近日開催!中学生のアイデアによる「とちお夜のランプまつり」実現の裏側
長岡駅から車で30分ほど、長岡市の栃尾で、「灯り」をテーマに複数の独立イベントが一斉に集合した新しいまつりが生まれようとしています。そのひとつが2016年9月24日と25日の二日間行われる「とちお夜のランプまつり」です。
このまつりを開催することになったきっかけは、「栃尾の夜を明るくしたい」という一人の女子中学生のアイデアでした。なぜ、このアイデアが大人の本気を呼び、人と人を結び付け、大きなイベントへと成長しようとしているのか、ふたりのキーパーソンに話を聞きました。
栃尾をもっとよくするには?
地元中学校の取り組みが始まり
キーパーソンの一人目は、とちお夜のランプまつりの発案者であり、現在、高校一年生の高見梨花子さん。アイデアのきっかけは、高見さんが在籍していた刈谷田中学校での「総合学習」の時間に、「栃尾について学ぼう」をテーマにした課題に取り組んだことでした。
3年間にわたり、栃尾をもっとよくするにはどうしたらいいか、を考え学んできた刈谷田中生たちは、3年生の夏に、「ながおか仕事創造アイデア・コンテスト」で地域おこしのアイデアを募集すると知り、全員が自分の考えたアイデアを応募することに。そのとき高見さんが提出したのが「とちお 夜のランプ祭――栃尾の雁木(※)通りに全国から募ったランプ作品を展示してイベントと組み合わせ、栃尾の魅力を創り、活性化につなげる」というアイデアでした。
※雁木とは、雪国の商店街などで見られる、ひさしを長く作って雪よけの屋根になるようにし、歩道を歩きやすくした設備のこと。
「栃尾のいいところは伝統。変えたいと思うところは『暗い』ところ。まつりやイベントのときは一体感があるのに、イベントがないときは静まり返っていて、まちが暗いと思いました。」と語る高見さん。
「栃尾のイベントでは、とちおまつりの民謡流しが好きなんです。中学生は全員参加するのですが、よく知らない隣の中学校の人たちとも、一緒に民謡流しをするとなんだか一体感がある。こういう雰囲気がとてもいいと思っていました。」
民謡流しのような一体感があり、まちが明るく華やぐイベントを行えば、伝統ある栃尾のまちが一層魅力的になるのではないか。
そんな思いで作った応募案は、小学生から30代の若者まで、地方創生のアイデア196件が寄せられたなかで、見事、最優秀賞を受賞! これにより高見さんの周りが大きく変わります。
母校を照らすランプの光に
卒業生が集った
最優秀賞を受賞したアイデアは、まずはプレイベントとして、コンテストを主催した「ながおか・若者・しごと機構」によって、2016年3月26日(土)、刈谷田中学校にて開催されました。高校受験と、卒業式を終えたばかりの高見さんを母校で待っていたのは無数に並べられたランプの美しさ。そして、卒業した仲間たちがみんな集まってくれたことへの驚きと喜びでした。地域の人たちも会場に集い、まさに灯りのもとに一体感を感じる一夜となったのです。
栃尾の子どもが考えたアイデア。
大人としてはやらなきゃ!
