ご当地キャラ数珠つなぎ第1回「炎の天狐トチオンガーセブン」インタビュー!
日本中どこへ行っても「ご当地キャラクター」を見ないことがない。特定の地域をPRするイベントともなれば、あらゆるキャラがしのぎを削り、自らのアイデンティティの拠り所である「当地」をアピールする。世はまさにご当地キャラ戦国時代だ。
ここ長岡にしても例外ではなく多くのキャラが存在する。しかし十把ひとからげに「ご当地キャラ」といっても、その成り立ちや託された思いはさまざまであるはず。
そこで、長岡を拠点に活躍するご当地キャラクター(ヒーロー含む)にインタビューを行い、彼ら自身の言葉で自分たちのことを語ってもらう新連載「ご当地キャラ数珠つなぎ」を始めることとなった。
記念すべき第1回は、長岡市栃尾地域で活躍する「炎の天狐トチオンガーセブン」だ。
トチオンガーセブンとは?
「ご当地キャラクター」というとき、多くは「ゆるキャラ®」を指す。しかし全国各地には別にゆるいわけではない「ヒーロー」も数多く存在する。長岡市栃尾地域(旧栃尾市)、ここではご当地ヒーロートチオンガーセブンが活動している。
一体トチオンガーセブンとはどんなヒーローなのか? まずはこちらをご覧いただきたい。
トチオンガーセブンとは、蛇王大帝の邪悪な野望を打ち砕くために、神の狐の天狐と宿命の栃尾人 星狐太郎とが融合した姿である! 友達愛!家族愛!郷土愛! この炎のたからものを守るため 7つの秘められた必殺技を見つけ出し、人社会と獣社会の狭間で苦悩しながらも生きる証を見出し、命を懸けて斗う愛と正義の戦士なのだ! (トチオンガーセブン公式サイトより引用) |
以上は、トチオンガー公式サイトに踊る紹介文だ。補足すると、ヤマタノオロチを倒して封印した「神の狐の天狐」というのが「栃尾牙(トチオンガ)」であり、星狐太郎とは別の存在であるらしい。
とにかく熱い思いは伝わるが、具体的に何と戦っているのかは……分からない! 分かりそうでまったく分からない! これは本人に直接聞くしかあるまい。
栃尾の油揚げ店「毘沙門堂本舗」に彼は居た!
長岡市栃尾地域は越後の戦国武将、上杉謙信公の旗揚げの地としても知られている。謙信公は兜に狐をあしらっていたことも関係するが、この地では「狐」にまつわるモノをよく見かける。
「油揚げ(※長岡・栃尾地域では「あぶらげ」と読む)」もそのひとつ。江戸時代、栃尾の秋葉神社は多くの人の信仰をあつめ、佐渡や上州、会津などからも参拝に訪れた。彼らに何か振る舞うために油揚げが誕生したと言われ、今も数多くの油揚げ店が存在している。
創業は江戸時代中期という老舗油揚げ店・毘沙門堂本舗もそのひとつ。情報筋によれば、こちらのお店にトチオンガーセブンが居るとのことらしい!
店の奥には、「トチオンガーセブン」の等身大パネルがみえる。店の外からでも確認出来るほどの存在感だ。店全体から漂う圧倒的なトチオンガーセブン推し感!
と、ここでおもむろにトチオンガーセブンがやってきた。
「炎の天狐!トチオンガーセブン!」
平安時代から続く因縁に終止符を
キメポーズとともに颯爽と登場したトチオンガーセブン。後にどんなセリフが続くのかと思いきや、
「せっかく良い天気なので、栃尾らしいところを歩きながらお話ししましょうか」と優しい言葉。オファーをいただいた通り、移動しながらインタビューを行うことになった。
トチオンガーセブンが連れて行ってくれたのは栃堀地区にある「巣守(すもり)神社」。上杉謙信公が武運長久を祈願したとも伝えられる、歴史ある神社だ。
トチオンガーセブンの誕生には、栃尾地域に伝わる「ある伝説」が大きく関係しているという。古事記に登場する大蛇『ヤマタノオロチ』の体の一部が、ここ栃尾地域に封印されているという伝説があるのだ。
「かつて平安時代に悪の勢力がヤマタノオロチを復活させたことがありました。その時にトチオンガーと共にヤマタノオロチと戦ったのが、星狐太郎の先祖・星狐童だったのです」(トチオンガーセブン)
最近、栃尾地域に不穏な動きがあるという。「蛇王一族 首領ゲドロン」なる人物がそのヤマタノオロチの封印を解き、人類を支配下に置こうと水面下で画策している模様なのだ。
「それをつきとめた星狐太郎は、トチオンガーと融合し、『トチオンガーセブン』として悪と戦うべく立ち上がったのです」(トチオンガーセブン)
その戦いの模様は、なんと連続ドラマ化が予定されているという。
「現在、ドラマ(26話完結)を製作中です。戦いの様子だけではなく、ドラマ仕立てでいろいろなメッセージも同時にお伝えしたいと考えています」(トチオンガーセブン)
