秋晴れの市街地が「発酵」一色に! 「長岡の発酵」を楽しむ「HAKKO trip」、3年目の挑戦と手応え
2021年10月30日(土)、年に一度の発酵のお祭り「HAKKO trip」が今年も開催されました。昨年までは長岡駅直結のアオーレ長岡と、酒蔵や味噌蔵が集中的に立地する摂田屋エリアの2会場開催でしたが、3年目を迎える今年は、会場を摂田屋・宮内に絞っての開催という初めてのチャレンジ。歩行者天国ゾーンも設置して、40ブース以上がそろう大規模なものとなりました。
昨年に引き続き、新型コロナウイルス感染防止対策として、マスク着用や検温の徹底、消毒アルコールを用意するなど万全の体制。密集しすぎないよう、歩きながらの飲食を控えるように協力をお願いしたり、飲食スペースに飛沫防止パーテーションを設置したりと、参加者が安心してイベントを楽しめるような工夫をしたうえでの開催です。
当日はお天気に恵まれ、5,000人を超えるお客さんで大盛況! 発酵のコラボフードをほおばったり、発酵ワークショップを体験したり、蔵に響き渡るジャズの音色に酔いしれたり、それぞれが思い思いの時間を過ごしました。
摂田屋・宮内のまちが発酵一色となった2021年「HAKKO trip」の様子をレポートします。
第1回目・第2回目開催の記事はこちらからどうぞ。
[参考リンク]
食と体験で“発酵”に浸るスペシャルな一日!「HAKKO Trip」開催レポート
“発酵するまち”長岡を体験!コロナ禍の中「HAKKO trip」が示した「心地よさ」の姿
摂田屋のまちを歩きながら発酵を満喫!
今年の「HAKKO trip」の舞台は、摂田屋・宮内エリア。さまざまな発酵体験をすることができる食や雑貨のブースが立ち並びました。最寄りのJR宮内駅から会場までは徒歩約5分と近いため、自家用車ではなく電車を利用してイベントに来場する方も多かったのが印象的でした。
歴史ある建物が多く情緒あふれる摂田屋・宮内のまちあるきも楽しんでほしいと、事務局が用意したのがこちらのマップ。会場は4つのエリア(A・B・C・D)に分かれており、まちを回遊する楽しさを味わえます。さらに、老舗醸造所や地元から愛される惣菜屋さんも、この日は特別商品やイベントを用意してお客さんを出迎えました。
市外はおろか、ふだん長岡に暮らしていても、摂田屋を訪れる機会のなかった参加者もたくさん。数多くの歴史的建造物があることや、ここが発酵・醸造の一大メッカであることを今まで知らなかった方もいます。「摂田屋のまちをじっくり歩いたのは初めて」「たくさん歩いていい運動になった!」という声も聞こえてきました。
家族みんなで楽しめる、発酵体験ワークショップ
まず訪れたのは、長岡農業高校を会場にしたAエリア。こちらでは、味噌や醤油などの発酵調味料の魅力を感じる体験ワークショップ、発酵を学ぶクイズや実験コーナーなどを用意。小学生や中学生のお子さんを連れた家族中心ににぎわっていました。
会場前に駐車していたのは、充電中の電気自動車。実はここにも発酵の技術が活用されているのだとか。どういうことかと聞くと、いま充電しているのは長岡市が取り組んでいる、生ごみを発酵させて電気を作る『バイオマス発電』によって作られた電気なのだと教えてもらいました。発酵は食だけでなく、身近な生活にも役立っているんです。
[参考リンク]
生ごみから電気ができる!? 「発酵・醸造のまち」長岡が取り組むバイオエコノミーの現場を訪ねた
発酵・醸造を考えるユニークなカリキュラムがある長岡農高だけに、会場内には、「楽しみながら発酵を学べる」ブースがずらり。数種類の味噌と出汁をかけ合わせてオリジナル味噌汁をつくったり、味噌品評会の審査員になりきって味わいを評価したり。アツアツの手焼きせんべい作りを楽しめる体験コーナーもありました。
[参考リンク]
発酵を「自分で考える」手がかりに。「地域とつながる」長岡農業高校の発酵・醸造実習
また、サイエンスの視点で発酵に迫るブースも。発酵条件として重要なpHを紫キャベツの搾り汁を媒体にして測定する実験、納豆やヨーグルトなどの発酵食品がどんな微生物からできているのか当てるクイズは、知らなかった世界を垣間見る機会。発酵の主役は「微生物たち」ということを改めて感じたのではないでしょうか。
キッズが喜ぶ遊びやハンドメイド雑貨も充実
続いてBエリアへ足を伸ばしてみましょう。こちらは、歩行者天国のマルシェで、小さなお子さんの遊び場やハンドメイド作品のブースが並んでいます。
HAKKO tripでハンドメイド作品を販売するブースが登場したのは今年が初めて。発酵を通じて人々が交流することをテーマにしたイベントであることから、そのコンセプトに共感した素敵なお店が集まりました。
