長岡の秋の風物詩!「発酵・醸造のまち」の定着をみた、4年目の「HAKKO trip」
2022年10月30日(日)、第4回目となる発酵イベント「HAKKO trip」が開催されました。
昨年は宮内・摂田屋エリアに会場を絞りましたが、今年は2020年の第2回以来となる、長岡駅前エリアと宮内・摂田屋エリアの二拠点開催が復活。例年通り新型コロナウイルス感染防止策を実施され、マスク着用や検温、消毒アルコールのほか、人が密集しない飲食スペースなどの工夫をしつつ、新しい試みとして親子向け企画や学生主催ワークショップなどが加わり、より多くの人たちと一緒に作っていく場所になりました。
当日は、ぽかぽかと気持ちの良い晴天に恵まれ、家族連れやカップル、お友達同士、一人でフラリと訪れる方など、様々な来場者でにぎわい大盛況! 発酵の食と体験に浸る一日となったイベント当日の様子をご紹介します。
過去の「HAKKO trip」レポートはこちらをご覧ください。
第1回目
食と体験で“発酵”に浸るスペシャルな一日!「HAKKO Trip」開催レポート
第2回目
“発酵するまち”長岡を体験!コロナ禍の中「HAKKO trip」が示した「心地よさ」の姿
第3回目
秋晴れの市街地が「発酵」一色に! 「長岡の発酵」を楽しむ「HAKKO trip」、3年目の挑戦と手応え
発酵の聖地を堪能できる「宮内・摂田屋エリア」会場
今年の「HAKKO trip」は二会場開催。まずはメイン会場である宮内・摂田屋エリアへ向かいましょう。JR長岡駅から車で10分、電車と徒歩で15分ほどの場所にあるこのエリアは老舗の酒蔵や味噌蔵、歴史的な建造物や産業遺産が集積する、いわば長岡の「発酵の聖地」。長岡市が「発酵・醸造のまち」を謳い始めて5年、地元住民以外にも少しずつこの場所のおもしろさが認知されつつあります。
宮内・摂田屋エリアの会場はA・B・C・D・Eの5つのエリアに分かれており、全ての会場を廻ると1km以上の距離になります。普段は歩かないという来場者の方も、この日ばかりは「摂田屋の風情を感じながら楽しんで歩けました」「お店がたくさんで飽きずに歩きました」とのこと。初めて宮内・摂田屋エリアに来たという来場者も多く、HAKKO tripがまちの魅力を知る良いきっかけとなったようです。
HAKKO tripの全エリアを巡ってもらいたいと、事務局スタッフが用意したのが先着600人限定のスタンプラリー。各エリアに設置されたスタンプを集めると、地元企業の甘酒やフリーズドライみそ汁、地元野菜、米菓など嬉しいプレゼントが当たる企画です。
毎年大人気のスタンプラリー企画ですが、今年はさらにパワーアップ。2会場のスタンプをすべて集めた方の中から抽選で20名に、長岡のおいしい食べ物詰め合わせギフトが当たるというボーナスもありました。会場は昨年より一段と広くなりましたが、参加者の皆さんは楽しみながら会場巡りをしていました。
それでは、さっそくHAKKO trip会場を廻っていきましょう。まず向かったのはAエリアの「秋山孝ポスター美術館」。こちらでは、モダンで色彩鮮やかなポスター作品を背景にジャズライブが行われました。発酵のまちを楽しんでほしいと「蔵ジャズ」と銘打ち、HAKKO tripと同時開催されたスペシャルイベントです。吉乃川酒ミュージアム醸蔵や星野本店など全6会場にて、8組のミュージシャンが出演。それぞれの会場による独自の雰囲気があいまって、一期一会を感じるライブとなりました。
手仕事ならではの温かみを感じるハンドメイド雑貨
ハンドメイド作品が並ぶBエリアは、18のお店が集結。手作りならではの温かみのある作品ぞろいで一点モノも多く、アクセサリー・ステンドグラス小物・布小物・ドライフラワーなど、眺めるだけでも癒される作品ばかり。来場者は手に取りながら、お気に入りの雑貨を探すのに夢中になっていました。また、アロマやアクセサリーなどのワークショップも充実しており、出店者とのコミュニケーションも楽しい時間となりました。
地元の醤油や味噌を使ったオリジナル限定メニューが斬新!
