「地域と歩む障害支援」とは何か。アート制作販売から広がる「工房こしじ」の共生の輪

アール・ブリュットという美術用語をご存じでしょうか。正規の美術教育を受けていない人が、既存の表現方法にとらわれずに制作したアートの総称で、障害のある人のアートもそのうちに含まれます。そうした作品をデザインとして商品化する試みをしている事業所があると聞いて、長岡市越路地区にある「みのわの里工房こしじ」を訪ねました。ここは一般企業等で雇用されることが困難な障害を抱えた人に働く場(障害事業所)を提供したり、知識・能力向上のための訓練を行う福祉事業所です。地域に開かれた施設として、障害者の活躍する場を作り、ビジネスにつなげていこうという「工房こしじ」の試みとともに、長岡市の障害者支援の取り組みを紹介します。

 

障害のある利用者に
仕事と居場所をつくる

長岡市越路地区にある「みのわの里工房こしじ」外観。平屋の広い作業所で、30名近くの利用者が日中、仕事をしたり様々な活動を行う。写真提供:工房こしじ

社会福祉法人中越福祉会「みのわの里」は、市内に30~40カ所、障害者が居住する施設や、日中活動をする事業所を運営しています。「工房こしじ」もそのひとつ。利用者が通いで、特性に応じた労働や活動を行う施設です。

「工房こしじ」を訪れると、真っ先に目に入るのが展示されている色鮮やかなマスクです。マスクに使われている布のデザインの作者は障害のある方たち。美しい色の取り合わせのグラデーションが目を引きます。

「工房こしじ」内の展示コーナー。現在、販売中のアートマスクをはじめ、過去に試作した様々なデザインの商品が展示販売されている。ほかにも利用者が制作したビーズのマスクストラップなどが販売中。

その商品化や販売網作りをはじめ、障害者の就労支援に尽力されているのが「工房こしじ」の主任・職業指導員の足立裕介さんです。長岡市福祉保健部福祉課の障害支援係主任の山田大樹さんとともに、障害福祉の現状を解説していただきました。

工房こしじ主任・職業指導員の足立裕介さん。

――まずは「工房こしじ」がどんな事業所なのかをお聞きしたいと思います。

足立「地元の企業や団体から仕事を請け負い、障害のある方(利用者)に仕事をしてもらっています。金具や部品の組立や分解、箱を折ったりシールを貼ったりといった仕事が多いですね。また、利用者さんと職員とが施設外に出向いて仕事をすることもあります。そうして得た賃金を利用者さんに分配しています。利用者は30人ほどで、8~9割が知的障害の方です。高校を卒業したての若い人から、70代まで、幅広い年齢層の人がいます。その方たちが作業や活動をするサポートをしたり、就職を目指す方の支援をするのが私たちの仕事です」

山田「工房こしじは、幅広い障害を受け入れている施設ですが、特に知的障害をもつ人のサポートに強みを持つ事業所です。障害者総合支援法に基づく就労継続支援B型(※)という事業形態で、一般就労に向けて仕事の訓練をする人が多く利用しています。施設内で特性に応じた作業をしたり、施設外に仕事に行ったり、文化的活動を行うことで、生きがいをもって生活が送れるように支援してくれています」

※就労継続支援B型……障害者が一般就労に向けて仕事の訓練ができるように支援する福祉サービス。A型は雇用契約があり、最低賃金が保証されている。B型は雇用契約がなく、賃金の保証はされないが、のびのびと仕事をすることができる。障害の程度や個人の特性に応じて、それぞれにメリットがある。

右は長岡市福祉保健部福祉課の障害支援係主任・山田大樹さん。

工房こしじ内の広々とした作業場。この日は配管の枠のねじ止めや、ケーブルを分解して再利用できる銅線を取り出す作業などが行われていた。

バドミントンのラケットの組立を行う利用者。枠にガットを通すためのハトメを押し込む作業をしている。ごく小さな、サイズの違う4~6種類のはとめハトメを80カ所近い穴の指定の場所に正確に入れて押し込む。細やかさに加え、かなり力のいる作業だという。

野菜の袋にシールを貼る作業。位置がずれないようにコピーを下に敷いてから貼っている。

 

