「まちの魅力を語る」って何だろう? 学生たちが「借り物ではない、自分の言葉」を探し歩いた4日間

2021.12.20
「自分が住むまちの魅力は何ですか?」と問われたとき、あなたならどう答えるでしょうか。まちの魅力というものは観光資源やお店の多さで考えられがちですが、それらは特徴のひとつにすぎません。まちを楽しむ視点をもつことでもっと地元を好きになって、それを海外に出たときにも伝えられるようになってほしい――そんな思いから、2021年9~11月に公益財団法人長岡市国際交流協会が、市内の高校生や留学生たちを対象に「ながおか魅力発見講座」を開催しました。講義や現地視察を通じて、学生たちは何を感じ、「まちの魅力」をどう捉えるようになったのでしょうか。

「まちについてもっと知りたい」を共通項に集まったメンバーたち。

中国、ベトナム、スリランカ、メキシコなど出身国さまざまな留学生も参加。
講座名にもある「まちの魅力」とは、実際に自分が訪れて楽しいと感じる場所? 観光資源として注目を浴びているスポット? さまざまな解釈がありますが、まずは視点を広げてみることがこの講座の目的です。
「な!ナガオカ」編集者視点で語る
まちの魅力を発見するポイント
この第一回では、「な!ナガオカ」編集部も参加させていただき、「まちの魅力」を見つけるヒントを伝えるべく、編集部メンバーがオンラインでのレクチャーを務めました。
「みなさんは、まちって何だと思いますか? ランドマークや構造物? 名所や観光スポット? それとも政治的・経済的単位、あるいは消費や遊びの場でしょうか。これらはすべて正解です。そう、まちは『ハコ』のようなものだといえます」(編集部)

まちは「消費」「遊び」「労働・生産」などの機能が備わっていますが、そこに「人」がいないと成り立ちません。
まちを構成するものは、建物やイベントだけでなく、「人」も重大な要素となっている。これは当然のようにも思えますが、まちの魅力について考えるときに見落としてしまいがちなことでもあります。「地元が好き!」と胸を張る人は、案外その地に住む「人が好き」という意味合いで語っている場合も多いものです。つまり逆説的にいうと、この地に住む人を魅力的に感じなければ、たとえ利便性という面では満たされていても、心から自分のまちが好きとは感じにくいともいえます。

「まちの魅力は『人にある』」この言葉が腑に落ち、各自が何をすべきか自分と向き合って考えていました。
「そうした人の中にも、例えばプラモデル300個を持っている人など、“おもしろい大人”はたくさんいたのかもしれません。でも、当時の自分の『人』の見方の範囲の中では出会えなかったんです。若い世代がまちを出ていく理由、それはきっとお店やイベントなどのにぎわいだけではありません。自分の住むまちで、将来大人になったときにどうなるかのイメージが湧かない、あるいは限られている。だから自分が輝ける可能性のある都会へ行く――この構図ができているんだと思います」(編集部)
つまり、まちの魅力やあるべき姿を考えるときは、建物(ハード)と人(ソフト)の両方が必要。「人の集合体としてのまち」を意識することが大切なのです。
まちを語る言葉は十人十色
借り物ではない自分の言葉を
「な!ナガオカ」はまちを語るメディアですが、実は自分たちからは『長岡は〇〇のまち』と決めつけないような発信を心がけています。なぜなら、「まちを語る言葉」は人によってまったく異なるものになるはずだから。同じ景色を見たとしても、感じ方は人それぞれ。つまり、まちに住む一人ひとりが自らの視点で魅力を見つけ、「借り物ではない言葉」で発信することが大切なのです。
「まちの姿は人の数だけある、正解はない」と言ってはみるものの、大人になってしまえばつい日々の目的に埋没してしまい、そんな考え方を身につけるのは誰にとっても容易なものではありません。ですが、まだ視線が柔軟で、考える時間のたくさんある高校生たちには、よい気付きになったようです。

