市民が集う拠点「アオーレ長岡」10周年! 縁の下で支えてきた裏方さんに密着【後編】

長岡市の顔としてオープン10周年を迎えた「アオーレ長岡」の“裏方さん”をフィーチャー。前編では、アオーレの運営リーダー・木口信雄さんの物語をお届けしました。後編では、清掃、設備や警備を担当する二幸産業・新潟綜合警備保障共同企業体のみなさんをご紹介します。上の写真左から警備員の相澤重晴さん、統括管理責任者の齋藤公清さん、設備管理業務主任の仲丸浩明さん。2012年4月のオープン時からアオーレに関わり、それぞれの仕事に邁進してきたみなさんの思いを伺いました。

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市民が集う拠点「アオーレ長岡」10周年! 縁の下で支えてきた裏方さんに密着【前編】

清掃、電話交換から事故の対応まで
統括管理責任者・齋藤公清さん

アオーレの清掃、設備、警備、電話交換、統括、除雪などの管理業務をトータルで請け負う二幸産業・新潟綜合警備保障JV(共同企業体)に所属する齋藤公清さん。オープン当初の3年間は清掃責任者、別の営業所での勤務を経てアオーレに戻り、2020年2月から全体の統括管理責任者と清掃責任者を兼務しています。

設備に不具合がないかどうか、清掃が行き届いているかどうか、事故がなく安全な日常が営まれているかどうか。アオーレ全体に目配り・心配りする齋藤さんは、関係各所との調整役です。

いつも何かしらの用事で館内を巡る毎日ですが、齋藤さんの席は市役所がある東棟1階の管理事務室内にあります。事務室はナカドマに面していて、ガラス張りなので、中を覗いたことがある人もいるかもしれません。

透明性の高さが自慢のアオーレは、もちろん管理事務室もガラス張り。お仕事風景を外から窺うことができます。

オープン当初の様子について、齋藤さんは懐かしそうに振り返ります。

「オープン1ヶ月前にこちらに来て、最初の3年間は清掃の責任者でした。大賑わいのオープニングセレモニーや大相撲アオーレ場所、アイススケートショーなど、印象に残るイベントがたくさんあります。アオーレを設計した建築家の隈研吾さん、越後長岡応援団の宇崎竜童・阿木耀子ご夫妻、テレビ局のアナウンサーなど、有名な人たちが普通にナカドマを歩いている姿を見て驚いたことも。毎年8月に開催されている『長岡まつり』はすごい人出で、アオーレに面した大手通りが平和祭や昼行事のメイン会場ですから、たくさんの人がこちらにも流れて、ゴミの量もすごかったんです。回収が追いつかず、深夜までせっせと回収し続けて、すべて終了したときは本当にホッとしたことを覚えています」

6時15分から22時30分まで、清掃スタッフのシフトを組み、清潔な状態を保つべく取り組んでいます。

電話を受ける齋藤さん。後ろのホワイトボードには様々な予定が書き込まれています。平日は毎日15時に各担当が集まってミーティングをして情報を共有しているとのこと。

全体の管理業務のほか、月次・年次の業務計画や保全計画の立案、各種マニュアルの作成。月次・年次の報告、作業日報の作成、消防訓練やAED研修の実施、清掃業務の計画立案、作業の立ち会い、そのすべての報告など、齋藤さんの仕事は多岐にわたります。

「決して目立つ仕事ではありませんが、平常時の点検や巡回など、アオーレ内で何事も起こらないようにしっかりと見守ることが役割。朝から何かが故障したり、体調不良の方がいて救急車を呼んだりと忙しい日もあれば、何も起こらず平穏無事に1日が終わることもあります。設備の不具合や施設の異常が起これば即座に対応し、解決していくことが大きな役目ですが、この仕事は1人でできるものではありません。清掃、設備、警備、電話交換、統括といった各業務スタッフが日ごろから連携していますし、長岡市やイベント運営の方々、協力業者とのコミュニケーションも必要です。周囲と協力して仕事を進める中で自然と連帯感も強まって、より良い仕事につながると思います」

