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参加したら長岡愛がブクブク発酵!「長岡しょうゆ仕込み体験ツアー」参加レポート

つながる体験する発酵・醸造長岡
つながる体験する発酵・醸造長岡
2020年 2月 20日 | な!ナガオカ スタッフ

全国2番目の日本酒蔵数を誇る長岡市は、醤油や味噌造りも盛んな発酵・醸造のまち。そんな長岡の発酵・醸造の文化を知ってもらうための「長岡しょうゆ仕込み体験ツアー」を12月7日に開催。まち歩きと、しょうゆ仕込み体験がセットになったツアーの様子をレポートします!

 

初雪翌日の発酵のまち・摂田屋をまち歩き

前日に長岡市内に降った初雪が、屋根や地面に少し残った12月7日。心配されたお天気にも恵まれ、ツアーバスに乗り込み最初に向かったのは長岡駅から車で十数分にある摂田屋(せったや)エリア。

道中は長岡市の中村真理子さんから、ツアーの趣旨やスケジュールの案内が。手作りの可愛らしい「旅のしおり」が配られアットホームな感じです。さらに、バスの最前席には参加者への貸し出し用長靴が!前日に雪が降ったこともあり、雪国長岡らしい温かい心遣いですね。

今回、この摂田屋エリアを案内してくれるのは、長岡観光ボランティアガイドの会の神林知子さん。お手製の資料ファイルを元に、摂田屋の歴史やトリビアを教えてくれました。

摂田屋は、かつて江戸幕府の御領地として味噌や醤油造りが発達。その結果、味噌・醤油蔵が3軒、酒蔵が2軒、そしてリキュールの蔵1軒が狭いエリアに集中する、まさに発酵のまち。長岡空襲の業火を免れたこともあり、明治期から残る趣ある建築物も多く残っています。

 

江戸時代から180年以上続く
老舗醤油蔵・越のむらさき

神林さんから摂田屋のあゆみを聞きながら、最初に入ったのは天保2(1831)年に醸造を開始したという醤油蔵「越のむらさき」。摂田屋の玄関口とも言える、三国街道との岐路に建ち、主屋と白壁の土蔵は登録有形文化財に指定されています。
越のむらさきと言えば、社名にもなっている昭和44年頃に発売した、だし醤油の「越のむらさき」が看板商品。今ではだし醤油は広く作られていますが、当時は醤油と言えば生醤油(きじょうゆ)が当たり前の中、先駆的な取組だったそうです。

趣あるガラス戸を開け中に入ると、醤油のいい香りが。180年以上にわたって醤油醸造を続けてきた越のむらさきでは、団体客(5名程度~事前予約必要)であれば、大豆を蒸すタンクやレンガの炒り機など、変わらない製法を守る工場の見学ができます。また、個人でも店頭に並んだ醤油や調味料をすべて購入可能です。

今回のツアーでは工場見学の時間はありませんでしたが、越のむらさきの歴史や取組のお話を聞きながら、三種類のお醤油を味見。味を比べてみると、それぞれの醤油の特徴が際立ち、参加者は驚いた様子でした。

まち歩きスタート地点にも関わらず、参加者の皆さんはこぞって店内で醤油をお買い求め。「今年のお歳暮は、越のむらさきの醤油にして、長岡を応援するわ」なんて方もいらっしゃいました。

 

参勤交代でも使われ、賑わった旧三国街道

店外に出ると、「足元、マンホールの蓋を見てください」と神林さん。最近はご当地ごとに特徴ある柄をマンホールに描くことが増えていますが、摂田屋のマンホールもこのエリアでしか見られない柄なんだとか。
パッと見は、道路のコンクリートに溶け込むように特徴のないマンホールに見えますが…

よく見ると、真ん中の金具に摂田屋の「摂」の文字が。シンプルだなぁと思っていると、神林さんから「摂を囲んで“田”の字が、8つありますね…」とヒントが。「なるほど~(笑)」

そして、江戸時代に参勤交代でも利用されていたという三国街道を歩きます。三国街道の旅の安全を願う道しるべ地蔵と、商売繁盛を祈願した竹駒神社のお話をきき、「殿様」も篭を降り、歩かれたという道を進みます。

黒壁の風情ある街道ですが、この黒は実は麹菌の働きで黒くなったのだとか。「摂田屋の空気中には麹菌がたくさん漂っているので、お肌にもいいかもしれませんよ」とのこと。

酒蔵・吉乃川のタンクの辺りまで来たら、旧三国街道を右に曲がり、小道を抜けて、宮内商店街雁木通りへ。その道中、「このあたりでお醤油の香りが、お酒の香りに変わりますよ。ほら!」と先頭を歩く神林さん。声をかけられた瞬間は「ん?」と首をかしげる一同でしたが、数歩進むと周囲を漂っていたお醤油の香りが日本酒の香りにガラリと変わるポイントがあり「ホントだ!」と歓声が上がりました。

 

