饅頭屋の奥に広がる異空間!誰も知らない、社長の「偏愛コレクション」に迫る

※この記事は2017年1~2月に「な!ナガオカ」が主催した「視点の学校」ワークショップにて、長岡造形大学の学生が作成したものです。

2017.4.21

あなたが大切にしているものは何ですか?

家族、思い出の写真、ぬいぐるみ……。

みなさん、それぞれ大切にしているものがあると思います。

そんな中、ある“モノ”を大切にしている方がいる、との情報を聞きつけた取材班。

その方の元へ調査に行ってきました!

 

地元で愛される饅頭屋「川西屋」のご主人

今回取材させていただいたのは、新潟県長岡市神田町にある饅頭屋「川西屋」三代目社長の早川吉博さん。

「川西屋」は創業明治40年代、100年以上の歴史を持つ老舗の饅頭屋さんです。

JR長岡駅から徒歩15分、大きな看板が目印のお店が堂々と構えられています。

川西屋の名物と言えば、昭和13年から販売をしている「アイスキャンデー」(90円税込)。

約80年前から人々に親しまれているロングセラー商品です。

また、今イチオシの商品は「醤油つぶあん」(100円税込)。

醤油が塗られた酒饅頭の中に、たっぷりのつぶあんが入っています。

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そんな和菓子だけでも十分特集できる川西屋。

しかし、今回はそれらについての特集ではありません。

川西屋の社長が、大切にしているものとは一体何なのでしょうか?

 

店の奥に潜む“クリアファイルコレクション”

美味しそうな饅頭が並ぶショーケースをあとにして、店内ののれんをくぐると、そこには事務所があります。お客さんとして来た時には中々入ることのできないお店の奥へ、今回は特別に入らせていただきました。

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事務所に入るや否や、目に飛び込んできたのは……壁や天井に張り巡らされた無数のクリアファイル。

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何でこんなにクリアファイルがあるの? 何のために集めているの? と、次々に浮かんでくる疑問を、社長の早川さんに聞いてみました。

 

クリアファイルとの出会い

まず一番に浮かんできたのがこの疑問。

——なぜ、クリアファイルを集めているのですか?

社長「ある保険会社の人に、クリアファイルをもらったのがきっかけかな。その時、一度に15枚くらい貰ったんだけどね。その時に載っていたのが唐沢寿明なんだ。それを見て、クリアファイルを集めるのって面白いかもなって思ったんだよ。ほら、クリアファイルなら比較的安く手に入るだろ。軽いから持ち運びも楽だしね。集め始めてからは、いろんなところへ観光に行く度に買うようになったな」

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観光や美術展に行くのも趣味だという早川社長。行く先々でクリアファイルを買っていったら、どんどん数が増えていったそう。

——何年くらい前から集めているんですか?

社長「だいたい10年くらい前からかな。でも10年間1人で集めた訳じゃないんだよ。私が集めていることを知った友人や会社の人が、旅行のお土産で買ってきてくれてね。6割くらいは自分で集めたけど、残りの4割はプレゼントで人から貰ったものだよ」

たくさんのクリアファイルは、10年という時間の中で集められてきたものでした。

数えてみたところ、壁4面と天井合わせて、なんと総数約200枚。

ひょんなきっかけから始まった社長の趣味は、今や一大コレクションとなっていました。

——それにしても様々な種類のクリアファイルがありますよね。集める時に何かルールはありますか。

社長「あえて種類で分けるとしたら、人物系(保険会社多め)、寺・仏像系、スポーツ系、お菓子系、展覧会系、旅行先系……たくさんあるね。集める時のルールは特には無いかな。でも、その地で出会ったクリアファイルを買いたいと思っている。というか出会ったファイルは買わなきゃという使命感にかられるよ」

懐かしの芸能人のほか、アニメものなど、多種多様なクリアファイルが揃っている社長のコレクション。旅先で出会ったクリアファイルは、ついつい購入してしまうのだとか。

 

壁に“貼る”ということ

コレクションといえばショーケースでの保存など、大事にしまっておくイメージがあるのだが、ここでは壁に貼って展示してある。特に天井は高さもあるので、社長の曰く、最近は貼る時に首が痛くなることもあるそう。そうまでして壁に貼る意味とは何なのでしょうか。

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——なぜ、壁にクリアファイルを貼るのですか?

社長「やっぱりコレクションするだけじゃなく、人に見せたいって気持ちがあるからかな。本当は、饅頭を買いに来たお客さん全員に見せたいくらいだよ。でも自分から見せびらかすみたいなことはしたくない。だから店内には貼らずに、事務所に貼っているんだよ。たまたま入って見た人が、えっ!何これ!ってなってくれればそれでいい」

主張しすぎず、さりげなく、でも大胆に飾るということに、社長の人柄が伺えます。

——とにかく枚数が多いですが、貼る場所は種類ごと決まっていますか?

社長「今は特にないかな。最初のうちは分類していたけれど、数が多くなってからはスペースが無くなってきてね。空いた場所に貼るようになった。あと、あまりにもつまらないクリアファイルは貼らないよ(笑)」

ちなみに壁に貼っているのはクリアファイル本体ではなく、全てカラーコピー。画鋲で本体を傷つけたくない、というところからも社長の並々ならぬクリアファイル愛を感じさせます。

 

思い出の一枚

——200枚近くあるクリアファイルですが、お気に入りのものや特に思い出に残っているものはありますか?

社長「そうだなあ、迷うなあ」

そう言いながら、社長が選んだものは

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「雪の大谷ウォーク」のクリアファイル。

社長「これは特に思い出に残っている。5年前に妻と二人で旅行に行った時のものなんだ。富山県の大谷にある、雪でできた巨大な壁を観に行ったんだよ。久々の夫婦水入らずの旅行でね。巨大な壁もさることながら、妻と一緒に行けたってことがすごく楽しかったんだよなぁ。これはその時に買ったもの。だから一番思い出に残っている」

社長は他にもいくつかお気に入りのクリアファイルを紹介してくれましたが、それらはどれも懐かしい思い出が詰まったものでした。

 

クリアファイル一枚一枚が大切な思い出

社長「それぞれのクリアファイルに、その時の思い出が詰まっている。言わばアルバムのようなものだね。でもしまっておくのではなく、こうやって眺めて見られるようにすることが大事なんだよ。ふとした瞬間に、あの時はこんなことがあったなって思い出せるから。ここまで集めちゃったから、もう止めどきがわからないんだよね」

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そう語りながら、クリアファイルを眺める社長。

コレクションとして集めているのはクリアファイル。

しかし社長が本当に集めているのは、その瞬間の「思い出」と、クリアファイルが繋ぐ人と人の「絆」なのかもしれません。

 

今回紹介したクリアファイルのコレクションは、一声掛ければ一般の方にも特別に公開していただけるそうです。

あなたも美味しいお饅頭と共に、素敵なクリアファイルを眺めに来ませんか?

そして社長へのお土産には、クリアファイルを是非どうぞ!

 

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Text: Fumika Hasegawa
Photos: Ryosuke Kokubo
Interview: Miho Aoyama

川西屋
[住所] 長岡市神田町1-2-29
[電話] 0258‐32‐2588
[営業時間] 9:00~18:00
[定休日] 月曜日

 

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