Cエリアは発酵フードやドリンクが並ぶエリア。お昼時にはたくさんの人たちであふれ、HAKKO trip限定メニューをほおばり、そのおいしさに舌鼓を打っていました。各店舗が提供するメニューには、市内各蔵の味噌・醤油・甘酒といった発酵食品が使用されています。味噌味の焼き鳥、醤油を使ったアヒージョ、味噌チキンオーバーライスなど、メニュー名を聞くだけでも食欲がわいてきそう。変わり種も多く、スパイス味噌レモネード、味噌のガトーショコラ、醤油シフォンの黒糖クリームサンドなど、どんな味なのか想像がつかないメニューも多数ありました。
発見と驚きがいっぱいの発酵フード&ドリンクを堪能
Dエリアの「摂田屋6番街発酵ミュージアム・米蔵」周辺にも、発酵フードのお店が並びます。特に注目したいのが、スノーフード長岡と長岡農業高校が共同開発した「肴豆味噌」を使用したコラボメニュー。肴豆とは、晩成の品種の大豆(枝豆)のこと。甘みと香りを楽しめる品種で、芳醇な味わいの楽しめる味噌がつくれます。味噌だれ団子、カレー、フィナンシェ、鶏皮煮込みなど、めずらしい新感覚な味わいは、思わずうなるおいしさです。
同エリアにある「吉乃川 醸蔵」では、この日限定の発酵パネルディスカッションを開催。ゲストに摂田屋のフレンチダイニング「5en」シェフ・中澤壮一氏を招き、吉乃川スタッフ・川上麻衣子氏との発酵トークが繰り広げられました。
HAKKO tripをさらに盛り上げてくれたのは、会場にほど近い上組小学校の子どもたち。校内に美術館を設置するというユニークな美術教育に取り組むこの学校の6年生が、蔵やお店を事前に取材して、魅力を紹介するポスターを制作・展示(全10カ所)しました。また、 3年生はオリジナル行燈を制作。会場を彩る小さな行燈は、見る人の心を和ませていました。
地元醸造場のスペシャルコラボ。イベント限定商品を販売
Eエリアは、摂田屋の住宅地に溶け込む「星野本店」と「長谷川酒造」の周辺です。HAKKO tripでは両蔵がコラボして生まれた「粕味噌」を当日限定で販売。また、訪れた来場者に喜んでもらおうと、豚汁や醤油赤飯、酒粕入り生キャラメルなど、HAKKO tripでしか味わえない限定メニューの販売もありました。
体験して学ぶ!長岡駅前エリア
発酵フードをたっぷり満喫したら、お次は長岡駅前エリアの会場へ。当日はハロウィンイベントや北陸ガス展が同時開催しており、歩行者天国のメインストリートはさまざまな催しを楽しむ人々でいっぱい。コスプレで可愛く着飾った子どもたちの姿も見かけました。
地元のお酒と発酵フードで乾杯!
まず向かったのは、長岡駅直結のアオーレ長岡。ナカドマと呼ばれるオープンスペースには日本酒の飲み比べや発酵フードの販売、発酵バイオエコノミーの展示を行うブースが集まっています。会場ではとっておきのお酒が飲めるとあって、電車での来場者が大勢いました。
目玉は、市内8つの酒蔵イチオシのお酒をチケット制で味わえる「ほろ酔いブース」。生原酒・どぶろく・ビール・ワイン・梅酒など約30種類から選んで試飲することができます。お猪口5杯分で1,000円のリーズナブル価格なので、あれもこれも飲み比べしたくなってしまいそう!
