本物を追求する理由。

大切にしているのは、お客様が口に運ぶまでのストーリー。生産者の努力、シェフの腕前、サービスの心遣い、場所のポテンシャル。すべてが織りなす“本物の物語”があってこそ、舌をうならせる一皿が生まれます。クオリティを高めるために斎藤さんたちが心血を注いでいるのには、お客様に喜んでいただく以外に、もう一つ理由があります。「ここは、長岡市初の指定障害福祉サービス事業所なんです」。母体となっている社会福祉法人が、障がい福祉事業の一貫で立ち上げた施設が、和島トゥールモンド。レストランスタッフには、軽度の障がいを持ったスタッフも多く在籍しています。障がい者雇用の問題を知るにつれて、斎藤さんは彼らの雇用を守りたいという思いを強くしました。「自立自立ってよく言いますけど、本当に自立できるだけの給与を彼らが得られているかというと難しい。都道府県別にある給与水準の実積をみれば明らかです。だからこそ、お給料に反映できるように、彼らには生産性の高い仕事をしてほしい。生産性を高めるためにも、すべてにおいてクオリティを高めているんです」。

それぞれ事情のあるスタッフは、現在20名程度。障がいの特性にあわせて、職員が適宜サポートしている。

それぞれ事情のあるスタッフは、現在20名程度。障がいの特性にあわせて、職員が適宜サポートしている。

語らずして、語る。

「最近、感激した出来事がありました」。レストランで働く知的障害の男性と、親御さんを交えて面談をしたとき。彼が書店の書籍コーナーの前で立ち尽くし、調理師免許取得の本が目の前にありながら、手をのばせないでいたことを、斎藤さんは聞いていました。「その彼が、最近とあるテレビ局の取材でインタビューを受けたときに、このレストランで調理師免許をとって活躍したいと、カメラに向かって話してくれたんです」。少し前まで手の届かない夢だった調理師免許の取得が、彼にとって具体的な目標に変わっている。そこに斎藤さんは強く感銘を受けたと言います。「彼らは非常に勤勉で、向上心が強い。人が見ていないところではサボってもいい、なんていう発想をしない。その姿勢に、本来あるべき姿を教えられているような気がします」。目の前の仕事に真摯に取り組む。スタッフのひたむきな姿勢もまた、語らずして “本物の物語”を訪れた人に伝えています。

 

和島トゥールモンド100年の時をこえて 斎藤さんの志

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行動の源。

それは正しいことを為すこと。

正しいことを為す。それは、ハンデのある方の行動の源だということを、一緒に働くことで気づかされました。正しいか、どうか。非常に大切なことですが、ややもすると見過ごされてしまいがちだと思います。レストランの総支配人として、障がい者雇用に携わる一職員として、私自身も常に正しくありたいと思っています。

(レストランBague 支配人 斎藤篤)

※この記事は2015年7月に作成いたしました

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