毒キノコからマツタケまで出現!?「キノコを調べる会」で身近なキノコ採りに挑む
「キノコ博士」はなんと社長さん
「キノコを調べる会」の会場となるのは、長岡市の中心部から車で20分ほどのところにある東山ファミリーランド。広大な敷地内に運動公園、キャンプ場、スキー場を備えたレジャー施設です。
開催されたのは10月上旬。キノコが最も美味しい時期です。
まずは、スキー場のふもとにある第2ロッジに集合。
講師をつとめるのは、「長岡きのこ同好会」会長の原信高先生、「三条きのこの会」の中林芳光先生のおふたり。原先生はなんと長岡市内で不動産会社を経営する社長さん。本業の傍ら「長岡きのこ同好会」会長としてキノコの楽しさを伝える活動を続けている方です。両氏ともいわゆる学者ではありませんが、キノコ採りに関してはこの道何十年という大ベテラン、頼りになる先生たちです。
シートが被せられた大きなテーブルがふたつ置かれており、そこにはすでにいくつかキノコが置かれています。どうやら、講師の先生や参加者が道すがら採ってきたもののよう。さすがはキノコ好きが集まる会!
まずは講師のおふたりとともに東山ファミリーランド内を歩き、キノコを採取します。その後、ロッジに戻り、みんなでキノコを調べるというのが今回の流れです。
参加者は、キノコ初心者から詳しい方まで千差万別。家族連れの方の姿も多く、とてもフレンドリーな雰囲気です。
東山ファミリーランド内の道路は、トレッキングルートにもなっています。参加者のひとりいわく「びっくりするほど生えていますよ」とのことですが、果たして……?
まだ歩き出して数分のところですが、「いっぱいある!」子どもたちが歓声をあげて道の脇に駆け出していきます。
「これ何!?」「食べられるの!?」と興味津々の子どもたち。早くも手にキノコを持ち、先生のもとへ駆け寄ります。
こちらは「オオヒメノカサ」。芝生などでよく見られるポピュラーなキノコで、イネ科の植物の苔から養分を取っています。
中林先生によると、採り方にもちょっとしたコツがあるのだとか。たとえばオオヒメノカサは芝生に浅く生えているので、深く掘らなくても大丈夫。地中に深く入り込む大きめのキノコだと、深掘りしないと本体が傷んでしまうこともあるので、やはり知識が必要なのです。
「木のすぐ下に枯れ草があるはずだから、よく見てごらんなさい」という中林先生の言葉どおり目を凝らして見てみると、たくさん生えています。
こちらは「モリノカレハタケ」というキノコ。森の中の枯葉の中に生えるキノコ。その名の通りのネーミングです。
そもそもキノコは「木の子」が語源ともいわれます。慣れてくれば、木を見ただけでその下にどんなキノコがあるか想像がつくようになるのだそう。
「どんなところにキノコが生えているのか」「目当てのキノコはどこにあるのか」を知る上で大事なのは、キノコが生える環境です。そもそもキノコは植物のように思ってしまいがちですが、それは大間違い。実は菌類に属する生き物です。宿主となる存在が必要なので、周辺環境が非常に大事になってくるのです。
先生のアドバイスを参考に、どんどんキノコを採集していく参加者たち。おもしろいくらい採れていきます。
たくさん採れるとやっぱり面白いもの。だんだんと参加者も楽しくなっていきます。
気がつくと、あっという間に2時間が経過していました。そろそろロッジに戻ります。
ロッジに戻り、いよいよキノコを分類!
ロッジに戻ると、先に帰った他の参加者ですでに賑わっています。
テーブルの上には、参加者のみなさんが東山ファミリーランド内の様々な場所で採ってきた大量のキノコがずらりと並びます。
参加者の中にはキノコに詳しい方が何人もいて、各所で熱心なキノコ討論会が行われていました。
運営スタッフの方の手には、びっしりとキノコの名前が書き込まれたノートが。このリストにあるのは、すべて今日採れたキノコなのです。その数、なんと80種類以上!ひとつひとつを鑑定し、ネームプレートを置いて展示していきます。
気になるのは、ネームプレートに書かれているキノコの名前が黒、赤、青の3色で色分けされていること。黒は可食(食べていい)、青は食毒不明(まだ情報が少なく、食べていいかどうかわからない)を表します。そして赤は、いわゆる毒キノコを表しているのです。
次々に持ち込まれるキノコを、原先生は真剣な面持ちでひとつひとつ丁寧に鑑定していきます。
キノコを見分けるポイントとは?
