越後を代表する郷土料理!みんなの「のっぺ」 見せてもらいました
2017.2.21
長岡のみんなの「のっぺ」写真
まずは「地域の宝 フォトコンテスト」応募写真から、のっぺ写真を拝見!
かまぼこと枝豆の彩りも鮮やか。器の雰囲気といい、正月らしい華やかさのあるハレの小鉢に。「新潟県内でも作り方が違うし、各家庭でも違います。我が家はとろみをつけていたのですが、新潟市内出身の義妹に合わせて、片栗粉は使いませんでした」と、投稿者さん。
干し貝柱や練り物がたっぷり入っていて、しっかり煮しめた色合いといい、見た目は地味ながらとても美味しそう。「貝柱、里芋、人参、こんにゃく、蓮根、チクワ、油揚、椎茸、シメジ、かまぼこ」が入っているとのこと。
こちらの写真、「元旦の朝ごはん」だそうです。写真右下の小鉢がのっぺ。里芋は色白、黄色の銀杏が映えて、上品な見た目。
汁たっぷりののっぺ。それを地酒といただく正月。のっぺは日本酒との相性がほんと、抜群なんですよね~。
ちくわにさつま揚げ、れんこんににんじん、こんにゃくなどが入っていますね。ゴロゴロとした食材の食感が楽しそうな、のっぺです。
こちらののっぺは油揚げ入り。味がしみて美味しそう。厚揚げ、締め豆腐、焼き豆腐などを入れる家もあるようですね。
長岡生まれの「な!」ライターののっぺです。干し貝柱と干ししいたけのだしで、里芋、にんじん、ごぼう、こんにゃく、かまぼこやさつま揚げなどを煮ます。お正月には、ゆり根、銀杏、イクラを加えて華やかに仕上げます。
前述のとおり、のっぺには、鮭や鶏肉を入れたものもあるのですが、今回の長岡での投稿写真には、あまり見当たらないよう……。
緊急調査!長岡ののっぺには何が入る?
家ごと、土地ごとに入れるものが違うらしいのっぺ。もうちょっと材料を詳しく知りたい!ということで、長岡在住の方や、市外在住・長岡出身の方たちにアンケートを実施。家で、どんなのっぺを食べているか、お聞きしてみました。
地元の山の幸入りです
材料は、里芋、人参、レンコン、板こんにゃく、ゴボウ、あまんだれ、干貝柱、干ししいたけ、ちくわ、塩イクラ、絹さや。
あまんだれは正月用に塩漬けやら冷凍しておいて大量に使います。山から取ってきたなめこの時もあります。
(生粋の長岡出身 40代女性)
旧長岡市風、というこちらのおうちの材料、注目どころは、「あまんだれ」。「幻のキノコ」とも呼ばれる歯ごたえのよいキノコです。たしかに、ライター宅でも何十年か前の雑煮やのっぺには、塩出ししたキノコが入っていました。今では貴重品といえる食材ですね。昔ながらの食材を使い続けている、長岡の伝統的な「のっぺ」と言えそうです。
お正月らしさが上がる「ととまめ」
材料は、大根、レンコン、人参、里芋、エノキダケ、こんにゃく、鮭の塩引き、正月のみととまめ、出汁は昆布としょうゆ、酒、味の素。
(長岡市まちなか出身、30代女性)
こちらのお宅は、大根入り。そして「ととまめ」。漢字では「魚豆」と書くのですが、新潟県外の方はなんのことだか、わかるでしょうか? これ、ゆでた塩イクラのことなんです。新潟では、正月の郷土料理、のっぺや雑煮、氷頭なます(塩鮭の鼻先の透明感ある軟骨を使った歯ごたえのよいなます)に散らして使います。
鶏肉入れる派
材料は、里芋、にんじん、ごぼう、水煮貝柱缶詰、鶏肉、かまぼこ、ちくわ、板こんにゃく、銀杏、だしのもと&しょうゆベース。
(中之島出身、新潟市在住、30代女性)
中之島&見附あたりがルーツというこちらのお宅、鶏肉入りですね。貝柱と鶏肉のうまみが合わさって美味しそうです。
材料は、かまぼこ赤白、里芋、ニンジン、銀杏、鶏肉、貝柱、こんにゃく、しいたけ、タケノコ、だしは貝柱です。
(見附市出身 見附在住、母は70代)
長岡市にお住まいの30代女性、長岡市のお隣、見附市出身のお母様ののっぺで育ったとのこと。見附市出身のおうちは鶏肉入りが多い?
