よりマニアックなスポットを掲載した
聖地ファン待望の第二弾が完成

スピリチュアルな雰囲気が漂う表紙が目印の「とちおパワースポットガイドVol.2」。

そして、今年3月に発行した第二弾は、よりマニアックな寺社に加え、自然のスポットを合わせた全11カ所を掲載している。

例えば、「吉野神社」は旧小学校のグラウンド内にある。その理由は、山間部に学校を建設する際、一番拓けた場所が神社の境内だったからといわれている。古くから地域の人に親しまれ、まちのコミュニティ形成の場として大切にされてきた。

「将軍地蔵尊」は財産を守る神様。一般的に地蔵は野外に安置されるが、こちらではめずらしく建物の中にいるのだから不思議な光景だ。穏やかな表情で佇むお地蔵さまは、住民の災いを取り除く役目を担い、人々にとって守り神のような存在ともいえる。

「杜々の森」は、原生林からの湧水が名水百選に選ばれている。300年以上前にこの地を拓いた人々は「十二山の神」を祀って信仰し、近年まで女人禁制を守っていたそうだ。ここを侵すものは呪いを受けるといわれている。

ちなみにVol.2の最終ページはこんな言葉で締めくくられている。「行けば逢う。」と――。大自然に囲まれた鳥居は、神秘的な雰囲気を醸し、異世界への入り口のようにも見える。大竹さんが話すように確かに派手さはないけれど、本当に神隠しに逢ってしまいそうな神々しさと不気味さがそこにはある。このような独特の雰囲気が、パワースポットマニアにひそやかに注目される理由なのかもしれない。

実は神社数トップクラス!
栃尾の情報発信が目指すもの

実は、新潟県は全国一神社数が多い。その理由は明治時代に最も人口が多く、地域のコミュニケーションの場として、小さな神社があちこちに作られたからといわれている。県内には現在4700社の神社があり、2位の兵庫県3800社と比べるとかなりの差だ。しかしながら、この事実を知らない県民も多い。

「新潟県の神社数はゆるぎないナンバーワンです。大規模な神社は少なく、人々の生活に根ざした神社ばかりなのが特徴です。これはユニークなPR材料となりえますし、県民自身が“新潟は神社王国”ということを認識して、もっとアピールしていった方がいいと思うんですよね」

とはいえ、この事実に注目している県民は案外少ないと大竹さんは指摘する。それは、観光地となりえるのは伊勢神宮や出雲大社などの大きな神社で、土着の信仰による小さな神社は観光の対象にならないと捉えられているからかもしれない。しかし、その“観光の形”に変化が訪れていると大竹さんは続ける。

「定番の観光地ではなく、“その土地の人々の暮らしを感じる場所”を訪れたい人が増えている気がします。例えば、僕の場合はヨーロッパ旅行をした際、サグラダ・ファミリアなどの定番スポットも訪れましたが、最も心に残ったのはまちの路地裏でした。その土地のコミュニティに触れ、冒険しているような感覚こそ、旅の醍醐味だなと感じるんです」

観光ガイドブックで紹介される場所ではなく、その地独特の文化を感じたいというスタイルで旅をする人は、数のうえではまだまだ少数派かもしれない。しかし、SNSで個人が情報を発信できるようになった現在、「観光ガイドの再現」ではなく、個人の美意識に基づいて自ら探求するタイプの旅を求める人は確実に増えている。そうした旅人にとっては、地元の人々が過ごしてきた生活の時間を感じられる場所こそが魅力なのだ。

男根を祀るほだれ神社の周囲にある道祖伸は、二体が仲良く寄り添っている。

また、よりマニアックなパワースポット愛好家にとってのポテンシャルという点に絞ってみても、栃尾はかなり高い。人口数に対する神社の数はトップクラスで、「道祖神」と呼ばれる道端の石仏も多い。神隠しにでもあってしまいそうな大自然と共存する神社は怪しさ満点だ。この雰囲気は、きっとマニアにはたまらないだろう。

「あえて万人にウケなくてもいい。栃尾のパワースポットは、マニア層を狙って発信しています。イメージする人物像は、廃墟や鄙びたまち、サブカルチャーが好きで、自分の一風変わった嗜好を積極的に発信するような人たちですかね」と大竹さん。そのため、あえてガイド本のアートワークは怪しさを前面に押し出し、のどかなイメージの栃尾がもつ異なる側面を見せるような仕上がりになっている。強い嗜好性を持った発信意欲の旺盛な人たちの間で話題になれば、もう少しライトに地元の文化を楽しみたいという旅人の耳に届くきっかけも増えるはずだ。

土着の信仰の場であり、コミュニティの拠点である小さな神社は、豪華絢爛な神社にはない不思議な魅力をもつ。栃尾のまちを巡れば、独特の文化・風習が残る神社をあちこちに発見でき、道端では個性豊かな道祖伸と出会うこともできる。“地域の人々の営みを知る大冒険”は、想像以上におもしろい。

現在、とちおパワースポットガイドを設置しているのは、道の駅R290とちお、とちパル、長岡市役所栃尾支所の3カ所。配布場所は少ないが、神社仏閣や聖地が好きなら絶対にゲットしてほしい。ガイド片手に栃尾のパワースポットを巡れば、怪しくも深い歴史をたたえた土地の魅力に気付くことができるだろう。

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