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活版印刷と和紙で日常に癒しを。新しい取り組みに挑み続ける老舗印刷会社の社長に迫る!

ものづくり買う長岡
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2019年 5月 28日 | な!ナガオカ スタッフ

「印刷会社」と聞くと、何を思い浮かべるだろうか。チラシや本などの印刷を依頼されて行う会社だろうか。
だが、長岡市内の信濃川の近く、南陽工業団地にある創業65年の(有)大林印刷は、「印刷するだけじゃない」印刷会社としてさまざまなチャレンジを行っている。
従業員は5人程度と小規模ながら、豊かな発想で驚くようなプロダクトを製作する大林印刷。その背景を、社長の山田進市さんのインタビューから追っていきたい。

 

「印刷会社」がデザイナーとコラボ!
紙雑貨の商品開発が始まった

2018年10月、新潟県の材料のみを使った、印刷会社とデザイナーのコラボ商品「yamayama」が誕生した。天井から釣り下げるタイプのペンダントライトで、和紙で作られた側面には奥行きのある山々のシルエットが印刷されている。和紙の質感を生かして山々の連なりを表現するために3枚の紙を重ね合わせ、越後杉を使ったベースもオーダーメイド。さらに、それらをひとつひとつ手作業で組み立てるという徹底ぶりだ。

yamayamaは「紙を日常の中に取り入れ、豊かさや癒しを感じてほしい」というコンセプトのもと生まれた、印刷技術を使った雑貨ブランド「komemono」の記念すべき第一弾商品でもある。2017年度のにいがた産業創造機構(NICO)の「製造業と県内デザイナーのマッチング支援事業」によって、有限会社大林印刷とデザイン事務所「スイカノタネ」が共同で開発したもので、現在は主にウェブサイトから購入できるほか、新潟市内のインテリアショップ「S.H.S鳥屋野」でも商品を見て購入できる。

灯りをつけると、和紙を通した独特の柔らかな光のグラデーションが山のシルエットと相まって、上品かつ和風の空間にも洋風の空間にも不思議とマッチする雰囲気を醸し出す商品。実際に使った写真を見ても、このような照明が空間に与える影響はとても大きいと感じた。

 

「別業界から来た」からこその
アイデアと行動力

有限会社大林印刷にとって大きなチャレンジの第一歩を踏み出した山田進市社長は、こういった形で外部と連携するのは初めてだったという。

「ペーパーレス化とネット印刷の普及で従来のような形の印刷のニーズが低下し、低価格競争も進む中、地方の小さな印刷会社はこれから今までとは違ったことをしていかなければならない」と話す社長は、これまでにも自社でカレンダーづくりや道の駅での出店など独自の取り組みをいくつも重ねてきた。ただ企業を相手にした(BtoB)これまでの印刷の仕事とは違い、直接消費者に届ける(BtoC)商品の企画や販売は社内の人材だけではなかなか難しい。そんな中での、デザイナーとのコラボの話だった。現在はできた商品をいかに売っていくかなど共に議論しながら様々な展示会などに出店している。

印刷機と山田社長

実は山田社長はずっと大林印刷に居たわけではなく、家庭の事情で6年前に大林印刷を継ぐために会社に入ることになり、2017年4月に社長に就任した。それまでは機械や部品に関わる仕事をしており、印刷業界とはあまり関係のない業界で働いていたため、初めは印刷業界の文化にとまどうこともあったという。

「機械をいじるのは好きなので、会社にある古い印刷の機械を活かせないか考えている」「次はこんな商品をつくってみたい」そう話す山田社長が、大変だと言いながらもアイデアや意欲に満ちているのは、異なる分野からやってきたからというのもあるかもしれない。

大林印刷にある古い印刷機たち。こちらは手動で活版印刷ができるもの

社長は社内の様々な機械も自由に見せてくれた。大きなものから小さなもの、知り合いから引き取ったという今では珍しい古い機械も含め、10台以上の印刷機が工場に並んでいる。また、活版印刷に使う活字(文字の形をした版)や細かい道具も数多くそろっており、普段の生活ではコピー機くらいしか目にする機会のない「印刷」という行為に、実はこんなにも多くの機械が使われ、様々な工程があるということに驚かされた。

 

届けたいのは実用一辺倒ではなく、
紙や印刷による「日常の中の癒し」

「紙や印刷は本当に奥深くて、種類もたくさんある。癒しや味わいにつながる紙や印刷をもっと知ってもらって使ってもらいたい」
忙しく日々を過ごしている人たちや、悲しいことや困ったことを抱えている人たちに、温かみのある紙や印刷だからこそ与えられるものがあるのではないか—。山田社長の様々な行動の根っこには、そんな思いがある。

特に、あまり一般の印刷会社では使用しない「和紙」をつくる新潟県内の工房との結びつきが強いことと、昔の文字印刷の主流であった、活字を組み合わせた版を使って凹凸感を出す印刷手法「活版印刷」の技術や機械を持っていることは大林印刷の強みである。和紙に関しては、特に新潟県柏崎市にある門出和紙工房と連携しており、社長が自ら工房に出向いて工房長と話し合いや試作もしているそうだ。スピードや効率ではなく、五感や手触りを大事にするこの2つが、大林印刷が守りたいものであり、価値を届ける手段でもある。

さらにこの春、大林印刷は新たな挑戦を始める。新潟県内で地域でのインターンシップ事業を実施している「にいがたイナカレッジ」を通じて千葉からのインターン生を受け入れることになったのだ。

「うちの従業員は一番若くても50代。若いインターン生の視点を大事にして、新たな商品をつくっていきたい」と、それまでつながりのなかったにいがたイナカレッジの事業に思い切って挑戦することにした山田社長。半年間という期間の中で和紙や活版印刷の良さを生かした若い人向けの商品開発に取り組み、発信・企画・販売までを一緒に行う予定だ。

長岡の地で紙と印刷にまつわる新しい価値を次々に生み出していく大林印刷の今後を楽しみにしながら、日常の中で紙を意識して使ってみてはいかがだろうか。

山田進市社長(左)と奥様の入江さん(右)。大林印刷の工場にて

 
 

Text & Photos:Yuki Inoue

 

 

●Information
有限会社 大林印刷
[HP]http://oobayasi.com/
[Instagram]@oobayashi_insatsu
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