ベンチャー続々誕生の立役者!起業を目指す人のサポーター「CLIP長岡」

 

新潟県長岡市が、起業を目指す人たちにとって心強いまちになろうとしているということをご存じですか? 2020年9月からは起業の必要経費を上限50万円まで助成するスタートアップ補助金が設けられ、ビジネス創業を後押し。将来性のある学生ベンチャーが続々と誕生しています。そのサポート役として注目を集めているのが、一般社団法人 新潟県起業支援センターが運営する「CLIP長岡」です。起業志望者から絶大な信頼を得る名物理事長を訪ねました。

起業の悩みであれば何でもOK!
何度でも利用できる無料相談

CLIP長岡。同フロアにあるコワーキングスペース「NaDeC BASE」も運営しています。

JR長岡駅から徒歩5分、ながおか市民センターの地下1階。広いワンフロアの一角で、CLIP長岡は活動しています。2014年7月に開業し、これまでの起業相談件数は1,865件、起業数208件(2020年12月31日現在)。起業相談は何度でも無料で利用できるうえに、起業準備を進めている人はもちろん、脱サラしたいけどまだ何をすべきか悩んでいる人まで“起業を志す人”であれば誰でもウェルカムという、懐の深いサポートを展開してきました。

理事長の高橋秀明さん。「まちばん」副代表や新潟食料農業大学の非常勤講師も務めています。

理事長の高橋秀明さんは、これまで多岐に渡る仕事を経験してきた人物。学習塾の広報、医療福祉施設の事業企画、人事コンサルティング、システム開発会社マネージャー、不動産会社ウェブマーケティング、証券会社の営業経営戦略・人事など、職種も業種も関係なく、その時々で縁があった会社に飛び込んでいった結果、「自然とユニークな経歴になった」といいます。新潟県起業支援センターに就業できるチャンスが舞い込んできたときは、「目に見える形でまちづくりをしたいと思っていたので、即決で引き受けました!」とのこと。様々な業界で身に付けたノウハウに基づいたアドバイスを行い、起業を志す人たちにとって心強い存在となっています。

ところで、起業相談とはいったいどのような内容なのでしょうか?高橋さんによると、起業段階のレベルに応じて実に様々な相談があるといいます。

「『起業ってどうすればできるの?』という知識ゼロの方から、『事業計画を立てたい』『事業についてアドバイスがほしい』という方まで、不安や疑問に思うことなら何でも相談していいんですよ。相談者と一緒にじっくりとプランを練って、やるべきことをブラッシュアップする作業を一緒に行っています」

また、本格的に起業準備を進めている人が悩んでいることは、大きく二つに分けられるといいます。一つ目はお金、二つ目はお客さんです。

「お金に関しては、自己資金、売上見込み、生活にかかる経費など、事業を継続させるために必要なお金について、洗い出してもらう作業を行います。金融機関とも連携しているので、資金調達のお手伝いも可能です。お客様に関しては、まず『誰の困りごとを解決するのか』からスタートして、効果的に集客するためのアドバイスが多いですね」

相談者に寄り添ったきめ細やかなサポートが人気です。

最近では、新型コロナ感染拡大を考慮し、オンライン会議ツール「Zoom」を利用しての相談会も積極的に開催。コロナ禍における資金繰りについてのアドバイスも行っているのだとか。起業したらそれで終わりではなく、末永く関係性を大切にするそうで、まさに心強い味方といえます。

起業にはビジョンが必要!
時には立ち止まらせるアドバイスも

相談者から絶大な信頼を得る高橋さん。取材に対しても、実に理路整然とした明快な受け答えが印象的です。中学生の頃、憧れた人物は長岡藩家老・河井継之助。新政府軍にも旧幕府軍にもつかず、時代の風潮にただ流されるのではない独立した明確なビジョンをもって道を切り拓こうとする行動に深く感銘を受けたそう。そして「自分も長岡のためになる何かをしてみたい」と考えるようになったといいます。そんな高橋さんは、優しさと同時に厳しさも持ち合わせています。

「私が起業を志す皆さんにまず確認するのが、なぜ起業したいのかというビジョンです。それが明確でなければ、時には思いとどまらせることもあります。準備が整っていないうちから、無理して動く必要はないんです。

