親子で稲刈り&さつまいも掘りを気軽に体験!「ながおか農業ふれあいまつり」
誰もが新鮮な食材を手軽に手に入れることのできる現代。ふだん自分たちが食べているお米や農作物は、どのような環境で、どのように作られるのか。気になるけれど、知る機会は意外と少ないものです。
新潟県長岡市で毎年秋に開催されている「ながおか農業ふれあいまつり」は「グリーンツーリズム」をキーワードに、体験を通じて「食」について考えるきっかけを得られるイベントです。
2018年で28回目を迎えた同イベントは、家族連れを中心に、毎年多くの参加者を集めています。多い時には、600人近い参加者がいることも。
参加費は大人300円、子ども200円。予約は必要なく、フラッと気軽に参加できる体験型イベントです。
会場は「グリーンツーリズム」の拠点
「ながおか農業ふれあいまつり」は、長岡市と「ながおかグリーン・ツーリズム推進協議会」が中心となって毎年9月下旬に開催されている体験型イベントです。
「グリーン・ツーリズム」は主に英国、フランスなどヨーロッパで盛んな活動で、農村などに滞在し、自然環境に親しむともに現地の文化に触れ合う観光旅行(ツーリズム)です。
日本においても、都市に住む市民で、自然に親しむ活動をしたいと希望する人の声が増えたことなどを受け、農林水産省が1992(平成4)年から提唱・推進しています。
会場となるのは、このグリーン・ツーリズムの拠点として長岡市につくられた「農の駅あぐらって長岡」です。
長岡市のほぼ中央にある東山の麓(ふもと)に広がる広大な敷地を利用した施設で、農業体験ができるほか、農畜産物の加工・伝統料理の調理実習なども体験することができます。
さつまいも掘り体験からスタート
「ながおか農業ふれあいまつり」のメインイベントは、さつまいも掘りと米の収穫体験です。
まずはさつまいも掘り体験からスタート。品種は「紅はるか」という、甘みがとても強く、しっとりとした食感が特徴のさつまいもです。
「今年は天候不順が続きましたが、出来はとても良いです。期待できますよ」
そう話してくれたのは、運営スタッフの長岡市職員の米山さんです。「今日も天気が心配ですが、大丈夫そうでよかったです」と胸をなで下ろしていました。イベント当日は、ちょうど大型の台風が接近中。開催が危ぶまれる中、一丸となって準備をしてきました。
「小さいお子さんを連れた家族連れが毎年多く参加してくれます。参加者の方には、さつまいも掘りや稲刈りを通して、東山の自然と触れ合う機会にしてほしいですね。」
子供たちは「今すぐにでも掘りたい!」と、うずうずした様子ですが、まずは説明から。
「ツルをたどって、さつまいもがどのように埋まっているかを確認しながら掘りましょう」など、米山さんらスタッフがさつまいも掘りのコツをしっかりレクチャーしてくれます。
体験畑は大勢の人で埋め尽くされています。2018年の参加者は300人以上とのこと。台風が接近する中での開催とあって、不安定な天候でしたが、かなりの人数が集まりました。
お母さん、お父さんと一緒に掘り進めていく子どもたち。
どんどんと“大物”を掘り当てていきます。
ごろごろとした立派なさつまいもがたくさん獲れました。
収穫後のさつまいもはスタッフの方の手で一旦回収され、その後参加者に分配されます。
積み上げられたさつまいもの山を見た子どもたちからは「こんなにおいもが埋まっていたの!?」などと驚きの声が上がっていました。
みんなで一緒に稲刈り!米の収穫体験
続いて、米の収穫体験へ。
刈り取るのは、5月に開催された「ながおか田植えまつり」の際に、一般の参加者によって手植えされた稲で、品種はコシヒカリです。
子どもたちだけでなく、お父さん、お母さんの中にも稲刈りをしたことのない方が大勢。
「子どもに教えるという前に、私もついでに教えてもらいたいなと(笑)。そう思って参加しました」と話す方もいました。
