小学生が地域農家に米づくりと郷土愛を学ぶ半年間。長岡名物「田んぼ授業」に密着!
2021.11.5
米どころ新潟県の中でも、有数の産地として知られる長岡市。海と山に囲まれた自然豊かな環境にあり、信濃川が育んだ肥沃な大地と清らかな水のおかげで、おいしいお米が育ちます。市内のあちこちに見られる田園風景は美しく、夏はキラキラと輝く水面に青々とした稲が茂り、収穫の秋には黄金色に輝きながら穂を揺らす――そんな四季を感じる景観も、米どころの良さのひとつといえます。
そんな長岡市では、多くの小学校の総合学習で、米作りを学ぶ「田んぼ授業」があります。地域の農家が「田んぼ先生」となり、実際に子どもたちが田植えや稲刈り体験をすることで、長岡の宝であるお米をより身近に感じてもらう機会をつくっているのです。今回は、市内でも特に「田んぼ授業」に力を入れている、滝谷地区の岡南小学校へ取材に伺いました。
昔ながらの「手刈り」に挑戦!
絶好の天気のなかで稲刈り体験
給食を食べ終えた後の5時間目。体育着と赤白帽子姿に着替えた5年生19人が、続々と集まってきました。この日は総合学習の「田んぼ授業」。5月に自分たちで田植えした稲を収穫する日とあって、子どもたちは嬉しさからかテンションが高めの様子。
「今日はいよいよ稲刈りの日ですね。それと今日は取材が入っているので、みなさん、がんばっているところを見せてあげましょう」と担任の加藤扶実先生が声をかけると、嬉しそうな顔や恥ずかしそうな顔でいっぱいに。全員の準備が整ったところで、数百メートル先にある田んぼへ歩いて出発です。
5分ほど歩くと、黄金色の稲穂がたわわに実った田んぼに到着。この稲刈りの日のために、なんと児童の数よりも多い地域の農家さん総勢20人がお手伝いに駆けつけてくれていました。子どもたちにとって初めての稲刈り、全員が楽しく学べるようにとサポート体制は万全です。 「最近はスマート農業(ロボットや情報通信技術を使って効率的に行う農業の形)が主流なので、手作業で稲刈りをすることはあまりないです。でも、今日みんなにやってもらうのは、昔ながらの手刈り。鎌を使うから気をつけて作業してくださいね」こう話してくれたのは、10年以上「田んぼ先生」として活動する吉田隆夫さん。2007年から始まった滝谷地区の「田んぼ授業」は今年で14年目。地域の農家で受託した補助金を、子どもたちのためになることに使いたいと始めたのがきっかけです。
岡南小学校5年生が毎年行っている「田んぼ授業」は、5月の田植えと9月の稲刈りの他にも毎月の様々な体験学習がありますが、日々の管理は地域の農家が担当。水の管理を行ったり、肥料をあげたりと、おいしいお米に育つように手をかけていてくれたおかげで、いよいよ収穫の日を迎えることができました。
「まず、左手で稲の束をもって、右手に持った鎌で根元を切る、ほら切れたでしょ?」とベテラン農家の「田んぼ先生」がお手本を見せると、子どもたちは興味津々。正しい手刈り方法を学んだら、いよいよ実践です。稲刈り専用のノコギリのようなギザギザ刃がついた鎌を使いこなし、全員が上手に稲を収穫していきます。
次に、両手でつかめるくらいの稲の束ができたら、稲ワラで結びます。これがちょっと難しいのですが、「田んぼ先生」に教わりながらなんとか成功!
約400平方メートルの田んぼすべてを手刈りするには膨大な時間がかかるので、刈り切れなかった残りはコンバインで収穫しました。鎌での手作業は時間がかかりますが、機械を使えばあっという間です。
太陽と風の力で自然乾燥させる
先人の知恵「はぜ掛け」
無事に稲刈りからはぜ掛けまでを見届けて、自分の仕事場へと戻る「田んぼ先生」たち。今年も無事に収穫できたことで、ほっと胸をなでおろし、子どもたちが楽しんでくれたことを心から嬉しく感じているようでした。