SDGsを切り口に地域のポテンシャルを発掘&発信する「てらどまり若者会議〜波音〜」とは?

東京駅から新幹線で約90分、長岡駅で降りて北西に車を30分ほど走らせると、そこはもう日本海。新鮮なシーフードと海に沈む夕日の美しさで知られる港町、寺泊だ。2006年に長岡市と合併し、2021年9月1日現在の人口は8,767人、3,267世帯から成る。人口減少と少子高齢化はどこの地方でも大きな課題だが、このまちでは、地元っ子と移住者ら若い世代が自発的に集って活性化を進めている。その拠点となっているのが「てらどまり若者会議〜波音〜」だ。様々な団体や企業、学校や行政とゆるやかに連携しながら、SDGsを意識してグローバルに思考し、ローカルに行動する彼らが思い描く“海と地域の明るい未来”とは?

佐渡島を見晴らす日本海が遊び場
海辺のゴミ拾いもゲーム感覚で

穏やかな寺泊の海。うっすらと島影が見えるだろうか。35km沖には佐渡島がある。

2017年2月、若者の意見を地域の人々や行政に向けて発信し、寺泊を盛り上げていく土壌をつくろうと、20代から40代のメンバーが立ち上げた「てらどまり若者会議〜波音〜」。若者が羽ばたき活躍していこう!そんな願いを込めた名前は「波音」と書いて「はね」と読む。フットワークも軽やかなメンバーは、地元にUターンした看護師、長岡市の市街地出身で海辺の保育所を運営する保育士、東京からやってきた地域おこし協力隊員OB、仕事で配属された寺泊で波音に出会い、イベント参加後に加入した団体職員など、様々なバックグラウンドを持つ。まず地元の祭りやマラソンなど行事のサポートに着手し、翌年から自主イベントの開催など独自の活動も展開。発足から5年目に入り、コロナ禍においても歩みを止めることなく、やれることを模索しつつ多様な活動を続けている。

そして2021年7月の学校が夏休みに入ったある日、「みんなで綺麗なプライベートビーチを作って遊んじゃおう!」という掛け声で波音が企画運営したイベントに、長岡市内外から約20人の親子が集った。

右側の縦に伸びる“離島”こと離岸堤の手前の一角が今回の会場。写真提供:てらどまり若者会議〜波音〜(撮影:能登義仁、古川原渉ほか)

まずは代表の木村勝一さんが挨拶し、パネルを使ってこの日の予定を説明。「これからカヌーであちらの島に渡り、みんなでゴミ拾いをしてからカヌーとサップ(SUP=スタンドアップパドルボード/立ってパドルを漕いで水上を進む乗り物)で遊びます。それから海辺の生き物探しと観察も。寺泊水族館の館長さんが魚や海辺の生物について教えてくれますよ」

「まだ時期的にいないと思うけど、もしクラゲに刺されたら毒を水で洗い流しましょう」。危険な魚や生物について紹介し、海遊びの注意点を説明する波音代表の木村勝一さん。ライフジャケットを着用して準備万端の子どもたちは興味津々だ。

カヌーとサップの先生は山形からやって来た協力者の堀江守弘さん。「カヌーはできるだけ低い姿勢で乗り降りします。立ち上がると落っこちてしまいますから。パドルは左右バランスよく漕いでください。波がないので転覆することはないでしょう。今日の海水はけっこう透明なので、漕ぎながら海の中も見てみてくださいね」

山形でホテルやレストランを経営する堀江守弘さんは元スキー選手。この日は弟の堀江龍弘さんと参加していたが、龍弘さんが代表を務める住宅メーカーのプロデュースでまもなく寺泊に新たな宿泊施設が誕生するそうだ。写真提供:てらどまり若者会議〜波音〜(撮影:能登義仁、古川原渉ほか)

