長岡に新たな特産品が誕生!親子で参加できるメープルシロップ採取体験

2017.4.30

古くから錦鯉の産地として知られている新潟県長岡市川口エリア。信濃川と魚野川の合流地点にある河岸段丘に拓けたこの地域は、豊かな水が人々の暮らしと自然を支えています。

そんな川口エリアで、新たな特産品が生まれつつあります。それはなんと「メープルシロップ」。ホットケーキなどに添える、あの子どもも大好きなメープルシロップが長岡で採取できるというのです。

今回、東京の元麻布農園さんがその採取体験に訪れました。元麻布農園とは「農家さんとの交流を通して、消費者と生産者、都市と地方のより良い関係を築く場所を目指し、都市部における心豊かな生活」(同社HPより)を提案する団体。

単なる「都市型菜園」にとどまらず、積極的に生産者と関わり合いを持つために各種体験ツアーを企画、新潟にも度々訪れているそうです。

 

4年前に初めて採取された長岡産シロップ

採取体験の当日は長岡市川口の荒谷集会所に集合。一行は前日に川口に入り、雪合戦やそり遊び、かまくら作りなど東京ではできない雪遊びに夢中になったそうです。季節は3月中旬。関東では春目前ですが、川口にはまだまだたっぷりと雪が残っているのです。

集会所では「山の暮らし再生機構」の川口サテライト主任支援員・春日さんから、荒谷地区とメープルシロップに関して簡単なレクチャー。

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「荒谷地区は13世帯の集落です。この集会所はもともと小学校の分校で、廊下などは分校の時のままにしてあります」

春日さんの説明に、大人がうなずきます。

「この集落は13世帯中、12世帯が『宮』という姓です。メープルシロップを見つけたのも、宮さん。私たちの山の師匠の宮 日出男さんという方が、数年前から個人的に採取を始めました。ここからすぐ近くで採れますが、雪が深いので今日はカンジキを履いていきます。カンジキ、履いたことがある人?」

子どもたちから一斉に「なーい」の声。

「残念ながら子ども用のカンジキはないので、抱っこか大人の後をしっかりついてきてくださいね」

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慣れないカンジキを履き、いざ雪原へ。目的の樹までは数十メートル。前日にも新たな降雪があり、新雪を切り開くことになりました。

雪道は危険もたくさん。夢中になって雪庇(せっぴ)を踏み抜いたりしないよう、レクチャーが行われました。

雪道は危険もたくさん。夢中になって雪庇(せっぴ)を踏み抜いたりしないよう、レクチャーが行われました。

 

天然の「甘い水」に大人も子どもも興奮

メープルシロップはサトウカエデをはじめとするカエデ科の樹液から作られます。宮 日出男さんが目をつけたのは、ここの山に生えているイタヤカエデ。ただし、カエデは落葉樹のため、寒い時期は葉っぱもなく、見分けるのは山に精通する人でないと難しいそうです。

メープルシロップを採取すること自体は難しくありません。ドリルで木の表面に小さな穴を開け、そこにチューブを挿入します。チューブの先にペットボトルなどの容器を据えておけば、あとは自然とメープルシロップの元になる樹液が溜まる仕組みです。

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とはいえ、子どもには危険な作業。お父さんやお母さんが頑張ります。

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その様子を、子どもたちも興味津々で見つめていました。

樹液はすぐには溜まりません。昨日のうちから溜めておかれたものがみんなに配られました。

樹液はすぐには溜まりません。昨日のうちから溜めておかれたものがみんなに配られました。

「水だー」「美味しいお水だー」「ちょっと甘い!」。大人も子どもも、初めての味と体験に目を輝かせていました。

「水だー」「美味しいお水だー」「ちょっと甘い!」。大人も子どもも、初めての味と体験に目を輝かせていました。

濃縮前のこの樹液は「メープルウォーター」と呼ばれ、気候に応じて甘みが変わります。寒暖の差が激しいほど甘くなるそうです。本場・カナダのメープルウォーターは糖度2〜2.5%ほど。川口のものもそれに負けないくらい甘いように感じました。