「お互い様」を大切に
前理事長が抱いた理念

――「みのわの里」は基本理念として「お互い様」という言葉を掲げています。その言葉にどんな意味が込められているのでしょうか。

足立「『共に汗を流そう、地域のために/お互い様でずっと暮らそう』という言葉ですね。ここには昨年逝去された涌井幸夫前理事長の思いが強く表れています。お互いに障害があろうがなかろうが、迷惑をかけあうというのは人が生きていく上で当然のこと。障害者だからといって、みんなに迷惑をかけているわけではないし、障害を持たない我々だって他人に迷惑をかけることはあるし、そうやって人は生きていくのだから、お互い様の気持ちを大事にしなければならないんじゃないかと。障害者だから理解しなければならない、という気持ちを持つ人もいるかもしれません。ですが、『障害者だから』と特別にせず、お互いに尊重し合って一緒に働いたり、生活していきましょうよ、という理念を大切にしています」

足立「障害のある方が町で地域生活が送れるグループホームという居住施設が市内に20以上あります。最初は障害のある方が町で過ごすことを不安視する意見が地域の方からあがっていたこともあるそうです。それが次第に地域の方の理解が広まっていき、『うちの空き家もホームに使ってくれないか』とか、『私もそこで働かせてくれないか』といったお声をいただくようになりました」

――先ほどの「共に汗を流そう、地域のために」という基本理念が、時間をかけて周囲に伝わりつつあるのだとしたら、嬉しいですね。

山田「グループホームとは別に、障害者支援施設という24時間365日を過ごすタイプの入所施設もあります。そういった施設は町から離れた場所に建てられることもあり、地域との交流も少なくなります。それが、国が障害者の地域移行という方針を立てた結果、町中にグループホームや、工房こしじのような通いの施設が数多くできるようになった。やっとここまできたという感じです」

足立「工房こしじでも、寒い季節になると地元産のさつま芋で焼き芋を焼いて販売しています。すぐ近くにある運動施設を利用される方たちが焼き芋を楽しみに買いにきてくださるんですよ」

――地域に開かれた障害者施設があって、交流ができることで、イメージだけでなく生きた人間としての顔が見え、周囲にもその人間性が伝わるのかもしれませんね。前理事長の涌井さんの思いがひとつひとつ実現していったということでしょうか。

足立「そうですね。前理事長は障害福祉への熱い思いをもつ、一度会ったら忘れられない強烈な方でした。瑞宝単光章という褒章や新潟県知事賞を受けた方ですが、誰よりも地域を駆け回ってくださった。この前一周忌が終わったところなんです。今は雲より高いところで見守ってくださっていると思います」

 

障害者アートの商品化・販売で
地域全体に経済の循環をつくる

――工房こしじとしては地元企業からの請負の仕事があったり、これまでの積み重ねもあって、今現在、障害者の仕事は、順調に回っているということでしょうか。

足立「いえ、新型コロナの影響が大きくありました。私たちの請け負う仕事は不安定なものですから、企業が止まると作業の受注もなくなります。海外との輸出入が止まった発注元もありましたし、お菓子の箱や仕切りの組立の仕事も、観光地の売店で使われるものだったため、人の動きが止まってしまえば作業がなくなります。コロナ前とコロナ後を比べると、作業工賃は前年比半分、月によっては、それ以下になってしまいました」

――コロナウイルスによる世界経済や物流の動きの停滞が、直撃したわけですね。

足立「そうです。そうしたなかで、自分たち発信のものづくりの必要性を感じて、障害者のアートをデザインとして使用した商品の展開により力を入れることにしました」

――コロナ禍がきっかけだったんですか!

足立「もともとは2016年から、長岡市内外の障害のある方の作品展示がアオーレ長岡などで開催されてきたのですが、私もその展示に関わっていまして。たまたまアオーレ長岡に来て立ち寄った方などもいて、3日間で1000人近い方が来場してくださいました。成果もありましたが、一方で、もっと多くの人に作品を見てもらいたいと考えていました。芸術作品というのは、普通見に行くもので、作品は動かせない。でも、作品を物に転写して、作品そのものが動くことができれば、自然に鑑賞の機会を増やせるのではないかと思いついたんです」

アオーレ長岡にて行われた展示会の様子(写真提供:工房こしじ)

足立「最初に作ったのが、傘でした。作品を転写した傘をさして歩けば何かと目をひきますし、このデザインは障害のある方のものなんだね、と知られていくかもしれない。そして、コロナ禍でマスクが日常に必要なものになってきました。マスクは多くは白や単色ですが、作品をプリントしたマスクをつけた人が出歩けば、何だろうと目を引きます」

黒地に散りばめられた格子のような柄のデザインは、20代の障害者の手によるレシートを複雑に切り抜いた紙細工がもとになっている。白い格子の部分をよく見ると、店のレシートであることがわかる。