あとは、『自分がやりたいことをやるな』ともよく伝えますね。その真意は、『あなたに都合いいように動くお客様は一人もいない。そこにマーケットやニーズがあるか客観的によく考えて』ということ。これまでCLIP長岡では208件の創業をサポートしてきましたが、そのうち約2割は廃業しています。それらの共通点は『自分がやりたいことに注力しすぎて、お客様を見ていない』ということが多い。この現実を知っているからこそ、あえて厳しいこともお伝えします」

可能性に溢れた学生起業家を応援!
事業化を見据えた講座も開催

ここ数年、長岡では学生起業家が続々と誕生しています。それらをサポートしてきたのもCLIP長岡の大きな功績。その一環として主催した企画「リーン・ローンチパッド・プログラム2020」は、3ヵ月間全6回の講座で商品アイディアの試作品の製作・使用・改善を繰り返し、効率的に事業を立ち上げる手法を学ぶという内容。期間中は参加者にアドバイスを行い、発表後は事業化までフォローアップします。

学生たちのリアルな企業話が炸裂した「学生起業のススメ」

 

「Nagaoka START UP! ×GAKUSEI」

その他、先輩学生起業家のトークセッション「学生起業のススメ」、講座やビジネス発表を行う3日間プログラム「Nagaoka START UP!×GAKUSEI」などを開催し、アイディアを事業という形に発展させたいと思う学生が多数集まりました。その結果、令和に入ってから9つの学生ベンチャーが誕生しています。

「これからの時代、学生のうちに起業した経験のある人、起業家精神を持っている人は間違いなく重宝されます。もし、卒業後に事業継続をやめて就職という道を選んだとしても、リスクをとって自らアイディアを考えて実行できる力は評価されます。これから先、多くの企業で時代のニーズに合わせて新規事業を打ち出す局面が出てくるでしょう。そんな時、学生時代に起業経験があればその知識や人脈、コミュニケーションスキルが必ず活きますし、そういう人材に任せたいと経営陣は考えるからです。

実際、学生起業のハードルはそこまで高くないものです。まだ人件費の経費がそれほど必要でない場合が多いので、小さく始めれば、多少の失敗はあっても大きくつまずくことはありません。逆に社会人になってからの起業は、生活費を稼ぐ必要があり、また、家族がいる場合もありますので、収益へのハードルが上がります。つまり言い換えれば、学生時代は起業をはじめるボーナスステージなんです」

アイディアを形にして世に広める活動をする学生起業家に、これまで何人も会ってサポートしてきたという高橋さん。彼ら彼女らのアイディアや行動力に驚かされることも多く、大いに応援しているといいます。なかでも、今一押しの学生ベンチャー2社を紹介してもらいました。

モンゴル人学生2名が開発
「IntegrAI」のアナログデータ収集・変換装置

「株式会社 intergrAI」を経営する長岡工業高等専門学校(写真左)5年生のソドーさん、(写真右)4年生のノムハさん。

一社目は、データ変換装置を開発した「株式会社integrAI(インテグライ)(※リンクhttp://integrai.jp)」です。長岡工業高等専門学校・電子制御工学科のモンゴル人学生ソドーさんとノムハさんが立ち上げました。製造業などで使用するメーターをAIカメラで読み取り電子データ化できる装置は、これまでアナログ記録だったデータ管理を効率化し、ミスを防ぐことで品質向上にもつながります。この画期的製品は、2019年の全国高専ディープランニングコンテストで最優秀賞と企業賞を受賞しました。

左の小型のカメラでメーターを読み込み、右の変換装置でデータを変換してパソコンに出力させるという脱・アナログ化の画期的商品。

日本へ留学する前から起業を志していたというお二人。ソドーさんの場合、スティーブ・ジョブズファンの友人から影響を受け、「自分が作ったものをいち早く社会に届ける選択が起業なんだ」という彼の言葉に深く共感したそう。