お金には代えがたい大切なことを伝えたい
トチオンガーセブンが戦う理由は、ヤマタノオロチやゲドロン一派を倒すためだけではない。子どもたちに大切なメッセージを伝えたい、という目的もあるのだという。
「子どもたちに『自分にとって大切なことは何か』に気づくきっかけを与えたいんです。それについては、星狐太郎から語るのがいいでしょう」(トチオンガー)
繰り返しになるが、トチオンガーセブンは「狐の神(トチオンガー)」と人間の「星狐太郎」氏が融合によって誕生したヒーローなのである。トチオンガーセブンによれば、この星氏という人物は、ヒーローとして戦うだけでなく、プロモーションにおいても力を発揮しているという。
プロモーションにも徹底してこだわる
そこで毘沙門堂本舗へと場所を移したところ、トチオンガーセブンは姿を消して現れたのは星狐太郎さん。
普段は栃尾の油揚げ店「毘沙門堂本舗」の店主として、本人曰く「平凡な毎日」を過ごしていた星さん。しかしある日を境に、夜な夜な不可解な夢に悩まされるようになったという。
「夢にトチオンガーが登場して、『ともに戦え』と言ってきたんです。最初はわけも分からず戸惑いましたね」(星さん)
星さんは1970年生まれ。幼少期を送った70年代は、仮面ライダーをはじめとするヒーロードラマの全盛期だった。トチオンガーセブンになってからは特に、その頃の気持ちを大切にしているのだそうだ。
「70年代のヒーローモノには、『まわりの大切な人のために、危険を顧みず立ち向かうこと』や『仲間を大切にすること』など、いろいろなメッセージが含まれていたと思うんですね。
今の時代は、お金や成功することが重んじられているけれど、お金には代えがたい大切なものがある。そういうことをトチオンガーセブンとして伝えていきたいですね」(星さん)
そうした思いを伝えたい対象は、子どもたちだけにとどまらない。かつて子どもだった人たちにも伝えたいという。
「私自身、田舎町の油揚げ店の店主、40を過ぎたいいおっさんなわけですが(笑)、私と同じ様に70年代のヒーローモノを観て育ってきた同年代の方たちにも、今一度、昔の熱い感情を思い出してほしい。そのきっかけになればと思っているんです」(星さん)
公式サイト上では「宿命の栃尾人」と紹介される星さん。運命的な出来事からヒーローとして戦うことになったわけだが、幼少期に感じとったヒーローのメッセージを大切に活動しているのだった。
新潟の「点」と「点」をつなぐコンテンツとしても
こうした理由から、トチオンガーセブンは自身の「見せ方」にも徹底的にこだわり、自らプロデュースを行う主題歌やプロモーション映像は、70年代の雰囲気をベースにして作られている。
「音と視覚は、ときに思い出をダイレクトに引き出してくれるものなので、大切にしたい。観た人は直感的に分かってくれるはず。だからこそ、いろんな方の力をお借りして妥協なく作りこんでいます。
最近では、テレビ、雑誌をはじめメディア展開も増えてきていますし、今はご当地アイドルのみなさんなどともコラボレーションイベントを企画しています。新潟の各地、各分野で頑張っている方たちはたくさんいる。そうした『点』と『点』をつなげられるような活動をしていければ……と思っています」
栃尾のまちおこしにもつながれば
トチオンガーセブンが活動を続ける目的は、悪を倒すというだけではなかった。トチオンガーセブン自身が媒体となって、栃尾のまちおこしにもつながってほしいという思いもあったのだ。
「栃尾は過疎化が急激に進んでいる地域。そんな中で『栃尾にはトチオンガーセブンがいる!』と言って足を運んでくれる方が増えてくれれば嬉しいですよね」
今回、トチオンガーセブンとともに撮影に訪れた各所では、必ずと言っていいほど地元の方たち、とりわけ子どもたちから声をかけられていた。毘沙門堂本舗にも、人気の油揚げだけでなくトチオンガーセブン目当てで訪れるお客さんも増加している。各地で出演するイベントでも大人気だ。
制作が予定されている26話のドラマも含め、イベント出演情報など今後の動向は公式ホームページ、Facebookで順次発信されていく予定。ぜひチェックしてみよう。
Text and Photos: Junpei Takeya
炎の天狐トチオンガーセブン
[公式HP] http://tochiongar-7.com
[Facebook(「星狐太郎」役:毘沙門堂店主・星知弘さん)] https://www.facebook.com/tomohiro.hoshi.562