子どもたちはライフジャケットをしっかり着用し、集合場所の寺泊マリーナから70メートルほど沖にある離島へ向けて、2、3人ずつカヌーやサップに乗って漕ぎ出した。
「海水浴などでは離岸流が危ないと言われていますが、ここは波もなく穏やかで、遊ぶのにいい場所です」と木村さん。カヌーは寺泊マリーナから借りたもので、今回は波音を含め3団体が連携しての開催とのこと。

いざ離島に向けて出発!この日の参加者でカヌー・サップ経験者は1人だけ。初めての人たちは緊張した面持ちでカヌーに乗り込んだ。

 

誰ひとり転覆することなく10分ほどで無事に到着し、いよいよ上陸だ。

上陸後、さっそく離島のクリーン活動が始まった。参加者それぞれ大きなゴミ袋とトングを持って、宝探しのようにゴミを拾い集めていく。

木村さんによると、海流の関係で、ここに漂着物が溜まりやすいのだとか。「こんなのあったー!」「これはなんだろう?どこから来たのかな」と、子どもたちはゲーム感覚でどんどん拾っていく。

大量のゴミを一箇所に集めて、離島はすっかり美しくなった。国連の定めた「持続可能な開発目標」=SDGsがめざす17の大目標のうちの14「海の豊かさを守ろう」にも通じるクリーン活動だが、環境美化という直接的な目的と同時に、自分たちの日常的な行動を見直し、ものを大切に使うことや環境を守ることについて子どもたちにも感じてもらい、意識を変えるきっかけになればという願いが込められている。

海の生き物探しに出かけよう!
水族館の館長による解説も

その後、参加者のみなさんはカヌーとサップで遊んだり、シュノーケリングをしたり、親子で思い思いの楽しい時間を過ごした。

最初はおっかなびっくりだった子どもたちも次第に慣れて、バランスを取りながら上手に乗れるようになってきた。

 

「あ、魚がいた!」「えー、どこどこ?」

そして、いよいよお待ちかね、海の生き物探しへ。木村さんはメンバーと一緒に網とバケツを配りながら「みなさんから見えている魚はなかなか捕まりません。魚もこっちを見ていますから。たも網で岩の下をガサガサやってみると、小さな魚やエビが入っていることがありますよ」と声を掛ける。待ちきれない子どもたちは我先にと出発!

「あれれ、なんにも入ってないなぁ」「ウミウシを捕まえた!」「ちっちゃいエビがいたよ」などなど、様々な海の生物や植物を発見した。大人も童心に返り、子どもと一緒に磯遊びに夢中。

「僕は海の遊び方は知っているけど専門家ではないので、今日はプロをお呼びしています」と木村さん。海の生物のエキスパート、寺泊水族博物館の青柳彰館長がボートに乗って登場した。
「たくさん捕れました?ここに持ってきてくださいね。どれどれ、これは今年生まれたカワハギの赤ちゃんかな。アミメハギかな」「こっちはアメフラシ。これはボラの赤ちゃんね」。館長は透明なケースに生き物を入れ、次々に子どもたちの質問に答えていく。

「これはクサフグ。可愛いけど毒がありますよ」「カニは、お腹にあるフンドシが三角形のはオス。メスは卵を抱くために丸くなっていて、カニは全部そうです。次はどれかな。知りたい生き物があったら持ってきてね」と青柳館長。

館長の解説がひととおり終わり、木村さんが呼びかけた。
「みなさん、質問はもういいですか?そうしたら、魚たちに『ありがとう』と言って海に逃してあげてくださいね」

少し名残惜しそうに、「バイバイ」と言って魚やカニを海に放す子どもたち。そしてカヌーとサップに分乗し、往路よりずっと手慣れたパドルさばきでスイスイ漕ぎながら陸に戻り、解散となった。
「カヌーに乗れて嬉しかった」「いろんな魚がたくさんいてびっくり」「寺泊には来たことがあったけど、こういう体験は初めて」「また親子で遊びに来たいね」など今日の感想を語り合いながら、子どもも大人も満ち足りた顔で帰路についた。コロナ禍で遠出が難しい夏休みの、忘れられないひとときになったのではないだろうか。

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