地域住民の協力と
温かい眼差しが支える場

「かいじゃり」の環境の素晴らしいところは、自然や眺望といったロケーションだけではない。近隣の人たちが差し伸べてくれる支援と見守りがありがたく、なによりの財産だとふたりは語る。

「うちの敷地はそんなに広くないのですが、私たちは本当にご近所さんに恵まれているんです。駐車場の場所もそうだし、『子どもたちのためなら』と裏山や畑も使わせてくださって。毎週水曜は外のかまどでお汁を作って食べるのですが、畑で採れた野菜を『どうぞ使ってね』と持ってきてくださったり、『遊んでいきなー』って、おうちに招いてくださったり。子どもたちもみんなご近所さんに懐いているんですよ」(真耶さん)

「みなさんが『いくらでも協力するよ』『子どもたちの声が聞こえてうれしいね』などと言ってくださって。ありがたいことです。昔は通学路だったという野の道を一緒に歩いて、『子どものころはこんなだった』とか『ここの桑の実は食べられるんだよ』などと、子どもたちに教えていただいたこともありました。かつての子どもはこんなふうに異なる世代と関わり合いながら育ったかもしれませんが、いまは必ずしもそうではない中、『かいじゃり』は地域のみなさんに助けられています」(真さん)

畑の野菜だけでなく、仕留めた鴨を1羽まるごと分けてもらったこともあり、みんなで羽をむしって調理したのだとか。近隣の人たちが子どもたちのために寄せてくれる支援物資と温かいまなざし、それらすべてが「かいじゃり」の活動の糧となっている。

真さんと真耶さんのほかに保育士1人が交代で勤務し、スタッフは常時3人。この日は出雲崎町から週1回やって来る「ふしこさん」が担当だった。

 

すべての子どもたちが
兄弟姉妹のように関わり合う

「まやっぺ、見て見てー!」「早くこっち来て!まこっちゃん!」と大きな声で呼ぶ子どもたち。真さんと真耶さんに話を聞いていると、すぐに子どもたちがやってきて、膝に乗ったり抱きついたり。ふたりとも「先生」ではなくニックネームで呼ばれ、自宅が保育施設を兼ねていることもあってか、保育士と子どもたちの距離が近く、家庭のように親密でゆったりした時間が流れている。

「ここは2歳から6歳までの子どもたちが一緒に過ごしているので、優しさと厳しさを併せ持ったお兄ちゃんたちが小さい子を助けてあげたり、小さい子がお兄ちゃんたちの遊びを真似て学んだり。ケンカもありますけど、兄弟のような関わりが生まれています」(真耶さん)

鶏小屋で飼育されているチャボも大好きな友だち。

おとなしいチャボなので室内にいても違和感なし。

 

10人のうち地元・寺泊の子どもは2人だけで、40分近くかけて柏崎市から通う子もいるのだとか。保護者からは、こんな言葉が寄せられている。

「子どもの表情や言葉が穏やかで豊かになった。園や地域の方の丁寧な寄り添いのおかげです」
「まこっちゃんとまやっぺが子どもと同じ目線で一緒に楽しんでくれる。豊かな自然と安心できるコミュニティの中で、子どもの成長を感じる日々」
「子どもたちは日に日にたくましくなって、現代では得づらくなった大切な、温かいなにかをいただいて成長している」

ひとりで遊ぶこともあれば、みんなで遊ぶこともある。それぞれのペースで、そのときの気分で。

好きなことを活かして遊びを生み出し、年齢の違う子どもたちが遊びを通して関係を深めていく。

 

今日のおやつは保護者から差し入れられたブルーベリーで生ジュースを手作り。みんな待ちきれない様子。

料理好きな子が率先して参加。パンケーキを焼いたり、魚を捌いて干物を作ったりしたこともあるという。

 

「『かいじゃりでは子どもの自由が大切にされているんだよ』と言った子がいて。ちゃんとわかってくれてるんだなぁ」と真さんはうれしそうに笑う。

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