ありのままの雪国の暮らしに触れる!「長岡 山古志ナイト」イベントレポート
長岡から遠く離れた場所で長岡を楽しんでもらおう!というイベント「長岡ナイト」。
枝豆、新米&醤油、栃尾あぶらげに続く第4回目のテーマは、「山古志」です。
年の瀬も迫る2019年12月20日(金)、埼玉・大宮にある「まるまるひがしにほん(東日本連携センター)」で「長岡 山古志ナイト」が開催され、首都圏から30名の参加者が集まりました。
山古志は、長岡の市街地から東へ車を30分ほど走らせた山間地に位置し、棚田や棚池が織りなす景観はまるで『箱庭』のよう。1000年もの歴史がある「牛の角突き」や、泳ぐ宝石「錦鯉」発祥の地として知られ、独自の伝統と文化が息づいています。2004年の新潟県中越地震で甚大な被害を受けましたが、住民の皆さんは逞しく、楽しく、暮らしています。
山古志の季節を味わう!お母ちゃんの絶品料理
そんな山古志のありのままの暮らしを体験できる「山古志ナイト」。
長岡市役所山古志支所長の佐山さんの乾杯で始まりました。
乾杯酒は、お福酒造の「山古志 純米吟醸」。山古志の棚田で栽培された酒米で醸した特別な日本酒です。
乾杯のあとは、お待ちかねの山古志料理!
ずらりと並んだ料理はどれも山古志の季節を味わえるものばかり。
雪深い山古志の冬の味は保存を兼ねて工夫された料理も多く、糸ウリや切り干し大根はその代表です。みなさん次々と料理を手に取り、山古志の季節の味覚に舌鼓を打っていました。
料理を用意したのは山古志のふたりの「お母ちゃん」。
五十嵐なつ子さんは、農家レストラン「山古志ごっつぉ多菜田(たなだ)」で仲間のお母ちゃんたちとともに、山古志の昔ながらの味を提供しています。
今日の山古志ナイトにも、糸ウリの醤油漬けや手作りこんにゃく、わらびの煮物など、どこか懐かしさも感じる山の美味を揃えてくれました。
長島香織さんは山古志に嫁ぎ、「農家民宿三太夫・農cafe 三太夫」を営みながら、自家栽培の野菜やお米の美味しさを伝えています。
バターナッツカボチャのポタージュ、自家製切り干し大根のマリネ、山古志産にいがた和牛とかぐらなんばんと手作りこんにゃくの甘辛炒めなど、お馴染みの野菜たちをさまざまな味に変身させました。
ふたりのお母ちゃんが語る “ここで生きることを楽しむ”ということ
「かぐらなんばんが復活したことがとても嬉しい」と語る五十嵐さん。子どもの頃から親しんでいたという「かぐらなんばん」は山古志固有の伝統野菜。新潟県中越地震の後も、大切にとっておいた種を使って復興してきたのだそうです。
かぐらなんばんのほかにも、大根、かぼちゃ、糸ウリ、きのこ…冬は雪に囲まれ「陸の孤島」となってしまう山古志ですが、おいしいものは昔からたくさんありました。山古志の冬の味は、越冬が第一。雪の無い時期に採れた野菜を工夫して大切に長持ちさせ、一緒に春を待ちます。
大変な地域かもしれないけど「自分たちなりの贅沢をして生きている」と五十嵐さんは笑います。
「雪深い地域だけど、春を楽しみに待つことができるので苦ではない。ここで楽しく生きることを続けようと思います。そんな姿を若い人たちに見せていけたら。」と五十嵐さん。
57歳から「山古志ごっつぉ多菜田」を始めて、お店がどんどん楽しくなるにつれ夫婦仲も良くなったそうです。お母ちゃんが生き生きしていることが秘訣なんだとか。
長島さんも同じく山古志の食材を活かした料理を提供するお母ちゃん。夫と母と一緒にお店をやる中で、2人とは違う料理を担当し、お店で言うところの「こまごましたおかず」として、小鉢や変わりものを作っています。その料理の素材となる野菜も自分たちで作ってしまうのが「農cafe 三太夫」のすごいところ。
お米も毎年自分たちで育てて収穫する自家製米!手植えして手刈りして、自然と時間の力を借りて仕上げたはざかけ米です。お米も山古志の特産のひとつ。「お米をたくさん食べてほしい。山古志のお米はおいしいんです」と長島さんが言います。
「山古志の野菜は甘くてとてもおいしい。えぐみが少ないというか…大量生産はできないけれど、だからこそ他の場所とは違う味になるのかもしれません」。
畑に出てさまざまな作物を作って料理して食べている長島さんが胸を張る山古志の野菜たち。そのおいしさを体感しながら聞くお話には強い説得力がありました。
山古志ナイトの後半は質問タイムです。料理に関する質問が続く中、最後に手を挙げたのは、なんと山古志支所長の佐山さん。
「4月に赴任したばかりで、山古志の冬をまだ体験していないんですが、雪はどれくらい積もるのでしょうか?」
まさかの支所長の質問に答えてくれたのは、山古志の大先輩の五十嵐さんです。
「積雪は平年3m。それを超えると大雪だなあという感じがします。2mでは小雪、1mだとちょっと心配なことが……山古志には水をたくさん貯える大きな山がないので、暮らしを支える大切な雪解け水が不足しないかどうか。あと、ふもとでは雨でも山古志では雪なので、気をつけてください。でも、どんなに大雪になっても除雪がしっかりしているので道が通行止めにならないのは山古志のすごいところです!」
さて佐山さん、今ごろどうしていらっしゃるでしょうか?
おいしい料理と、たくましく生きる人たち。それらを育てた山古志という土地の魅力を知った「山古志ナイト」。
参加した方は山古志の料理を味わったり、錦鯉と記念撮影をしたりと、みなさん笑顔で楽しまれていました。
大宮から遠く離れた山間地「山古志」が、2人のお母ちゃんによりぐっと身近になった、思い出に残る一夜となりました。