豪華絢爛!日本一の鏝絵蔵のある
機那サフラン酒本舗

続いてやってきたのは「機那(きな)サフラン酒本舗」。かつて薬用酒の養命酒と人気を二分したと言われる「機那サフラン酒」。その創業者・吉澤仁太郎が贅を尽くして普請した建物がこの機那サフラン酒本舗です。

特に目を引くのが色鮮やかな土蔵。蔵全体に描かれたレリーフは、左官により漆喰などを壁に塗りつける際に使う「鏝(こて)」で描かれたという「鏝(こて)絵」。色漆喰を用いた極彩色と、その装飾の多さから日本一の鏝絵と称されています。

鏝絵の精工な作りに感心しきりな一同。「鏝絵の中には十二支がいます。皆さんの干支を探してみてください。ただしサルだけはないんです。運がサルから…なんだとか」(神林さん)。
ツアーでは外観を眺めるだけでしたが、冬季を除き土日休日を中心に、離れ・日本庭園が休日公開されているので、気になる方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

建築マニア必見! 長岡が誇る名建造物「機那サフラン酒本舗」とは?

 

新潟県最古の蔵元・吉乃川の
酒ミュージアム『醸蔵』

まち歩き最後にやってきたのは、創業470年余と新潟県最古の蔵元である吉乃川が運営する「吉乃川 酒ミュージアム『醸蔵(じょうぐら)』」。2019年秋に国登録有形文化財「常倉(じょうぐら)」を改修して誕生した大正モダンな雰囲気が漂う観光施設です。

ミュージアムの名の通り、館内には吉乃川の歩みや、酒造りの工程、酒造りの道具、酒器などがズラリ!

また、酒造りを疑似体験できるゲームもありました。タブレット端末を振りながら、麹菌を蒸米にふりかけるといった酒造りの工程が体験できます。物珍しさに皆さんチャレンジしていました。

ミュージアムには直営ショップがあり、醤油に続きここでもお土産を購入。もちろんお楽しみの試飲コーナーもありましたよ。お酒を立ち飲みで楽しめる「SAKEバー」もあり、参加者は展示物を見たり、ゲームをしたり、SAKEバーを楽しんだりと、自由時間を思い思いに過ごしました。

飲んで遊んで学べる!吉乃川の酒ミュージアム「醸蔵」で日本酒文化を体験

 

郷土の味を守り続ける新喜屋で醸造発酵ランチ

1時間半ほどのプチまち歩きを終え、観光ボランティアガイドの神林さんとはここでお別れです。今回ランチタイムでお邪魔したのは、大正5(1919)年創業、百年以上の歴史を持つ老舗割烹「新喜屋」。長岡の郷土料理をいただきます。

ご用意いただいたのは「松花堂弁当」。長岡独特の醤油で味付けした茶色の「醤油赤飯」や雪国の保存食である「煮菜」、新潟県内で広く食べられる食用菊「かきのもと」のおひたし、肉厚が特徴の「栃尾のあぶらげ」、「大口れんこん」、「赤カブ」など、とにかく長岡の食材ばかりの豪華ランチです。

乾杯酒は「機那サフラン酒」で、カンパーイ!
吉乃川や長谷川酒造(摂田屋)のお酒や越のむらさきの醤油、吉乃川の酒粕を使った料理などがあり、つい先程見学したものが使われていると思うと美味しさも倍増!どんどんと箸がすすみます。

ランチ中には、参加者の自己紹介と午前中の感想などを共有する時間がありました。長岡出身で関東にお住いの方、Iターンで新潟に来た方、県内にお住いの方などいろんな方々が。少人数ということもあり、一人ひとりの長岡への想いや、発酵への関心などたっぷりとお話することができました。

 

お待ちかねの木桶でもろみ仕込み体験!
新潟県醤油協業組合

お昼の後は、待ちに待った醤油仕込み体験と工場見学!バスで長岡市十日町にある新潟県醤油協業組合へ移動します。新潟県醤油協業組合は昭和47年に県内18の醤油蔵が集まって設立された新潟県の醤油生産量第1位の会社です。
ここからは、長岡市内からの参加者を加え一気に20名超の大所帯に。

専務理事の佐田さん

この組合が中心となり取り組んでいるのが、原材料を輸入に頼らず新潟県の大豆、小麦で醤油造りを行う「新潟県産醬油復刻プロジェクト」。実は新潟県の小麦は一度生産量がゼロになったことがあるなど原材料の確保が難しかったそう。しかし、「ゆきちから」という新しい品種が開発されてから徐々に小麦生産が復活。2015年に県産醤油復刻プロジェクトがスタートしました。

工場案内などを担当してくれた星さん

こうして完成したのが、新潟県産醬油「郷土の実り」。そして、この県産醤油復刻プロジェクトに地域の人たちにも関わってほしいと、毎年6月に「小麦収穫体験」と11月頃に「もろみ仕込み体験」を実施。子どもから大人までが貴重な醤油づくりに携わる機会となっています。今回の仕込み体験もこのプロジェクトの一貫です。

発酵ブームの今こそ!県産材料で造る「こだわり醬油プロジェクト」に迫る

今回体験するのは、蒸した大豆に、煎ってひき割った小麦と種麹を混ぜ、麹室に入れてつくられた「しょうゆ麹」に塩水を加え、「もろみ」をつくる作業です。
早速体験開始です!

