100年の時をこえて、本物の物語を伝える~和島トゥールモンド~

2016/7/20
レストランBague支配人 斎藤篤さん
音大卒業後、専修学校で音楽を教えた後、社会福祉法人へ。和島トゥールモンドの立ち上げから関わる。

音大卒業後、専修学校で音楽を教えた後、社会福祉法人へ。和島トゥールモンドの立ち上げから関わる。

 

生まれ変わった廃校。

旧三島郡和島村。明治の時代にこの地で開校した島田小学校が、105年の長い歴史に幕を閉じたのは6年前のこと。地域のシンボルになっていた昭和2年建築の木造校舎は今、なかなか予約のとれない人気のレストランに様変わりしています。外観には、ほとんど手を加えていないため、一見するとレストランが入っているようにはまったく見えません。「シンボリックな建物だったからこそ、もとの校舎をなるべく活かして、景観をなるべく壊さないようにつくりました」。教えてくれたのは、レストランの支配人である斎藤篤さん(39歳)。施設名は、和島トゥールモンド100年の時をこえて。「長い名前でしょう?でも“100年の時をこえて”までどうしても入れたかったんです」。トゥールモンドとは、フランス語で“みんなで”、という意味。100年の時をこえて、みんなで集まる場所。施設の名前には、和島の歴史を大切に受け継ぎ、地域に根ざした施設運営を、という支配人の想いが込められています。

遠くからも目立つ白い木造校舎は、地元の人々から長く愛されている地域の宝。

遠くからも目立つ白い木造校舎は、地元の人々から長く愛されている地域の宝。

レストランに次いでオープンしたパン工房。こちらも開店から客足が途絶えることのない人気ぶり。

レストランに次いでオープンしたパン工房。こちらも開店から客足が途絶えることのない人気ぶり。

和島の美味しい水と厳選された小麦でつくられた、色とりどりのパンが店頭に並ぶ。

和島の美味しい水と厳選された小麦でつくられた、色とりどりのパンが店頭に並ぶ。

 

家庭科室と音楽室が、レストラン。

一歩足を踏み入れると、まず目を奪われるのはエントランスの光壁。「できるだけ地場のものをと、和島特産の竹と小国和紙を使っています」。レストランBague(バーグ)へと続く、磨き上げられた廊下を歩けば、懐かしい記憶が蘇り、大人もつい童心に帰ってしまうほど。かつて図工室だった場所が厨房、その先の家庭科室と音楽室の2教室がレストランになっています。レストランの高い天井には、骨太の梁。もともとあった天井をはがした際に現れた部材があまりに立派だったからことから、そのままの姿を残しました。窓から見えるのは、田畑が連なる昔ながらの風景。特注のテーブルは、教室の机をイメージし、カトラリーをしまうための引き出し付き。部屋の片隅にはピアノがあり、音大出身の支配人自ら、お客様のリクエストに応じて生演奏を披露してくれることも。小粋な演出が随所に光ります。

和島トゥールモンドの名が記されたパーテーション。内側に灯りをともすと美しい光壁に。

和島トゥールモンドの名が記されたパーテーション。内側に灯りをともすと美しい光壁に。

眼下にはのどかな景色が広がり、四季折々の変化が目を楽しませてくれる。

眼下にはのどかな景色が広がり、四季折々の変化が目を楽しませてくれる。

感動するほど、美味しい野菜。

レストランBagueで味わえるのは、モダンフレンチ。その時期に手に入る食材によってメニューが変わるので、ランチもディナーもコースのみ。流通している市販の野菜は使わず、もっとも食べごろのときに農家の方が収穫した野菜を扱っています。「食材が新鮮で美味しいので、なるべく手を加えずに素材が活きる料理をふるまっています」。梨のように瑞々しいカブや、繊維がぎっしり詰まっていて固いキンチャクナスなど。「他ではお目にかかれないような野菜が、長岡にはたくさんあるんです」。海の幸もあれば、山の幸もある。信濃川の豊かな水が大地を潤す。長岡はいわば、農業、漁業、畜産のすべての環境が整っている非常に珍しい場所だと、斎藤さんは言います。さらに和島の周辺は湧き水が豊富なことから、久須美酒造と池浦酒造という二つの酒造があります。「水がいいからこそ、農作物も非常においしい。これを使わない手はないだろうと、地産地消を目指しています」。

東京で長年腕を磨いたシェフが、メニューの立案や食材の調達、器の選定まですべて手がける。

東京で長年腕を磨いたシェフが、メニューの立案や食材の調達、器の選定まですべて手がける。

地域の農家とレストランとお客様が1本でつながる。「それが、私たちの強みです」。

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