まさかの無料!? 極厚油揚げ名産地でもらえる「おから」をいかに使い切るか?
長岡市栃尾の名物は巨大で分厚い油揚げ。長さ20センチ、幅8センチ、厚さにいたっては3センチ(!)。ユニークなその形状は、親しみをこめて「ジャンボあぶらげ」とも呼ばれます。町には16店もの油揚げ店があり、お目当てのお店目指して、遠方からわざわざ車で買いにくるファンも多いとか。
さて、大量の油揚げを作るとその量に応じて出てくる副産物があります。それが「おから」。栃尾の油揚げ店の中には、なんと、おからを無料で好きなだけ持ち帰れるようにしている店も! 安価な食材と言われていても「タダ」とはびっくり。「ちょっと体にいいおかずも作ってみようかな~」「これは持ち帰らねば損だ!」なんて思わずテンションが上がって大量に持ち帰ってしまう人もいるのではないでしょうか。しかし、いりおからくらいしか食べ方を知らない人や、気づいたらおからが傷んでしまった……といった人も多いのでは。
今回、編集部が注目したのは、このおから。流通させきれない分は産業廃棄物として捨てられてしまう運命のこの食材。いったいどうすれば美味しく無駄なく使いきれるでしょうか。2回に分けてお送りする栃尾のおからレポート、【前編】はおからの食べきり方をご紹介します。
おからには大豆の栄養の半分が残っている
大豆を水に浸してもどし、すりつぶしてから濾してできたものが「豆乳」。こしたあとに残る大豆の残りかすが「おから」です。残りかす、というと聞こえが悪いのですが、実はおからには大豆の栄養のなんと半分以上が残るのだそう! 食物繊維はもちろん、大豆の良質なタンパク質やイソフラボン(※)も多く残っています。低カロリーで低糖質。米や小麦粉など、糖質の多い食品のかわりにおからを使うと、食物繊維を増やし、糖質を抑えられるため、血糖値の急上昇を抑えて、太りにくいと食べ方ができると言われているのです。
せっかく持ち帰ったおから、やっぱり食べなければもったいない!
※女性ホルモンのエストロゲンと似た構造をもつフラボノイドで血液中のコレステロールを下げるなど体内で数多くの有効な働きをする
おから詰め放題の「星長」に行ってみた
編集部が訪れたのはJR長岡駅から車で30分。栃尾の市街地にある栃尾大野町「星長豆腐店」。油揚げはもちろん、おぼろ豆腐の美味しさでも知られ、遠方からわざわざ買いにくるファンも多い人気店です。こちらの店内、大きなコンテナに取り放題のおからが置いてあります。備え付けのスコップで、ビニール袋におからを皆好きなだけ詰めて持ち帰っています。……こんなサービス見たら、ついついたくさん持ち帰りたくなりますよね。
卯の花煎り、酢の物、サラダにおすすめ
「星長豆腐店」で、店員の方におからの食べ方について聞いてみました。
「いりおからなら、ひじきなど入れると栄養豊富になっていいですよ。それから、暑い時期には酢の物もさっぱりした一品になります。また、ポテトサラダのジャガイモをおからに替えたおからサラダは簡単でいいですよ。パン粉がわりにハンバーグなどのひき肉だねに混ぜて使うのもおすすめです」とのこと。
ジャガイモやパン粉は糖質の多い食品。かわりにおからを使うと、ダイエットにもよさそうです。
保存は冷蔵2~3日、冷凍1~2週間
ただ、おからを食べるうえで気をつけておきたいのが、その賞味期限。おからは冷蔵庫に入れるだけでは3日ほどで傷みだします。すぐに使わないときは冷凍するのが鉄則。ちなみに100~200グラムくらいに小分けにし、ビニール袋に入れて薄くつぶして冷凍したほうがあとで便利です。
しかし、実は冷凍保存にも限度があるのを知っていますか。1~2週間以上保存すると、次第に霜がつき、「冷凍庫くさい」味に劣化してしまうのです。
大量に持ち帰ったおから、1~2週間では食べきれないかも……。
レンジで簡単!自家製おからパウダー
冷凍保存の大敵は「霜」、つまり水分。ということはおからを乾燥させればもっと保存がきくのでは?
実は数年前から、COOKPADや書店の料理書コーナーで「おからパウダー」レシピが人気。小麦粉などの代わりに食物繊維豊富かつ満腹感のあるおからを使うことでダイエッター向けの糖質制限スイーツが作れるなどの理由のようです。
保存の点でも、ダイエットの点でも魅力的な「おからパウダー」、せっかく栃尾でもらってきたおからで作れたらいいんじゃない? ということで、参考にしたのはこのレシピ。
どうやら、フライパンでから煎りするだけで作れるらしいのです。もっと調べてみると電子レンジで加熱して水分をとばすことで、おからパウダーに近いものができるらしいのです。
実際に試作を重ねた結果、電子レンジのみで簡単に作れることがわかりました。
250グラムのおからを耐熱容器に入れ、ラップなしで500~600Wの電子レンジで最初は5分加熱。次からは、取り出して混ぜて加熱を3分×4~5回繰り返すだけ。このとき、電子レンジの扉や庫内にたっぷり水分がつくので、毎回ふきとることをおすすめします。これだけで、重量はなんと半分ほどに。パン粉のようなサラサラの状態になりました。
あとは粗熱をとってからジッパー付きの保存袋に入れて空気を抜き、冷蔵庫や冷凍庫で保存するだけ。冷蔵なら1週間、冷凍なら1カ月は余裕でおいしく食べられます。
イチ推しはもっちもち「おからパンケーキ」
作った自家製おからパウダーは、いりおからに使うもよし、サラサラなのでパン粉がわりにひき肉だねに入れて使うのも楽々。
自家製おからパウダーイチ推しの使い道が、パンケーキ。甘くない食事用のパンケーキミックス1袋(150グラム)に分量の水か牛乳、それに40~50グラムの自家製おからパウダーを混ぜて普通に焼くだけ。通常は薄く焼き上がるパンケーキですが、おからを追加することで、ボリュームがかなりアップ! そして、弾力あるもっちもちの歯ごたえになり、かなりおいしい! このためにわざわざ自家製おからパウダーを作ってもいい、と思えるくらい。
まとめると……栃尾で油揚げを買ったら、おからを一緒に持ち帰り、近々食べる分はすぐ小分けにして冷凍。長く楽しみたいなら、電子レンジで水分をとばして自家製おからパウダーにしておく。油揚げや豆腐を堪能したあとに、保存しておいたおからを楽しむ。これが無駄なく美味しく使い切る方法といえそうです。保存のひと行程で、栃尾の美味しいお土産は長く食卓を楽しませてくれるものになります。ぜひお試しください。
次回、栃尾おからレポート【後編】では「ゴミを資源に。栃尾油揚げの副産物『おから』の意外でエコな使い道」と題して、知っていると誰かに話したくなる、食べる以外のおからの利用法についてお伝えします。
星長豆腐店
[住所]新潟県長岡市栃尾大野町1-2-27
[TEL]0258-52-2292
[営業時間]午前7時~午後6時 ※定休日: 1月1・2日 ゴールデンウィーク後4日間 お盆後4日間
[駐車場]有