名パティシエの“虎の穴”に潜入! 夢を追いかける若者たちの「決断の理由」とは
製菓専門学校の実習授業に潜入!
北陸食育フードカレッジは「食のプロ」の育成を目指す専門学校で、4つの学科があります。今回取材した製菓・製パン専攻学科の定員数は40名。就職率は100%を誇り、都内有名ホテル、県内洋菓子店や製パン店など、卒業生はそれぞれ、希望の道へと進んでいます。
それでは、さっそく実習授業風景を覗いてみましょう。
本日の実習授業は飴細工。「よろしくお願いします!」の元気なあいさつからスタート。日本を代表する実力派パティシエ・朝田晋平さんを外部講師に迎え、専門的な技術を学びます。
各グループ5~6名に分かれて、直径15cmの円台に自由なデザインの飴細工を作るというのが今回の課題。メンバー同士で協力しながら、作品を仕上げていきます。
「14時45分が終了時間です。片づけを終えるまでが作業ですよー!」と朝田先生。
2年生後半戦に入ったこの時期は、就職先が決まった学生がほとんど。そのため、目的意識と時間配分を考えた行動をしてほしいと、技術以外の指導にも熱が入ります。厨房などではチームワークが大切な作業も多く、卒業後に食の現場で力を発揮できる人材育成を目指しているそうです。
期待に応えるべく、きびきびと動く学生たち。飴細工専用機械やドライヤーなどを使ってパーツを作り、チームで協力しながら形を仕上げていく姿はもはやプロのよう。
そして完成した学生たちの作品がこちら。飴細工経験3回目でこのクオリティとは、さすがです!
授業中の学生たちは真剣そのもの。講師から得られるアドバイスや体験を無駄にしまいと、目の前の課題に集中する姿がありました。あいさつも元気で気持ち良く、このまま社会人になっても良いのでは、と思ってしまう程の落ち着きぶり。これで弱冠20歳というから驚きです。
夢を追いかける学生にインタビュー
授業終了後は、北陸食育フードカレッジ自慢の「すごい学生」にインタビュー決行です。今年10月に開催された「2017ジャパン・ケーキショー東京」のエコール(学生)部門で、快挙を成した実力の持ち主とのこと。
迎えてくれたのは、笑顔がステキなかわいらしい学生さんでした。最高峰金賞受賞の佐々木結衣さんと、銅賞受賞の原彩央里さん。コンテストでは応募作品約500点のうち、金賞2点、銅賞35点しか選ばれないということで、狭き門の中で受賞を勝ち取りました。
――コンテスト受賞おめでとうございます!おふたりの作品について教えてください。
佐々木「人間や動物たちが楽しそうに演奏している様子を表現しました。一番苦労したのは側面に咲く花ですね。側面は規則的なモチーフで飾るのが通例なんですが、様々な花が咲き誇る華やかなイメージにあえてチャレンジしてみたんです」
――新しい挑戦が評価されたのですね。苦労したことはありますか?
佐々木「先生や仲間のアドバイスと、自分がやりたいことの折り合いがつかず、途中で着地点を見失ってしまったことでしょうか。最終的にはなんとかまとまったんですけどね」
原「え!私は逆に周りのアドバイスがないと作品は完成できなかったなぁ。サンタやトナカイを表情豊かにすることで、忙しそうな雰囲気が出せたのはみんなの助言のおかげです」
佐々木「原さんは素直な努力家だからね。悩むことなく積極的にアドバイスを取り入れられるのも才能の一つだと思います」
原「私は初めの頃、自信のなさからコンテストに出品するかどうかさえ悩んでいたんです。でも校内審査に合格して、大会に出品できる代表7名に選ばれて、こうなったらやるしかない!と思いましたね」
佐々木「選抜メンバーは放課後に残ってケーキを作ったり、お互いにアドバイスをし合ったりして、絆は相当深まりました」
パティシエを目指したきっかけ
――おふたりはなぜパティシエを目指すようになったのでしょうか?
