ふたりのお母ちゃんが語る

“ここで生きることを楽しむ”ということ

「かぐらなんばんが復活したことがとても嬉しい」と語る五十嵐さん。子どもの頃から親しんでいたという「かぐらなんばん」は山古志固有の伝統野菜。新潟県中越地震の後も、大切にとっておいた種を使って復興してきたのだそうです。

 

その形が獅子神楽に似ていることから「かぐらなんばん(神楽南蛮)」と呼ばれている在来のトウガラシ品種。パプリカの様な肉厚と、爽やかな辛みが特徴。

 

かぐらなんばんのほかにも、大根、かぼちゃ、糸ウリ、きのこ…冬は雪に囲まれ「陸の孤島」となってしまう山古志ですが、おいしいものは昔からたくさんありました。山古志の冬の味は、越冬が第一。雪の無い時期に採れた野菜を工夫して大切に長持ちさせ、一緒に春を待ちます。
大変な地域かもしれないけど「自分たちなりの贅沢をして生きている」と五十嵐さんは笑います。

「雪深い地域だけど、春を楽しみに待つことができるので苦ではない。ここで楽しく生きることを続けようと思います。そんな姿を若い人たちに見せていけたら。」と五十嵐さん。
57歳から「山古志ごっつぉ多菜田」を始めて、お店がどんどん楽しくなるにつれ夫婦仲も良くなったそうです。お母ちゃんが生き生きしていることが秘訣なんだとか。

長島さんも同じく山古志の食材を活かした料理を提供するお母ちゃん。夫と母と一緒にお店をやる中で、2人とは違う料理を担当し、お店で言うところの「こまごましたおかず」として、小鉢や変わりものを作っています。その料理の素材となる野菜も自分たちで作ってしまうのが「農cafe 三太夫」のすごいところ。

 

「はざかけ」は手間も時間もかかるが格別の味。

お米も毎年自分たちで育てて収穫する自家製米!手植えして手刈りして、自然と時間の力を借りて仕上げたはざかけ米です。お米も山古志の特産のひとつ。「お米をたくさん食べてほしい。山古志のお米はおいしいんです」と長島さんが言います。

「山古志の野菜は甘くてとてもおいしい。えぐみが少ないというか…大量生産はできないけれど、だからこそ他の場所とは違う味になるのかもしれません」。
畑に出てさまざまな作物を作って料理して食べている長島さんが胸を張る山古志の野菜たち。そのおいしさを体感しながら聞くお話には強い説得力がありました。

 

山古志ナイトの後半は質問タイムです。料理に関する質問が続く中、最後に手を挙げたのは、なんと山古志支所長の佐山さん。
「4月に赴任したばかりで、山古志の冬をまだ体験していないんですが、雪はどれくらい積もるのでしょうか?」

 

 

たくさん積もる雪が山古志の恵みの源

まさかの支所長の質問に答えてくれたのは、山古志の大先輩の五十嵐さんです。
「積雪は平年3m。それを超えると大雪だなあという感じがします。2mでは小雪、1mだとちょっと心配なことが……山古志には水をたくさん貯える大きな山がないので、暮らしを支える大切な雪解け水が不足しないかどうか。あと、ふもとでは雨でも山古志では雪なので、気をつけてください。でも、どんなに大雪になっても除雪がしっかりしているので道が通行止めにならないのは山古志のすごいところです!」
さて佐山さん、今ごろどうしていらっしゃるでしょうか?

おいしい料理と、たくましく生きる人たち。それらを育てた山古志という土地の魅力を知った「山古志ナイト」。

参加した方は山古志の料理を味わったり、錦鯉と記念撮影をしたりと、みなさん笑顔で楽しまれていました。

大宮から遠く離れた山間地「山古志」が、2人のお母ちゃんによりぐっと身近になった、思い出に残る一夜となりました。

 

 

関連する記事