まずは、事前に準備いただいていた、新潟県大豆エンレイと新潟県産小麦ゆきちからでつくったしょうゆ麹、塩水をバケツで運び、木桶の中にどんどんと入れていきます。

しょうゆ麹と塩水がある程度貯まってきたら、櫂棒(かいぼう)と呼ばれる柄の先端に台が取り付けられた棒で混ぜていきます。「せっかく参加したのだから、全員が混ぜてみましょうね」と、佐田さん。

大きな木桶いっぱいに貯まった麹と塩水は重くてかき混ぜるのに一苦労。「下から上に汲みみ上げるように混ぜてくださいね」というアドバイスを聞き、なんとなく要領を掴んでまぜまぜ。特に子どもは夢中になって長い櫂棒を動かしていました。

そして「もろみ」が完成!大人数でやると力仕事もあっという間ですね。
県産醤油「郷土の実り」は天然醸造でつくるので、このまま約1年間「もろみ」を寝かせておけば、酵母と乳酸菌の働きで醤油になります。ただし、ただ単に置いておけばよい訳ではありません。仕込んでから1週間は毎日撹拌をその後も3日に1回、そして1週間に1回と定期的に混ぜなれければおいしい醤油はできません。ここから先は組合の皆さんにお任せし、来年の収穫ならぬ搾汁の時を待ちましょう。

続いて醤油工場の見学です。工場の奥に進むと星さんから、大豆や麹のサンプルやフリップを使いながら醤油づくりの流れのレクチャーがありました。そして、順番に機械の見学をしました。

大豆を蒸す機械

麹を作るむろ

むろの内部。この時は清掃中だった

醤油づくりは素材も作り方もシンプルで、江戸時代からほとんど変わっていません。しかし、最新鋭のシステムを入れるのは、温度や湿度など麹菌や微生物がより働きやすい環境づくりのため。そして、雑菌が繁殖しないよう清潔さを保つため。醤油づくりは微生物と、雑菌との戦い。仕事の半分は清掃と言っても過言ではないそうです。

むろで3日間寝かせると、麹菌がびっしりと根を張り緑色の醤油こうじに。

先程の仕込み体験では、この醤油こうじと塩水を混ぜて「もろみ」をつくりました。これを通常は加熱して半年ほどで完成しますが、県産醤油復刻プロジェクトでは自然発酵させるので約1年で醤油になります。その「もろみ」の発酵過程がこちら。

色や香りがどんどんと醤油に近づいていく実際のもろみを比べながら説明いただいたので、子どもにも分かりやすかったのか、真剣に聞き入っていました。

そして、見学中は参加者の皆さんから質問攻め!美味しい醤油の見分け方は?丸大豆醤油と普通の醤油の違いは?醤油の味はどう変えるの?などなど、佐田さんと星さんも「今回の参加者はすごく熱心だった」と驚いていました。

工場見学の最後は、もろみを布で包んでしぼる「圧搾」の工程。高い角柱の中に布袋400以上が積み上げられています。そして、最初は重力でポタポタと生しょうゆが絞り出されていきます。

角柱の一部に窓があり、布につつまれ積み重なったもろみから醤油が染み出している様子が見えます。できたての醤油の香りがなんとも美味しそう。この匂いをかぐと食欲をそそられるのは私たちが日本人だからでしょうか?

重力だけではなく、最後は圧力をかけて絞り出します。ここで絞られる醤油は「生揚げ(きあげ)」といって、まだ菌が生きている醤油です。通常はここから火入れといって、しょうゆを加熱して殺菌したり香り付けをする工程、そして濾過工程を経てお店で醤油が完成するのです。

これで工場見学はおしまい。

会議室に戻ると、「郷土の実り」でつくった温かいけんちん汁が振る舞われ、お土産に2018年に私たちと同じようにもろみ仕込みをした「郷土の実り」のミニボトルをプレゼントしていただきました。
「皆さんは、仕込み体験を楽しみにしていたと思いますが、私たちはこの時期、昨年仕込んだ醤油をようやく味わえるのが楽しみなんです。その年の気温に影響される天然醸造の郷土の実りは、毎年驚くほど色や味わいが変わるんです。皆さんもぜひ来年の今頃、自分たちの仕込んだお醤油を味わいに来てください」と佐田さん。

「調味料をどうやってつくっているかなんて、普段は全然考えないからね。とっても楽しかったし長岡が好きになったわ」と一日一緒に見て回った参加者さん。2020年に私たちの醤油はどんな味になっているでしょうか?その年の気候に大きく左右されるということなので、2020年がどんな年になるかも今から気になってしまいます。そして長岡にまた来たいと思う大きな動機ができた体験ツアーでした!

 

Text and Photos: 唐沢頼充

 

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