見学で訪れた小学生がナカドマを通っていきました。授業で、また家族と一緒に、子どものころから何度も訪れることで、親しみやすく愛着のある場所になっていくことでしょう。

「アオーレのクリスマスツリーやイルミネーションを見てお客さまが喜んでくださって、『いやー、素晴らしいね!』と絶賛されると、思わず『ありがとうございます』という言葉が出ます。褒められるとうれしいですよね、私が設置したわけではないですけど(笑)。昼休みをナカドマやホワイエで過ごす方、放課後に集まっておしゃべりしている高校生もいます。みなさんそれぞれの用途でアオーレを使っていただき、市民にとって気軽に立ち寄れる大切な場所になってきたのかなと感じます」

アオーレでのお仕事に、齋藤さんがやりがいと誇らしさを感じていることが伝わります。

地下駐車場にて。もし接触事故などが発生したら、齋藤さんが即座に駆けつけます。「早くコロナが収まり、以前のように多くの方々にまた足を運んでいただき、楽しんでもらいたいですね」

続いて、齋藤さんに案内していただき、駐車場から設備管理の仲丸さんがいる場所を訪ねます。

機械の保守点検から真冬の除雪まで
設備管理業務主任・仲丸浩明さん

駐車場にある秘密のドアを開けると、そこは関係者以外立ち入り禁止のエリア。アオーレのオープン時から10年にわたり、ここで電気、空調、給排水など設備の維持管理に携わる仲丸さんに案内していただいたのは「熱源機械室」です。

安全に快適に利用してもらえるよう、設備面を見守ってきた仲丸浩明さんは魚沼市出身で、長岡に移住したそうです。「海あり山あり、長岡はアクセスも便利でいいですね」

雨水を集め、ろ過してトイレなどに活用する循環システムを採用しているアオーレ。冬は融雪にも、暑い夏は打ち水として施設の冷却にも使われているそうです。

「冷暖房を使っている時期はもちろん、使っていない期間も常時稼働している機器がありますから、機械の数値に変化がないかどうか、異常がないかどうか、遠隔監視や現場確認をして常に気にかけています。ここのスタッフは6人で、早番が8時から17時、普通番が8時30分から17時30分。遅番は13時30分から22時30分。イベントの有無に関わらず週末も交代で勤務しています。電気、冷暖房などのほか、消火器・消火栓、煙感知器などの防災関連、建物にかかわる設備機器ほぼすべての維持・保全が私たちの仕事です」

この10年の印象的な出来事について尋ねると、雪国ならではの答えが返ってきました。

「いやー、楽しかったことより辛かったことのほうが多かったかもしれません(笑)。なにより、真冬の大雪ですよ。地上はもちろん、屋上も、除雪作業が大変だったことが記憶に残っています。雪庇(せっぴ=風が吹き、雪が屋根の風下の一箇所に固まった状態。放置すると重みで崩落する)ができて、屋根に上がってそれを落としたり、その場所に行くまでにも除雪が必要だったり……。ほかの部署の人たちにも応援を頼んで総出でやりますが、体が追いつかなくなりますね。特に外部にある設備機器の維持管理は大変です」

機械の数値や中央監視室のモニターやカメラで異常がないかどうかチェックし、発見したら速やかに対応することが仲丸さんの役割です。

毎冬の雪とのバトルと同様、仲丸さんが仕事に喜びを感じた瞬間もまたチームワークの成果でした。

「ここに来たばかりのころは、わからないことが多くて。その当時の最新設備やシステムが導入されていたので、説明書を見て、みんなで協力しながら、試行錯誤していました。問題をひとつひとつクリアできたときは『ああ、良かった!』と。とてもうれしかったですね。オープン直前は緊張の連続でしたが、笑顔で帰っていくお客さまを見てホッとしたことは忘れられません」

中央監視室の自席に座る仲丸さん。「取材は苦手なんです」と言いつつ、たくさん語ってくださいました。「みんなが集い、癒される場所になってきましたね。常に課題があり、アオーレは日々成長させてくれる場所です」