まちの魅力は意識しないと日常化して通り過ぎてしまう……そんなことに深く気付かされた時間となりました。
“おもしろい大人たち”との出会いから
視野を広げて楽しさを発掘する
前段の講義を踏まえて、最終までの間、高校生たちはまちに住む“おもしろい大人”に会いに行くことに。
第1回目の午後には、県内に8店舗を展開する「SUZUグループ」の代表・鈴木将さんから、地元の野菜を使用した料理への思いを伺いました。「地域の良さを発信したい」と考案された料理は、和洋エスニックとジャンルは多様で、カジュアルな雰囲気が特徴。留学生にとって、地域食材をグローバルな料理にして提供するスタイルは新鮮だったようです。

長岡を誇りに感じながら仕事をする大人たちはカッコイイ!あふれる地元愛には惹かれるものがありました。
地元食材の商品開発を手がける「FARM8」の代表・樺沢敦さんからは、地域ブランディングを実践する際の思考について学びました。起業のきっかけ、県外からUターンした理由が語られる場面もあり、試行錯誤があって今があるといったお話を直接聞くことはなかなかできない体験です。

大河津分水資料館を見学。川の整備が経済を支えていることを知りました。

寺泊で記念撮影!日本海と砂浜に青空が美しく映える光景は、長岡の宝物です。
大河津分水路については、こちらの記事もご覧ください。
“大水害時代”とどう向き合う? 国内最長「信濃川」の治水対策に迫ってみた|な!ナガオカ

「江口だんご」の古民家を改装した店舗は風情が漂い、伝統ある和菓子とマッチしています。

陶芸初挑戦メンバー多数!講師の今さんに教わりながら、土と戯れる楽しい時間となりました。
高校生たちが見つけた
世界に紹介したい長岡の魅力
そして最終日となる11月13日、第四回目となる「ながおか魅力発見講座」では8人の高校生たちが独自の視点で見つけたまちの魅力を発表しました。テーマは「私が世界に紹介したい長岡の魅力」。まちで活躍する大人たちと出会い、まちを観察する視点を持って過ごした数カ月間、彼ら彼女らはどんな発見をしたのでしょうか。

「長岡に誇りをもって食を提供する大人たちと出会えたことが印象深かった」と話す片野佳香さん。

イスラム教の留学生を受け入れた体験から「発酵・醸造のまち摂田屋で『ハラル醤油』を作ってほしい!」と提案した桑原夢さん。

観光客が気づきにくい四季の風景を知ることができるのは地元民ならではの特権。磯谷真有さんは身近にある景色の魅力を発見しました。

石川杏湖さんが掲げるイラストは、長岡愛あふれる人たちと関わり合うことで、まるで共鳴するようにまちの魅力を発見する様子が描かれています。

若い世代にとって「地元には何もない」と感じるのは正直な感想。そこから一歩先を行って、まちのおもしろさがわかるようになったという金澤智さんの発表。
その他、高校生たちは、「当たりまえを見つめ直すと発見がある」「意識を変えたことで視点が変わった」と自らの気づきを発表していました。これらの発表のどれもが、自身のフィルターを通して感じた「自分の言葉」であり、誰かが考えた借り物の言葉ではありません。まちをおもしろく捉えるためには観察して考えて行動すること、その感覚がなんとなくつかめてきたようです。
地元の「当たりまえ」は普通じゃない
留学生たちの目に移るまちの姿とは
4日間に渡って開催された「ながおか魅力発見講座」には、多様な国籍の留学生も参加しました。地元で育った高校生たちとは異なる視点をもつ彼ら彼女らは、長岡というまちにどんな印象をもっているのでしょうか。

ベトナム出身のナムさん。長岡に住んで4年目となり、まちのおもしろさを日々発見しているようです。

メキシコ出身のアレックスさん。将来は日本で起業することが夢なのだとか。

スリランカ出身のチャヤニさん。「長岡の人はシャイですね」とも話していました。
まちの捉え方に正解はありません。人によって異なる視点の積み重ねで、まちの魅力はいくつも生まれていきます。テレビで紹介された観光スポットなど、すでに誰かがPRしたり、誰かが「いいね!」と言っているものではなく、自分の生活のリアリティの中でふと目にとまった景色にこそ、自分だけのおもしろみがあるもの。借り物ではない「自分の言葉」でまちを語れば、きっと自分のまちが大好きになっていくはずです。

講座終了後の交流会にて。4日間共に過ごしたメンバーたちとの出会いは宝物。
Text&Photo:渡辺まりこ