美味しいものが集合!イベント限定発酵フード&ドリンク
そろそろお腹が空いてくる頃です。飲食ブースが集まるCエリアで腹ごしらえとしましょう。醤油蔵「越のむらさき」前の道路沿いでは18店の美味しいお店が勢ぞろい。市内の醸造元の発酵食品を使用したHAKKO trip限定メニューや個性豊かなクラフトビールなど、発酵をテーマにした魅力的なフード・ドリンクを楽しめます。
塩麹チキンカレー、発酵タルタルチキン南蛮、干し豆腐の発酵サンラータン麺、味噌チキンオーバーライス、発酵餡バターサンド、酒粕チーズテリーヌなど、メニュー名を聞くだけでもワクワクするフードの数々! 大人向けの日本酒サングリアやエールビールの他、子供や妊婦さんでも楽しめる甘酒ドリンクや発酵ソーダなど、ノンアルコールドリンクも充実していました。
HAKKO tripの開始と同時に、美味しいフードやドリンクを求める人たちで大盛況。カレーのスパイスの香りや揚物の香ばしい香りが漂い、訪れる人たちの食欲を刺激します。イベント後半にはだいぶ客足も落ち着いたことで、お客さんと会話を楽しむ出店者の姿をたくさん見かけることができました。
HAKKO tripの目玉のひとつは、各出店者が市内の醸造元とコラボしたメニューをいただけること。「味噌星六」の塩麹を使用した雪下にんじんスープやヨーグルトチキン、味噌を使ったオーバーチキンライス、「吉乃川」の日本酒で作ったサングリアなど。出店者のみなさんは「コラボメニューを考えるのも楽しい時間でした!」とのことで、改めて発酵調味料のポテンシャルに気付くことができたそうです。
食と体験ワークショップでお腹も心も満たされる
2020年に摂田屋の新たな目玉としてオープンした「摂田屋6番街 発酵ミュージアム 米蔵」周辺のDエリアも、発酵フードを提供するブースがそろっています。地元蔵元の味噌を使用したおでん、麹調味料で仕込んだから揚げ、発酵食品満載のスペシャル弁当など、新たな発酵の魅力を感じられる料理がいっぱい! 長岡市内16蔵の代表銘柄の日本酒をワンコインで飲み比べることもでき、ほろ酔い気分で心地良い時間を過ごす人々であふれていました。
作り手の温かみを感じるハンドメイド作品が並ぶ「せったやハンドメイドマルシェ」も同時開催。お子さんからお年寄りまで幅広い層の方々が、じっくりと手に取って商品を眺める姿があちこちで見られました。廃材オブジェ作り、オリジナル缶バッジ作り、マスク姿の似顔絵を書いてもらえる体験など、出店者と参加者が交流しながら楽しめる企画が充実。会場じゅうが笑顔で包まれているのが印象的でした。
蔵元訪問で蔵人との温かな交流を楽しむ
摂田屋にある5つの蔵元も、HAKKO tripに合わせてお楽しみを用意。普段は買えない日本酒や味噌、高校生とコラボしたオリジナル商品、特製の豚汁や醤油赤飯の販売など、特別感であふれています。
蔵を訪れた参加者からは、「摂田屋で作られた味噌を普段使っているけど、醸造元を訪れたのは初めて!」「蔵の人たちが優しくて、親近感を感じられた」といった感想を聞くことができました。
HAKKO tripをもっと楽しむ!スペシャル企画も満載
その他、HAKKO tripでは記憶に残る一日にしてもらいたいと、様々な企画が用意されました。蔵の中で心地良く音楽が響き渡る「摂田屋・蔵JAZZ」、5つの蔵でお土産や試食がもらえる「蔵巡りスタンプラリー」、モダンな着物の着付けをしてもらえる「着物でまち歩き」、廃材再生師・加治聖哉さんの「発酵×廃材アート」作品展示など。一日ではとても時間が足りないくらい、楽しい企画が満載です。
発酵・醸造のまち摂田屋・宮内が多種多様な人たちでブクブクとにぎわったHAKKO trip。美味しい発酵フードやドリンクを味わうのはもちろん、蔵元を訪れたり、発酵の世界を学んだり、そこにはたくさんの気付きもあったのではないでしょうか。「発酵」を合言葉に、老若男女の多世代の人たちが集まったことで、にぎやかな交流が生まれた一日となりました。
開催3回目を迎える今年は、摂田屋・宮内を会場に絞った大規模開催。初めての試みということで難題も多かったようですが、例年以上にたくさんの人々の協力によって実現しました。市役所の担当者も「高校生や大学生、地元のお店、地元に住むみなさん、広報に協力してくださった方々など、人の温かさを感じる瞬間が幾度もあり、発酵というキーワードを通じてまちの文化の豊かさを実感することができました」と、ほっと安堵の顔。
毎年パワーアップするHAKKO trip。次回もさらにたくさんの人を巻き込んで、ブクブクと楽しい時間になっていくことでしょう。ぜひ、来年度の開催もご期待ください!
Text & Photo:渡辺まりこ