ゴミを資源に。栃尾油揚げの副産物「おから」の意外でエコな使い道
長岡市栃尾では名物の油揚げを作る店が16店も存在します。大量の油揚げを作るのだから、当然、大量のおからも出る、ということで栃尾の油揚げ店でもらえるおからを美味しく食べきる方法を、栃尾のおからレポート【前編】「まさかの無料!? 極厚油揚げ名産地でもらえる『おから』をいかに使い切るか?」で調べてみました。しかし、食用として使われるおからの量にも限度があります。残ったおからはもったいないことですが、産業廃棄物、つまりゴミとして処分されることに。
しかし、さすが油揚げの町、おからの町(?)栃尾。現地の油揚げ店なら、もっとさまざまなおからの使い道に詳しいのではないか、と素朴な疑問を抱いて取材したところ、驚くようなおからの使い道が次々と出てきました。栃尾のおからレポート【後編】は、実は食べる以外に広く活用されていた、おからの意外な使い道について報告します。
畑の肥料に、みそ作りに
【前編】でおからの食べ方を教えてもらった「星長豆腐店」。豆腐や油揚げのおいしさもさることながら、大きなコンテナに取り放題のおからが置いてあるサービスが嬉しいお店ですが、はたしてお客さんたちの持ち帰り用途は食用だけなのでしょうか? お店で星浩司さんにお聞きすると、「農家の方が畑の肥料として持ち帰られますよ」とのこと。「おからを使った肥料の作り方というのがあるらしいです」。
おからは栄養が豊富なので、肥料の材料に使い、土に混ぜると野菜の生育がよくなるのだそう。豊かな森と豊かな水に恵まれた栃尾、そのうえ、肥料まで栄養豊富なら、抜群の味の野菜ができることでしょう。「あとはおからを使った味噌を作っているところもありますよ」。味噌といえば大豆で作るもの、大豆の搾りかすであるおからでも味噌が作れるとは、おからの使い道は広い!
凍らせたおからは保冷材にも
取材中も次々来るお客さん。ラインナップが豊富な星長だけに、大荷物になる人も少なくありません。お店では車で来店するお客さんなどには持ち帰りやすいよう、手ごろなサイズの段ボールに商品をつめてくれます。そして「保冷剤として凍らせたおから入れておきますね」、と店員さん。水分をほどよく含んだおからは、凍らせると保冷材として使えるそうです。氷と違って溶けて水が漏れ出る心配も少なく、もちろん、解凍して食べることもできるので、無駄がない。これは驚きかつ嬉しいアイデアです。
あぶらげ工場から出るおからの量は1日3t!
さらなるおからの使い道を探して訪れたのは、栃尾の市街地を抜け、国道290号線沿いにある吉水の「栃尾豆庵(とちおとうあん)」。首都圏のスーパーマーケットにも栃尾油揚げを卸している大手なだけに、一日に出る生おからの量はなんと3t(!)。ここでは「業務用おからパウダー」を作っているらしく、それも食用ではない、とのこと。いったい何に使われているのでしょう?
マイタケの菌床、家畜の飼料に
「当社のおからパウダーはきのこ、特にマイタケの菌床や、豚・牛・鶏など家畜の飼料として需要があるんです」と語ってくれたのは、社長の土田泰盛さん。
ここの工場では油揚げを作るために出たおからは、すぐさま熱風で乾燥させます。もともと生おからの状態で85パーセントあった水分含有量は、わずか10パーセントに。出来上がったパウダーはサラッサラ。傷みの大敵の水分がないので、長期保存できる状態になるのです。しかも土田さんいわく「イキがいいうちに」乾燥させることでおからに含まれるタンパク質をはじめとした栄養分が残るのだそう。
このおからを培地に混ぜ込むと、きのこ、特にマイタケの生育がよくなり、多く取れるのだとか。また家畜用の配合飼料として求めるメーカーもあり、おからを飼料に育った鶏の卵は黄身の黄色味が強くなるのだそうだ。輸入の材料の値段が上がっている昨今、国内のさまざまなメーカーに季節を問わず安定して供給できることもあって非常に好評。売れ残ることはまずないそうです。
油揚げの廃油を熱源に利用
早速、おから乾燥機を見せていただくと、……大きい! 予想より大規模な設備。もうもうとあがる水蒸気。あたりにはなんとも香ばしくいいにおいがしています。おからの鮮度がよいので、嫌な臭いは出ないのです。
「生のおからは廃棄処分するのが現状。初期投資はかかりましたが、産業廃棄物を処理する手間や資源のこと、先々を考えると自社で乾燥させてリサイクルさせるほうが環境にやさしいですよね」と土田さん、頷いていると、
「あとは油揚げを揚げた油も、おから乾燥機の燃料として使っているんです」と驚くべき言葉が飛び出しました。「捨てるものがないんですよね」。
油揚げを作る過程でできる副産物がほかの食べ物に戻っていく。実にエコロジーな取り組みです。土田さんは2年前から、より効率よく乾燥することができる二台目の機械を導入したとのことです。
栃尾のおからは、食べるだけじゃなく、資源にもなっていたのでした。予想していたより深いおからの使い道を知ることができ、これまで以上に栃尾に足を運びたくなりそうです。