長岡の酒が台湾上陸。現地の反応は?「Nagaoka Sake Discovery in 台湾」
2019/8/2
台湾で長岡の魅力を発信!
旅行や飲食業界での認知度アップを狙う
台北のレストランにて行われたのは、「Nagaoka Sake Discovery in 台湾」と題したイベントです。
二部構成となっており、第一部は現地の飲食関係者や旅行関係者に向けた商談会。
いま、日本を訪れる観光客数は全国的に増加していますが、特に新潟県では新潟空港で台湾の直行便が就航したほか、東京から新幹線で約90分というアクセスのよさもあって、台湾からの来訪者数が一番多く、年々人気が高まっています。そのため、新潟県に目を向けている台湾からの訪日観光客を長岡へ誘客することを目的に、長岡市・長岡観光コンベンション協会・長岡花火財団による、長岡市が有する観光地の情報や観光資源についての説明が行われました。
年間を通じた長岡花火の打ち上げやVRを活用した花火の疑似体験に加え、錦鯉と錦鯉が育つ棚田・棚池の四季折々の様子などを紹介。台湾の参加者は文化的な要素やアートや芸術の感度が高く、例えば単に錦鯉の話にとどまらず、鯉が育つための環境保全の取り組みや、錦鯉をとりまく暮らしの営みはどうなっているのか——といった深い部分にまで興味を持った方々による質問が飛び交いました。
長岡市や各団体がこれまで制作したさまざまな資料を見て、日本酒だけでなく、錦鯉や長岡花火などへの興味をもった方々の姿も印象的でした。
現地には専門店も登場!
台湾の日常に広まる日本酒
第二部では日本酒の試飲会と長岡についてのプレゼンテーション。ここにも、政府関係者やデザイナーなどさまざまな職種の参加者の姿が見られました。
試飲には長岡の9蔵12銘柄(朝日酒造、高橋酒造、柏露酒造、越銘醸、お福酒造、高橋酒造、栃倉酒造、長谷川酒造、関原酒造、河忠酒造)が登場。
友人に誘われたという現地のデザイナーの男性は「自宅でも店でも最近、日本酒をよく飲んでいます。日本酒の晩酌はとてもリラックスできるので。普段は職場の近くにある日本酒専門店で買っています。今日の日本酒の中では柏露酒造の特別純米酒(朱鷺の舞)が気に入りました! 自分が好きな熱燗にも向いていると説明を受けたので気になっています」、
ゲームクリエイターの女性からは「日本酒は居酒屋で飲むことが多いですが、時々家でも飲みます。産地や蔵によって味が違うことがとても面白いし、日本酒の魅力だと思います。産地などについてはあまり知らないので、有名なお酒を選ぶことが多いですが、今日は山城屋のファーストクラスが印象に残りました。」など、参加者からの評判は上々。
さまざまなバリエーションのある長岡の酒を通して、ひとくちに日本酒と言ってもその味や飲み口は実に多様なのだということにも気づいてもらえたようです。
一方、イベントに出店した長岡市の酒造関係者も、確かな手応えをつかんだ様子。柏露酒造の佐藤 一也さんは
「反応はいいと感じています。日本酒が初めてという方もいて、興味があるんだなと感じました。また実際に現地の方が飲んでいるところをみて、その温度感を肌で感じることができてよかったと思います」と笑顔を見せました。
ここ最近は国内消費が落ち込んでいることを受け、酒蔵のほうでも海外に目が向いているところがちらほら。佐藤さんもその一人です。
台湾のクリエイターから見た日本酒、そして長岡の印象とは?
第三部では台湾のトップクリエーターである、デザイナーのLiao Chun Yu(リャオ・チャンユー)さん、誠志(マコト) さんと、フォトグラファーのFang Yen Wen(ファン・イェンウェン)さんが登壇。昨年に長岡を訪問した時のインスピレーションを元に制作した台湾限定発売の日本酒のラベルデザインや、台湾向けのプロモーション映像についてのトークショーが行われました。
今回お披露目となったラベルデザインがこちらの2つ。
「形状、書体、色、三つの部分から自然、文化、歴史を表し、職人が持つ『こだわり』を伝えることをコンセプトにデザインしました。形状は栃尾城から望める守門岳の形を書体のデザインの原型としたもので、書体は力強い且つ生命力のある書道の書体を使い、栃尾城の森のシルエットを融合させました。まっすぐな樹幹や重みのある雪をイメージしています。色は製酒職人がお酒に注ぎ込んだ武士道精神をベースに、居合斬りのようにエネルギーを伴った、一刀入魂のイメージです。」とは、「山城屋」のラベルデザインをしたリャオさん。
お福酒造「越後の雪どけ とろ甘」のラベルデザインを担当した誠志(マコト)さんからは、
「長岡に来て、実際に酒蔵を訪問した体験をデザインに取り入れたいと思いました。雪が降っていたり、スキーをしたりしたことなど、自分がした体験をデザインに取り入れています。
ヨーグルトのお酒は白い沈殿物によって2層(グラデーション)になっていて、初めて見た時には『これは何だ?」と思いましたが、それが逆におもしろく他にはないものだと思えてきて、これを生かすデザインとしてラベルを透明にしました。沈殿物が瓶を揺らすとゆらゆら揺らぎ、その揺らぎが雪のイメージやスキーをするイメージに重なる。自分が体験した長岡の風景をこのデザインで届けたいです。』というコメントがありました。
現地のコーディネーターも務めるファンさんからは、
「台湾では、日本酒といえば大手の量産品が多く、種類や味の違いなどを理解している人はかなり少数。そのため、飲みやすい甘口が好まれています。飲食店等での試飲や料理とのペアリングワークショップなどで、日本酒に触れる機会を増やすことで、まだまだ需要は見込めるでしょう。
また台湾では日本酒=日本の伝統文化と認識されているところがあります。日本に憧れを持つ台湾人が多いことからも、日本に触れるという意味で好まれています。」と、今後の展開の方向性まで見据えたインプレッションがありました。
まだまだ可能性を秘めた、台湾における日本酒市場。日本からの視線も熱く、ますます文化交流が深まっていくであろう台湾で日本酒が広まることはもちろん、日本酒をきっかけに長岡に興味を持ち、一人でも多くの人が長岡を訪れてくれることにこれから期待したいものです。