長岡が誇る発酵調味料。日常に取り入れる工夫を

HAKKO tripでは、発酵調味料を使った多種多様なメニューを提供するお店が、美味しくて楽しい時間を演出しました。出店者はどのような心持ちでイベントに参加したのでしょうか?昨年に続いて出店し、新潟県内で「SUZUグループ」を展開する鈴木将さんにインタビューしました。

――今年は新型コロナウイルス感染対策が大変でしたね。お客さんの反応はいかがでしたか?

鈴木「お客さんに安心して食事を楽しんでもらいたかったので、感染対策は万全にしました。飛沫防止のビニールシートを設置したり、マスクや消毒を徹底したり。料理はシェア前提ではなく、一人で食べきれる個食にして、テイクアウトしやすい蓋付き容器も使用しました。お客さんには喜んでもらえたと思います」

 

――今年10月、摂田屋にオープンしたばかりの「おむすびと汁と茶 6SUBI」も盛況でしたね。どんなメニューを提供しましたか?

鈴木「地元米のおむすびがメインで、そのほか摂田屋の蔵元の発酵食品を使ったメニューも多く揃えました。味噌星六・星野本店のみそを使ったみそ汁、吉乃川の日本酒・機那サフラン酒のリキュールを使ったサワーなど。料理やドリンクを通じて、摂田屋の魅力を感じてもらえれば嬉しいです」

 

――地元蔵元とのコラボメニューというのはいいですね!今回、イベントの会場となった摂田屋はどんな魅力をもつエリアですか?

鈴木「摂田屋は歴史ある蔵元が一つのエリアに点在しているのがおもしろいです。もともと発酵食品を好む人たちに人気でしたが、この秋に交流拠点『摂田屋6番街 発酵ミュージアム 米蔵』がオープンしたことで、新たに興味をもって訪れるお客さんが増えました。HAKKO tripのような地域ならではのイベントもこの先続々開催していくようなので、新たな観光エリアとして盛り上がっていく予感がします」

 

――最後に、みなさんに発酵食をどのように楽しんでもらいたいですか?

鈴木「発酵食品や発酵調味料をもっと自由に日常に取り入れてほしいなと思います。例えば、今ってお米の消費が減っているから、同時にみそ汁を飲む人も減っています。でも、パンとみそ汁を合わせてもいいし、洋風スープに発酵調味料を使ってもいい。パスタに酒粕やみそを使って味付けしてもいい。

発酵調味料は万能で、和洋中に使えます。日本ならではの発酵食品をもっと気軽に楽しんでもらいたいですね」

発酵するまち”を目指し、居心地よくつながる場をつくりたい 

今年で2回目を迎えたHAKKO trip。そもそも誰がどんな目的で行っているイベントなのでしょうか?HAKKO trip実行委員で長岡造形大学理事長の水流(つる)潤太郎さんにお話を伺いました。

 

 

――HAKKO trip実行委員はどんなメンバーが集まっているのですか?

水流「大学教授や行政、メディア関係者、首都圏のバイオ関連企業、あとは地元の飲食店です」

 

――いま世間は発酵ブームで、全国の様々な地域が発酵文化をアピールしていますが、「発酵・醸造のまち 長岡」の特徴ってなんでしょう?

水流「『暮らし』『産業』の二つの軸を持っていることです。長岡には摂田屋のように発酵食品をつくり続けてきた歴史があり、これは人々の暮らしに深く根付いています。でもそれだけじゃない。大学や研究機関が、産業における発酵サイエンスで最先端を走り、発信しています。この『暮らし』と『産業』を軸にして、長岡市では“発酵的なやり方”でまちづくりを進めたいと考えています」

 

――“発酵するまち”ですね。それはいったいどんなイメージですか?

水流「例えるなら、“ぬか床のようなまち″でしょうか。ぬか床は単一微生物だけだと美味しくなくて、多種多様な微生物がバランスよく存在すること、そして適度な温度でほどよくかき混ぜることで、発酵がうまく進みます。長岡のまちもぬか床のように、多種多様な人たちが活動し、風通しよくお互いが交流し、常にいい変化をしていきたい。例えば、若い人たちが起業したいとなったら、先輩方が率先して応援してくれる、そんな雰囲気を目指していきたいです」

 

――共生と循環がキーワードですね。発酵的な考え方はこれからの生き方におけるカギになりそうですね。

水流「そうですね。もう一つ、発酵の興味深いところは、創造性があるところです。例えば、みそや醤油を手作りしてみると、同じ材料を使ってもその時々で味や風味が全く違うものになります。これまでの工業社会では、均質・正確・効率的なモノが求められたけど、発酵の世界は真逆で、手間暇がかかり不均一であるがゆえに一つひとつの個性が出る。AIが今よりさらに活躍するであろう未来に、空いた時間をどう使おうかとなったら、発酵がもつ創造性が大切になってくるはずです」

 

――長岡が目指す“発酵するまち”の姿がよくわかりました。最後にHAKKO tripでは来場者にどのような時間を過ごしてもらいたいですか?

水流「美味しいものを食べたり、集まる人々と交流したりすることで、心地よい時間を過ごしてもらえると嬉しいです。長岡市にとって、発酵は一過性のブームではありません。じわじわと長く継続していき、居心地よくつながりをもてる場を今後もつくっていきたいと思います」

美味しい発酵フードをほおばり、微生物の営むサイエンスに触れ、蔵人たちとふれあう――HAKKO tripは発酵世界の奥深さを知り、単一的な指標では測りきれないこのまちの豊かさを再確認するひとときとなりました。発酵を一過性のブームと捉えるのではなく、じわじわと長く続けることで、長岡を象徴するイベントとなっていくはず。

当日の様子をまとめた動画はこちらからどうぞご覧ください。HAKKO tripにお越しいただいた方もそうでない方も、次回のHAKKO tripをさらに楽しみにしていただけると嬉しいです。

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