お酒によく合うおつまみ系フードも充実。カリッと揚げた南蛮えびのから揚げ、バイ貝のエスカルゴ風バゲット添え、神楽南蛮塩もつ煮込み、甘酒塩こうじ漬けの鶏むね肉冷菜など、盃がぐいぐい進みそうなラインナップです。
また、発酵とは食品だけの話にあらず。発酵バイオエコノミーを推進するブースでは、微生物たちの力を感じられる展示販売が行われていました。生物資源やバイオテクノロジーを活用して、新たな経済循環をめざそうとする取り組みです。
例えば、緑水コンポストセンターでは、微生物で生ごみを発酵させた肥料を製造しています。イベントでは栄養たっぷりの肥料で栽培した農産物を販売していました。また、越後ど発酵プロジェクトでは「食品ロス削減」を掲げ、家庭での消費が減った酒粕にスポットを当てた商品開発をしています。オリジナルの酒粕ブレンド調味料「古志漬けの素」は、簡単に粕漬けが作れるとあって来場者からの注目が集まっていました。
このように異なるアプローチから発酵の概念を知ることで、訪れた人にとっても新たな発見があったようです。
また、アオーレ長岡お隣の路地裏にある居酒屋「角打ち+81 カネセ商店」も、この日は地元長岡・河忠酒造「想天坊」と秋田・福禄寿酒造「一白水成」の日本酒飲み比べメニューを用意して営業。隠れ家のような雰囲気があるカウンターでゆったりと昼間から嗜むお酒は、とびきり贅沢な味わいでした。
参考:【教えて!ご主人】地酒愛あふれる「くずしフレンチの日本酒バル カネセ商店」
醤油・みそまる・出汁スープ。発酵食を手作り体験
続いては、アオーレ長岡から徒歩5分ほどの場所にある「ながおか市民センター」のbエリアへ。建物の一階では、味噌汁の素ともいえる「みそまる」作りや醤油仕込み体験など、実験感覚で発酵を楽しめる体験の場を用意。さらに長岡農業高校生徒のチャレンジカフェでは、HAKKO trip限定の特製メニューをいただくことができます。
サイエンスの視点から発酵を学ぶ
建物地下1階のコワーキングスペース「NaDeC BASE」では、長岡技術科学大学・長岡工業高等専門学校・長岡造形大学の学生たちが、発酵の魅力を発見するブースを出展。発酵食品のpH測定体験、発酵食品をつくる微生物当てクイズ、SDGsを体験するゲームなど、楽しく遊びながら学べるとあって、家族連れの姿が目立ちました。
また、今年初参加の長岡造形大学いのプロ(イノベーター育成プログラム)は、長岡をテーマにしたからくり木製おもちゃを展示。子どもも楽しめるおもちゃづくり体験や、日本酒瓶を支柱代わりにした日本酒わなげ大会も盛り上がりました。
学生によるプロジェクトも。温かな交流が生まれる
ながおか市民センターの入り口前・大手通り遊歩道(cエリア)では、市内に立地する4大学1高専の学生たちが集結したプロジェクトチームによる、オリジナル日本酒カクテルを提供。20代の若い世代がカジュアルに日本酒を楽しむ姿は酒どころ・長岡とはいえあまり見かけない、めずらしい光景です。さらに、遊歩沿いには学生たちが手作りしたアクセサリーやポストカードなどの雑貨が並び、見る人の目を楽しませていました。
JR長岡駅とのコラボ企画!子ども駅長が誕生!?
今年のHAKKO Tripでは初の試みとして、JR長岡駅の探検企画も! NPO法人「多世代交流館になニーナ」とJR東日本がコラボレーションした「親子でNagaoka Station trip」です。参加したのは、小学生以下の電車大好きな子どもたちとその保護者のみなさん。駅長さんに駅構内を案内してもらい、停車している新幹線をたっぷりと見学。最後は駅長服を着て記念撮影をパシャリ。子どもたちにとって忘れられない体験となりました。
参考:郷土料理を通じた多世代交流を。NPO法人「になニーナ」がめざす「誰も一人にしないまち」
お天気に恵まれた4年目のHAKKO trip。今年は宮内・摂田屋と長岡駅前の二会場開催でしたが、どちらの会場も訪れる来場者が多く、発酵の魅力とともに長岡のまちの魅力を存分に感じる一日となったようです。発酵のまち・長岡の噂を聞きつけた市外からの来場者は、発酵というキーワードを全面に押し出したイベントでこれだけの規模感になることに驚いていました。また、地元の中学生や高校生が友達同士で来場しているのも印象的でした。「昨年のHAKKO tripが楽しかったからまた来ました」という声も聞かれ、いまやHAKKO tripは長岡の秋の風物詩として定着しつつあります。
毎年、進化を続けるHAKKO trip。来年も新しい企画やお店が登場し、パワーアップしているはず。ぜひ今から来秋を心待ちにしておきましょう。
Text:渡辺まりこ/Photo:PEOPLE ISLAND