集会所へ戻る道すがら、小川さんご家族にお話を聞きました。元麻布農園のイベントには今回が初めての参加です。

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お父さん「友達に紹介されて参加してみました。息子はキャンプが好きなので、雪で遊びたいだろうなと思いまして。この時期にまだこんなに雪があるなんてビックリです。

僕はもともと東京だし、妻は静岡。雪には縁がなくて。昨日も子どもが雪遊びを楽しんでいたので、参加してよかったです。自然に触れるのはいいですね」

お母さん「自然派の幼稚園に通っているので、その一環として山を体験させたいというのがありました。越後川口、すごくいいところですね。冬のリゾートって感じで」

お父さん「昨夜の食事も良かったです。山菜がすごくおいしかった。ほとんどお肉なしのメニューでも大満足! 子どもも喜んで食べていました。これから集会所に戻ってのシロップの味見が楽しみです」

そうなんです。集会所では春日さんたち支援員が、煮詰めたメープルシロップを準備してくださっているのです。あのメープルウォーターが、どんなシロップになっているのか。大人も子どももわくわくです。

 

長岡産シロップは霞がかった無色透明

戻ってくると、紹介所のテーブルにはなぜかおちょこが。「長岡の日本酒でカンパーイ」と書いてあります。これは長岡市の「日本酒で乾杯条例」にちなんで作られたおちょこ。今回は日本酒ではなく、メープルシロップが注がれます。

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春日さん「先ほど採った樹液を煮詰めると、うっすらと白くなリます。普段目にするメープルシロップとはちょっと違いますね。どうぞお子様たちは前のほうへ」

言われるまでもなく、みんなすでに春日さんの前にかぶりつきです。

 徳利に入っているのが、メープルウォーターを煮詰めたメープルシロップ。この時季の川口のメープルシロップは市販のものと異なり、霞がかった無色透明。何も加えず煮詰めた、正真正銘のメープルシロップです。

徳利に入っているのが、メープルウォーターを煮詰めたメープルシロップ。この時季の川口のメープルシロップは市販のものと異なり、霞がかった無色透明。何も加えず煮詰めた、正真正銘のメープルシロップです。

おちょこに注がれたメープルシロップを飲んでみます。

おちょこに注がれたメープルシロップを飲んでみます。

子どもたち「あ、あま!」「もうちょっと飲みたくなっちゃった」

春日さん「お父さん、お母さんにもどうぞ」

子どもたち「すいません、もうちょっと飲みたい」「おかわりー」「おかわりー」

春日さん「もうこれしかないからね」

お父さん、お母さんにもきちんと行き渡ったのでしょうか。どうやら、川口の採れたてメープルシロップはかなり中毒性(?)があるみたい。子どもたちはみんな、2杯ずつは飲んでいます。最後の1杯をかけて、みんなでじゃんけん。よほどおいしかったんですね。

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あるお父さんが呟いていました。

「もう少し子どもが大きくなったら、雪がこれだけ積もるとどれだけ暮らしが大変だとか、この地域を襲った震災についても教えてあげたい。けれど、今は『雪を触って楽しい』『メープルシロップおいしい』でいいと思います。まず体験してみることが大切ですよね」

きっと思い出に残る、素晴らしい体験になったのではないでしょうか。

 

親子で雪国を満喫できる特別な体験

最後に、オーストラリア出身だというスピアーズさんにその日の感想をお聞きしました。

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娘さんを抱くスピアーズさんご夫妻。

スピアーズさん「私はオーストラリア出身。今日はとても楽しかったです。初めてメープルシロップを採るところを見られて、子どもにもすごく良い経験になったと思います。

日本でメープルシロップを採るなんて、私も聞いた事がなかった。このあいだ同僚たちに話したら、『えー、日本で採れるなんて』って日本人もビックリしていたので『じゃあ今度教えてあげるよ』って言いました(笑)。

メープルシロップといえば普通はカナダですからね。本当にビックリしたし、親子でとても楽しみました。ぜひまた来たいですね」

今はまだごく一部でしか知られていない長岡のメープルシロップ。けれどもしかすると10年後、20年後、長岡市川口のメープルシロップは世界に知られる存在になるかもしれません。

この日の子どもたちの反応に、そんなワクワクを感じます。今年のメープルシロップは終わりましたが、来年もまたお楽しみに!

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Text & Photos:Kenichi Hoshino

 

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