プレイベントが成功後も、本番に向けた動きは続きます。ここからは、このイベントを継続的に行っていくために結成されたトチオノアカリ協議会で会長を務める西片吉邦さんにお話しを伺いましょう。
栃尾は昔から繊維工業で栄えたまちでした。西片さんは、まさにその織物を生業とするテキスタイルメーカーの家に生まれ、家業を継いだ一人。かつては機織り屋が何十件とあった栃尾も、今では十件たらずにまで減り、地元の産業の衰退や、人口が減っていくことに危機感を持っていたといいます。
その西片さんが最初、「とちお夜のランプまつり」の話を聞いたのは、栃尾青年会議所の代表としてでした。このランプまつりを一回限りで終わらせず毎年続けていくためには、地元・栃尾に住む人たちの手が不可欠として、栃尾青年会議所で主催できないか、声がかかったのです。
「栃尾の子どもが考えたアイデア。栃尾の大人としてはやらなきゃ!」
自身も二児の父であるという西片さんはそう決意しました。決意の裏には、家業を継いだからこそ感じる産業の衰退や人口減の問題を何とかしたい、子どもが栃尾に生まれ育つことを誇りに思えるようなまちにしたい、という切実な願いがありました。
「栃尾であかりをテーマにしたイベントを自分たちの手でやろう」という西片さんの声に、志を同じくする仲間が集まりました。たまたま栃尾青年会議所でも、今年のイベントとして、地元の中心にある秋葉公園のライトアップを企画していたこともあり、こうしてトチオノアカリ協議会が結成。栃尾で町おこしイベントを企画する複数の団体が結集することになり、「とちお夜のランプまつり」は、「秋葉公園ライトアップ」「秋葉百八風鈴灯」「とちお修行道48km」の他3つのイベントとのコラボレーション企画として実現することになりました。
機織のまちならではの糸繰り木枠のランプ
いよいよ実施されることとなった「とちお夜のランプまつり」。栃尾らしいランプのイベントをどう形にするか――、考える中で出てきたアイデアが機織を主産業にしていた栃尾らしい「糸繰り木枠」を使ったランプでした。町中の機屋さんから木枠を集め、余った糸をいただき、多くの人の手で思い思いの色を使って巻いてもらいました。
糸繰り木枠を使ったランプのほかにも、地元有志の手によるランプ作品が各所に展示されることになりました。ブースのひとつには高見さんのコーナーも作られることに。高校で美術部に所属し、将来は美術関係の学校に進学したい、という高見さんは、風船と端切れを使ったあかりのインスタレーション(※)を制作するとのことです。
※インスタレーションとはオブジェや装置を置いて、場所や空間全体を体験させる芸術のこと
さらに、栃尾の子ども達が和紙で作ったランプも飾られます。驚くことにこのランプ作りは、栃尾エリアすべての幼稚園・保育園・小学校の全生徒が参加したとのこと。こうして、栃尾の人たちの手による、栃尾の歴史のつまった、美しく趣のあるランプが、数えきれないほどできあがりました。
秋葉神社を中心にあつまる無数の灯
栃尾の町は、歴史ある秋葉神社と、その周囲の秋葉公園を中心に広がっています。この秋葉公園の門前ともいえる場所が、長い雁木通りの続く「谷内(やち)商店街通り」。「とちお夜のランプまつり」は当初の高見さんの「雁木通りにランプを」のイメージ通り、谷内商店街通りにて行われます。同じ日に、「秋葉公園ライトアップ」「秋葉百八風鈴灯」も開催され、秋葉神社の境内や参道には数千の灯が揺れることとなります。
一日目には秋葉公園で地元の人たちやアーティストによるステージイベントや点灯式も行われます。秋葉神社の門前では、栃尾らしいグルメを堪能できるお店も出店するとか。きっと、高見さんが大好き、という民謡流しに匹敵するようなイベントになり、子どもたちが街に愛着を抱くきっかけにもなっていくでしょう。
ひとりの中学生の思いが、多くの大人の思いと重なり、多くの人を巻き込んで、栃尾に新しく賑わいのある秋まつりが生まれようとしています。その場を体験しに、秋の夜のひととき、栃尾に足を運んでみませんか。
とちお夜のランプまつり
[開催日]2016年9月24日(土)・25日(日)
[時間]18:00~21:00
[場所]新潟県長岡市栃尾地区 谷内商店街通り(神明橋)
[Facebook]トチオノアカリ協議会
※同時開催 「点灯式・ステージイベント」(ステージイベントは15:40~、点灯式は18:30~)、「秋葉百八風鈴灯」(17:30~)、秋葉公園ライトアップ(18:30~)