我が家は、出汁は貝柱がメインで昆布とカツオぶし。具材は里芋、タケノコ、シイタケ、銀杏、れんこん、くわい、ユリ根、かまぼこ、いくらは生で三つ葉を散らす。鮭や鶏肉が入る事もある。
(旧長岡市出身、長岡市在住、40代男性)
こちらは、鮭や鶏肉が入ることもあるという、ハレのごちそう感満点ののっぺ。くわいも入るんですね。くわいのほろ苦さがアクセントとなりながら、里芋との食感の違いも楽しめそうです。
ちなみに、新潟市近辺では、鶏肉や鮭が入ることが多いよう。長岡では、鮭は雑煮には入れるけれど、のっぺには入れない……という声も多く聞かれます。
片栗粉でとろみづけ
材料は、里芋、人参、かまぼこ、こんにゃく、百合根、銀杏。貝柱でだしをとり、片栗粉でとろみづけ。
(群馬出身、長岡在住、30代女性)
お父様の出身地が小国なので、小国風?とおっしゃるこちらのおうち。仕上げは片栗粉でとろみづけをしているそう。「のっぺ」はとろみのついた汁が特徴の料理ですが、里芋のぬめりのみで片栗粉を入れない場合と、片栗粉を使う場合、とがあります。
実家ののっぺの具は、里芋、かまぼこ、人参、いくら、干し貝柱。母は巻出身ですが、のっぺは長岡に来て覚えたそうなので「長岡風」の味だそう。ちなみに、東京で子どもの通う小学校の給食で、「のっぺい汁」が出ました。レシピによると、材料は、里芋、ごぼう、人参、大根、干し椎茸、豆腐、こんにゃく、長ネギ。最後に、かつおだしとしょうゆで味をつけ、最後に水とき片栗粉でとろみをつけるのだそうです。子どもはこの給食が大好きです。
(長岡出身・東京在住・40代女性)
東京の小学校の給食で紹介されていたという「のっぺ」も片栗粉でとろみをつけたバージョン。長岡近辺の「のっぺ」とは違う感じですが、東京の子どもたちにも「のっぺ」が知られるようになっている、というのは嬉しいですね。
大根入れる派
材料は、里芋、人参、百合根、かまぼこ、板こんにゃく、銀杏、イクラ(生)。だしは、干し貝柱、干ししいたけ、煮干し。※具の切り方は、やや小さめのさいの目
のっぺは夫の出身地、三条の味つけで作ります。煮干しを入れて具がシンプルなのが特徴。
栃尾の母は、具材に大根、さつま揚げ、なるとも入れていました。
(旧栃尾市出身・北海道在住・40代女性)
旧栃尾市出身の40代女性。三条の味で作っているそうですが、育った栃尾ののっぺは「大根」入り。さらに、「祖母は北海道生まれだったためか豚肉も入れてました。栃尾の料理上手な叔母は栗を彩りにしたり、海老を入れて白醤油で味付けしたりしてました」とのコメントも。北海道ののっぺは豚肉入りなんですね。そして、海老や栗入りののっぺというのはしゃれていますね。
貝柱を入れないお惣菜としての顔も
材料は、里芋、人参、短いこんにゃく、かまぼこ、さつま揚げ、なんか魚だしのもとつかってます。
(寺泊出身、長岡在住20代)
長岡在住、寺泊出身の方。我が家ののっぺは五泉市風?とおっしゃるこちらののっぺは材料の種類が少なめ。貝柱もなしですね。素朴な感じがいいですね。
確か、里芋、人参、板こんにゃく、銀杏、椎茸がいつも入ってて、たまに貝柱入りの時がありました。どこ風かは不明です。
(長岡市出身・新潟市在住・40代)
こちらも、貝柱は入らないこともある、というレポート。のっぺは、正月に食べる料理だけでなく、日常のお惣菜でもあるのです。
ほかにも「堀之内(魚沼市)の同僚は、筑前煮に近い感じののっぺなんだそうです」というレポートもありました。
ちなみに、聞き取り調査では、長岡では、のっぺに使うだし汁は、貝柱のほかに「煮干し!」という声が多かったことも書き添えておきます。
各家庭のこだわりが自然に伝わり、愛され続ける郷土の味に
長岡在住・または長岡出身の人たちに聞いて驚くのは、「のっぺ、食べてないなあ」という声が少なかったこと。お節料理は家で作らず、市販品を買ってくるけれど、のっぺは自分の家で作る、という家も少なくないよう。また、家の「のっぺ」を食べると、新潟の正月……という気分になる、という人も多いですよね。
長岡の料理に詳しく、地元の食材をいかした料理教室も開催している、長岡グランドホテルの日本料理人・和田浩之さんに、長岡ののっぺの魅力を聞いてみました。
和田さん、長岡ののっぺの特徴って何でしょう?
「のっぺの材料に決まりごとはないと思いますが、一般的には里芋、鶏肉、人参、蓮根、牛蒡、銀杏、筍、こんにゃく、油揚げ、貝柱、きのこ、鮭、イクラ等ですね」
「その中でこれだけは必ず入れるのが里芋で、この里芋のもつ”ぬめり”からなる自然な”とろみ”が他の地域にはない、長岡ののっぺの良さだと思います。長岡野菜の一つでもある長岡産の里芋、その中でも特に「土垂」は、とくにぬめりが強くて美味しいと言われています。同じく長岡野菜のだるまれんこんや、鮭やイクラを入れる家庭があるのも地域柄の特徴だと思います」
美味しい里芋がとれる地域だからこそ、の味なんですね。
「小さい頃から正月、お盆などのハレの日に食べてきた、長年親しんできた味で、お袋の味といえばのっぺだと思います。正月に親戚の家などでのっぺを出されると子供ながらに違いを楽しんでいました(笑)。作り方から材料、味付けや出汁も決まりごとはなく、食べ方も温かくても冷たくても美味しい。だけど各家庭なりのこだわりといいますか、のっぺは『こうでしょ!』みたいなものがあって、それがおばあちゃんからお母さんに、お母さんから子供たちに自然と伝えられ、今もずっと愛されてるのかと思います」
確かに! 「のっぺはこうでなきゃ!」という各人の思い入れ、応募写真やアンケートからビシビシ感じました。
「個人的には野菜の旨味を味わって欲しいので、素材の良さを損なわないように作るようにしています。煮すぎて歯応えをなくさないように、味付けも薄味にして野菜の味が引き立つようにという感じですね」
地元の食材への誇りとこだわり、家の味への愛着……。たくさんの写真とレポートから、垣間見えた長岡の家庭の味「のっぺ」。この先も、ずっと作り続けられる味でありますように。
Text:Chiharu Kawauchi