた。
老若男女問わず、自然に体が動くような絶妙な選曲で、時折ステージから降りてきてはお客さんと一緒に踊るオグニーの姿も。
なんともゴキゲンな雰囲気である。我々も潜入調査を忘れて踊りそうになってしまった。
「なんだ、本当に地球人と仲良くなりたいだけだったんだ」
あっけにとられている我々調査チームだったが、最後になり、イベントの全貌が明らかになった。会場内を取り仕切っている人物への接触に成功したのだ。「チームオグニー」のディレクター、長岡造形大学の長瀬公彦教授である。
チームオグニーとは
「オグニーリターンズ」を仕掛けたのは、長岡造形大学・長瀬公彦教授とそのゼミ生を中心とする「チームオグニー」。長岡市小国支所、おぐに森林公園と協力し、イベントを企画した。長瀬研究室では、グラフィックデザインや広告制作などを研究している。
きっかけは「長岡市地域の宝磨き上げ事業(※)」として小国町では、おぐに森林公園と小国和紙が選出されたこと。長瀬ゼミが数年前から小国町の地域活性化活動に協力している経緯から、この宝磨き事業に長瀬ゼミが関わることになった。
(※ 平成26年度に各地域委員会で「地域の宝」が選定され、合併10年以降の地域振興の柱として、地域住民主体の取り組みによって、この「地域の宝」を磨き上げていく目的で制定)
きっかけは、学生のひとこと
おぐに森林公園で宇宙人をテーマにしたイベントを企画することになったきっかけは、ある学生のひとことだった。森林公園入口に建つ紙の美術博物館(オプスタワー)を見た長瀬ゼミの学生の一人が「地球防衛軍の基地に見える」と発した事から、地球防衛軍と宇宙人のイベント企画案を出し、そこから転じて宇宙人によるイベントを提案するに至ったのだそう。
学生主体のチームオグニーを結成し、自分たちで何が楽しいのか、どうやったら多くの方が小国町へ足を運んでくれるかを考え、イベントを企画。自分たちの手でイチからイベントを作り上げてきた。
長瀬教授は学生にイベント運営全般を任せる狙いを語ってくれた。「学生が自らの手で実際にイベント実施を行うことで、自らの企画や広告の効果をお客さんの反応から知ることができます。実施では仮想のものでしかなかったものが、生の反応を知る機会まで得られることから、通常の授業課題とは違った大きな効果と達成感を経験できると考えています」と長瀬教授は語る。
2015年に開催したオグニーの第1回となるイベント「未知との接触」は、「宇宙肝試し」がテーマ。「小国に宇宙人あらわる!?」というインパクトの強いフライヤーなどで告知を行うなど、周知活動にも力を入れた。
これまでおぐに森林公園で行ってきた他のイベントよりも反応がよかったため、2016年に2回目の企画として「オグニーリターンズ」を開催することとなった。
今後の展望について長瀬教授は「将来的には、私の研究室のみならず、チームオグニーを主にして、地域でオグニーを作っていって欲しいと考えています」と話す。
今後も地元に根付いていくイベントへ
2016年開催の「オグニーリターンズ」のテーマは「光」。カラフルな色をまとい、暗闇の中で光るオグニーは、目で動きを追うだけでも楽しかった。
2015年に行われた第1回のオグニーイベントは「肝試し」要素が強かったようだが、今回は、全体的にピースフルな雰囲気がただよう、拍子抜けするほど友好的な空間がおぐに森林公園にできあがっていた。野外ステージのディスコを中心に、まるで音楽フェスや夏祭りに来ているかのようなワクワク感が充満し、終始、はしゃぐ子どもたちの笑い声が響いていた。
来場者の方にお話を聞くと、「去年とはまったく違った内容で、楽しかった」「来年はどんなイベントになるのか楽しみ」といった声が。
また、地元・小国町の方からは「小国では他にこうした形のイベントがないので、どんどん広げていってもらい、小国のPRにもなれば」という声も聞かれた。
2016年は「長岡まつり大花火大会」などのイベントにも登場したり、テレビ局からの取材を受けたりと、チームオグニーや地元の方たちの期待通り「オグニー」の知名度は、長岡市を中心に広がりをみせている。地道なフライヤー配布の効果も着実に出ているという。
一般の方もSNSやブログ等で取り上げるなど、認知度が高まっている「オグニー」。今後も地元に根付いたイベントにするべく、チームオグニーの取り組みは続いていく。
Text and Photos: Junpei Takeya