同じ作者が作成した、新聞を、レシートと同じ手法で切り抜いたもの

足立「さまざまな出会いがあって、地元長岡の縫製会社がマスクを縫ってくださることになりました。生地は県内のニット、印刷技術も県内の印刷所で、縫製は長岡で。オール新潟で作り上げることがかないました。最後の封入作業などの仕事は、この工房こしじでやっていますから、結果、お仕事を生み出すことができたんです」

wearable mask(1枚990円)。売り上げの一部はデザイン使用料として作家に還元される。青とピンクのマスクは特別支援学校に通う知的障害をもつ中学生が描いた絵をもとにしている

――アール・ブリュットの展示を経験して、もう一歩進んだ作品展示ができないだろうかと考えたタイミングにコロナ禍が重なり、それを掛け合わせたわけですね。

足立「そうですね。作品制作によって障害者が収入を得ることができ、商品にすることで他の方の作業も作り出すことができ、さらに障害者のアートを広くアピールできる。その掛け合わせで今があるんです」

――作品の制作者ご本人やご家族からはどんな反応がありましたか。

「このレシートのデザインの作者は、家でゴミ箱からレシートを拾ってハサミで切って、翌日、施設に持ってきて職員に渡すのが挨拶代わりになっているそうです。捨ててしまえばゴミなんですが、並べてみると格子のようなデザイン性を感じさせる。彼の日常的な行動を我々は作品としてデザインとして採用し、使用料や謝礼金をお支払いしています。家族から見ると独特な彼の行動がアートの面で評価されることで、見方が変わります。さらに県外のアール・ブリュット作品の展示会でも彼の作品が飾られることになりました。周りの刺激に敏感な方なので、これまで家族皆で外出する機会は少なかったようですが、県外の展示を見に行こうと家族旅行が生まれたらしいんです。お兄ちゃんのちょっと面白い行動がお金になったり、家族が出かけるきっかけになったり、そういう化学反応が生まれた瞬間があったんです。
親御さんも『我が子がこんな輝き方をするなんて知らなかった』とおっしゃいます。ある側面からだけ見ていたらこだわりの強い人でも、視点を変えるとその人にしかない個性になる。見方を変えることで関わり方も変えられる瞬間というのはけっこうあって、障害のある方との接し方の中では大事なスタンスになるのかなと感じています」

――今後、こうしたデザインを「売る」という方にシフトするとお聞きしたのですが。

足立「デザインがよければ、使う企業にもメリットになるはずです。こうしたアートをデザインしたものが『街を彩る』ことで、いろいろな社会とのつながりをイメージさせ、ストーリーが生まれるといいな、と思います。最近ではバスケットボールの新潟アルビレックスBBのボランティアスタッフ用のベストに、このレシートのデザインを使ってもらいました。このベストをスタッフが着て会場を歩き回ることで、作品が動きますし、障害のある方もボランティアに参加することで、一緒にアルビレックスを盛り上げることができます。デザインを販売することは、手足を動かして働くことが難しい人も、デザインという個性で世の中に出ていくことができるということです。アートが障害のある方の新しい活躍の場を生み出し、ビジネスになりうるんだという取り組みを、実現させていきたいと思っています。

『工房こしじ』で今作っているマスクや傘は、このデザインを活用した一例です。ホームページでオンラインショップを始めたり、ふるさと納税にも出品しました。たくさん売れるものではないですが、私たちは販売を広げることが情報発信につながると思っているので、取り組みを知ってもらって、これを使いたいという声が上がるような化学反応が起こるといいなという気持ちでやっています」

 

人の辛さにどう関わっていくか
今でも学び、考え続けている

――足立さんが障害福祉の仕事に就かれたのには何かきっかけがあったのでしょうか。

足立「そんなに熱い思いもなかったんですけれど……(笑)。私は長岡市の寺泊の出身で、進学先が新潟市内の福祉系の大学でした。大学四年生になって就職活動が始まって公務員を目指そうか、と思っていたときに、涌井前理事長と親交のある担当教授に呼ばれて『長岡にある中越福祉会はどうだ』と聞かれて、それで『はい』って就職を決めたんです(笑)。

それで最初に配属されたのが、障がい者就業・生活支援センターという、就職を目指す障害者の相談員となる仕事でした。この「工房こしじ」のような通いで訓練をする場所の情報を提供したり、企業の実習に一緒に行ったり、ハローワークと一緒に就職の斡旋をしたりしていました。新卒の20代の私が、時には自分の親くらいの年代の方の相談を受けなければならない(笑)。ハードな時もありましたけれど、そうした仕事だったからこそ、福祉関連のさまざまな役所や施設とつながりができましたし、多くの企業の採用担当の方や、時には社長さんにもお会いしてお話しする機会を得られました」