起業のきっかけとなったのは、長岡高専のプログラムの一環でつくった製品が大きな需要を生んだこと。そこからガムシャラに努力を重ね、精度の高い製品をつくる技術力がアップしただけでなく、魅力を伝えるプレゼンテーション力、有益な情報を集める調査力、様々な人と関わるコミュニケーション力も飛躍的に高まったと感じているそうです。苦労したことはたくさんあったものの、「自分の成長を感じられることが嬉しい」と話します。

「起業は一人ではできません。僕たちはたくさんの方々にお世話になりました。研究室の教授、企業の方々、OBの先輩、そしてCLIP長岡のスタッフの皆さん。壁にぶつかった時に、相談できる人が身近にいたのは幸運でした」とソドーさん。ノムハさんは起業を目指す学生の方へ「人とのつながりを大切にしてください。目標をもって動くことできっと形になります!」とエールを送ってくれました。

感謝を伝えられる喜びを実感した
「雷神」の高齢者けIT支援サービス

「株式会社 雷神」を経営する長岡工業高等専門学校4年生の細木真歩さん。

二社目は、高齢者向けIT支援サービスを行う「株式会社 雷神」です。長岡工業高等専門学校の細木真歩さんが立ち上げました。依頼者の自宅を訪問してスマートフォンやパソコンに関する困りごとの解決策をレクチャーする他、スマホ教室も開催。「孫と通話アプリでおしゃべりできて嬉しい」と笑顔で感謝の意を伝えてもらえることにやりがいを感じているそうです。この事業は、先述の「リーン・ローンチパッド・プログラム」に参加したことで専門家からアドバイスをもらい、幾度となくブラッシュアップを重ねてきました。

「起業して3か月目ですが、いまだに壁にぶつかり続けています。誰かに相談して、解決して、また壁ができての繰り返しです。CLIP長岡の高橋さんは本当に親切な方で、個人情報保護に関する法律から、事業と勉強の両立についての悩みまで、ありとあらゆる相談にのってもらっています」と細木さん。他にも、長岡市役所広報課や先輩起業家など、たくさんの人に助けられたといいます。

パソコンやスマホの使い方サポートは「親身になって教えてもらえるのが嬉しい」と利用者からも好評。

「起業してよかったことは、かっこいい大人にたくさん出会えたこと。まだ何の実績もなかった学生の私の話に耳を傾けてくれて、アドバイスをしてくれる。これってすごいことです!私はそれまで、誰もやってない画期的なことをやることがかっこいいと思っていたのですが、まじめにコツコツ継続する方々を見て、それに憧れるようになりました」

‟思い立ったら即行動“がモットーだという細木さん。アイディアを形にするのが何より楽しいといいます。「目標は、とりあえず継続すること。今は勉強との両立が大変ですが、日々改善しながら喜ばれるサービスを提供していきたいです」

Withコロナ時代でも負けない
起業のスタートアップイベントを開催

「商品やサービスのアイディアを実現してみたい」「社会をより良くしたい」との想いが生む起業に、興味が湧いてきたという方に朗報です。「CLIP長岡」がこの冬開催する“起業スタートアップイベント”では、ビジネスプラン作りを体験できます

2月下旬開催の「CLIP STARTUP SCHOOL×WOMAN」は3日間の女性限定講座で、初日は「CLIP長岡」理事長・高橋さんによる事業の始め方に関する講義、残りの期間はビジネスプランをチームで考えるワークショップという充実の内容。ビジネス視点が磨かれ、起業を志す仲間が見つかる絶好の機会です。コーチ陣と共に熱いディスカッションが繰り広げられた過去の開催の様子は、こちら(リンクhttps://ameblo.jp/kigyousien/entry-12531091317.html)をご覧ください。

また、3月下旬開催の「CLIP STARTUP SCHOOL×withコロナ」では、同様の内容で「Withコロナ時代」をテーマにして行います。詳細は「CLIP長岡」のホームページでご確認を。まちを盛り上げるビジネスをスタートさせるなら、まずは第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?

●Information

一般社団法人 新潟県起業支援センター「CLIP長岡」
[住所]新潟県長岡市大手通2−2-6 ながおか市民センター B1F
[電話番号]0258-94-5040
[受付時間]9:30~18:00
[定休日]土・日・祝日
[HP]https://www.kigyousien.or.jp/

Text:渡辺まりこ

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