「私は、夏はナカドマ、冬はホワイエが好きです。お客さまが和んでいる姿を見ていると、私自身も気持ちが和みますし。11年目に入り、建物や設備に経年変化が見られるようになりましたが、利用するすべての方の心に残る空間であるよう、これまで以上に心がけていきたいです。長岡の象徴であるアオーレで仕事ができるのは光栄なことで、責任も感じています。表に出ない仕事ですが、どのように貢献できるかということを念頭に置き、これからも努力していきます」

最後に、警備員の相澤さんをご紹介します。

巡回、道案内から婚姻届の受付まで
警備員・相澤重晴さん

アオーレを守り続けて10年が経過した相澤さん。通常の公共施設とは異なり、館内に24時間オープンなスペースがあることで、警備泣かせの部分もあるようです。

「オープンな空間はアオーレの特長で、それはいいところなのですが、同時に警備としては気を遣うところでもあります。警備は日勤と夜勤でスタッフのシフトを組み、24時間アオーレの安全を守っています」

警備員の相澤重晴さん。前職は地場産業の仏壇を作る職人だったそうです。

アオーレの徒歩圏内に実家がある相澤さんは、小さいころから厚生会館にはよく遊びに来ていたそうです。

「やはりプロレスですよね。久しぶりに長岡に来られたお客さんが『ここ、ずいぶん変わったね』などと話しかけてくださることもありますし、個人的にも思い出がたくさんある場所で働けるのはうれしいことです」

「錦鯉の展示とかサーカスとか、いろいろな楽しいイベントがありましたね。警備は気を遣いましたが」と微笑む相澤さん。

そんな相澤さん、警備する対象も様々です。

「秋に『菊まつり』を1週間ほどやったことがあり、ナカドマにずらーっと菊を植えた鉢を並べて。夜間も開放しているので、いたずらされないように臨時警備をしました。錦鯉の展示のときも、盗まれないように夜間は臨時警備をして。それから、アリーナでサーカスを開催したときには、裏に馬や熊などがいたので、その動物たちの警備もしましたよ。『長岡まつり』のときは大手通と連動してアオーレにも縁日のようなブースが並ぶので、その警備もあります」

車でアオーレに来る人にとっては馴染み深い場所、地下駐車場の入口や駐車場内の警備も相澤さんたちの仕事です。また、警備以外に、こんな業務も担当しているそうです。

「夜間や休日の市役所の受付も私たちの仕事なので、婚姻届を受け付けるという、人生のドラマに立ち会うこともあります。もちろん離婚届、出生届、死亡届もあります。お正月なんかは婚姻届を出すために10組くらい並んでいることもあるんですよ。これは警備と違って特別な仕事なので、経験のある人が担当します。電話番もそう。夏は夜間のナカドマの警備に気を遣いますが、冬場は『ここを早く除雪してください』といった電話が入ってくることもあります。捉え方によっては、警備よりも多種多様な電話の対応がいちばん大変な仕事かもしれません」

市役所総合窓口の入り口に立ち、立哨警備をすることが多いという相澤さん。

相澤さんに仕事のやりがいについて訊いてみました。

「道案内をしたり、説明をしたり、お客さまに『ありがとうございました』と言っていただけること、笑顔で挨拶を交わせることがなによりの喜びです。コロナ禍ですが、以前のようにいろいろなイベントが復活してますから、たくさんの方に来ていただけたらうれしいです。ぜひこれからも気軽に立ち寄っていただきたいですね」

この先もずっと心地よく、楽しく集える場所であり続けるために、ハレの日も日常も絶え間なく尽力するみなさんを取材しました。バックヤードで活躍する人たちに支えられ、力強く11年目を歩み始めたアオーレ長岡。次に訪ねたときは、ぜひ裏方さんの気配を感じてみてください。

 

Text: 松丸亜希子 / Photo: 池戸煕邦

●インフォメーション

シティホールプラザ アオーレ長岡
[住所]新潟県長岡市大手通1-4-10
[電話番号]0258-39-2500(NPO法人ながおか未来創造ネットワーク)、0258-35-1122(長岡市役所代表)
[URL]https://ao-re.jp

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