――すごくパイプが広がるお仕事だったんですね。

足立「そうです。就業支援を担当した7年半で、たくさんのネットワークが培われていきました。その後ここに異動して5年になりますが、最初の仕事の経験とネットワークがあるので、今、自分が困ったときに問題の解決のためにどうしたらいいのか、誰に相談すればいいかがわかって動くことができます。だから、今思えば、最初の仕事の日々が自分の今のあり方の起点だったのかな、と思います」

――そもそも、大学は福祉分野を選ばれていますが、そちらに進もうと思ったのはどういう経緯だったんでしょう。

足立「実は福祉の学校はすべり止めだったんですよ。でも、この分野で頑張ろうかな、と思ったのは、当時、身近に精神的に深く悩んでいる人がいて、その時自分はどんな言葉をかけられたんだろう、その時自分に何ができたのかなと思うことがありまして。なので、人の心に対してもともと関心はあったんです。人の辛さに対して自分がどう関わっていくか、それをずっと考えてきたし、今は精神保健福祉士という資格も持っているのですが、まだまだ勉強中だと思っています。障害のある方の相談員という仕事は、自分の気持ちが強く向くところなのでよかったと思っています」

 

コロナ禍の困難から生まれた
障害福祉事業所商品マルシェの試み

足立さんのアートをビジネスにつなげるチャレンジは、2020年から始まった新型コロナウイルス感染症の影響による経済活動の低迷が一つのきっかけでした。同じ時期、障害者の仕事が受注できなくなり、危機的な状況に陥ったのは、他の障害福祉事業所も同様でした。

長岡市で就労系障害福祉サービスを利用し、一般就労を目指す訓練をしている障害者は約900名。自社製品を作って売ったり、企業からの仕事を請け負ったりしていましたが、どの福祉事業所でも、同じようにコロナで作業収入が激減。
現場の悲痛な声に、長岡市福祉課がスタートさせたのが、市内の福祉事業所のオリジナル商品を一同に集める販売会「福祉事業所商品マルシェ」です。福祉業界の新たな可能性に光をあてられないか、各事業所が自走していくための行政ができる補助のかたちとは。市の取り組み事例を福祉課の山田大樹さんにお話をお聞きしました。

山田「コロナ禍の厳しい状況のなか、障害事業所の販売機会を市が作ろうと各事業所に声をかけて、2020年の10月と2021年の2月に、のべ21事業所が参加して実現したのが『障害事業所商品デリバリー』です。まだ市民向けのイベント開催が難しい時期でしたので、市役所の職員向けの販売会というかたちをとり、福祉課で商品カタログを作成して職員に見てもらい、事前予約制で販売しました」

第一回から作られ続けている商品カタログ。さまざまな事業所のオリジナル商品が紹介されている

二回開催された予約販売会は、期待以上の売り上げとなり、満を持して市民に向けての販売会が実現。2021年9月の第三回から『福祉事業所商品マルシェ』がスタートしました。第三回と第四回ののべ来場者数は、900人を記録。たくさんの人に市内に数ある障害事業所のことと、障害者が作る商品を知ってもらうことができたのです。

左・2021年9月の第三回。どの事業所ブースもディスプレスに工夫を凝らしている。
右・2021年11月の第四回。小学生が総合学習の一環で来場し、マルシェで買い物をする様子も見られた。

山田「第一回から、購入者にはアンケートにも協力してもらい、事業所へのフィードバックを続けています。販売現場での商品の展示方法や、カタログの写真の見せ方、商品の受け渡しの手順などなど、回を追うごとに改善されています。事業所や障害者の方たちにイベント販売の経験を積んでもらうことも目的でしたので、今後の手ごたえを感じます。将来的には、市が介入しないかたちで、事業所や法人にマルシェを運営してほしいですね」

テントを立てたり、椅子や机をセッティングしたり、イベントの設営と撤去も福祉事業所に委託し、障害者の仕事につながるようにしている(写真提供:長岡市)

足立「障害事業所商品マルシェは、横展開ができると思っています。新潟県内の同業者の会議で、市外の人に『長岡ではこういう販売会をやっているよ』と話すとすごく関心をもってもらえます。カタログ注文のシステムからイベントの設営撤去の仕事までパッケージ化して、販売員がお揃いで着るビブスなんかを専用で作ったら、どの市町村でもこうした販売会ができるのではないでしょうか」

長岡市は、こうした販売イベントを開催するほか、障害者の就労支援をする事業所に対し、商品販売会やECショッピングモールへの出店など、販路拡大に伴う費用に対して補助金を出し、事業所の売る力をより強化してもらおうとしています。各事業所の商品力や販売力が上がっていくことで、消費者にとっては商品の選択肢や購入機会が増え、障害者にとっては収入ややりがいにつながっていく未来を目指しているのです。