原「お菓子作りが好きな母の影響です。コッペパンを揚げてきな粉やココアをまぶした揚げパンが、原家の定番おやつだったんです。母と一緒に長岡市内の洋菓子屋さんを巡ったのも楽しい思い出です。小学校低学年頃にはすでに、将来はパティシエになると決めていました」
佐々木「私も小学校低学年頃から憧れていましたね。でも、現実は厳しいだろうと薄々感じていました。それで親の心配もあって、中学・高校時代は管理栄養士の道を目指そうと思っていたんです。とはいうもののやっぱり夢をあきらめきれなくて、ギリギリになって進路を変えてパティシエになることを決意しました」
――夢に迷いのなかった原さん、悩み抜いた末に決断した佐々木さんと対照的ですね。それでは北陸食育フードカレッジに進学を決めた理由はなんでしょうか?
原「オープンキャンパスへ行った時に、先輩方のあいさつや礼儀正しさに感動したからです。この学校なら、自分が成長できると確信しました」
佐々木「私の場合、出身の山形県に製菓専門学校がなく、良い環境だと聞いていた今の学校に決めました。何より惹かれたのは『厳しさ』です。実技指導はもちろんのこと、生活指導もしっかりしていると評判だったので。自分を高められる場所だと思いました」
――お二人とも将来をしっかりと見据えた決断だったのですね。学校生活はいかがですか?
佐々木「これまではお菓子作りを純粋に楽しんでいたのですが、プロを目指すとなると作業の時間配分や衛生管理など、気にすべきことがたくさんあって……。学ぶことは山ほどあると痛感しました」
原「私はこれまで人と話すことが苦手だったのですが、パティシエという共通の夢をもつ仲間たちと出会えたことで打ち解けて話せるようになりました。授業はチームワークでの作業が多く、実践に役立つカリキュラムが組まれていると感じます」
佐々木「私は寮に入っているので、仲間たちとの関係はさらに濃いかもしれません。寮生活のおかげで、相手の気持ちを思いやる行動が少しはできるようになってきました(笑)」
専門学校生活も2年目の秋を迎え、ふたりはすでに就職先の内定を獲得。佐々木さんは千葉の有名ホテル、原さんは長岡市内洋菓子店のパティシエとして、2018年4月から社会に羽ばたきます。
――来年からいよいよプロのパティシエになりますね。どんな気持ちで仕事に臨みたいですか?
原「美味しいケーキを提供することで、お客さんに喜んでもらいたいです。そのために日々努力していきたいと思っています」
佐々木「私も同じ気持ちです。まずはお客さんに喜んでもらうことが大切なので、技術を磨いていきたいです。いずれはプロ部門のケーキコンテストにも出品してみたいですね」
将来に悩んでいる方たちへのメッセージ
――最後に、夢をもつ中学生や高校生のみなさんにアドバイスをお願いします。
原「私は小学生の頃から夢をもち続けてきました。ブレずに貫き通すことができて、幸せに感じています。夢はあきらないことが大切だと思います」
佐々木「私も夢をあきらめなくて良かったです。自分のやりたい気持ちに素直になって努力することで、大きな自信につながりました。仕事の安定性や収入、なんとなくの噂や周りの考えにとらわれすぎて、夢を捨てるのはもったいないです。まずは行動を起こして、行けるところまでチャレンジしてみてください!」
自らが決めた道をまっすぐに進む佐々木さんと原さん。「夢」というと大げさに聞こえるかもしれませんが、二人とも自分の「チャレンジしてみたい」という気持ちに素直になり、努力の継続が実を結んだということ。これからプロになる期待と不安でいっぱいになりながらも、未来の自分をキラキラとした表情で語る姿が印象的でした。
みなさんは今「やりたいこと」がありますか?目標に向かってチャレンジすることは日々を充実させ、人生を豊かにすること。将来がまだ定まっていない中学生・高校生はもちろんのこと、社会人としてすでに働いている方でも、彼女たちの姿から学ぶことは多いのではないでしょうか。
「ワクワクする未来」に向けてまっすぐに進む未来のパティシエたち。数年後はさらなる高みを目指す、立派なプロフェッショナルになっているに違いありません。
Text & Photos : Mariko Watanabe
北陸食育フードカレッジ
[住所]長岡市福住1-5-25
[電話]0258-32-0288
[HP]http://www.hokurikugakuen.ac.jp/