そんな中、参加者の女の子がしきりに原先生に質問をしています。
違うキノコに分類されているものの、どうしても同じキノコに見えてしまう様子。
匂いを嗅いで丹念に調べ上げます。原先生は、この匂いを嗅ぐという作業がキーポイントになるといいます。「たとえばキノコには『○◯モドキ』『◯◯ダマシ』というように、姿形が同じようであっても全く異なるキノコがあります。食用キノコと同じ姿をしていても、実は毒キノコであることも十分あり得るんです」とのこと。
また、キノコの裏側にも注目してみるといいのだとか。キノコの裏には筋が通っているものが多く、「ものによっては、筋のピッチ(間隔)で判別することも可能です」と原先生。
女の子が悩んでいたのは毒キノコの「ドクベニタケ」と「ドクベニダマシ」の違い。赤く小ぶりな姿形からはまったく見分けがつかず、匂いを嗅いでも分からない様子。
最後の手段ということで、原先生、ごく少量をかじってみます。そうすると、ドクベニタケには少しだけ辛みが。この辛みが、そっくりなふたつのキノコを分ける決定的なポイントとなりました。ただ、これはキノコを知り尽くした方だからこそできること! この方法を試すには、必ず詳しい方の指示を仰ぐようにすることをおすすめします。
テーブルの上には、ネームプレートが真っ赤なキノコたちが占める一角がありました。ちなみに「オオワライタケ」とありますが、かの有名な毒キノコ「ワライタケ」とは同類ではなく、むしろ別の種類に属するのだそうです。似たような名前であっても、まったく違う種だなんて。なかなか奥が深い……。
中林先生によれば、まだ名前のついていないキノコもたくさんあるのだとか。「たとえば△というキノコにそっくりだから△モドキとつけるなど、名付け方は案外簡単なもの。厳密にルールは決まっていないんです。そのまま名前が定着したとしても、後で学術的な裏付けが行われると、まったく別の名前に変わることもあり得ます」とのこと。
身近な場所で採れる!
おすすめキノコ3選
ひととおりキノコの鑑定が終了しました。良い機会なので、原先生、中林先生から「身近な場所でも採れる可能性のあるおすすめキノコ」を教えていただきました。
臓器の肝臓に似ていることから名付けられたカンゾウタケ。見た目はちょっとグロテスクですが「実は美味しいキノコ。焼くとステーキのようになるという方もいます」と原先生が話すとおり、食用キノコなのです。アメリカでは「貧者のビーフステーキ」などとも呼ばれている隠れた人気キノコです。
「ヌメリスギタケモドキ」もおすすめ。このキノコは、他の参加者の方たちも口を揃えて「おいしいよ」と話していました。その名の通りヌメリがあるので、汁物に入れるのがおすすめなのだとか。
そしてこちら!日本のキノコの王様ともいえるマツタケも、この東山をはじめ、運が良ければ身近な里山で見つけることができます。
ご紹介した3種類のキノコは、東山ファミリーランドはもちろん、全国各地に分布する比較的ポピュラーなキノコでもあります。皆さんも、探してみてはいかがでしょう?
キノコを通じて地域の
ことを知るきっかけに
ある参加者の方は「キノコを通じて、自分たちが住んでいる地域のことを知るきっかけにもなる」と話してくれました。とくに、小さなお子さんがいる方にはおすすめのイベントです。キノコを入り口に、多くのことに興味を持つきっかけになるかもしれません。
長岡きのこ同好会では、不定期でこのような会を開催しているので、ぜひ一度、参加してみてはいかがでしょうか。時には、採れたキノコで汁物料理を味わったりすることもあるそうですよ。
Text and Photos: Junpei Takeya
※当記事はキノコの安全性を保証するものではありません。
※キノコ採取にあたっては、必ず詳しい方の指示を仰いでください。
長岡きのこ同好会
事務局Tel:0258-35-5580