 

 

魅力的な商品が目白押し!
「福祉事業所マルシェ」当日レポート

2022年2月に第5回の福祉事業所マルシェが開催されました。あいにく蔓延防止法宣言下だったため、当初一般販売の予定だったマルシェは、市役所職員限定の予約販売の受け渡し会となったものの、多くの商品が求めた人に手渡され、どこでもスムーズな受け渡しが見られ、感染対策が講じられた整然とした販売会でした。

工房こしじも参加し、マスクや新商品のほしいもを予約者に販売していました。今回は特に、ほしいもが大人気。

ほしいも(1袋550円)。長岡産のさつま芋で作ったほしいも。「工房こしじ」では焼き芋を作って定期的に販売しているが、大きかったり曲がっていたりして焼き芋に適さない芋を食品ロスにならないように選り分け、ほしいもに使っている。ラベルの文字やさつま芋のイラストも利用者の手によるもの

焼き芋やほしいもに使うさつま芋は地元の農家から購入している。利用者が農作業を手伝うことも。これは収穫の際の一コマ(写真提供:工房こしじ)

今回のマルシェには、12の事業所が参加。カレーやおこわ、パンや洋菓子など、おいしそうな食品や、水引細工やアロマオイル、名刺入れやコースターなどの雑貨を売っている事業所もあります。買い物を終えた方に、事業所マルシェの商品のお目当てやおすすめをお聞きしました。

10人分ものオーダーをまとめて買いにきていた男性:「今日、楽しみにしてきたのは、わたあめです。今はお祭りなどのイベントもないので、子どもへのお土産にしようと思っています。私のおすすめの逸品は、[野いちご工房]の豆腐チーズケーキですね。地元の酒造が作った塩麹に漬け込んだ豆腐が入っていてとてもおいしいんです。私のまわりでは、[ワークセンター千秋]の納豆や[希望の家]のおこわも人気がありますよ」

食品を中心に買い求めていた女性:「今日の目当ては[工房こしじ]のほしいもです。手軽にいつでも食べられるのがいいですね。すぐに食べられるカレーやおこわは周りでも人気があります。私のおすすめは[和島トゥー・ル・モンド]のパンです。特に黒炭キューブのパンはすごく好きです」

工房こしじで傘を購入していた男性:「仕事で工房に伺ったとき、作品を見せていただいたことがあったんです。利用者さんがレシートを切ってデザインをされているということで、今度機会があったら購入したいと思っていました」

みなさん、それぞれのお目当てを買い求め、満足そうな表情。また「回を追うごとに、カタログの写真がよくなっている」「販売現場では金銭の授受や品物の受け渡しがスムーズになっている印象を受ける」という感想もありました。

な!ナガオカ担当者が購入したもの。[野いちご工房]の洋菓子詰め合わせに[ワークセンターざおう]のパン。チョコミニ食パンはチョコレートがたくさん入っていて人気

今後の障害事業所商品マルシェ、まだ開催時期は未定ですが、次の開催を楽しみにお待ちください。また、商品は各事業所はじめ、アオーレ長岡内の「りらん」やトモシアの「ぱれっと」でも販売中。なかには市内スーパーで販売している商品もありますので、ぜひ探してお手に取ってみてください。

 

「まずはやってみる」を楽しみながら
共に生きられる社会を目指して

「『これ、ちょっと工夫すればできるんじゃない?』みたいなことがあった時に、好奇心をもって見切り発車的にやっちゃうタイプなんです。時には詰めが甘いと言われますけれど(笑)」足立さんはご自身のことをこう評価し、軽やかに笑います。その行動力やモチベーションはどこからくるのかと聞いてみると、「新しいことを実現したときの、ゼロから1にする気持ちよさ」ととても自然体な答えが返ってきました。

ついシリアスな顔になりがちな福祉の業界で、「とりあえずやってみようよ」と率先して楽しむ自分の姿を見せる足立さん。多くの先人たちの努力で、障害者をめぐる環境は一歩ずつ整えられてきました。そこに足立さんのような、新しい活躍の場を生み出す人たちが新しい風を吹き込み、社会全体で共に生きるとはどういうことか、さらに多くの人が考える素地ができつつあります。支援の一歩は関心をもつことから。お近くの障害支援施設がどんな活動をしているか、興味をもってみませんか。

●インフォメーション

工房こしじ

[Webサイト] https://www.minowanosato.jp/facility/72/

[オンラインショップ] 工房こしじオンラインショップ / 新潟直送計画

 

Text: 河内千春 / Photo: 池戸煕邦

 

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