SDGsを切り口に地域のポテンシャルを発掘&発信する「てらどまり若者会議〜波音〜」とは?

2021.9.30
東京駅から新幹線で約90分、長岡駅で降りて北西に車を30分ほど走らせると、そこはもう日本海。新鮮なシーフードと海に沈む夕日の美しさで知られる港町、寺泊だ。2006年に長岡市と合併し、2021年9月1日現在の人口は8,767人、3,267世帯から成る。人口減少と少子高齢化はどこの地方でも大きな課題だが、このまちでは、地元っ子と移住者ら若い世代が自発的に集って活性化を進めている。その拠点となっているのが「てらどまり若者会議〜波音〜」だ。様々な団体や企業、学校や行政とゆるやかに連携しながら、SDGsを意識してグローバルに思考し、ローカルに行動する彼らが思い描く“海と地域の明るい未来”とは?
佐渡島を見晴らす日本海が遊び場
海辺のゴミ拾いもゲーム感覚で

穏やかな寺泊の海。うっすらと島影が見えるだろうか。35km沖には佐渡島がある。
そして2021年7月の学校が夏休みに入ったある日、「みんなで綺麗なプライベートビーチを作って遊んじゃおう!」という掛け声で波音が企画運営したイベントに、長岡市内外から約20人の親子が集った。

右側の縦に伸びる“離島”こと離岸堤の手前の一角が今回の会場。写真提供:てらどまり若者会議〜波音〜(撮影:能登義仁、古川原渉ほか)

「まだ時期的にいないと思うけど、もしクラゲに刺されたら毒を水で洗い流しましょう」。危険な魚や生物について紹介し、海遊びの注意点を説明する波音代表の木村勝一さん。ライフジャケットを着用して準備万端の子どもたちは興味津々だ。

山形でホテルやレストランを経営する堀江守弘さんは元スキー選手。この日は弟の堀江龍弘さんと参加していたが、龍弘さんが代表を務める住宅メーカーのプロデュースでまもなく寺泊に新たな宿泊施設が誕生するそうだ。写真提供:てらどまり若者会議〜波音〜(撮影:能登義仁、古川原渉ほか)
「海水浴などでは離岸流が危ないと言われていますが、ここは波もなく穏やかで、遊ぶのにいい場所です」と木村さん。カヌーは寺泊マリーナから借りたもので、今回は波音を含め3団体が連携しての開催とのこと。

いざ離島に向けて出発!この日の参加者でカヌー・サップ経験者は1人だけ。初めての人たちは緊張した面持ちでカヌーに乗り込んだ。

誰ひとり転覆することなく10分ほどで無事に到着し、いよいよ上陸だ。

木村さんによると、海流の関係で、ここに漂着物が溜まりやすいのだとか。「こんなのあったー!」「これはなんだろう?どこから来たのかな」と、子どもたちはゲーム感覚でどんどん拾っていく。
海の生き物探しに出かけよう!
水族館の館長による解説も
その後、参加者のみなさんはカヌーとサップで遊んだり、シュノーケリングをしたり、親子で思い思いの楽しい時間を過ごした。

最初はおっかなびっくりだった子どもたちも次第に慣れて、バランスを取りながら上手に乗れるようになってきた。

「あ、魚がいた!」「えー、どこどこ?」

「あれれ、なんにも入ってないなぁ」「ウミウシを捕まえた!」「ちっちゃいエビがいたよ」などなど、様々な海の生物や植物を発見した。大人も童心に返り、子どもと一緒に磯遊びに夢中。
「たくさん捕れました?ここに持ってきてくださいね。どれどれ、これは今年生まれたカワハギの赤ちゃんかな。アミメハギかな」「こっちはアメフラシ。これはボラの赤ちゃんね」。館長は透明なケースに生き物を入れ、次々に子どもたちの質問に答えていく。

「これはクサフグ。可愛いけど毒がありますよ」「カニは、お腹にあるフンドシが三角形のはオス。メスは卵を抱くために丸くなっていて、カニは全部そうです。次はどれかな。知りたい生き物があったら持ってきてね」と青柳館長。
「みなさん、質問はもういいですか?そうしたら、魚たちに『ありがとう』と言って海に逃してあげてくださいね」
少し名残惜しそうに、「バイバイ」と言って魚やカニを海に放す子どもたち。そしてカヌーとサップに分乗し、往路よりずっと手慣れたパドルさばきでスイスイ漕ぎながら陸に戻り、解散となった。
「カヌーに乗れて嬉しかった」「いろんな魚がたくさんいてびっくり」「寺泊には来たことがあったけど、こういう体験は初めて」「また親子で遊びに来たいね」など今日の感想を語り合いながら、子どもも大人も満ち足りた顔で帰路についた。コロナ禍で遠出が難しい夏休みの、忘れられないひとときになったのではないだろうか。