稲の根っこから5cmくらいのところをしっかり掴み、鎌で刈り取っていきます。
初めて体験する稲刈りに、子どもたちは夢中になっています。慣れてしまえばお手のもの。黙々と刈り取っていきます。
意外と苦戦するのが、稲をまとめる作業です。
手で束ねた稲を回転させ、縄で束ねる。簡単そうですが、バラバラになってしまったり、いびつな形になったりで、なかなか上手くいかないのです。
稲を刈るのは子どもたち、まとめるのはお父さん、お母さんたち…。
親子それぞれで役割分担をして、10a(10アール)の田んぼの稲刈りを進めていきます。
新潟市から参加した家族連れのお父さん(30代)は「こうしたイベントは初参加なのですが、親子のコミュニケーションが自然に生まれるので良いですね」と話していました。
刈り取った米は、しっかりと乾燥させる必要があります。束にした稲を「はざ掛け」していきます。
はざ掛けとは、刈り取った稲を「稲木」に掛け、天日にさらして乾燥させる方法です。
機械化が進んだ現代では、熱風を当てて乾燥させる方法が主流ですが、かつてはこのはざ掛けが一般的な手法でした。
長岡市をふくめ、新潟県では今でもこのはざ掛けを行なっているところがあります。
「これ見たことあるよ!」と話す子どももいました。
機械で処理するのと比べると、非常に手間がかかるものの、米粒の一つひとつに旨味が閉じ込められることから、あえて「はざ掛け」を選ぶ農家の方も多くいます。
講師役で参加していた地元農家の男性(60代)は「私が子供の頃は、うまく掛けられないと怒られたものだった」ということを子どもたちに話していました。
今回のイベントで体験できるのはここまで。
はざ掛けをして乾燥をさせたのち、精米処理をして参加者に配られます。
木工や竹細工の製作体験もできる!
「あぐらって」では、収穫体験だけでなく、陶芸体験もできます。「ながおか農業ふれあいまつり」では、陶芸の他に、木工や、竹細工の製作体験も楽しんでいました。
農作業に汗を流していると、気がつけばランチタイムに。
こちらは長岡市で活動する農家おかあちゃんグループ「ゆめ倶楽部」による特製豚汁の振る舞いです。
豚汁とともに、各自で持参したお弁当でランチをとります。
こちらは、「畑deサラダづくり」コーナー。「あぐらって」内の野菜園で収穫したレタスを、オリーブオイルや塩などを使ったオリジナルドレッシングを自分で作り、サラダにして食べることができます。
野菜の収穫も、簡単そうで実はコツが要るもの。スタッフの方から手ほどきを受けながら、丁寧に収穫していきます。
製作体験イベントがひと段落する頃、さつまいもの分配作業が終わり、参加者一人ひとりに配られました。
真剣に身体を動かし続けていると、あっという間に時間が過ぎていました。気がつけばイベント終了時刻の15時に。
春のイベント(ながおか田植えまつり)にも参加したという長岡市の男性は「自分の身体を動かして、体験する。シンプルなことですが、とくに子どもにとっては、これがもっとも勉強になるのではないかと思いました」と話してくれました。
子どもに農業のことを教えたいと思っても、親戚が農業を営んでいるわけでもないし、教える場がない…。
そんな方にもおすすめのイベントです。
ご家族と一緒に農業に触れ合う機会にしてみてはいかがでしょうか。
Text & Photos:Junpei Takeya
農の駅あぐらって長岡(ふるさと体験農業センター)
[住所]長岡市栖吉町3670
[電話]0258-34-5360
[営業時間]午前9時~午後5時まで
[休館日] 毎週月曜日及び12月28日から翌年1月4日
[利用方法] 3ヶ月前から利用申込みを受け付けますので、あぐらって長岡へ電話などで予約し、当日までに使用申込書を提出してください。